ビジュアル脳神経外科 3

脳幹・基底核・小脳

脳幹・基底核・小脳

■担当編集 片山 容一

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • A4判  232ページ  オールカラー,イラスト143点,写真276点
  • 2011年9月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-1179-3

脳神経外科医必須の最新の知識・技術を豊富なイラストと写真を用いて解説した実践シリーズ

本巻では従来から手術が困難といわれてきた脳幹・基底核部,そして小脳を取り上げる。手術技術の進歩の著しい昨今においてもまだまだ手術の難しい部位であるが,適応を絞ってその手術について解説する。解剖はもとより,特にこの部位の手術で大切な画像診断,脳機能のマッピング,モニタリング等の検査について詳しく解説しているので,手術に役立つ知識を得ることができよう。脳幹・基底核・小脳の手術の基本を識ることのできる一冊である。

■シリーズ編集
片山容一/冨永悌二/斉藤延人


序文

 本巻は,重要な機能・構造が収斂した手術難易度の高い脳幹,大脳基底核および小脳に関する脳神経外科医に必要な情報を一巻に盛り込んだ贅沢な巻となっております。メジカルビュー社刊行の本シリーズの前身である『図説脳神経外科New Approach』では小脳が別の巻で扱われておりましたが,『ビジュアル脳神経外科』では脳幹と小脳がまとめられ,別の巻で刊行予定の頭蓋底を除けば後頭蓋窩の手術に必要な知識が統合的に把握できる構成となりました。本シリーズの既刊巻と同様に,本巻も“脳神経外科手術に必要な”基本的知識に加え,“機能の温存”を念頭に置いた手術に不可欠な知識が,容易に読者が理解できるように豊富な画像および図を用いて解説しております。また,構造と機能の項も全て“脳神経外科手術に必要な”知識を熟知した脳神経外科のエキスパートの先生に執筆頂いており,脳神経外科医にとって謂わば“かゆい所に手が届く”内容となっております。
 本書の構造と機能の項では,実際の手術アプローチに際して脳幹・小脳のlandmarkとなる表面の解剖を中心に,血管に関しては直達および血管内手術のいずれにおいても必要不可欠な解剖とそのバリエーションに関する知識を解説しております。基底核に関しては,近年,パーキンソン病に対する脳深部刺激術が標準的手術となっていることから,その病態と外科的治療の意義の理解の手助けとするための機能解剖を盛り込みました。画像・検査の項では,“機能温存”をテーマとする脳神経外科手術では今や必要不可欠となった電気生理学的モニタリングとマッピングをわかりやすく解説するとともに,画像診断では,基本的な知識に加え,診断の質の向上と手術計画に有用な先端的技術にも触れて頂きました。手術の項では,頭蓋底を除く後頭蓋窩および基底核の主要な手術を各エキスパートに執筆頂きました。いずれの手術も“機能温存”という観点からは難度の高いものであり,本書の各所にちりばめられた手術の要点が,専門医取得前の若手脳外科医の知識の習得はもちろんのこと,第一線で活躍されている脳神経外科専門医の臨床にも広く役立つことと期待しております。
 最後に,多忙の中,ご執筆をお引き受けくださいました脳神経外科の諸先生に厚く御礼を申し上げます。

2011年8月
片山容一
全文表示する
閉じる

目次

I.脳幹・基底核・小脳の構造と機能
手術に必要な脳幹・小脳の構造と解剖 河島雅到,松島俊夫
  後頭蓋窩“3”のルール
  3つの小脳半球面
   Tentorial surface
   Petrosal surface
   Suboccipital surface
  脳幹の構造
   前面(中脳・橋,延髄)
   側面(中脳・橋,延髄)
   背面(中脳・第四脳室底)
  小脳脳幹裂の解剖
   Cerebello-mesencephalic fissure(小脳中脳裂)
   Cerebello-pontine fissure(小脳橋裂)
   Cerebello-medullary fissure(小脳延髄裂)

手術に必要な基底核の構造と機能 谷口 真
  基底核の諸構造と線維連絡
   線条体
   淡蒼球
   黒質
   腹側被蓋野
   視床下核
   基底核への入出力と内部線維連絡
  基底核の機能

手術に必要な後頭蓋窩動・静脈の解剖 柿澤幸成,本郷一博
  椎骨動脈(VA)
   分類
   分枝
   穿通枝
   吻合
  脳底動脈(BA)
   BAの分岐
  上小脳動脈(SCA)
   Cisternal segment
   Cortical branches
  前下小脳動脈(AICA)
  後下小脳動脈(PICA)
  テント下静脈系
  異常な静脈
   Transmesencephalic vein
   Superior petrosal sinus(SPS)
   Inferior petrosal sinus(IPS)
  導出静脈(emissary vein)
   Mastoid emissary vein
   Hypoglossal emissary vein(anterior condylar emissary vein)
   Posterior condylar emissary vein
   Occipital emissary vein

II.脳幹・基底核・小脳の画像診断・検査
脳幹・基底核・小脳の画像診断 岡本浩一郎,藤井幸彦
  脳内病変・頭蓋内腫瘤性病変の画像診断
   形態(解剖学的)情報を得るための画像検査法
   付加的情報を得るための画像検査法
  脳神経の画像診断
   MR脳槽撮像法(MR cisternography)
  血管系の画像診断
   DSA
   3D-CT angiography(CTA)
   MR angiography(MRA)・MR venography(MRV),T2-reversed MRI(T2R)
  手術計画に必要な画像検査
   頭蓋骨
   血管系
   脳内神経路
  おわりに

術中脳幹機能マッピング・モニタリング 深谷 親,山本隆充,片山容一
  脳幹機能の術中神経生理学(マッピング・モニタリング)
   術中神経生理学とは
   脳幹における術中神経生理の意義
   マッピングとモニタリングの対象となる脳幹機能
  第四脳室底マッピング
   基本的な方法
   顔面神経丘と外転神経線維
   疑核由来の運動神経
   舌下神経
  誘発電位による神経路モニタリング
   その意義と概略

術中脳神経モニタリング 福多真史
  動眼・滑車・外転神経(III・IV・VI)
   神経機能とモニタリング
   モニタリング対象疾患
   麻酔方法
   記録方法
  三叉神経(V)
   神経機能とモニタリング
   モニタリング対象疾患
   麻酔方法
   記録方法
  顔面神経(VII)
   神経機能とモニタリング
   モニタリング対象疾患
   麻酔方法
   記録方法
  聴神経(VIII)
   神経機能とモニタリング
   モニタリング対象疾患
   麻酔方法
   記録方法
  舌咽・迷走神経(IX・X)
   神経機能とモニタリング
   モニタリング対象疾患
   麻酔方法
   記録方法
  舌下神経(XII)
   神経機能とモニタリング
   モニタリング対象疾患
   麻酔方法
   記録方法

基底核機能的手術のための微小電極記録 小林一太,片山容一
  細胞外で記録できる電位
  用いる機器・電極・記録システム
  マイクロレコーディングによるターゲットの同定
   視床下核(subthalamic nucleus:STN)
   視床
   淡蒼球内節(internal segment of globus pallidus:GPi)
   Subthalamic area(SA)
  術中刺激によるターゲットの確認
   刺激による症状改善効果の評価
   刺激による副作用の評価
  同時マルチトラック記録法

III.脳幹・基底核・小脳の手術
基底核の手術
基底核部の脳動静脈奇形に対する手術 山田和雄,谷川元紀
  治療方針の決定
  正中からのアプローチ
   Transcallosal approachによる側脳室脈絡叢AVMの摘出術
   第三脳室内(視床内側部)のAVMに対するtranscallosal approach
   視床枕(pulvinar)のAVMに対するposterior interhemispheric approach
   Posterior interhemispheric parasplenial approachによる側脳室三角部病変へのアプローチ
  外側からのアプローチ
   基底核部(皮殻部)AVMに対するtrans-sylvian approach
   Radiosurgeryの適応について

機能的疾患に対する定位脳手術 大島秀規,片山容一
  定位脳手術装置
  手術目標部位の設定
   目標部位の設定
   画像誘導定位脳手術支援装置による電極刺入経路のシミュレーション
  パーキンソン病に対する視床下核の脳深部刺激電極留置術

脳幹,小脳および後頭蓋窩・頭蓋底の手術
中脳および橋・延髄腫瘍に対する手術 渡邉学郎,片山容一
  脳幹部海綿状血管腫の適応病態と手術戦略
  中脳へのアプローチ
   背側病変
   Occipital transtentorial approach
   Infratentorial supracerebellar approach
  腹側病変へのアプローチ
  橋・延髄へのアプローチ
   背側病変
   腹側〜側面病変

小脳腫瘍に対する手術 五味 玲
  小脳病変の局在と手術アプローチ
  小脳虫部・第四脳室内腫瘍(髄芽腫)の摘出
   手術の重要なコンセプト
   術前計画
   体位と術者の位置
   髄液ドレナージ
   皮膚切開から開頭まで
   手術に必要な局所解剖
   手術の進め方
  小脳半球腫瘍の摘出
   手術のコンセプト
   術前計画
   腫瘍の種類とそれぞれの手術のポイント

椎骨・脳底動脈系の脳動脈瘤に対する手術 幸治孝裕,久保慶高,小笠原邦昭
  脳底動脈遠位部動脈瘤の手術
   Transsylvian approach
   Subtemporal approach
  椎骨動脈瘤の手術
   適応
   開頭およびアプローチ法
  解離性動脈瘤の手術
   適応
   開頭およびアプローチ法
  おわりに

椎骨・脳底動脈系の動脈瘤・動脈解離に対する血管内治療 須磨 健,渋谷 肇,片山容一
  椎骨脳底動脈の発生
  椎骨動脈の解剖
  脳底動脈の解剖
  椎骨脳底動脈瘤に対する適応
  血管内治療における椎骨脳底動脈瘤の部位別特徴
   脳底動脈分岐部動脈瘤
   脳底動脈上小脳動脈分岐部動脈瘤
   椎骨動脈後下小脳動脈分岐部動脈瘤
   脳動脈解離
  治療の実際
   周術期管理
   瘤内塞栓術
   動脈解離に対する塞栓術

脳幹・小脳の脳動静脈奇形に対する手術 地藤純哉,横井俊浩,中澤拓也,野崎和彦
  後頭蓋窩AVMのnatural history
  治療方針の決定
   外科治療の適応
   Radiosurgeryの適応
   手術に必要な局所解剖
  手術計画
   術前評価
   術中モニタリング
   開頭,アプローチ,摘出操作について

三叉神経痛・顔面痙攣に対するMicrovascular decompression 藤巻高光
  体位
  三叉神経痛,顔面痙攣の手術に必要な頭蓋外外科解剖
  硬膜切開から三叉神経へのアプローチ
   三叉神経周囲の検討
  硬膜切開から顔面神経へのアプローチ
   椎骨動脈以外の圧迫による場合
   椎骨動脈の圧迫による場合
  閉頭

キアリ奇形に対する手術 師田信人,荻原英樹
  キアリ奇形概論(分類・定義)
  キアリ奇形1型
   手術適応
   術前評価
   術中神経生理学的モニタリング
   術式の選択:乳児・幼児期前半 vs. 幼児期後半以降
   手術の実際
  キアリ奇形2型
   手術適応
   術前評価
   手術
  まとめ
全文表示する
閉じる

会員登録されている方

メールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。

注)共有パソコンの方はチェックを外してください。

会員登録されていない方

会員登録されると次回からお客様情報をご入力いただく必要がありません。
また,購入履歴の確認ができる便利な機能がご利用いただけます。

個人情報の取り扱いについてはこちら