IBD(炎症性腸疾患)を究める

IBD(炎症性腸疾患)を究める

■編集 渡辺 守

定価 8,800円(税込) (本体8,000円+税)
  • B5判  304ページ  2色(一部カラー)
  • 2011年10月21日刊行
  • ISBN978-4-7583-1172-4

炎症性腸疾患を究めるならこの1冊!

IBD(炎症性腸疾患)は潰瘍性大腸炎,クローン病の二疾患からなる。長期に下痢や血便などが続き,患者のQOLは著しく低下する。患者数は増えつつあり,食事の欧米化も関連しているとの報告もある。
近年,インフリキシマブなどの分子生物標的治療薬が保険承認される等,薬物の開発は目覚ましく,また白血球除去療法など効果的な治療法も出てきた。本書ではこれらの最新の知見を踏まえ,IBD診療のすべてを解説した。


序文

はじめに

 炎症性腸疾患(IBD)は,これまで日本においては比較的稀な疾患と考えられ,厚生労働省難治性疾患,いわゆる難病に指定されている。しかしながら,近年,患者数は増加の一途をたどり,2009年度特定疾患医療受給者証交付件数で,潰瘍性大腸炎12万人,クローン病3万人,合わせて15万人に達している。これは専門医のみで対応できる患者数を遙かに超えており,今やIBDを専門としない消化器内科医,消化器外科医,一般内科医,さらには研修医の先生も患者さんを診ざるを得ない時代に入っている。

 IBDを診療する上での最近の話題は,過去25年間ほとんど変化がなかったIBDに対する治療の考え方が,この5年間で劇的に変わってきたことである。最も重要なものは,「粘膜治癒」,即ち「潰瘍を治すことが病気の再燃を防ぐ上で大切だ」という考え方の導入である。IBDの治療は,これまでは症状を改善すれば良いという臨床的効果のみを考えていた。この考え方が大きく変わりはじめており,再発予防には内視鏡的に良くする「粘膜治癒」が必要であることがわかってきた。これは「治療目標」の劇的な変化であり,初めて,炎症性腸疾患のnatural historyが変えられ,早く強力に治療すれば完全治癒させる可能性があるのでは,という考え方に繋がっている。

 このような内科的薬物療法の進歩を考えると,IBDは本当に治りにくい病気なのであろうか。IBDは確かに慢性・原因不明・根治療法がないが,これは他のほとんどの病気,生活習慣病も同じである。患者の70%以上は「適切な現在の」内科的および外科的治療で,寛解に導けることが示されている。またIBDは難治例に対しても,最近の病気の仕組み解明の研究成果が直接,治療法に結び付いてきた数少ない疾患である。将来,完全治癒が期待できる可能性がある病気であることを理解して戴きたい。

 しかし,IBDの実際の診療に当たっては大きな問題点が残されていた。日本においてもこの5年間,新しい薬物療法が次々に登場し,色々な雑誌,単行本はもとより,診療ガイドラインさえ,発刊される時期には既に改訂が必要なくらい,変化してきたからである。幸い,その流れは一段落し,これから3年は今の治療が最新治療となる。またこの10年,常に新しい話題を提供してきた基礎研究も一段落した感があり,病態解明および新規治療法に直結する成果は限定的になってきた。その今の時期に「タイミングよく」発刊された本書は,IBDの診療に関係する可能性のある全ての医師,医学生,医療関係者にとって役立つものとなると考えている。しかも,本書はIBD専門医を対象としてIBDの全てを詳細に書いて戴いているが,IBDを専門としない先生にとっても,新しい情報を与えている点で,これまでの本とは一線を画している。

 本書の作成にあたっては,私が班長をさせて戴いている厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班の分担研究者,および研究協力者の多くの先生にご尽力戴いた。いずれも今後,日本のIBD臨床,研究をリードすべき先生がその情熱を傾けて書かれたもので,まさに「IBDがここに究まった」書籍と誇れる書になったと確信している。私の恩師である班会議の前班長の慶應義塾大学消化器内科日比紀文教授から脈々と流れ続けてきた日本における世界標準を越えた病態解明と,世界標準となった治療の集大成として,熟読して戴ければ幸いである。

 最後になるが,本書の刊行にあたり,ご尽力を戴いたメジカルビュー社編集部のスタッフの方々,殊に宮澤進氏に深謝致したい。特別な思いが詰まった本書を,IBD診療に役立てて戴ければこれ以上の幸せはない。

2011年9月

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科消化器病態学
教授 渡辺 守
全文表示する

目次

I.炎症性腸疾患の疫学
 罹患率,有病率,家族内発症  桑原絵里加,朝倉敬子,武林 亨
 長期予後  檜沢一興,飯田三雄

II.炎症性腸疾患の病因・病態
 疾患関連遺伝子  木内喜孝
 環境因子  光山慶一
 腸内細菌  安藤 朗
 腸管免疫  金井隆典
 組織修復・再生  那須野正尚,有村佳昭,今井浩三

III.炎症性腸疾患の診断
 潰瘍性大腸炎
  診断基準と重症度  松井敏幸
  内視鏡診断  岩男 泰
 クローン病
  診断基準と重症度  藤谷幹浩,高後 裕
  大腸内視鏡  藤岡 審,松本主之
  小腸内視鏡(バルーン内視鏡・カプセル内視鏡)  渡辺憲治,山上博一,荒川哲男
  他の画像診断法(CT,MRI,腹部超音波)  玄 世鋒
 潰瘍性大腸炎・クローン病の鑑別疾患  大川清孝,上田 渉,青木哲哉
 炎症性腸疾患の病理診断  田中正則
 炎症性腸疾患診断に有用なバイオマーカー  上野義隆,田中信治,茶山一彰

IV.炎症性腸疾患の内科的治療
 潰瘍性大腸炎治療(総論)  松本譽之
 クローン病治療(総論)  鈴木康夫
 各治療法
  5-ASA製剤  長沼 誠,渡辺 守
  栄養療法  辻川知之
  ステロイド  長堀正和
  免疫調節薬(6MP/AZA)  本谷 聡,山下真幸,田中浩紀,今村哲理
  シクロスポリン・タクロリムス  仲瀬裕志,松浦 稔,千葉 勉
  血球成分除去療法  福永 健,松本譽之
  抗TNFα製剤(インフリキシマブ/アダリムマブ)  伊藤裕章
  現在開発中の治療法  久松理一
 治療指針(コンセンサス/ガイドライン)  井上 詠,岩男 泰,日比紀文
 内視鏡的バルーン拡張術  砂田圭二郎,山本博徳

V.炎症性腸疾患の外科的治療
 潰瘍性大腸炎に対する外科治療  杉田 昭,小金井一隆,木村英明
 クローン病の外科的治療  渡辺和宏,小川 仁,佐々木 巌
 クローン病肛門病変に対する外科治療  二見喜太郎,東 大二郎
 pouchitisの診断と治療法  池内浩基,内野 基,松岡宏樹

VI.炎症性腸疾患に伴う合併症
 腸管外合併症  石黒 陽,櫻庭裕丈,福田眞作
 炎症性腸疾患に合併する感染症  岡崎和一,栗島亜希子,大宮美香
 炎症性腸疾患における発癌機構とサーベイランス  端山 軍,松田 圭二,渡邉 聡明

VIII.炎症性腸疾患患者の管理の実際
 妊娠を希望する患者  国崎 玲子,高橋恒男
 小児  余田 篤
 高齢者  高本 俊介,三浦総一郎
 食事および生活指導  山本章二朗,三池 忠,山路卓巳
 アメリカにおける炎症性腸疾患治療の実際  桜庭 篤
全文表示する