腎移植のすべて

腎移植のすべて

■編集 高橋 公太

定価 17,600円(税込) (本体16,000円+税)
  • B5変型判  552ページ  オールカラー,イラスト80点,写真150点
  • 2009年10月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-1258-5

腎移植のすべて−腎移植を取り巻く現況から移植術の手技,周術期管理−を解説

腎移植のすべて−腎移植を取り巻く現況から移植術の手技,周術期管理のすべて−を解説。知りたい情報,学びたい知識を漏れなく掲載した,腎移植に携わる臨床医必携の書。


序文

 この度,「腎移植のすべて」を刊行するにあたり,一言ご挨拶を申し上げます。わが国において腎移植分野の主な成書は過去に数冊しか出版されておらず,他の分野に比べるとその知識を高める参考書がないため,ここにこの本を刊行する意義があります。
 わが国の腎移植が末期腎不全の有効な治療手段として臨床応用されてから約半世紀を迎えました。欧米諸国に比べてその症例数は見劣りしますが,成績においては遜色ありません。わが国では献腎提供がきわめて少ないため,逆に先人の移植医はその適応拡大の目的からたゆまぬ努力と工夫を重ねてきました。たとえば,ABO血液型不適合腎移植や既存抗体陽性例の腎移植,および献腎移植においてはマージナルドナーの適応拡大,さらに他の臓器移植においては生体部分肝移植や生体肺移植などが挙げられます。
 移植を取り巻くこのような厳しい環境を打開するため,免疫学的ハイリスク症例や臓器における阻血時間の限界などに真っ向から取り組み,この分野を切り開いてきました。その成果が実り皮肉にも欧米諸国よりも成績を向上させ,さらに免疫学に新風を巻き起こしました。
 腎移植の分野はこの半世紀大きく様変わりし,移植腎はほとんど生着しない時代から,生着する時代へと変遷しています。しかし,このように腎移植患者の長期予後が改善されるにつれ,それに伴う多くの課題が浮かび上がってきました。
 また,わが国の腎移植が普及しない大きな要因として,献腎提供の少なさが挙げられます。腎移植の王道はあくまで献腎移植であり,献腎提供を増やすには,官民一体となって臓器提供推進活動(donor action)に取り組まなければいけません。さらにこの医療を普及させるためには臓器提供者やその家族に対する配慮としてグリーフケアもまた大切であります。
 今年(2009年)7月には「臓器の移植に関する法律」が改正され,それに伴う法の整備や制度化が進み,ますます移植医の役割が重要になります。
 日本臨床腎移植学会ではこのような腎移植を取り巻く環境や社会を省みて,腎移植の質の向上とさらなる普及,倫理性の高い移植医の育成が必要であると考え,2007年「腎移植医認定制度」を発足させました。2009年現在,331名の認定医が全国で活躍しております。
 腎移植はある意味で専門的分野といえますが,あらゆる分野の知識が要求される集学的治療でもあります。その視点からみてもこの本をお読みになって理解できると思いますが,過去の成書の執筆者ではほとんどみられなかった内科医,小児科医,精神科医,歯科医,薬剤師,看護師,移植コーディネーターおよびソーシャルワーカー,さらに法学者に至るまで幅広く多くの先生方にも執筆を依頼しました。
 この本の編集にさいして,日本臨床腎移植学会理事の先生にご協力を仰ぎ企画していただきました。また,本を刊行するにあたり,メジカルビュー社 鈴木吉広氏に多大なご負担をおかけしましたので,ここに感謝の意を表します。最後にこの本の刊行が,わが国の腎移植,さらには他の臓器移植の成績と質の向上につながることを期待します。

2009年10月
高橋公太
新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎泌尿器病態学分野教授
日本臨床腎移植学会理事
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目次

腎移植の歩み
 
1 腎移植を取り巻く状況
 腎移植の歴史とその現状
 CKD
 CKDと腎移植
 日本人の腎機能の評価
 ドナーとレシピエントの腎機能からみたCKDとのかかわり
 透析療法
 腎移植と透析療法の比較
 小児末期腎不全(特に小児腎移植)の現況
 腎移植患者の健康管理とそのフォローアップの留意点
 
2 腎移植登録の実際とそのシステム
 生体腎移植の手続きとその流れ
 死体腎移植の手続きとその流れ(献腎移植希望者)
 献腎移植ドナーの適応と管理(脳死と心停止)
 救急病院における臓器提供のかかわり
 社団法人日本臓器移植ネットワーク
 ドナーアクションプログラム
 移植コーディネーターの役割:
   ドナーコーディネーターの役割
   レシピエントコーディネーターの役割
 ソーシャルワーカーの役割(医療費の助成・社会保障制度の活用について)
 死体腎提供の第一報から移植まで
 グリーフケアの意義
 
3 術前検査と術前管理
 腎移植ドナーの適応と検査
 腎移植レシピエントの適応と検査
 小児腎移植レシピエントの適応と検査
 組織適合性検査:
   組織適合性とは
   クロスマッチテスト
 腎移植における精神科医の役割(サイコネフロロジー)
 歯科検査
 インフォームド・コンセント
 
4 腎移植術の実際
 術前管理 
  術前の一般管理
  術前の血液浄化療法(CAPD〔連続携行式腹膜透析〕を含む)
  抗体除去療法
  小児での留意点
 術中管理
  ドナー
  レシピエント
  レシピエント:小児での留意点
 手術手技
  生体腎採取術:
    観血的手術(小切開法)
    鏡視下腎採取術:laparoscopic nephrectomy (1)(後腹膜鏡下ドナー腎採取術)
    鏡視下腎採取術:laparoscopic nephrectomy (2)(ハンドアシスト腹腔鏡下ドナー腎採取術)
    鏡視下腎採取術:hand-assist nephrectomy
  死体腎採取術:
    多臓器採取術
    献腎移植における腎採取術
    腎保存
  腎移植手術:
    生体腎移植
    献腎移植
 小児腎移植術
 血行再建を必要とする症例の場合(複数腎動脈の処置ならびに静脈再建について)
 尿管損傷の処置
 バックテーブルでの処置
 CAPDカテーテルの処置
 ブラッドアクセスの処置
 手術合併症への対応
  血管系合併症に対する処置
  泌尿器科合併症に対する処置
  外科合併症に対する処置
  リンパ嚢腫に対する処置
 術直後の一般的管理
  ドナー
  レシピエント:
    生体腎,献腎
    小児での留意点
  看護とクリニカルパス(医師との連携)
 
5 先行的腎移植
 小児
 成人
 
6 腎疾患と特殊な腎移植
 腎疾患
  糖尿病
  IgA腎症
  膜性増殖性腎炎
  嚢胞腎
  原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
  Alport症候群
  SLEとその他自己免疫疾患
  逆流性腎症
  小児上部尿路障害
  小児下部尿路障害
  先天性腎疾患
 合併症を有する患者の腎移植
  ウイルスキャリアーの腎移植:
    HBVキャリアーの腎移植
    HCVキャリアーの腎移植
    CMVキャリアーの腎移植
    ATLAキャリアーの腎移植
  心臓に問題をもつ症例
  長期透析患者の場合(アミロイド,二次性HPT)の腎移植
 血液型と腎移植
  生体腎移植におけるABO血液型一致,不一致,不適合
  ABO血液型抗体の測定
 抗ドナー抗体を有する腎移植
 夫婦間生体腎移植
 知的障害者の腎移植
 
7 拒絶反応
 腎移植の免疫反応
 拒絶反応の分類−臨床分類,病理分類
 診断
 
8 免疫抑制療法
 免疫抑制療法(総論)
  導入期,維持期
  T細胞依存性および非依存性B細胞免疫応答とその抑制法
 免疫抑制薬の使用法
  ステロイド
  代謝拮抗薬:
    アザチオプリン(AZ)
    ミゾリビン(MZ)
    ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
  カルシニューリン阻害薬(CNI):
    シクロスポリン(CYA)
    タクロリムス(FK506)
  デオキシスパガリン(塩酸グスペリムス)
  モノクローナル抗体:
    ムロモナブCD3(OKT3)
    バシリキシマブ(CD25)
    リツキシマブ(CD20)
 薬物血中濃度モニタリング
 薬物相互作用(ファーマコキネティクスとファーマコダイナミクス)
 腎移植後の抗凝固療法
 移植後の抗体除去療法
 
9 合併症・免疫抑制薬の副作用とその対応
 感染症:
   細菌
   サイトメガロウイルス(CMV)
   Epstein-Barrウイルス(EBV)
   水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)
   アデノウイルス(ADV)
   BKウイルス(BKV)腎症
   真菌
   ニューモシスチス肺炎(PCP)
   結核
   ドナー由来の感染症の予防
 移植後肝障害—ウイルス性,薬物性
 腎移植とメタボリックシンドローム
 高血圧
 貧血
 電解質異常(ナトリウム,カリウム,カルシウム)
 尿酸と腎移植
 高脂血症
 尿細管性アシドーシス(RTA)
 透析アミロイド症(DRA)
 糖尿病
 悪性腫瘍
 骨・ミネラル代謝
 神経学的合併症
 整形外科的合併症
 皮膚科的合併症
 歯科的合併症
 腎移植とIVR
 腎移植とワクチン接種(水痘,肺炎球菌,インフルエンザなど)
 
10 移植後に注意を要する主な症候とその対応
 血清クレアチニン値の上昇
 蛋白尿
 血尿
 高血圧
 尿量の異常
 排尿障害
 過活動膀胱(OAB)
 発熱
 移植腎部の腫瘤と疼痛
 腹痛
 胸痛
 下痢
 呼吸困難
 睡眠時無呼吸症候群
 股関節痛
 眼科的合併症
 神経障害
 erectile dysfunction
 
11 移植腎病理
 移植腎生検の方法,合併症,治療
 移植腎標本の取り扱い方
 病理診断基準(Banffの分類)
 移植後腎症(再発性腎炎,de novo腎炎と薬剤性腎障害)
 
12 移植後の外来管理の実際
 外来通院:
   定期検査
   移植腎機能モニタリング
   小児での留意点
 日常生活上の注意点:
   食事療法
   日常生活と運動
 社会復帰
 小児の成長の問題
 妊娠と分娩の適応と管理:
   移植腎機能からみた適応と管理
   産科からみた適応と管理
 悪性腫瘍
 移植腎機能低下時の治療・生活指導
 移植腎の長期予後を左右する要因
 
13 腎移植後の再透析と再移植
 再透析導入時の問題点
 移植腎と免疫抑制療法の扱い
 再移植(再移植時に注意すべき点)
 
14 腎移植と膵移植
 膵・腎同時移植
 ABO血液型不適合膵移植
 膵島移植
 
15 倫理問題と法律
 臓器の移植に関する法律と臓器移植
 移植と倫理的問題
 日本移植学会の倫理指針
 臓器移植とWHOの勧告
 病腎移植の問題点
 
16 社会とのかかわり
 腎移植統計とその意義
 腎移植認定医制度とその意義
 腎移植医の研修プログラム
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