腎癌のすべて
基礎から実地診療まで
改訂第2版
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定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
- B5変型判 408ページ オールカラー,イラスト80点,写真200点
- 2014年3月27日刊行
- ISBN978-4-7583-1260-8
序文
「腎癌の臨床は大きく変わってきている」
これは2003年の初版の東間紘教授(当時)による序文の書き出しである。この第2版は,「腎癌の臨床は急速に大きく変わってきている」という書き出しで始めたい。
初版出版時の2000年代前半は,まさに外科領域全般でminimally invasive surgeryが普及し始め,泌尿器科領域でも腹腔鏡下手術の始まりから普及へと移りつつあるところであった。泌尿器科腹腔鏡技術認定医制度が発足したのもこのすぐあとの事であった。この時,開腹手術に腹腔鏡手術がとってかわるであろうという予想がなされていたが,いまや欧米では前立腺,腎癌,膀胱癌は,腹腔鏡下手術も行われなくなり,ロボットの時代となりつつある。本邦でも前立腺癌については保険適用となったこともありほぼ100%ロボットへの移行が進みつつあり,腎癌に対する腎部分切除も開腹,腹腔鏡手術からロボット腎部分切除へ移行しつつあるのが現状である。この2〜3年以内にほぼ100%近くがロボット手術になるものと考えられ,まさにあっという間の進歩といえよう。序文に「急速に」という一言を入れた理由はまさにこのような急速な技術や創薬の進歩を感じてのことで,現在,腎癌の外科手術は腹腔鏡がメインであるが,数年でロボット手術がメインという時代に突入していくものと考えられる。
一方,内科療法も大きく「急速に」変化している。初版の出版時,まさに序文に「breakthroughとなるような研究が強く求められる」というくだりがあるが,まさにこの点がここ5〜6年の大きな急速な変化となって実現されつつある。すなわち,ここ数年サイトカイン療法に取ってかわりつつあるのが分子標的薬で,進行性の腎癌や転移再発症例の治療に使用されるようになってきている。世界的には内科療法の主体をなすものとなっており,泌尿器科医から化学療法医へと治療の担い手が移りつつある。いくつもの薬剤が開発されすでに市場に投入されているが,どのような使い方をするのか今後ともまだまだ議論の多いところであり,さらに新しい分子標的薬の開発も続々と進んでおりこの分野はまさにこれからの進展が大いに期待されるところである。
今後の超高齢化社会を考えると,いろいろとリスクの高い腎癌患者も増えてくるものと考えられ,このような患者に対するより低侵襲な先進的放射線療法や重粒子治療などの非手術療法も必要に迫られて急速に進歩していくものと考えられる。今後の治療法の進展は,まったく予想ができないと言っても過言ではない状況である。もしかするとほとんどの小径腎癌が手術せずに治療できるようになったり,薬物療法によって治癒できるようになる可能性も十分ありうるものと考えられる。今後のこのような研究の進展が強く望まれるものである。
初版出版からちょうど12年目の本年,2014年に第2版が出版されることは非常に嬉しいことであり,今,初版をみなおすと本当に腎癌の臨床は大きく変わったということが今更のように実感される。初版の序文にもあるように,本書に使用されたデータの多くは私どものところで治療を受けられた2,000名を超える腎癌患者さんの治療データによるものである。この場をかりて深甚なる感謝の意を表するとともに,初版同様に,この第2版もまた日夜,腎癌と戦う患者さんの治療に貢献し,寝食を忘れて臨床に,研究に立ち向かう泌尿器科医や医療者の方々の日常臨床の一助となることを切に望むものである。
最後に本書の出版に当たっては,遅れがちなスケジュールを気にしつつもやさしく叱咤激励いただいたメジカルビュー社編集部鈴木吉広氏に改めて感謝の意を表したい。
2014年3月
田邉一成
これは2003年の初版の東間紘教授(当時)による序文の書き出しである。この第2版は,「腎癌の臨床は急速に大きく変わってきている」という書き出しで始めたい。
初版出版時の2000年代前半は,まさに外科領域全般でminimally invasive surgeryが普及し始め,泌尿器科領域でも腹腔鏡下手術の始まりから普及へと移りつつあるところであった。泌尿器科腹腔鏡技術認定医制度が発足したのもこのすぐあとの事であった。この時,開腹手術に腹腔鏡手術がとってかわるであろうという予想がなされていたが,いまや欧米では前立腺,腎癌,膀胱癌は,腹腔鏡下手術も行われなくなり,ロボットの時代となりつつある。本邦でも前立腺癌については保険適用となったこともありほぼ100%ロボットへの移行が進みつつあり,腎癌に対する腎部分切除も開腹,腹腔鏡手術からロボット腎部分切除へ移行しつつあるのが現状である。この2〜3年以内にほぼ100%近くがロボット手術になるものと考えられ,まさにあっという間の進歩といえよう。序文に「急速に」という一言を入れた理由はまさにこのような急速な技術や創薬の進歩を感じてのことで,現在,腎癌の外科手術は腹腔鏡がメインであるが,数年でロボット手術がメインという時代に突入していくものと考えられる。
一方,内科療法も大きく「急速に」変化している。初版の出版時,まさに序文に「breakthroughとなるような研究が強く求められる」というくだりがあるが,まさにこの点がここ5〜6年の大きな急速な変化となって実現されつつある。すなわち,ここ数年サイトカイン療法に取ってかわりつつあるのが分子標的薬で,進行性の腎癌や転移再発症例の治療に使用されるようになってきている。世界的には内科療法の主体をなすものとなっており,泌尿器科医から化学療法医へと治療の担い手が移りつつある。いくつもの薬剤が開発されすでに市場に投入されているが,どのような使い方をするのか今後ともまだまだ議論の多いところであり,さらに新しい分子標的薬の開発も続々と進んでおりこの分野はまさにこれからの進展が大いに期待されるところである。
今後の超高齢化社会を考えると,いろいろとリスクの高い腎癌患者も増えてくるものと考えられ,このような患者に対するより低侵襲な先進的放射線療法や重粒子治療などの非手術療法も必要に迫られて急速に進歩していくものと考えられる。今後の治療法の進展は,まったく予想ができないと言っても過言ではない状況である。もしかするとほとんどの小径腎癌が手術せずに治療できるようになったり,薬物療法によって治癒できるようになる可能性も十分ありうるものと考えられる。今後のこのような研究の進展が強く望まれるものである。
初版出版からちょうど12年目の本年,2014年に第2版が出版されることは非常に嬉しいことであり,今,初版をみなおすと本当に腎癌の臨床は大きく変わったということが今更のように実感される。初版の序文にもあるように,本書に使用されたデータの多くは私どものところで治療を受けられた2,000名を超える腎癌患者さんの治療データによるものである。この場をかりて深甚なる感謝の意を表するとともに,初版同様に,この第2版もまた日夜,腎癌と戦う患者さんの治療に貢献し,寝食を忘れて臨床に,研究に立ち向かう泌尿器科医や医療者の方々の日常臨床の一助となることを切に望むものである。
最後に本書の出版に当たっては,遅れがちなスケジュールを気にしつつもやさしく叱咤激励いただいたメジカルビュー社編集部鈴木吉広氏に改めて感謝の意を表したい。
2014年3月
田邉一成
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目次
I. 基礎編
腎癌の疫学
腎癌の頻度
偶発癌の増加
腎癌の疫学的要因
腎癌の分子生物学
●癌の分子生物学
ゲノムの遺伝的不安定性と発癌
癌遺伝
癌化に関連する遺伝子変異
エピジェネティクス変化
癌抑制遺伝
遺伝子修復
●核異型と腎癌
●染色体異常と腎癌
染色体異常と検査
点変異
増幅と欠失
転座
全染色体欠損と増加
腎癌における染色体異常
●遺伝子異常と腎癌
von Hippel-Lindeau(VHL)病
3番染色体短腕転座を伴った腎癌
散発性腎細胞癌
VHL蛋白の機能
遺伝性乳頭状腎癌
Xp11.2転座型腎癌
Birt-Hogg-Dube症候群
遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌症候群(HLRCC)
コハク酸ヒドロゲナーゼサブユニット関連遺伝性傍神経性腫
結節性硬化症
腎癌の遺伝子異常と分子標的薬
●後天性嚢胞性腎疾患と腎癌
後天性嚢胞性腎疾患の臨床的特徴
嚢胞形成の機序
癌化の機序
●腎癌の浸潤・転移と分子生物学
腫瘍血管新生
EMTと腫瘍からの離脱
血管内皮細胞への接着と血管外への脱出・転移前ニッチ
休眠状態・臓器特異的転移巣形成
●腎癌と免疫
癌免疫
γδ型T細胞
癌組織局所での免疫抑制
免疫抑制性細胞
免疫抑制解除への試み
II. 臨床・実地編
腎癌の病理と分類
腎実質の上皮性腫瘍の組織学的分類
組織学的異型度分類
鑑別診断に有用な特殊染色
腎癌の診断
●腎癌の症状
症状の種類
当院における症状の頻度と予後の関係
●腎癌の診断に必要な検査
当科における診断のフローチャート
当科におけるステージングのためのフローチャート
全身状態,腎機能などの評価
ガイドラインによる推奨
その他の検査の意義
●腎癌の診断に有用な腫瘍マーカー
これまでの歴史
現在検討されている診断用マーカー
CRPの腫瘍マーカーとしての意義
●腎腫瘍の画像診断
超音波検査
超音波検査の役割
腎臓の描出,観察
正常腎,腎周囲の超音波所見
腎癌の超音波診断
CT
MDCT
CT撮影プロトコル
腎腫瘤の画像診断
術前画像診断
術後画像診断
MRI
シーケンスごとの役割・特徴
MRIの病期診断能
代表的な組織型のMRI所見
核医学検査
腎シンチグラフィ
骨シンチグラフィ
腫瘍PET
●嚢胞性腎癌の鑑別診断
嚢胞性腎癌とは?
嚢胞性腎腫瘍の診断方法:Bosniak分類と具体的な利用例
主な嚢胞性腎癌の画像所見と鑑別のポイント
嚢胞性疾患を背景とする腎細胞癌
良性嚢胞性腎腫瘤の画像所見と鑑別のポイント
嚢胞性腎腫瘍画像診断の今後の方向性
●透析患者の腎癌と画像診断
透析患者の腎癌の特徴
画像診断
●腎癌の生検
腎腫瘍生検の正診率はどれぐらいか?
小径腎腫瘍の診断には画像診断だけでは不十分なのか?
生検の合併症
著者らが考える腎腫瘍生検の適応とその方法
●腎癌の遺伝子診断
遺伝子検査
遺伝性腎癌症候群
遺伝子診断とバイオマーカー
腎癌全遺伝子解析
腎癌の病期分類
●21UICC分類およびわが国の取扱い規約による病期分類
UICC分類
わが国の腎癌取扱い規約による病期分類
Robson分類
●病期分類と予後
腎癌の予後
腎癌のリスク分類と病期
●病期決定のための画像診断
腎癌と鑑別を必要とする疾患
●嚢胞性腎疾患(腎嚢胞と多房性嚢胞)
嚢胞性腎疾患の分類
単純性腎嚢胞(simple renal cyst)
多房性腎嚢胞(multilocular cyst)
●腎血管筋脂肪腫(AML)
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
●オンコサイトーマ
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
●腎肉腫
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
●腎盂腫瘍
病態
鑑別診断
治療および予後
●腎膿瘍
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
腎癌の治療
●腎癌の治療戦略
非転移性症例
有転移症例
●治療法の選択に影響する因子
高齢者
腎機能障害
透析患者
遺伝性疾患
●腎癌の予後因子および予後予測モデル
予後予測因子
予後予測モデル
●腎部分切除は全生存率を改善するのか?
腎部分切除と根治的腎摘術後の腎機能
全生存率への影響(Retrospective study の結果)
全生存への影響(EORTC30904試験:Randomized prospective studyの結果)
腎部分切除のメリットは何か?
●腎部分切除において腎機能に影響する因子とは?
術後腎機能に影響する因子
●インフォームドコンセント
手術説明
質疑応答
腎癌の治療/手術療法
●根治的腎摘除術—腹腔鏡手術時代の開腹根治的腎摘除術の役割
腹根治的腎摘除術の適応
基本手技
実際の手術手技のポイント
術後の管理
●腹腔鏡下根治的腎摘除術
手術法の選択
腹腔鏡手術は開腹手術とどこが異なるか
体位およびポートの設置
トロカーの挿入と術野の確保
経腹膜到達法による腎茎部の展開と剥離
後腹膜到達法による腎茎部の展開と剥離
腎血管の処理
腎臓の剥離,尿管結紮,腎摘除
止血の確認,腫瘍の体外摘出,閉創
術後の管理
●開腹腎部分切除
手術手技
術後管理
当科の開放腎部分切除術の成績
開腹腎部分切除後の合併症とその対応
腎部分切除後局所再発に対する対策
体外腎部分切除について
●腹腔鏡下腎部分切除
適応
経腹腔アプローチの手術手技
経後腹膜アプローチの手術手技
術後管理
当科の腹腔鏡下腎部分切除術の成績
腹腔鏡下腎部分切除後の合併症とその対応
●ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除
適応
手術手技
当科のロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術の成績
●低侵襲治療:RFA,凍結療法
ラジオ波焼灼術(RFA)凍結療法(cryoablation)
低侵襲治療の治療成績
低侵襲治療の今後の展望
●下大静脈塞栓症例に対する手術
事前の準備
分子標的薬による術前投与は有効か?
手術手技
下大静脈塞栓症例の手術の合併症
下大静脈塞栓例の術後生存
●所属リンパ節郭清は本当に必要か
リンパ節郭清の範囲
限局性腎癌(T1-2N0M0)に対するリンパ節郭清の意義
局所進行性腎癌(T3-4N0M0)に対するリンパ節郭清の意義
リンパ節/他臓器転移(N1-2M1)症例に対するリンパ節郭清の意義
●副腎摘除の意義
同時性同側副腎involvementの頻度
同時性同側副腎involvementのリスク因子
同時性同側副腎metastasisのリスク因子
画像診断の正確性
同側副腎摘除のsurvival benefit
●動脈塞栓術
動脈塞栓術の概要
TAEの適応
手術手技
部分的および選択的動脈塞栓術
完全動脈塞栓術
塞栓物質
副反応と合併症
今後の展望
●腎癌の手術はどのように変わっていくか—今後の展望—
根治的腎摘除術は腎癌治療のgold standardである
根治的腎摘除術から腎機能温存手術へ
腹腔鏡手術の普及〜より低侵襲な手術を求めて
手術支援ロボットの開発は腎癌治療に貢献するか
腎癌に対する手術法の選択
分子標的薬は進行性腎癌の手術適応を拡大するか
腎癌の治療/薬物療法
●薬物療法の実際
薬物治療
薬物療法の種類
薬剤の選択
neoadjuvant,adjuvant療法
●腎癌の免疫療法
サイトカイン療法
免疫チェックポイント分子阻害薬
癌ペプチド療法
免疫細胞療法
γδ型T細胞を用いた免疫療法
●分子標的治療
分子標的治療薬の作用機序
臨床試験における効果
臨床試験における副作用
分子標的薬の併用療法
●進行腎癌に対する集学的治療
転移性腎癌に対する治療
局所進行性腎癌(転移を有しない)に対する治療
腎癌の治療/その他
●無治療経過観察
小径腎腫瘍の自然史
小径腎腫瘍に対する無治療経過観察(AS)
●転移巣に対する治療
転移巣切除により予後が改善するか?
転移臓器別治療法
●腎癌術後の標準的フォローアップ法
術後の腎機能低下
再発・転移に対するサーベイランス
●腎癌再発に対する治療
転移に対する治療
局所再発に対する治療
familial renal cell carcinoma(FRCC)に対する治療
●腎癌の遺伝子治療
遺伝子治療とは
遺伝子治療の歴史
癌に対する遺伝子療法
腎癌に対する遺伝子療法
●腎癌の治療成績
臨床病期で分けた生存率
悪性度で分けた生存率
組織病理所見で分けた生存率
偶発癌および症候癌で分けた生存率
腎癌の病期に応じた治療の選択
●早期腎癌(偶発癌)はどうするべきか
治療方針からみた合併症の検討
治療方法からみた局所再発率の検討
ガイドラインからみる治療指針
●高齢者の腎癌の治療をどのように行うか
高齢者に対する治療介入にあたっての評価方法
高齢者に対する限局性腎癌の治療方針
高齢者に対する進行性腎癌の治療方針(主に全身治療)
●術前CKDのある患者の手術療法
CKD患者に対する腎癌手術治療に伴う合併症
術後生存率
術後腎機能
●透析患者の腎癌
透析患者の腎癌の予後は良好か?
透析患者の腎癌に対する手術療法
透析患者の腎癌に対する分子標的薬治療
●腎癌の緩和ケア
緩和ケアとは
症状コントロールの実際
終末期ケア
III. 実地症例への対応編
・偶発腎癌
・若年者に生じた腎癌
・急速進行例(rapid type)
・無治療経過観察症例
・両側性腎癌症例:von Hippel-Lindau病
・偶発的に見つかった透析腎癌を摘出後に生体腎移植を行った症例(非再発例と再発例)
・単腎症例に生じた腎癌
・一側根治手術後に透析導入に至った症例
・腎機能低下例(糖尿病性腎症症例)に対して腎機能温存手術が功を奏した症例
・透析患者の腎癌
・両側腎癌を摘出後に生体腎移植を施行し,移植腎に発生した腎癌
・ADPKDに合併した腎癌
・腎盂腫瘍と鑑別困難だった症例
・Bellini管腫瘍
・高レニン血症と腎腫瘍
・オンコサイトーマ
・下大静脈内腫瘍塞栓を伴ったAML症例
・腎癌を含む多重癌症例
・腎部分切除後の限局再発で再部分切除を行った症例
・進行腎癌症例:インターフェロン療法奏功例
・進行腎癌症例:心房内腫瘍血栓合併症例
・進行腎癌症例:分子標的治療を施行した肺転移例
・進行腎癌症例:骨転移例
・進行腎癌症例:多発する遠隔転移に対して切除術を繰り返した症例
・進行腎癌症例:ガンマナイフが奏功した脳転移症例
・進行腎癌症例:膀胱転移例
・脊椎転移による麻痺に対して積極的手術を行った症例
・分子標的薬術前投与を行って切除した症例
・分子標的薬の逐次療法を行った症例
・分子標的治療にてCRとなった症例
・透析患者に対する分子標的治療症例
・緩和病棟で看取った腎癌患者
腎癌の疫学
腎癌の頻度
偶発癌の増加
腎癌の疫学的要因
腎癌の分子生物学
●癌の分子生物学
ゲノムの遺伝的不安定性と発癌
癌遺伝
癌化に関連する遺伝子変異
エピジェネティクス変化
癌抑制遺伝
遺伝子修復
●核異型と腎癌
●染色体異常と腎癌
染色体異常と検査
点変異
増幅と欠失
転座
全染色体欠損と増加
腎癌における染色体異常
●遺伝子異常と腎癌
von Hippel-Lindeau(VHL)病
3番染色体短腕転座を伴った腎癌
散発性腎細胞癌
VHL蛋白の機能
遺伝性乳頭状腎癌
Xp11.2転座型腎癌
Birt-Hogg-Dube症候群
遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌症候群(HLRCC)
コハク酸ヒドロゲナーゼサブユニット関連遺伝性傍神経性腫
結節性硬化症
腎癌の遺伝子異常と分子標的薬
●後天性嚢胞性腎疾患と腎癌
後天性嚢胞性腎疾患の臨床的特徴
嚢胞形成の機序
癌化の機序
●腎癌の浸潤・転移と分子生物学
腫瘍血管新生
EMTと腫瘍からの離脱
血管内皮細胞への接着と血管外への脱出・転移前ニッチ
休眠状態・臓器特異的転移巣形成
●腎癌と免疫
癌免疫
γδ型T細胞
癌組織局所での免疫抑制
免疫抑制性細胞
免疫抑制解除への試み
II. 臨床・実地編
腎癌の病理と分類
腎実質の上皮性腫瘍の組織学的分類
組織学的異型度分類
鑑別診断に有用な特殊染色
腎癌の診断
●腎癌の症状
症状の種類
当院における症状の頻度と予後の関係
●腎癌の診断に必要な検査
当科における診断のフローチャート
当科におけるステージングのためのフローチャート
全身状態,腎機能などの評価
ガイドラインによる推奨
その他の検査の意義
●腎癌の診断に有用な腫瘍マーカー
これまでの歴史
現在検討されている診断用マーカー
CRPの腫瘍マーカーとしての意義
●腎腫瘍の画像診断
超音波検査
超音波検査の役割
腎臓の描出,観察
正常腎,腎周囲の超音波所見
腎癌の超音波診断
CT
MDCT
CT撮影プロトコル
腎腫瘤の画像診断
術前画像診断
術後画像診断
MRI
シーケンスごとの役割・特徴
MRIの病期診断能
代表的な組織型のMRI所見
核医学検査
腎シンチグラフィ
骨シンチグラフィ
腫瘍PET
●嚢胞性腎癌の鑑別診断
嚢胞性腎癌とは?
嚢胞性腎腫瘍の診断方法:Bosniak分類と具体的な利用例
主な嚢胞性腎癌の画像所見と鑑別のポイント
嚢胞性疾患を背景とする腎細胞癌
良性嚢胞性腎腫瘤の画像所見と鑑別のポイント
嚢胞性腎腫瘍画像診断の今後の方向性
●透析患者の腎癌と画像診断
透析患者の腎癌の特徴
画像診断
●腎癌の生検
腎腫瘍生検の正診率はどれぐらいか?
小径腎腫瘍の診断には画像診断だけでは不十分なのか?
生検の合併症
著者らが考える腎腫瘍生検の適応とその方法
●腎癌の遺伝子診断
遺伝子検査
遺伝性腎癌症候群
遺伝子診断とバイオマーカー
腎癌全遺伝子解析
腎癌の病期分類
●21UICC分類およびわが国の取扱い規約による病期分類
UICC分類
わが国の腎癌取扱い規約による病期分類
Robson分類
●病期分類と予後
腎癌の予後
腎癌のリスク分類と病期
●病期決定のための画像診断
腎癌と鑑別を必要とする疾患
●嚢胞性腎疾患(腎嚢胞と多房性嚢胞)
嚢胞性腎疾患の分類
単純性腎嚢胞(simple renal cyst)
多房性腎嚢胞(multilocular cyst)
●腎血管筋脂肪腫(AML)
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
●オンコサイトーマ
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
●腎肉腫
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
●腎盂腫瘍
病態
鑑別診断
治療および予後
●腎膿瘍
病態
臨床症状
鑑別診断
治療および予後
腎癌の治療
●腎癌の治療戦略
非転移性症例
有転移症例
●治療法の選択に影響する因子
高齢者
腎機能障害
透析患者
遺伝性疾患
●腎癌の予後因子および予後予測モデル
予後予測因子
予後予測モデル
●腎部分切除は全生存率を改善するのか?
腎部分切除と根治的腎摘術後の腎機能
全生存率への影響(Retrospective study の結果)
全生存への影響(EORTC30904試験:Randomized prospective studyの結果)
腎部分切除のメリットは何か?
●腎部分切除において腎機能に影響する因子とは?
術後腎機能に影響する因子
●インフォームドコンセント
手術説明
質疑応答
腎癌の治療/手術療法
●根治的腎摘除術—腹腔鏡手術時代の開腹根治的腎摘除術の役割
腹根治的腎摘除術の適応
基本手技
実際の手術手技のポイント
術後の管理
●腹腔鏡下根治的腎摘除術
手術法の選択
腹腔鏡手術は開腹手術とどこが異なるか
体位およびポートの設置
トロカーの挿入と術野の確保
経腹膜到達法による腎茎部の展開と剥離
後腹膜到達法による腎茎部の展開と剥離
腎血管の処理
腎臓の剥離,尿管結紮,腎摘除
止血の確認,腫瘍の体外摘出,閉創
術後の管理
●開腹腎部分切除
手術手技
術後管理
当科の開放腎部分切除術の成績
開腹腎部分切除後の合併症とその対応
腎部分切除後局所再発に対する対策
体外腎部分切除について
●腹腔鏡下腎部分切除
適応
経腹腔アプローチの手術手技
経後腹膜アプローチの手術手技
術後管理
当科の腹腔鏡下腎部分切除術の成績
腹腔鏡下腎部分切除後の合併症とその対応
●ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除
適応
手術手技
当科のロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術の成績
●低侵襲治療:RFA,凍結療法
ラジオ波焼灼術(RFA)凍結療法(cryoablation)
低侵襲治療の治療成績
低侵襲治療の今後の展望
●下大静脈塞栓症例に対する手術
事前の準備
分子標的薬による術前投与は有効か?
手術手技
下大静脈塞栓症例の手術の合併症
下大静脈塞栓例の術後生存
●所属リンパ節郭清は本当に必要か
リンパ節郭清の範囲
限局性腎癌(T1-2N0M0)に対するリンパ節郭清の意義
局所進行性腎癌(T3-4N0M0)に対するリンパ節郭清の意義
リンパ節/他臓器転移(N1-2M1)症例に対するリンパ節郭清の意義
●副腎摘除の意義
同時性同側副腎involvementの頻度
同時性同側副腎involvementのリスク因子
同時性同側副腎metastasisのリスク因子
画像診断の正確性
同側副腎摘除のsurvival benefit
●動脈塞栓術
動脈塞栓術の概要
TAEの適応
手術手技
部分的および選択的動脈塞栓術
完全動脈塞栓術
塞栓物質
副反応と合併症
今後の展望
●腎癌の手術はどのように変わっていくか—今後の展望—
根治的腎摘除術は腎癌治療のgold standardである
根治的腎摘除術から腎機能温存手術へ
腹腔鏡手術の普及〜より低侵襲な手術を求めて
手術支援ロボットの開発は腎癌治療に貢献するか
腎癌に対する手術法の選択
分子標的薬は進行性腎癌の手術適応を拡大するか
腎癌の治療/薬物療法
●薬物療法の実際
薬物治療
薬物療法の種類
薬剤の選択
neoadjuvant,adjuvant療法
●腎癌の免疫療法
サイトカイン療法
免疫チェックポイント分子阻害薬
癌ペプチド療法
免疫細胞療法
γδ型T細胞を用いた免疫療法
●分子標的治療
分子標的治療薬の作用機序
臨床試験における効果
臨床試験における副作用
分子標的薬の併用療法
●進行腎癌に対する集学的治療
転移性腎癌に対する治療
局所進行性腎癌(転移を有しない)に対する治療
腎癌の治療/その他
●無治療経過観察
小径腎腫瘍の自然史
小径腎腫瘍に対する無治療経過観察(AS)
●転移巣に対する治療
転移巣切除により予後が改善するか?
転移臓器別治療法
●腎癌術後の標準的フォローアップ法
術後の腎機能低下
再発・転移に対するサーベイランス
●腎癌再発に対する治療
転移に対する治療
局所再発に対する治療
familial renal cell carcinoma(FRCC)に対する治療
●腎癌の遺伝子治療
遺伝子治療とは
遺伝子治療の歴史
癌に対する遺伝子療法
腎癌に対する遺伝子療法
●腎癌の治療成績
臨床病期で分けた生存率
悪性度で分けた生存率
組織病理所見で分けた生存率
偶発癌および症候癌で分けた生存率
腎癌の病期に応じた治療の選択
●早期腎癌(偶発癌)はどうするべきか
治療方針からみた合併症の検討
治療方法からみた局所再発率の検討
ガイドラインからみる治療指針
●高齢者の腎癌の治療をどのように行うか
高齢者に対する治療介入にあたっての評価方法
高齢者に対する限局性腎癌の治療方針
高齢者に対する進行性腎癌の治療方針(主に全身治療)
●術前CKDのある患者の手術療法
CKD患者に対する腎癌手術治療に伴う合併症
術後生存率
術後腎機能
●透析患者の腎癌
透析患者の腎癌の予後は良好か?
透析患者の腎癌に対する手術療法
透析患者の腎癌に対する分子標的薬治療
●腎癌の緩和ケア
緩和ケアとは
症状コントロールの実際
終末期ケア
III. 実地症例への対応編
・偶発腎癌
・若年者に生じた腎癌
・急速進行例(rapid type)
・無治療経過観察症例
・両側性腎癌症例:von Hippel-Lindau病
・偶発的に見つかった透析腎癌を摘出後に生体腎移植を行った症例(非再発例と再発例)
・単腎症例に生じた腎癌
・一側根治手術後に透析導入に至った症例
・腎機能低下例(糖尿病性腎症症例)に対して腎機能温存手術が功を奏した症例
・透析患者の腎癌
・両側腎癌を摘出後に生体腎移植を施行し,移植腎に発生した腎癌
・ADPKDに合併した腎癌
・腎盂腫瘍と鑑別困難だった症例
・Bellini管腫瘍
・高レニン血症と腎腫瘍
・オンコサイトーマ
・下大静脈内腫瘍塞栓を伴ったAML症例
・腎癌を含む多重癌症例
・腎部分切除後の限局再発で再部分切除を行った症例
・進行腎癌症例:インターフェロン療法奏功例
・進行腎癌症例:心房内腫瘍血栓合併症例
・進行腎癌症例:分子標的治療を施行した肺転移例
・進行腎癌症例:骨転移例
・進行腎癌症例:多発する遠隔転移に対して切除術を繰り返した症例
・進行腎癌症例:ガンマナイフが奏功した脳転移症例
・進行腎癌症例:膀胱転移例
・脊椎転移による麻痺に対して積極的手術を行った症例
・分子標的薬術前投与を行って切除した症例
・分子標的薬の逐次療法を行った症例
・分子標的治療にてCRとなった症例
・透析患者に対する分子標的治療症例
・緩和病棟で看取った腎癌患者
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好評を博した『腎癌のすべて』の改訂版。最先端の腎癌診療の実際をあますところなく解説
初版の刊行から10年,東京女子医科大学腎臓病総合医療センター編として腎癌診療の実際を余すところなく解説し,ご好評いただいてきた「腎癌のすべて」待望の改訂版。この10年の新たな知見,腎癌診療の進展を踏まえ,全面的な改訂を行った。
I章.基礎編,II章.臨床・実地編,III章.実地症例への対応編の3部から成り,文字通り “腎癌のすべて” を網羅している。泌尿器科臨床医が克服しなければならない泌尿器癌のひとつである腎癌の日常診療に役立つ1冊となっている。