SHD/ACHDのCT・MRI

SHD/ACHDのCT・MRI

■編集 栗林 幸夫
丹羽 公一郎
椎名 由美

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • B5判  250ページ  オールカラー,写真700点
  • 2015年3月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1418-3

進歩著しいSHD/ACHDのCT・MRIの撮り方,読み取り方,トラブルシューティングを具体的に解説

SHD(structural heart disease)に対するカテーテル治療は欧米では積極的に行われてきており,日本ではホット・トピックスとして注目が集まっている分野である。SHDの中心的な手技としては,大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI,2013年11月より保険適応)や心房中隔欠損に対するdevice closure,僧帽弁狭窄に対する経皮経静脈的僧帽弁交連切開術(PTMC)等があげられる。
どの手技に対しても術前評価は不可欠であり,そのなかで有用なものとして,CT,MRIがある。MRIは血行動態や心機能を,CTは形態の全体像を把握するために用いられており,心エコーでは得ることができない情報を得ることができるため,SHDに対するCT・MRIは今後さらにニーズが高まると予測できる。
また,ACHD(成人先天性心疾患)に対してのCT・MRIの撮像,読み取り方についても,患者に個々に特徴があり,難易度が高いため,患者数が飛躍的に増えている現在,循環器内科医にとって避けて通ることのできない分野となっている。術後の心臓に対して心エコーだけでは読み取れない疾患の評価をCTやMRIで行うこともできる。
そこで本書では,進歩著しいSHD/ACHDのCT・MRIにおいて,どのように考え撮像すべきか,どこをポイントに画像を読み取るかを解説。トラブル回避の方法も述べ,これから本分野に進出する先生方が,評価指標としてのCT・MRIを理解できるようになる内容となっている。


序文

 SHD(structural heart disease:構造的心疾患)は,大動脈弁狭窄や僧帽弁逆流などの弁膜疾患,成人先天性心疾患(ACHD:adult congenital heart disease),心筋疾患など心臓の構造的異常をきたす疾患を包括した概念である。SHDに対する根治的治療は,従来は外科手術のみであったが,近年カテーテルによる治療手技が開発され,欧米を中心に積極的に行われるようになってきた。わが国でも昨今これらの手技が導入され,カテーテル治療の適応となるSHDが増えつつあり,注目を集めている。
 SHDに対するカテーテル治療の中心的な手技としては,大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI:transcatheter aortic valve implantation, 2013年11月より保険適応)や心房中隔欠損に対するdevice closure,僧帽弁狭窄に対する経皮的僧帽弁交連裂開術(PTMC:percutaneoustransvenous mitral commissurotomy),動脈管開存に対するdevice closureなどが挙げられる。いずれの手技においても,術前,術後の評価は不可欠であり,画像診断の果たす役割は大きい。画像診断のなかで超音波(経胸壁,経食道)の役割は従来から確立されているが,近年のCT,MRIの進歩でこれらの診断法の果たす役割が重要になってきている。CTは種々の再構成画像を駆使して心臓血管構造の全体像を把握するのに優れており,MRIは構造的異常のみでなく血行動態や心機能を把握できる利点を有しており,超音波検査では得られない情報を取得することができる。いずれも非侵襲的な画像診断法であり,得られる情報量も多いことから,今後SHDの診断,治療,経過観察におけるニーズが高まることが予測される。
 このような背景から,本書では進歩の著しいCT・MRIの技術を踏まえて,SHDにおいてどのように考えて撮影すべきかを,造影剤の量や投与法,具体的な撮影方法を提示して解説した。また,得られた画像やデータについてどこをポイントに読み取るかを,具体的に画像を提示しながら解説した。第1部では,インターベンションの対象となるSHDの主要な疾患を取り上げ,インターベンションの術前,術中,術後におけるCT・MRIについて,超音波画像とともに解説した。特にこれからこの分野に進出する先生方のために,SHDに対する評価手法としてのCT・MRIの役割を理解できるように,できるだけ具体的かつ平易に解説した。また,第2部でSHDの重要な1分野である成人先天性心疾患について主要な疾患を取り上げた。成人先天性心疾患や川崎病後冠動脈瘤は,加齢とともにさまざまな問題を生じうることから,成人になっても継続的な観察が必要である。また,成人では小児期の手術の既往や体格などの要因で経胸壁超音波検査では十分な描出が得られない例もあり,構造的および血行動態の評価におけるCT・MRIの役割は重要である。
 本書が,SHD, 成人先天性心疾患の診断,治療に携われている,あるいはこの領域に進まれる医師,放射線技師,生理検査技師の方々にとって,有益であり診療の一助となれば編者として幸甚であります。また,本誌の編集作業を労をいとわず担当して頂いたメジカルビュー社高橋範子氏に深謝致します。

平成27年1月
慶應義塾大学名誉教授
医療法人社団山中湖クリニック 放射線診断センター長
聖路加国際病院心血管センター・放射線科顧問
栗林幸夫
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目次

SHD(structural heart disease)
Ⅰ.TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)
TAVIとは何か?  林田健太郎
  TAVIの開発
  デバイスとアプローチ部位
  弁サイズとアプローチの決定
  Learning curveと予後への影響
  日本における現状
  おわりに
心エコーによるTAVI術前評価  鶴田ひかる
  AS重症度評価
  TAVIに適した大動脈弁と弁周囲の解剖学的構造
  合併弁膜症の評価
  左室機能と左室形態の評価
TAVIの心エコーによる術中・術後評価  村田光繁
  TAVI術前の準備
  術直前の心エコー評価
  術中心エコー評価
  術後心エコー評価
CT TAVI術前CTの撮影方法  山田祥岳,山田 稔,陣崎雅弘,栗林幸夫
  TAVI術前CTの意義
  TAVI術前CTのヨード造影剤量と被ばく線量について
  TAVI術前CT撮影プロトコルでの留意事項
  慶應義塾大学病院におけるTAVI術前CTプロトコル(2014年5月現在)
  画像処理
CT TAVI術前における大動脈弁輪/大動脈基部の評価と計測方法  山田祥岳,山田 稔,陣崎雅弘,栗林幸夫
  大動脈弁輪部の評価についての概要
  大動脈弁輪径の評価の実際
  その他の大動脈基部の計測
  perpendicular view
  大動脈弁石灰化
CT TAVI術前における冠動脈の評価  山田祥岳,山田 稔,陣崎雅弘,栗林幸夫
  TAVI術前CTにおける冠動脈評価の注意点と特殊性
  冠動脈カルシウムスコア
  冠動脈の分類法とレポートの記載
CT TAVI術前における大動脈・末梢血管の評価と計測方法,その他  山田祥岳,山田 稔,陣崎雅弘,栗林幸夫
  大血管CTの画像処理
  TAVI術前CTにおけるアクセスルートの評価
  左室および胸壁の評価
  心臓外偶発所見

Ⅱ.心房中隔欠損に対するdevice closure
エコー 術前エコー  村田光繁,河村朗夫
  ASDの診断
  ASOの適応と除外
  TEEによる術前評価項目と計測法の実際
  術後合併症に注意すべき点
エコー 術中エコー  河村朗夫
  TEEガイド下のASD閉鎖
  ICEガイド下のASD閉鎖
  おわりに
エコー 術後エコー  鶴田ひかる,河村朗夫
  合併症のチェック
  デバイス閉鎖後の残存シャントの有無
  閉鎖後の心機能評価
CT/MRI rimの評価方法  貞廣威太郎,奥田茂男
  MRIを用いたASD rimの評価
  症例提示
CT/MRI 部分肺静脈還流異常(PAPVC)  田波 穣,奥田茂男
  部分肺静脈還流異常
CT/MRI Qp/Qsの計測  奥田茂男
  Qp/Qs計測

Ⅲ.経皮的僧帽弁交連裂開術(PTMC)
術前心エコー検査  馬原啓太郎
  PTMCとは
  PTMC適応の可否
術中,術後心エコー検査  馬原啓太郎
  術中心エコー検査
  術後心エコー検査

Ⅳ.動脈管開存に対するdevice closure
術前CT/MRI・分類と計測部位・何を見るか,デバイス選択のコツ  吉敷香菜子
  動脈管開存(PDA)とは
  PDAの分類
  動脈管開存の測定部位
  術前CT/MRI
  デバイス選択のコツ
  コイル閉鎖術
  カテーテル治療の留意点

Ⅴ.経皮的肺動脈弁置換術(PPVI)
術前CTと冠動脈との関係/何を見るか,デバイス選択のコツ  麻生健太郎
  PPVI用のデバイス開発まで
  Melody valveとは
  PPVIの適応
  右室流出路形態から見た適応
  冠動脈走行の評価
  pre-stenting法の有用性
  PPVIの短中期成績
  今後の展望

ACHD(adult congenital heart disease)
Ⅰ.CTによる撮影計画・撮影方法
撮影計画・撮影前検査  白井丈晶
  ACHDにおけるCT
  撮影の具体例
撮影方法  植田琢也
  ACHDにおけるCT撮影方法の実際

Ⅱ.CTによる形態評価
弁性疾患 弁の形態・機能評価  植田琢也
  弁性疾患におけるCT撮影方法・3D画像再構築
  大動脈二尖弁
  人工弁の評価
二心室修復術後のACHDの形態評価  坂本一郎
  Fallot四徴
  完全大血管転位
  Ebstein病
  修正大血管転位
単心室/Fontan型循環の形態評価  白井丈晶
  univentricular physiologyの疾患群とは
  小児期におけるuniventricular physiologyの治療戦略
  univentricular physiologyでのCT検査撮影のポイント
  評価すべきポイント
大血管系の形態評価 大動脈縮窄の形態,術後再狭窄の評価  山村健一郎
  大動脈縮窄とは
  CT検査の実際:大動脈縮窄の評価に必要なview
冠動脈 川崎病冠動脈瘤  坂本愛子,上原雅恵
  川崎病とは
  心臓CTの特徴的な冠動脈所見
  心臓CT撮影時のポイント
冠動脈 冠動脈起始異常(BWG症候群),冠動脈異常  上原雅恵
  冠動脈起始異常
  BWG症候群とは
  その他の冠動脈異常

Ⅲ.心血管MRIによる評価方法
成人先天性心疾患(ACHD)の各疾患と撮影すべき像
MRIのアウトライン・検査前準備  鈴木亜弓,熊田真幸
  ACHDのMRIにおける利点,欠点とは
  ACHDのMRI検査目的の把握
  心血管MRIに使われる撮像法
  検査前準備
  できるだけ画質のよい画像を得るために
  ポジショニング,心電図の電極を貼る際の注意点
  撮像断面の決め方
  その他の追加撮影
心血管MRIのflowおよびvolume計測  石川友一
  MRIによる血流量の計測
  心血管MRIによる容積の計測
Ⅳ.心血管MRIによる疾患別評価
二次孔以外のASD:sinus venosus type  植田琢也
  sinus venosus ASDとは
  sinus venosus ASDのMRI評価
  phase–contrast流速mappingによるQp/Qsの算出
心室中隔欠損+大動脈弁右冠尖逸脱+大動脈弁逆流  椎名由美
  VSD+RCCP+ARの病態とは
  本病態の問題点
  心血管MRI検査の実際
大動脈二尖弁  中里 良
  大動脈二尖弁とは
Fallot四徴  椎名由美
  Fallot四徴とは
  心血管MRI検査の実際
  肺動脈逆流の評価
  肺動脈弁置換後,導管狭窄(VSD PA Fallot極型),弁上/弁下狭窄の評価
  左右肺動脈の血流評価
  右室の評価
  右室流出路遅延造影
  上行大動脈の拡大について
  その他の確認ポイント
完全大血管転位  長尾充展
  完全大血管転位とは
  術式
  心血管MRIのkey point
  CT/MRIによる心室容量測定
Ebstein病  椎名由美
  Ebstein病とは
  心血管MRI検査の実際:Ebstein病の評価に必要なview
  三尖弁逆流の重症度評価について
  右室の容量・機能評価について
修正大血管転位  植田琢也
  修正大血管転位(ccTGA)とは
  ccTGAに対する治療と予後
  ccTGAに対するMRI検査の役割
  ccTGAに対するMRI検査の実際
単心室/Fontan循環  山村健一郎
  単心室/Fontan循環とは
  心血管MRI検査の実際:単心室/Fontan術後に必要な評価
大動脈縮窄  椎名由美
  大動脈縮窄とは
  心血管MRI検査の実際:大動脈縮窄の評価に必要なview
heterotaxy  石川友一
  heterotaxyとは
  heterotaxyの診断
  heterotaxyの診断・診療におけるMRIの活用
  まとめ
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