循環器専門医に必要な検査必須知識
正しい診断を導くために
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定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
- B5判 244ページ 2色(一部カラー)
- 2013年2月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1405-3
序文
最近の医療検査技術の目覚しい進歩は,循環器領域における診断法に大きな変革をもたらした。非侵襲的診断法では心エコー図法による弁病変や心機能の評価に多列化CTによる冠動脈病変の評価,MRアンギオグラフィーによる大血管・末梢血管病変の評価などが,また侵襲的診断法ではIVUSやOCTによる冠動脈プラークの評価などがその代表としてあげられる。
しかしながら,臨床診断が患者を扱う診療行為であるかぎり,検査技術がどんなに進歩しても,問診をはじめとするphysical examinationがまず第一に選択されるべき基本的診断法である。すなわち,視診で患者の状態と全体像を把握しつつ,同時に的確な問診を行うことが大切で,それによって疾患を絞り込み,これに局所の視診・触診・聴診を追加することにより,かなりの程度まで診断に迫ることが可能である。このような意味から,本書では最初に「問診とphysical examinationのとり方と活かし方」を取り上げた。
患者を正しい診断に導くためには,しかるべき診察の後,次に行うべき検査法をいかに的確に選択するか,そしてその結果をいかに読み,いかに判断するかがキーポイントとなる。まず心電図と胸部X線写真をとり,必要な血液検査を行い,次に心エコー図をはじめとする非侵襲的検査(心エコー図,CT,MRI,核医学)を実施するのが通常の流れである。心電図にはホルター心電図や運動負荷心電図も含まれ,最近では加算平均心電図も実施可能である。血液検査では生化学マーカーの読み方と使い方が大切である。心エコー図ではカラードプラ法に加えて,スペックルトラッキンング法や三次元心エコー図法もルーチンに行われつつある。CTやMRIも画像の精度が急速に向上している。核医学検査ではPETも行われるようになった。
侵襲的診断法である心臓・大血管・冠動脈のカテーテル検査や心臓電気生理検査は,診断の最終段階に行われるべき検査法である。冠動脈病変の診断においては,IVUSやOCTに加えて血管内視鏡まで登場している。循環器専門医はこれらの検査法についてもその意義と役割をしっかりと理解しておく必要がある。
本書では,以上述べた各種検査法の意義と読み方,考え方,および診断への活かし方について,基本事項から最新情報まで知っておくべき必須知識を,各領域のエキスパートの先生方に手を抜くことなく存分に記述していただいた。本書が日常診療の場において正しい診断を導くための道標として,循環器専門医の先生方に少しでもお役に立てれば著者一同このうえない幸いである。
平成25年1月
国立病院機構善通寺病院臨床研究部部長
福田信夫
しかしながら,臨床診断が患者を扱う診療行為であるかぎり,検査技術がどんなに進歩しても,問診をはじめとするphysical examinationがまず第一に選択されるべき基本的診断法である。すなわち,視診で患者の状態と全体像を把握しつつ,同時に的確な問診を行うことが大切で,それによって疾患を絞り込み,これに局所の視診・触診・聴診を追加することにより,かなりの程度まで診断に迫ることが可能である。このような意味から,本書では最初に「問診とphysical examinationのとり方と活かし方」を取り上げた。
患者を正しい診断に導くためには,しかるべき診察の後,次に行うべき検査法をいかに的確に選択するか,そしてその結果をいかに読み,いかに判断するかがキーポイントとなる。まず心電図と胸部X線写真をとり,必要な血液検査を行い,次に心エコー図をはじめとする非侵襲的検査(心エコー図,CT,MRI,核医学)を実施するのが通常の流れである。心電図にはホルター心電図や運動負荷心電図も含まれ,最近では加算平均心電図も実施可能である。血液検査では生化学マーカーの読み方と使い方が大切である。心エコー図ではカラードプラ法に加えて,スペックルトラッキンング法や三次元心エコー図法もルーチンに行われつつある。CTやMRIも画像の精度が急速に向上している。核医学検査ではPETも行われるようになった。
侵襲的診断法である心臓・大血管・冠動脈のカテーテル検査や心臓電気生理検査は,診断の最終段階に行われるべき検査法である。冠動脈病変の診断においては,IVUSやOCTに加えて血管内視鏡まで登場している。循環器専門医はこれらの検査法についてもその意義と役割をしっかりと理解しておく必要がある。
本書では,以上述べた各種検査法の意義と読み方,考え方,および診断への活かし方について,基本事項から最新情報まで知っておくべき必須知識を,各領域のエキスパートの先生方に手を抜くことなく存分に記述していただいた。本書が日常診療の場において正しい診断を導くための道標として,循環器専門医の先生方に少しでもお役に立てれば著者一同このうえない幸いである。
平成25年1月
国立病院機構善通寺病院臨床研究部部長
福田信夫
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目次
第1章 問診とphysical examinationのとり方と活かし方
問診の大切さを知る 羽田勝征
視診でどこまでわかるか 森谷浩四郎
触診でどこまでわかるか 室生 卓
聴診の重要性 福田信夫
第2章 心電図の読み方と活かし方
心電図でなにを診るのか 西田邦洋,井上 博
心電図を読むうえで必要な知識 相澤義房
ホルター心電図をどう使い,どう活かすか 齋藤 憲
運動負荷心電図をどう使い,どう活かすか 平田直己,三田村秀雄
late potentialとQT dispersionの意義と臨床応用 上山 剛,清水昭彦
心臓電気生理学的検査の適応と評価 坂東重信
第3章 生化学マーカーの読み方と使い方
ANP,BNP,NT-proBNPをどう使い,どう活かすか
蔦本尚慶,川原千穂,西山敬三,酒井 宏,堀江 稔
トロポニンT,H-FABPをどう使い分けるか 大場崇芳,清野精彦
第4章 画像所見の読み方,活かし方
胸部X線写真の読み方 岡田宗正,松永尚文
心エコー図の撮り方,読み方,活かし方
上手に記録するためのコツ 中尾 満
読影上必要な知識 水重克文
各種心エコー図法をどう使い,どう活かすか 中谷 敏
弁異常をどこまで評価できるか:僧帽弁 林田晃寛,吉田 清
弁異常をどこまで評価できるか:大動脈弁 柴山謙太郎,渡辺弘之
心機能をどこまで評価できるか 水口幸生,大木 崇
冠動脈病変にどこまで迫れるか 伊藤 浩
CTとMRIの進歩
CTでなにがわかるか 楠崎浩之,陣崎雅弘,佐藤浩三,田波 穣,栗林幸夫,山田 稔
MRIでなにがわかるか 横山健一,石村理英子,鈴木清寿,似鳥俊明
読影上必要な知識 城戸輝仁,東野 博
冠動脈病変にどこまで迫れるか 佐久間 肇,市川泰崇
核医学検査(SPECTとPET)の役割
SPECTでなにを診るか 西村恒彦
PETでなにがわかるか 工藤 崇,岡沢秀彦,清野 泰
画像を読むうえで必要な知識 吉永恵一郎,玉木長良
画像読影上の注意点 石田良雄
第5章 侵襲的診断法の意義と役割
心臓・大血管・冠動脈造影とカテーテル検査
どうような場合に行うか 細川 忍,日浅芳一
実施上注意すべき点 石原正治
画像の読み方と考え方:心臓・大血管 久保典史,百村伸一
画像の読み方と考え方:冠動脈 門田一繁
心血管内圧の値と波形をどう読むか 丸橋達也,石原正治
治療にどう還元するか:心臓・大血管 田口英詞,西上和宏
治療にどう還元するか:冠動脈 後藤 剛
IVUS・OCTと血管内視鏡による冠動脈評価
IVUSの適応と臨床応用 廣 高史
OCTの適応と臨床応用 山口智由,久保隆史,赤阪隆史
血管内視鏡の適応と臨床応用 松岡 宏
問診の大切さを知る 羽田勝征
視診でどこまでわかるか 森谷浩四郎
触診でどこまでわかるか 室生 卓
聴診の重要性 福田信夫
第2章 心電図の読み方と活かし方
心電図でなにを診るのか 西田邦洋,井上 博
心電図を読むうえで必要な知識 相澤義房
ホルター心電図をどう使い,どう活かすか 齋藤 憲
運動負荷心電図をどう使い,どう活かすか 平田直己,三田村秀雄
late potentialとQT dispersionの意義と臨床応用 上山 剛,清水昭彦
心臓電気生理学的検査の適応と評価 坂東重信
第3章 生化学マーカーの読み方と使い方
ANP,BNP,NT-proBNPをどう使い,どう活かすか
蔦本尚慶,川原千穂,西山敬三,酒井 宏,堀江 稔
トロポニンT,H-FABPをどう使い分けるか 大場崇芳,清野精彦
第4章 画像所見の読み方,活かし方
胸部X線写真の読み方 岡田宗正,松永尚文
心エコー図の撮り方,読み方,活かし方
上手に記録するためのコツ 中尾 満
読影上必要な知識 水重克文
各種心エコー図法をどう使い,どう活かすか 中谷 敏
弁異常をどこまで評価できるか:僧帽弁 林田晃寛,吉田 清
弁異常をどこまで評価できるか:大動脈弁 柴山謙太郎,渡辺弘之
心機能をどこまで評価できるか 水口幸生,大木 崇
冠動脈病変にどこまで迫れるか 伊藤 浩
CTとMRIの進歩
CTでなにがわかるか 楠崎浩之,陣崎雅弘,佐藤浩三,田波 穣,栗林幸夫,山田 稔
MRIでなにがわかるか 横山健一,石村理英子,鈴木清寿,似鳥俊明
読影上必要な知識 城戸輝仁,東野 博
冠動脈病変にどこまで迫れるか 佐久間 肇,市川泰崇
核医学検査(SPECTとPET)の役割
SPECTでなにを診るか 西村恒彦
PETでなにがわかるか 工藤 崇,岡沢秀彦,清野 泰
画像を読むうえで必要な知識 吉永恵一郎,玉木長良
画像読影上の注意点 石田良雄
第5章 侵襲的診断法の意義と役割
心臓・大血管・冠動脈造影とカテーテル検査
どうような場合に行うか 細川 忍,日浅芳一
実施上注意すべき点 石原正治
画像の読み方と考え方:心臓・大血管 久保典史,百村伸一
画像の読み方と考え方:冠動脈 門田一繁
心血管内圧の値と波形をどう読むか 丸橋達也,石原正治
治療にどう還元するか:心臓・大血管 田口英詞,西上和宏
治療にどう還元するか:冠動脈 後藤 剛
IVUS・OCTと血管内視鏡による冠動脈評価
IVUSの適応と臨床応用 廣 高史
OCTの適応と臨床応用 山口智由,久保隆史,赤阪隆史
血管内視鏡の適応と臨床応用 松岡 宏
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検査法をいかに的確に選択し,結果を読み,判断するか,正しい診断を導くための必須知識を収載
循環器疾患は数多くあり,検査法・治療法も多岐にわたる。いざ患者と向き合い,病態や診断・治療方法を絞り込む際に,身体所見をどうとり,どう検査を組み合わせればよいか,などについては苦手意識のある医師も多いのが現状である。また,近年の検査・診断機器の進歩による新しい検査法の開発や診断技術の進歩には目をみはるものがある一方で,これらの機器を用いた検査だけに頼るのではなく,診療の基本となる問診と身体所見のとり方についてもその重要性が見直されてきている。
本書は,Heart View 2006年8月号〜2010年2月号まで連載された「循環器専門医に必要な知識(診断編)」をupdateしてまとめた書籍である。問診と身体所見のとり方から各種検査について,正しく診断するためにいかに的確に検査を選択し,結果を読み,判断するかをポイントを交えながら解説し,各種検査法の意義,読み方,考え方,診断への活かし方について必要な知識を存分に掲載した。
日常診療において,正しい診断を導くための道標として活用していただきたい。