こんなに役立つpoint of care超音波

救急ICUから一般外来・在宅まで

こんなに役立つpoint of care超音波

■編集 鈴木 昭広

定価 3,960円(税込) (本体3,600円+税)
  • A5判  180ページ  オールカラー,写真150点
  • 2017年6月2日刊行
  • ISBN978-4-7583-1599-9

患者急変,救急,在宅医療。「どうしよう」から「こう対処しよう」へ変換できるエコー活用術,教えます!

超音波は今やCT,MRIをしのぐ解像度を有し,しかもリアルタイムに動きを伴う画像情報を提供してくれる。従来の問診・視診・聴診・触診・打診に基づき次に必要な画像・生理学的検査を追加して治療する,という診療スタイルは,point of care超音波によって大きく変わりつつある。超音波を利用することで,初学者でも客観性のある所見を得て共有し,診察から診断・治療までのプロセスを一気に加速することも可能になってきた。
初期研修で各科をローテーションする間にその部門ごとに必要な超音波に広く浅く触れ,基本的な描出スキルをマスターしておくことは,将来の病棟対応や当直業務に役立てるのみならず,専門領域への発展をとてもたやすいものにする。聴診器並みの気軽さでとりあえずプローブを手にとることがすべての始まりであり,本書は超音波を学ぶ者にとってまず押さえておきたい全身観察の基本を紹介するpoint of care超音波の基本をコンパクトに解説している。
初期研修医のみならず,救急時,一般外来,在宅医療など幅広く役立つpoint of care超音波を気軽に学べる必読書である。


序文

 Point of Care超音波が,まさに「波」にのっている。もちろんこれまで,超音波は診断だけではなく病態把握やアセスメント的な利用もされてはいたが,トップクラスの臨床雑誌New England Journal of Medicineに2011年,MooreらがPoint of Care Ultrasonographyを発表したことを契機に,この領域は一気に社会的地位を得,裏ワザ的な使い方も含めてあっという間に枝葉を広げ巨大な樹として急成長を遂げはじめている。
 編者は10年ほど前に四十の手習いで北海道の旭川医科大学病院救命救急センターにおいて救急・集中治療に関与し,DMAT訓練を介して災害医療の基本なども学び,また近隣の旭川赤十字病院で道北ドクターヘリ事業のお手伝いで航空医療にも従事した。それまでは麻酔を介して,手術を受けられる程度に元気で,しかも病名もついた患者ばかりと接してきたため,救急や集中治療に身をおく立場となってはじめて,自分の診断能力のなさを思い知らされることとなる。40のオッサン医師が,手当たり次第に検査や画像を提出したはいいが,その結果を読むアタマもない……“使えないバカ医者”のレッテルを貼られる前に,付け焼刃でもいいから短期間で武器を身につけたい! と手を伸ばしたのが超音波である。
 今では国家試験にも出題される外傷初期診療JATECがそこまで普及しておらず,FASTも施設ではルーチンではなかったため,腹部を打った,腹が痛い患者は全例FASTを実施し,さらに,心臓麻酔で培った経食道エコーを心肺停止患者に使用し,心停止の原因検索などをはじめた。救急車で運ばれてくる患者だけでなく,ウォークインでやってくる患者の打撲や蜂窩織炎でも,なんでもエコーを“あてて,見る”医者としての時間がはじまった。毎日プローブを握り続け,救急外来に置かれた超音波装置のハードディスクは私の趣味の領域で満たされていった。
 結局,悟ったことは「餅は餅屋」,専門家のいる領域には深く立ち入らずスクリーニングのみでしのぐようになり,その分,麻酔科医の得意な気道・呼吸・循環・中枢神経制御にからむようなエコー技術を追い求め,中でも気道や肺などの変り種エコーを武器とする方向に収束していった。今では肺エコーもかなりメジャーとなり,気道エコーはガイドラインにも収載されるほどの変化を遂げたのは驚くばかりである。このたび,自分の得意分野以外でも日進月歩のpoint of care超音波を,初学者がはじめるきっかけになるような興味深いトピックスを集めた書籍を刊行できることとなり,非常に感慨深いものがある。
 ご多忙の中,興味深い原稿を快く作成いただいた執筆者の皆様,書籍企画段階から締め切り間際も,締め切りを過ぎてもペースメーカーとして叱咤激励を続けていただいた高橋 範子様,および書籍完成に尽力いただいたメジカルビュー社の方々に厚く御礼申し上げます。

2017年4月
桜舞う文京区にて
執筆者代表
東京慈恵会医科大学麻酔科学講座教授
鈴木昭広
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目次

01 気道管理に役立つエコー 〜今や気道超音波は世界標準に!〜鈴木昭広
【基礎編】
 1 気道エコーとは何か
 2 使用プローブと設定
 3 基本画像1:胸骨切痕上での横断像
 4 基本画像2:頸部気道の矢状断像
 【応用編】
 1 気管挿管の確認 Case1
 2 輪状甲状靱帯の位置確認 Case2
 3 声帯の観察 Case3
 Question 正面からの声帯の観察が困難な場合の代替策は?

02  呼吸管理に役立つエコー 〜人体最大の臓器を超音波でみる〜
その1 日本発!呼吸器内科で行う呼吸器超音波 小林英夫
【基礎編】
 1 日本の呼吸器超音波学
 2 POCUSと密接にかかわる呼吸器疾患
 Question 胸膜の組織学的構造は?
 Question 横隔膜の構造は?
 Question 下大静脈虚脱の計算法は?
 3 超音波用語について
【応用編】
 1 胸水の確認 Case1
 Question セミファーラー位とは?
 2 右心負荷の確認 Case2
 3 胸壁痛の確認 Case3

03  呼吸管理に役立つエコー 〜人体最大の臓器を超音波でみる〜
その2 呼吸不全を鑑別するための急性期肺エコー 山口嘉一,野村岳志
【基礎編】
 1 急性呼吸不全と肺エコー
 2 使用するプローブ
 3 どの部位を観察するか?
 4 Upper BLUEポイントとLower BLUEポイントでBat sign を描出しよう
   基本画像1:Bat signの観察
 5 PLAPSポイントで横隔膜と胸水を観察しよう
   基本画像2:PLAPSポイントでの観察
 6 間質症候群とB-line
【応用編】
 1 気胸の診断 Case1
 2 胸水の診断 Case2
 3 間質症候群 Case3

04  循環管理に役立つ心エコー
〜ダイナミックに動く心臓は超音波観察の醍醐味!〜 山田博胤
【基礎編】
 1 ベッドサイドで行う心エコー図検査(FoCUS)とは
 2 使用装置,プローブと設定
 3 基本画像1:心窩部アプローチ 下大静脈縦断面
 4 基本画像2:心窩部アプローチ 四腔断面
 5 基本画像3:傍胸骨アプローチ 左室長軸断面
 6 基本画像4:傍胸骨アプローチ 乳頭筋レベル左室短軸断面
 7 基本画像5:心尖部アプローチ 四腔断面
 Question Visual EFって何?
 1 心タンポナーデの診断 Case1
 2 心不全の診断 Case2
 3 右室拡大の診断 Case3
 Question 左室駆出率が正常でも心不全になるの?

05 中枢神経異常を判断するエコー 〜意識障害をみる〜 吉田拓生
【基礎編】
 1 頭蓋内圧上昇とその測定
 2 ICP の手がかりは視神経
 3 使用するプローブと注意点
 4 基本画像:観察ポイント
【応用編】
 1 アルコール患者の救急 Case1
 Question アンダートリアージって何?
 2 肝性脳症 Case2

06  下肢静脈血栓を検索するエコー
〜避難所で行うスクリーニング方法を押さえよう〜 八鍬恒芳
【基礎編】
 1 下肢静脈エコーの有用性を理解する
 2 下肢静脈の解剖を理解する
 3 使用プローブと設定
 4 下肢静脈の正常断層像
 Question ヒラメ筋静脈は何本みえるものなの?
 Question 静脈の走行にバリエーションはあるの?
 5 短軸像による血管内腔スキャンを習得する
 Question 下腿のスキャンを座位で行えない場合の対処法は?
 6 圧迫法による血栓検索手技を習得する
【応用編】
 1 緊急時の必要最低限の検査としてtwo-point compression ultrasonographyを理解し習得する Case1
 Question two-point compression ultrasonographyのピットフォールは?
 2 血栓の性状を判断しよう Case2
 Question カラードプラなどのツールで血栓を捉えることはできないの?
 3 観察困難部位の血栓を捉えよう Case3

07 腹部エコー 〜ブラックボックスをのぞいてみよう!〜 畠 二郎
【基礎編】
 1 point of careにおける腹部エコーとは
 2 使用機器とプローブ
 3 基本画像1:上腹部正中縦走査
 Question 胃のどこがどのようにみえるの?
 4 基本画像2:右肋間走査
 5 基本画像3:左右側腹部肋間走査
 6 基本画像4:下腹部正中縦走査
 7 基本画像5:右腹部横走査
【応用編】
 1 大動脈を見落とすな! Case1
 2 胆嚢炎はどう診断する? Case2
 3 尿管結石:即座に疑い,丁寧に追跡 Case3

08  運動器疾患に役立つエコー
〜「まずX 線」から「まずエコー」の時代へ!〜 前田佳彦
【基礎編】
 1 運動器エコーとは何か
 2 使用プローブと設定
 3 基本画像1:骨の長軸像
 Question なぜ,線状高輝度エコーに描出されるの?
 4 基本画像2:軟骨の長軸像
 Question 異方性って何?
 5 基本画像3:靱帯の長軸像
 6 基本画像4:腱の長軸像
 7 基本画像5:筋の長軸像
 8 基本画像6:神経の長軸像
【応用編】
 1 肘内障の評価 Case1
 2 アキレス腱断裂の評価 Case2
 3 肩関節腱板の評価 Case3
 4 足関節捻挫の評価 Case4
 5 突き指の評価(特に掌側板評価について) Case5
 6 肉離れの評価 Case6

09 血管エコー 〜流れを視覚化してより多くの情報を得る〜 平井都始子
【基礎編】
 1 血管をエコーでみよう
 2 使用プローブと走査方法
 3 動脈と静脈の検査方法の違い
 4 基本画像1:右側頸部(右総頸動脈,右内頸静脈)
 Question 体位による静脈の変化①静脈がない?
 Question 体位による静脈の変化②静脈血栓??
 5 基本画像2:右側頸部(右総頸動脈ドプラ像)
 Question カラードプラのアーチファクト①動脈解離か?
 Question カラードプラ法のアーチファクト②動脈が2本ある?
【応用編】
 1 頸動脈をみる Case1/Case2/Case3
 2 血管病変かどうかを確認する Case4
 3 動脈の閉塞性病変をエコーで診断する Case5/Case6

10 もっときれいに描出したい! 〜エコーの基本を覚えよう〜 小谷敦志
 1 標的臓器に応じた装置設定
 2 プローブの特徴
 3 描出設定と画像の最適化テクニック
 4 アーチファクト:artifact
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