本当は教えたくない

カテーテルアブレーションが
うまくいくカラクリ

カテーテルアブレーションがうまくいくカラクリ

■編集 深水 誠二

定価 7,480円(税込) (本体6,800円+税)
  • B5判  340ページ  オールカラー,写真300点
  • 2018年2月18日刊行
  • ISBN978-4-7583-1445-9

カテーテルアブレーションを成功に導くための考え方,知識活用術,コツ,テクニックを「うまくいくカラクリ」と名付け徹底解説!

カテーテルアブレーションは,不整脈を引き起こす心臓内の伝導異常のある局所に,カテーテルを使用して焼灼を行い正常なリズムを取り戻す方法として広く普及している。心房細動,心房粗動,発作性上室頻拍,心房頻拍,心室頻拍,心室期外収縮などほとんどの不整脈を治療することが可能であり,多くの循環器内科医が行っているが,電気生理学や解剖学的知識も必要であり,うまく手技を行うためのコツやテクニックを習得する必要がある。
超高齢化の日本では,高血圧や弁膜症,心筋症,虚血性心疾患に罹患している患者の心房細動を起こす割合の高さも相まって患者数がさらに増加することが予測されている。
このような現在,進歩著しいカテーテルアブレーションをどのように考え,どのように手技を行ったらうまくいくのか?
本書では「うまくいくカラクリ」と題し,第一線で活躍しているドクターの頭の中を公開し,手技についてもどのように考え行っているのかを具体的に解説している。


序文

 カテーテルアブレーションを始めたばかりの後期研修医の先生から「先生はいったいどこを見てるんですか?」と聞かれることがあります。確かにカテーテルアブレーションを始めたばかりのころは,流れては消えてゆく心内電位,想像力がものをいう2次元の透視画像,最近では3Dマッピングシステムのモニター画面に表示される膨大な情報量に誰でも圧倒されるでしょう。そのような治療中の情報量がまだ今より少ない時代からこの治療に携わっていて,かつ現在も自らカテを握り,カテ室での現場や学会・研究会をリードしている百戦錬磨の先生方の頭の中を公開していただき,ちょっとしたコツやテクニックなど「アブレーションがうまくいくカラクリ」をちりばめた本にしたいと思い本書を企画しました。本書を手に取り興味を抱いていただいた先生方の「もっとうまくなりたい」という期待にきっと応えることができると信じています。ちなみに,先の後期研修医へは「全部。次に起こることを予想しているし,何なら自分の視界の外で起こっていることも音などで把握している」と答えます。
 今回,刊行にあたり各項目を執筆して下さった先生方,ならびに企画段階から編集に至るまでサポートしていただいたメジカルビュー社編集部の高橋範子さんに紙面を借りて御礼を申し上げます。

2018年2月
東京都立広尾病院循環器科医長
深水誠二
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目次

SECTION1 まずはここから! アブレーションの前に知っておくべき知識活用のカラクリ
 1-1. 解剖  カテーテルアブレーションで必要な解剖の知識,教えます  松山高明
  胸郭内の心臓とカテーテルが留置される位置
  刺激伝導系組織の位置と形状
  カテーテルを円滑かつ安全に操作するために知るべき構造
 1-2. 不整脈心電図診断  カテーテルアブレーションで必要な心電図のポイント,教えます  上田明子
  Narrow QRS 頻拍の心電図から診断に近づく
  副伝導路症候群(Kent 束= WPW 症候群,Mahaim 束など)
  Wide QRS 頻拍の鑑別
  特発性心室期外収縮(ventricular premature contraction:VPC)・VT の部位診断
  器質的心疾患のある症例における心室頻拍
 1-3. 透視像と主な使用カテーテル  知っておくべき透視像の読み方,教えます  河村光晴
  心臓電気生理学的検査(electrophysiological study:EPS)時の基本X 線透視像
  EPS 時の基本カテーテルの種類と操作法
  発作性上室頻拍のアブレーション時の透視画像有効使用法
  アブレーション時に使用するカテーテルの種類
  特殊なカテーテル
  新しい透視システム
 1-4. カテーテル操作の基本  アブカテ操作の基本とコツ,教えます  中村啓二郎
  カテーテル操作で大切なことは?
  アブカテの動きをイメージする
  適切なコンタクトを得るコツ
 1-5. 心内異常電位のみかた  局所電位の注目ポイント,教えます  谷本耕司郎
  単極電位と双極電位
  頻拍のメカニズムによる異常電位のみかた
  異常自動能を機序とした頻拍
  リエントリーを機序とした頻拍
  頻拍中の電位
  アブレーション中の電位
 1-6. EPS のキモ,組み立て方  EPS で知っておくべきこと,教えます  大塚崇之
  EPS をオーダーする前にやっておくべきこと
  EPS でなにがわかるの?
  基本的なプログラム刺激方法と着目部位
  予期しないPSVT に遭遇したら…
 1-7. 3D マッピングシステムはこう活用する  本当は教えたくない使い方を教えます  樫村 晋,高月誠司
  3D マッピングシステムの役割
  CARTO
  EnSite
  Voltage map を描く際の留意点
  Activation map を描く際の留意点
  より迅速な3D マッピングシステム
 1-8. 心腔内エコー  各疾患別お役立ち心腔内エコー画像紹介!  奥村恭男,永嶋孝一
  ICE について
  心房細動アブレーションにおけるICE 活用法
  通常型心房粗動におけるICE 活用法
  心室性不整脈におけるICE の活用法
  流出路起源心室頻拍・期外収縮におけるICE 活用法
  ベラパミル感受性心室頻拍や左室乳頭筋起源心室頻拍・期外収縮におけるICE 活用法
  器質的心疾患に合併する心室頻拍におけるICE 活用法
 1-9. リージョンフォーメーションの基礎  焼灼のポイント,教えます  横山勝章
  高周波カテーテルアブレーションによる焼灼巣
  ノンイリゲーションカテーテルとイリゲーションカテーテル
 1-10. 術中麻酔と呼吸管理  知っておいて損なしの麻酔・呼吸管理を教えます  宮内靖史
  アブレーションにおける麻酔・鎮静の重要性
  呼吸のモニター
  意識レベルのモニター
  麻酔・鎮静に用いる薬剤の基本的知識
  深鎮静・全身麻酔の実際
  留意点
  今後の展望

SECTION2 上室頻拍アブレーションがうまくいくカラクリ
 2-1. 房室結節リエントリー頻拍  AVNRT を理解するコツ,教えます  小野裕一
  AVNRT の特徴
  AVNRT の分類
  AVNRT の発生機序と心電図所見
  AVNRT を想定したSVT への心臓電気生理学的検査(EPS)
  AVNRT に対するアブレーション
 2-2. 副伝導路症候群(WPW 症候群)  one burn で仕留める方法,教えます  木村正臣
  WPW 症候群の背景と頻脈
  12 誘導心電図による副伝導路の部位診断
  心臓電気生理学的検査
  マッピング・アブレーション
  うまくいくためのコツ
 2-3.心房頻拍 僕の経験,紹介します  田中泰章
  AT の定義
  AT の分類
  AT の診断
 2-4.心房粗動 確実に成功へ導くコツを教えます   高野 誠
  AFL の定義と分類
  AFL の発生機序と心電図・電気生理学的所見
  AFL のアブレーション
  画像モダリティとの併用
  3D マッピングシステムの活用
  トラブルシューティング
  
SECTION3 心房細動アブレーションがうまくいくカラクリ
 3-1. 心房中隔穿刺  安全な穿刺術,うまくいくコツを教えます  倉田征昭,浅野 拓
  心房中隔穿刺とは
  心房中隔の解剖
  心房中隔穿刺で使用する道具
  術前準備
  心房中隔穿刺
  トラブルシューティング
  症例に合わせた心房中隔穿刺の場所
 3-2. Pulmonary vein isolation(高周波)  PVI を成功させるポイント,トラブルシューティング教えます  熊谷浩司
  現在わが国で広く行われている肺静脈隔離術のポイント
  隔離がうまくいかないときの原因・対処法
  再伝導・再発例に対する再隔離の手技
 3-3. Pulmonary vein isolation(クライオバルーン)  クライオバルーンの使いこなし術,教えます  稲村幸洋,新田順一
  クライオバルーンシステムの特徴
  症例選択
  CBA の手技
  冷却時間,停止の判断
  CBA の注意点と限界
 3-4. Pulmonary vein isolation(ホットバルーン)  ホットバルーンの最新情報,教えます  曽原 寛
  高周波ホットバルーンの特徴と原理
  ホットバルーン特有の合併症の特徴と対策
  ホットバルーンカテーテルによる肺静脈隔離のコツ
  PMS から得られた問題点と今後の課題
  今後のホットバルーンへの期待
 3-5. Non-pulmonary vein foci ablation  誘発方法,マッピング方法を教えます  江島浩一郎
  Non-pulmonary vein foci ablation の重要性
  Non-PV foci の好発部位
  心房細動トリガー誘発のタイミング
  Non-PV foci の誘発方法
  Non-PV foci の起源同定のためのマッピング法
  上大静脈隔離(superior vena cava isolation:SVCI)
  上大静脈以外のnon-PV foci に対するアブレーション
  2nd session 例で肺静脈および上大静脈の隔離が維持されていた場合の戦略
 3-6. Substrate based ablation  実例紹介! 現状と展望の全貌,教えます  山口尊則
  持続性心房細動に対するsubstrate ablation の潮流
  Votage-based ablation の実際
  LVZ アブレーションの限界
  
SECTION4 心室頻拍アブレーションがうまくいくカラクリ
 4-1. 流出路起源心室不整脈(右室・肺動脈)  RVOT でのマッピングの基本,教えます  山内康照
  術中のマッピングのコツ
  心室期外収縮の出現頻度が極端に少ないときの対策
  アブレーション後,違うQRS 波形が残った場合の戦略
  肺動脈起源の心室不整脈
 4-2. 流出路起源心室不整脈(左室・大動脈冠尖)  アブレーションの奥義,教えます  蜂谷 仁
  心電図による起源予測
  冠尖・左室流出路におけるマッピングのコツと注意すべき電位
  冠尖内・左室における詳細なマッピング
  AIV/d-GCV におけるマッピング・アブレーション
 4-3. ベラパミル感受性特発性左室心室頻拍  リエントリー回路と至適通電部位,教えます  中原志朗
  ベラパミル感受性特発性左室心室頻拍の定義と特徴
  ベラパミル感受性特発性左室心室頻拍の電気生理学的所見
 4-4. 脚枝間・束枝間リエントリー性心室頻拍  BBRVT/IFVT の基本とコツ,教えます  深水誠二
  BBRVT,IFVT の定義と特徴
  BBRVT の発生機序と心電図・電気生理学的所見
 4-5. Stable VT  VT ablation の真骨頂,教えます  矢崎義直,里見和浩
  VT におけるアブレーションの意義
  器質的心疾患に伴うVT のメカニズム
  Stable VT のアブレーション前に
  VT の誘発
  アクティベーションマップ
  エントレインメントマッピング
  アブレーション難渋例の対応
 4-6. Unstable VT  VT ablation のストラテジー,教えます  佐々木 毅
  Unstable VT の背景疾患と特徴
  Scar-related VT の回路の形成機序
  3D マッピングシステムによるVT 基質の描出
  Substrate マッピングやアブレーションのためのアプローチ方法
  Substrate アブレーションにおけるlesion 作成の方法
  Substrate アブレーションのエンドポイント
 4-7. Epicardial VT ablation  Epicardial VT ablation を理解して安全に行うコツを教えます  北村 健
  心外膜アブレーションとは
  心外膜アブレーションの適応
  剣状突起下穿刺法による心外膜腔へのアプローチ法
  マッピング
  アブレーション
  経皮的心外膜アブレーションで大切なこと
 4-8. Polymorphic VT/VF  救命するための僕の工夫,教えます  関口幸夫
  Polymorphic VT/VF を引き起こす病態
  Polymorphic VT/VF のアブレーションポイント
  
SECTION5 合併症 予防と処置の基本を押さえ,実臨床にフィードバックするためのカラクリ
 5-1. 心タンポナーデ  吉賀康裕
  カテーテルアブレーションの合併症としての心タンポナーデの頻度
  心筋穿孔を起こしやすい状況と予防法
  心タンポナーデ発症時の対処法
 5-2.塞栓症  田中耕史,井上耕一
  血栓塞栓症
  空気塞栓症
 5-3.房室ブロック  林 武邦
  カテーテルアブレーションによる房室ブロック
  疾患別房室ブロック予防方法
 5-4.穿刺部合併症(主に大腿部穿刺に関して)  徳田道史
  血管穿刺法
  大腿穿刺に伴う合併症
 5-5.稀な合併症 左房食道瘻と冠動脈損傷  北條林太郎
  左房食道瘻
  冠動脈損傷
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