視神経乳頭・視野でみる
緑内障確定診断
定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
- B5変型判 168ページ オールカラー,写真280点
- 2015年8月24日刊行
- ISBN978-4-7583-1097-0
在庫僅少です。
電子版
序文
緑内障の臨床所見の特徴は,一言でいえば「緑内障性視神経症とそれに対応する視野変化」につきる。緑内障性視神経症(Glaucomatous Optic Neuropathy;GON)を引き起こす第一の原因は個々人の健常眼圧を超える眼圧で,これによって視神経乳頭の篩状板は後方へ彎曲し,篩状板において網膜神経線維(網膜神経節細胞の軸索)が周囲のグリアなどの支持組織や血管組織とともに障害され,軸索輸送障害などが起こり網膜神経節細胞の細胞死をきたすと考えられている。そして,網膜神経線維が進行性に脱落し,特徴的な視神経乳頭陥凹の拡大(乳頭縁の菲薄化)や網膜神経線維層欠損が生じる。これがGONの病態(構造異常)であり,その結果GONの機能異常として緑内障性視野欠損(鼻側階段,Bjerrum暗点など)を生ずる。
今や光干渉断層計(OCT)は日本全国津々浦々に普及し,緑内障や網膜硝子体疾患の補助診断に,必要不可欠な機器である。眼科医が緑内障を疑い患者さんを診察するときに,前眼部,隅角の検査,眼圧測定はもちろんのこと,まず視神経乳頭の緑内障性変化や網膜神経線維層欠損などを評価するために眼底検査にて眼底所見を確認するとともに,さらに詳細に構造異常をみるためにOCT検査を施行する。そして眼底所見に対応する視野欠損がないか視野検査を行って確定診断に至るのが緑内障診断の手順である。そこで,本書では現状での一般眼科医が緑内障確定診断に至る過程に即した内容を企画し,全国の緑内障専門家に執筆を依頼した。すなわち,視神経乳頭の眼底写真,OCT画像と視野検査所見から緑内障確定診断に至る思考過程を症例ごとに見開き2ページにまとめ,明日からの診察にすぐ役立つ緑内障診断の手引き書を企画した。従来の教科書のように緑内障の病型別(たとえば,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,原発閉塞隅角緑内障……)に項目を並べるのではなく,実際の臨床で患者さんを診るように,視神経乳頭の見え方・特徴で分類して本書を構成した。
今後も緑内障患者数が増加することは容易に推測でき,緑内障患者を見落とさないことや,類似する網膜硝子体患や視神経疾患との鑑別が重要となる。正確な診断を行い,的確な治療方法で患者さんのクオリティオブビジョン(QOV)を守ることこそ眼科医の使命であるが,本書がその手助けとなることを願っている。
2015年7月
杉山和久
富田剛司
今や光干渉断層計(OCT)は日本全国津々浦々に普及し,緑内障や網膜硝子体疾患の補助診断に,必要不可欠な機器である。眼科医が緑内障を疑い患者さんを診察するときに,前眼部,隅角の検査,眼圧測定はもちろんのこと,まず視神経乳頭の緑内障性変化や網膜神経線維層欠損などを評価するために眼底検査にて眼底所見を確認するとともに,さらに詳細に構造異常をみるためにOCT検査を施行する。そして眼底所見に対応する視野欠損がないか視野検査を行って確定診断に至るのが緑内障診断の手順である。そこで,本書では現状での一般眼科医が緑内障確定診断に至る過程に即した内容を企画し,全国の緑内障専門家に執筆を依頼した。すなわち,視神経乳頭の眼底写真,OCT画像と視野検査所見から緑内障確定診断に至る思考過程を症例ごとに見開き2ページにまとめ,明日からの診察にすぐ役立つ緑内障診断の手引き書を企画した。従来の教科書のように緑内障の病型別(たとえば,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,原発閉塞隅角緑内障……)に項目を並べるのではなく,実際の臨床で患者さんを診るように,視神経乳頭の見え方・特徴で分類して本書を構成した。
今後も緑内障患者数が増加することは容易に推測でき,緑内障患者を見落とさないことや,類似する網膜硝子体患や視神経疾患との鑑別が重要となる。正確な診断を行い,的確な治療方法で患者さんのクオリティオブビジョン(QOV)を守ることこそ眼科医の使命であるが,本書がその手助けとなることを願っている。
2015年7月
杉山和久
富田剛司
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目次
緑内障診断に関する主な略語一覧
巻頭言 緑内障診断における眼底検査の意義
1.視神経乳頭・眼底を診るための観察法
平面観察と立体観察の違い
画像解析ソフトを活用する
光干渉断層法(OCT)を活用する
OCTの原理
OCTで何を診るのか,何が見られるのか
OCTのピットフォール
[付録]眼底観察の器具とその特徴
[付録]各社OCTの特徴—OCT性能比較表
2.緑内障を診断するための視野読影
Humphrey視野計プリントアウトの読み方—単一視野解析の読み方
Octopus視野計プリントアウトの読み方
コーワ視野計プリントアウトの読み方
自動視野計の扱い方,とり方
緑内障性視野欠損の特徴
網膜神経線維の走行と視野欠損部位の関連
緑内障と紛らわしい視野欠損を生じる病態・疾患
アーチファクトによる視野欠損
3.緑内障性視神経症の臨床診断
視神経乳頭の形状
視神経乳頭の成り立ち
小さい乳頭
大きい乳頭
傾斜乳頭,近視乳頭
目視判断とOCTによる乳頭縁判定の違い
視神経乳頭陥凹の形状
緑内障性乳頭陥凹の成立機序
乳頭陥凹の拡大パターン
乳頭蒼白部(pallor)と陥凹の違い
血管の鼻側偏位
全体拡大型(generalized enlargement of the optic cup)の陥凹
局所虚血型(focal ischemic discs)の陥凹
近視性(型)緑内障乳頭(myopic glaucomatous discs)の陥凹
加齢性硬化型乳頭(senile sclerotic discs)の陥凹
緑内障以外の乳頭陥凹拡大—虚血性変化後
緑内障以外の乳頭陥凹拡大—視神経部分低形成
緑内障以外の乳頭陥凹拡大—その他の視神経症
視神経乳頭辺縁部(リム)の形状
リムの菲薄化(皿状化)
リムの切痕(ノッチング)
下掘れ,bayoneting
小さい乳頭に生じたリム萎縮
大きい乳頭に生じたリム萎縮
近視型乳頭で生じるリム萎縮
最強度近視で生じるリム部の変化
網膜神経線維層(RNFL)の変化
正常眼のRNFL
緑内障眼でみられるNFLD
非緑内障性変化でみられるNFLD
紋理状眼底におけるNFLD
乳頭黄斑線維束における緑内障性変化
視神経乳頭出血(DH)
DHとNFLDとの関連
DHが出現する部位
DHと視野障害進行の関連
緑内障病型とDHの頻度との関係
乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)
α-PPA,β-PPA,γ-PPAとはどこを言うのか
PPAの進行と視野進行の関連
近視性コーヌスと緑内障で生じるPPAの違い
近視眼緑内障の特徴
視神経乳頭の傾斜,回旋,Ovality indexなど
OCT緑内障と拡大率補正,強度近視データベース
視野の特徴
緑内障の診断に苦慮した例
巻頭言 緑内障診断における眼底検査の意義
1.視神経乳頭・眼底を診るための観察法
平面観察と立体観察の違い
画像解析ソフトを活用する
光干渉断層法(OCT)を活用する
OCTの原理
OCTで何を診るのか,何が見られるのか
OCTのピットフォール
[付録]眼底観察の器具とその特徴
[付録]各社OCTの特徴—OCT性能比較表
2.緑内障を診断するための視野読影
Humphrey視野計プリントアウトの読み方—単一視野解析の読み方
Octopus視野計プリントアウトの読み方
コーワ視野計プリントアウトの読み方
自動視野計の扱い方,とり方
緑内障性視野欠損の特徴
網膜神経線維の走行と視野欠損部位の関連
緑内障と紛らわしい視野欠損を生じる病態・疾患
アーチファクトによる視野欠損
3.緑内障性視神経症の臨床診断
視神経乳頭の形状
視神経乳頭の成り立ち
小さい乳頭
大きい乳頭
傾斜乳頭,近視乳頭
目視判断とOCTによる乳頭縁判定の違い
視神経乳頭陥凹の形状
緑内障性乳頭陥凹の成立機序
乳頭陥凹の拡大パターン
乳頭蒼白部(pallor)と陥凹の違い
血管の鼻側偏位
全体拡大型(generalized enlargement of the optic cup)の陥凹
局所虚血型(focal ischemic discs)の陥凹
近視性(型)緑内障乳頭(myopic glaucomatous discs)の陥凹
加齢性硬化型乳頭(senile sclerotic discs)の陥凹
緑内障以外の乳頭陥凹拡大—虚血性変化後
緑内障以外の乳頭陥凹拡大—視神経部分低形成
緑内障以外の乳頭陥凹拡大—その他の視神経症
視神経乳頭辺縁部(リム)の形状
リムの菲薄化(皿状化)
リムの切痕(ノッチング)
下掘れ,bayoneting
小さい乳頭に生じたリム萎縮
大きい乳頭に生じたリム萎縮
近視型乳頭で生じるリム萎縮
最強度近視で生じるリム部の変化
網膜神経線維層(RNFL)の変化
正常眼のRNFL
緑内障眼でみられるNFLD
非緑内障性変化でみられるNFLD
紋理状眼底におけるNFLD
乳頭黄斑線維束における緑内障性変化
視神経乳頭出血(DH)
DHとNFLDとの関連
DHが出現する部位
DHと視野障害進行の関連
緑内障病型とDHの頻度との関係
乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)
α-PPA,β-PPA,γ-PPAとはどこを言うのか
PPAの進行と視野進行の関連
近視性コーヌスと緑内障で生じるPPAの違い
近視眼緑内障の特徴
視神経乳頭の傾斜,回旋,Ovality indexなど
OCT緑内障と拡大率補正,強度近視データベース
視野の特徴
緑内障の診断に苦慮した例
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緑内障を確実に診断するため,乳頭・視野・OCTを正確に読み取る診断ポイントを明らかにした書
緑内障の視神経乳頭は,面積・陥凹・リムなどの形状,網膜神経線維層の変化,視神経乳頭出血の部位,乳頭周囲脈絡網膜萎縮の状態など多種多様な病状,病型を呈している。いまでは視野やOCTなど診断機器の精度があがり,乳頭所見と結果を組み合わせることで,正確な診断を行うことが可能となっている。しかし,正確に所見の特徴をみつけるためには検査結果を読み取るコツやポイントがあり,それを理解することが重要である。
本書は乳頭の形状の特徴ごとに項目を組み立て,数多くのバリエーションで掲載。乳頭とともに視野,OCT所見も組み合わせて呈示,その画像1つ1つにコツやポイント付記し,緑内障診療経験の少ない初心者でも病巣を見逃さないための手引書となっている。