一歩先行く
産科・婦人科領域のIVR
- サンプルページ
どなたでもご覧いただけます
定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- B5変型判 228ページ 2色(一部カラー),写真270点
- 2016年3月30日刊行
- ISBN978-4-7583-1593-7
序文
編集の序
産婦人科と放射線科は画像診断,放射線治療の面では古くから密接な関係をもち,多くの施設で患者紹介やカンファランスが行われてきました。一方,産婦人科とIVRは子宮癌の動注化学療法を集学的治療の一環として行われてきた施設を除くと歴史は新しく,産科危機的出血や子宮筋腫に対する塞栓術が注目されるようになってからと思われます。しかし,産婦人科領域でのIVRの認知度は低く有効に利用されているとは言いがたい状況です。IVRの世界では最近古くから使用していたゼラチンスポンジ製剤が出血治療に対して正式に認められ保険適用となったこと,マイクロスフィアと言われる球状塞栓物質が血流に富んだ腫瘍に対して保険認可されたことから,産婦人科領域の塞栓療法が新たに注目を浴びるようになってきました。このような現況を鑑み,産婦人科医と放射線科医との共同による産婦人科IVRの教科書出版が企画されました。
本書の特徴の第一は産科疾患と婦人科良性疾患,悪性疾患をすべてカバーし,かつIVRの基本である“骨盤血管解剖”についても取り上げている点です。第二点は先にも述べましたように本書が放射線科医と産婦人科医が共同で企画執筆した点が挙げられます。そのため,それぞれの単元のはじめに“疾患概念と治療の基本的な考え方”をそれぞれの領域の産婦人科医にご執筆いただき,治療の全体像の中におけるIVRの位置づけについて概観できるように構成しました。また随所に診療ガイドラインについての解説も加え,専門的になりすぎるきらいのあるIVRを標準的な考え方と照らし合わせることを意図している点も本書の特徴と思われます。第三はIVRの各論の充実です。産科出血と婦人科良性疾患では新しい塞栓物質を含めた塞栓物質ごとの具体的な方法について,また悪性腫瘍ではまだ一般化していない新たな試みにも触れていただきました。そして,これからのIVRにとって大きな意味を有すると考える緩和医療への適応についても触れています。
このように本書は上記三つの特徴を備え,解剖・疾患概念・マネージメントの基本知識の整理から最新情報まで一冊でまとめることができ,通読いただければ現時点の産婦人科領域のIVRについての知識がアップデートされるものと自負しています。現場の産婦人科医,放射線科医だけでなくこれから専門医を目指す研修医,さらにこの領域の診療に従事されている診療放射線技師,看護師に有益な情報が得られるものと期待しております。
本書が従来一般診療においてIVRになじみのなかった産婦人科医や放射線診断医,放射線治療医にとって関心を寄せていただくきっかけになり,IVRが日常診療で適切に応用され,産婦人科疾患で悩んでおられる多くの患者さんに届けられることを祈念しています。
2016年3月
編集代表
中島康雄
産婦人科と放射線科は画像診断,放射線治療の面では古くから密接な関係をもち,多くの施設で患者紹介やカンファランスが行われてきました。一方,産婦人科とIVRは子宮癌の動注化学療法を集学的治療の一環として行われてきた施設を除くと歴史は新しく,産科危機的出血や子宮筋腫に対する塞栓術が注目されるようになってからと思われます。しかし,産婦人科領域でのIVRの認知度は低く有効に利用されているとは言いがたい状況です。IVRの世界では最近古くから使用していたゼラチンスポンジ製剤が出血治療に対して正式に認められ保険適用となったこと,マイクロスフィアと言われる球状塞栓物質が血流に富んだ腫瘍に対して保険認可されたことから,産婦人科領域の塞栓療法が新たに注目を浴びるようになってきました。このような現況を鑑み,産婦人科医と放射線科医との共同による産婦人科IVRの教科書出版が企画されました。
本書の特徴の第一は産科疾患と婦人科良性疾患,悪性疾患をすべてカバーし,かつIVRの基本である“骨盤血管解剖”についても取り上げている点です。第二点は先にも述べましたように本書が放射線科医と産婦人科医が共同で企画執筆した点が挙げられます。そのため,それぞれの単元のはじめに“疾患概念と治療の基本的な考え方”をそれぞれの領域の産婦人科医にご執筆いただき,治療の全体像の中におけるIVRの位置づけについて概観できるように構成しました。また随所に診療ガイドラインについての解説も加え,専門的になりすぎるきらいのあるIVRを標準的な考え方と照らし合わせることを意図している点も本書の特徴と思われます。第三はIVRの各論の充実です。産科出血と婦人科良性疾患では新しい塞栓物質を含めた塞栓物質ごとの具体的な方法について,また悪性腫瘍ではまだ一般化していない新たな試みにも触れていただきました。そして,これからのIVRにとって大きな意味を有すると考える緩和医療への適応についても触れています。
このように本書は上記三つの特徴を備え,解剖・疾患概念・マネージメントの基本知識の整理から最新情報まで一冊でまとめることができ,通読いただければ現時点の産婦人科領域のIVRについての知識がアップデートされるものと自負しています。現場の産婦人科医,放射線科医だけでなくこれから専門医を目指す研修医,さらにこの領域の診療に従事されている診療放射線技師,看護師に有益な情報が得られるものと期待しております。
本書が従来一般診療においてIVRになじみのなかった産婦人科医や放射線診断医,放射線治療医にとって関心を寄せていただくきっかけになり,IVRが日常診療で適切に応用され,産婦人科疾患で悩んでおられる多くの患者さんに届けられることを祈念しています。
2016年3月
編集代表
中島康雄
全文表示する
閉じる
目次
Ⅰ 産科・婦人科領域のIVRの基本
■骨盤領域の血管解剖
Ⅱ 産科領域のIVR
総論
■疾患概念と治療の基本的な考え方(疾患ごとの対応方針)
■産科出血における術前画像診断
ガイドライン紹介
■産科危機的出血に対する対応ガイドライン
■IVR施行医のための産科危機的出血ガイドライン
IVRの実際:産科危機的出血に対する対応
■ゼラチンスポンジによる塞栓術
■NBCAによる塞栓術
■危機的出血が予想される分娩に対する対応
■周産期血栓塞栓症に対する対応
Ⅲ 良性疾患(子宮筋腫・腺筋症)に対するIVR
■疾患概念と治療の基本的な考え方
■IVR術前画像診断の意義
■子宮動脈塞栓術(UAE) 総論:歴史,治療の根拠を含めて
■有症性子宮筋腫に対するゼラチンスポンジを用いたUAE
■ビーズを用いたUAEの実際と治療成績
Ⅳ 悪性疾患に対するIVR
■婦人科癌に対するIVR技術を用いた治療─疾患概念と治療の基本的な考え方─
■化学療法総論
■IVR術前画像診断の意義
■集学的治療としての動注化学塞栓療法
①局所進行子宮頸癌の根治治療における動注塞栓療法の役割
②動注手技
■進行子宮頸癌に対するバルーン閉塞下動注化学療法(BOAI)
■NIPP(negative-balance isolated pelvic perfusion)
■婦人科肺血栓塞栓症に対する予防
■緩和医療としてのinterventional radiology
■骨盤領域の血管解剖
Ⅱ 産科領域のIVR
総論
■疾患概念と治療の基本的な考え方(疾患ごとの対応方針)
■産科出血における術前画像診断
ガイドライン紹介
■産科危機的出血に対する対応ガイドライン
■IVR施行医のための産科危機的出血ガイドライン
IVRの実際:産科危機的出血に対する対応
■ゼラチンスポンジによる塞栓術
■NBCAによる塞栓術
■危機的出血が予想される分娩に対する対応
■周産期血栓塞栓症に対する対応
Ⅲ 良性疾患(子宮筋腫・腺筋症)に対するIVR
■疾患概念と治療の基本的な考え方
■IVR術前画像診断の意義
■子宮動脈塞栓術(UAE) 総論:歴史,治療の根拠を含めて
■有症性子宮筋腫に対するゼラチンスポンジを用いたUAE
■ビーズを用いたUAEの実際と治療成績
Ⅳ 悪性疾患に対するIVR
■婦人科癌に対するIVR技術を用いた治療─疾患概念と治療の基本的な考え方─
■化学療法総論
■IVR術前画像診断の意義
■集学的治療としての動注化学塞栓療法
①局所進行子宮頸癌の根治治療における動注塞栓療法の役割
②動注手技
■進行子宮頸癌に対するバルーン閉塞下動注化学療法(BOAI)
■NIPP(negative-balance isolated pelvic perfusion)
■婦人科肺血栓塞栓症に対する予防
■緩和医療としてのinterventional radiology
全文表示する
閉じる
産科危機的出血,子宮筋腫,子宮がん……。治療にIVRをどう活かす?
分娩時の産科危機的出血においては,止血剤や外科的処置で対応できない場合にIVRが有用な場合がある。また,子宮筋腫や子宮腺腫といった良性疾患に対する治療法の選択肢の1つとしてIVRが選択される場合がある。さらに,子宮癌や卵巣癌患者で外科治療,放射線治療,全身抗がん化学療法とともにIVRが有効なことがあり,種々の場面で産婦人科医と放射線科医の連携が求められている。
そこで本書は,放射線科と産婦人科の医師を主な対象に,産科・婦人科領域のIVRについていまおさえておきたい事項を解説。診療ガイドラインについての解説を随所に加えつつ,骨盤血管解剖・疾患概念・マネージメントの基本知識の整理から最新情報までをまとめた一冊である。