ゼロからマスター

手・肘の鏡視下手術

手・肘の鏡視下手術

■著者 中村 俊康

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • B5判  200ページ  オールカラー,イラスト180点,写真300点
  • 2010年5月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-1033-8

電子版


手関節鏡・肘関節鏡の手術をゼロから知るならこの1冊

「ゼロからマスター肩の鏡視下手術」「ゼロからマスター膝の鏡視下手術」に続く第3弾。最小侵襲手術の筆頭にあげられる鏡視下手術は手関節・肘関節の領域でも適応が広がってきているのが現状で,若手整形外科医の注目度は高い。本書では,この分野の最前線で活躍している著者による鏡視下手術のノウハウが,鮮明な鏡視像とダイナミックなイラストとともに解説されている。必要最小限のポータルを駆使しながら関節鏡と各種器具を使いこなすことで,病変部を的確に処理していく著者の手技が理解できる構成になっている。〈基本操作〉〈ひと言〉〈トラブル発生!〉など,本手技をゼロからマスターしたい読者の琴線に触れる内容も随時掲載されている。本手術に取り組んでいるドクターはもちろん,取り組もうとしている若手ドクターにも見ていただきたい1冊である。


序文

 本書は手関節鏡と肘関節鏡の手技とそれから派生した鏡視下手術手技書です。手関節鏡と聞いて,そんな狭いところに関節鏡など入るのであろうか,と思った人は多いと思います。また,肘関節鏡と聞いて,周囲を神経に囲まれているじゃないか,そんな危険なところに関節鏡が入るのであろうかと思われた方もたくさんいらっしゃると思います。そんな分野でも少しずつ進歩し,安全に手術が行なわれるようになってきています。私の20年ほどの臨床経験やつかんできたコツをふんだんに盛り込んだ手術入門書が本書です。
 手関節鏡や肘関節鏡視下手術をうまく行う最大のコツ,それは「平面の画面を見て,立体的な感覚をつかむこと」です。テレビゲームの利用は最高だと思います。また,関節鏡の扱い方は膝関節鏡でつかんでください。膝は手関節や肘関節と比較して非常に大きく,操作がしやすいうえ,最も大事な指導者がたくさんいます。手関節鏡や肘関節鏡の問題は指導者が少ないことです。本当のことを言うと,最大のコツは「指導者をつかまえること」だと思います。近くに指導者がいない場合には遠くまで出かける必要があります。本書を読んで,見よう見まねで手術するのはちょっとやめてほしいと思います。最初は是非とも経験者に習ってください。
 私が最初に手関節鏡に触れたのは卒後4年目のことです。専門として考えていた三角線維軟骨複合体(TFCC)の治療を行ううえで,手関節鏡はすでに必須の検査・治療器機でしたが,周辺ではだれもできる人がいませんでした。そこで,慶應大学関連で唯一手関節鏡を行っていた佐々木 孝先生を尋ね,遠位橈尺関節脱臼の鏡視下整復手術に入らせていただき,手関節鏡手技を見て,盗んできました。大学で翌月に早速,手関節鏡視下TFCC部分切除術を行ったのですが,最初は試行錯誤でした。その後,アメリカのカダバーワークショップに出かけ,Dr Whippleに手関節鏡を,Dr Phoelingに肘関節鏡のやり方を教わり,大きく技術が変化しました。よく考えてみると,当時の世界最高のArthroscopistに関節鏡のいろはを習ったことは大変良かったと思います。本書の基本手技のほとんどはこのときに彼らに習ったものです。その後,私の手関節鏡はガラパゴス的な進歩をしていたのですが,日本手の外科学会—香港手の外科学会交換フェローシップに選ばれ,香港に行ったことで私の手関節鏡視下手術手技は大きく変わりました。現在も非常に仲の良い世界最高のwrist arthroscopistであるDr PC Hoと出会ったからです。ここで世界標準を知りました。また,自分の技術が彼らとそう遜色ないことも知りました。その後,Dr Mathoulin,Dr Pegoli,Dr Luchetti,Dr del Pinãlらヨーロッパ手関節鏡学会(EWAS)の面々と知己になりました。本書の応用手術は彼らとの意見交換の末に編み出してきたものです(一部は彼らのoriginalです)。
 世界一の内視鏡教育システムを持っているのはフランスです。ストラスブール大学内に鏡視下手術を専門に教える施設があります。手関節鏡のコースはEWASの管理で行われ,フレッシュカダバーを用いた手関節鏡のコースを年に2回行っています。2年前に台湾の台中にAsia版の内視鏡センターができました。現在EWASではこのアジアでの手関節鏡視下手術のコースを年2回行っています。私も参加しており,日本人の参加を募集しています。日本にこのような施設や教育システムがあれば最高ですが,ないものはしょうがないので,現時点では台中を現実的な選択肢としてお勧めします。また,香港にも手関節鏡のコースがあります。私が手関節鏡・肘関節鏡を始めたときと比較して,環境が整備されてきています。後は皆さんのやる気次第です。
 本書の出版社であるメジカルビュー社の担当である藤原琢也さん,松原かおるさんには何度も大学まで足を運んでもらって大変感謝しています。なかなか締め切りを守らない漫画家と泊り込んで書かせようとする編集者の関係って,きっとこうなんだと改めて感じ入っています。書き始め,書いている途中,終わりに差し掛かったあたりで何度も体調を崩し,くじけそうになりましたが,お二人の励ましで何とか書き上げることができました。イラストレーターの佐藤道範さんが描いてくれた大変きれいなイラストは感動的です。このイラストがなかったら,この本のお話は受けなかったと思います。また,肩の鏡視下手術の著者である中川照彦先生には「いや〜,結構大変だよ」と暖かく励ましていただきました。ありがとうございました。
 本書を読んで,すこしでも皆様の手関節鏡・肘関節鏡のスキルが上がり,患者さんの利益になれば幸いです。

平成22年4月  中村俊康
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目次

■必修!基本事項
基本手術機器
 開節鏡,CCDカメラおよびモニター
 潅流ポンプ
 シェーバー類
 高周波電気蒸散機器(radio frequency device)
 鏡視下手術機器
手術室でのセットアップ
 手関節鏡のセットアップ  
   1 仰臥位
   2 消毒
   3 点滴架台の設置
   4 手の牽引
   5 各種機器のコード,チューブの設置
   6 各種機器の配置
 肘関節鏡のセットアップ  
   1 側臥位の保持
   2 上肢の設置
   3 消毒
   4 ドレーピング
   5 三角ポーチの貼付
   6 前腕への弾性包帯
   7 各種機器のコード,チューブの設置
   8 各種機器の配置
  
■ 実践!手関節の鏡視下手術  
 手関節のポータル作製
 ◆橈骨手根関節鏡視
  3-4ポータルの作製
   1 刺入部と刺入角度の確認
   2 生理食塩水の注入
   3 外套管の挿入
   4 関節鏡の挿入
   4-5ポータルまたは6Rポータルの作製
   1 刺入部の確認
   2 曲がりモスキートペアン鉗子および外套管の挿入
   3 プローブの挿入
 ◆手根中央関節鏡視
  MCR(midcarpal radial)ポータル作製
   1 刺入部と刺入角度の確認
   2 生理食塩水の注入
   3 外套管および関節鏡の挿入
   MCU(midcarpal ulnar)ポータルの作製
   1 刺入部の確認
   2 外套管の挿入
   3 プローブの挿入
 ◆遠位橈尺関節鏡視
  DRUJ(distal radioulnar joint)ポータル作製
   1 刺入部と刺入角度の確認
   2 生理食塩水の注入
   3 曲がりモスキートペアン鉗子の挿入
   4 外套管および関節鏡の挿入
   5 ワーキングポータルの作製
 手関節鏡視の基本手技
 ◆撓骨手根関節鏡視
  3-4ポータルからの鏡視  
   1 関節鏡の挿入 
   2 撓側の鏡視  
   3 尺側の鏡視 
   4 4-5ポータルからの触診 
   4−5ポータルからの鏡視 
   1 関節鏡の挿入 
   2 尺側の鏡視 
 ◆手根中央関節鏡視
  MCRポータルからの鏡視  
   1 関節鏡の挿入 
   2 撓上方の鏡視 
   3 尺側の鏡視 
   4 背側の鏡視 
   5 最尺側の鏡視 
 ◆遠位撓尺関節鏡視(DRUJ)鏡視
  DRUJポータルからの鏡視 
   1 関節鏡の挿入と尺骨小窩の鏡視
   2 撓側からの下方の鏡視
 TFCC損傷に対する鏡視下部分切除術 
 ◆手術器具 
 ◆手術手技 
   1 セッティング 
   2 3-4ポータルからの鏡視 
   3 TFC(線維軟骨部)の部分切除  
 手関節TFCC橈側大断裂損傷に対する鏡視下縫合術 
 ◆手術器具 
 ◆手術手技 
   1 セッティング 
   2 鏡視
   3 骨孔の作製
   4 out-side in式縫合
 手関節TFCC尺骨小窩部損傷に対する鏡視下経尺骨縫合術(trans-ulnar suture)
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 鏡視
   3 TFCC小窩部損傷に対する縫合術
 TFCC尺側損傷に対する鏡視下関節包縫合術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 鏡視
  ■TFCC尺側遠位slit損傷・背側slit損傷に対する関節包縫合術
   3 損傷部の確認とマーキング
   4 皮下の展開
   5 糸の縫合
  ■TFCC水平損傷に対する関節包縫合術
   3 糸かけと損傷部の新鮮化
   4 縫合
   5 不安定性の確認
 手関節リウマチに対する鏡視下滑膜切除術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 撓骨手根関節の鏡視
   3 撓骨手根関節の滑膜切除
   4 手根中央関節の滑膜切除
   5 遠位撓尺関節の滑膜切除
 舟状骨月状骨間靱帯損傷に対する鏡視下掻爬,仮固定術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 撓骨手根関節の鏡視
   3 手根中央関節の鏡視
   4 SL靱帯の掻爬
   5 舟状骨月状骨間のK-wireによる仮固定
   6 確認のための鏡視
   7 抜釘の時期
 月状骨三角骨間靱帯損傷に対する鏡視下掻爬,仮固定術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 撓骨手根関節の鏡視
   3 手根中央関節の鏡視
   4 LT靱帯の掻爬
   5 月状骨三角骨間のK-wireによる固定
   6 確認のための鏡視
   7 抜釘の時期
 手根中央不安定症に対する鏡視下滑膜切除術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 橈骨手根関節の鏡視
   3 手根中央関節の鏡視
   4 手根中央関節の滑膜切除
   5 滑膜切除後のシュリンケージ
   6 舟状骨有頭骨間,三角骨有鉤骨間の仮固定
 手関節拘縮に対する鏡視下関節授動術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
  ■橈骨手根関節に生じた中隔による拘縮
   2 橈骨手根関節鏡視による中隔の確認
   3 エレバトリウムとシェーバーによる中隔の切離
  ■橈骨手根関節に生じたfibrosisによる拘縮
   2 月状骨の挙上
   3 橈骨月状骨間靱帯の切離
   4 橈骨手根間靱帯の剥離
  ■手根中央関節に生じたfibrosisによる拘縮
   2 有頭骨舟状骨間の授動
 橈骨遠位端関節内骨折に対する鏡視下整復-内固定術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 橈骨の整復
   3 鏡視下による整復
   4 関節面の固定
   5 最終的な固定
■実践!肘関節の鏡視下手術
 肘関節のポータル作製
 ◆ 前方鏡視
  前内側ポータルの作製
   1 刺入部と刺入角度の確認
   2 生理食塩水の注入
   3 前内側ポータルの作製
   4 外套管の挿入
   5 関節鏡の挿入
  前外側ポータルの作製
   1 刺入部の確認
   2 外套管およびK-wireの挿入
   3 K-wireの挿入
   4 プローブの挿入
 ◆ 後方鏡視
  後外側ポータル作製
   1 刺入部と刺入角度の確認
   2 生理食塩水の注入
   3 外套管および関節鏡の挿入
  補助ポータルの作製
   1 刺入部の確認
   2 外套管の挿入
   3 プローブの挿入
   4 その他の補助ポータル
 肘関節鏡視の基本手技
 ◆ 前内鏡視
  前内側からの鏡視
   1 関節鏡の挿入〜橈骨頭の確認
   2 K-wireの刺入
   3 プローブの挿入
 ◆ 後方鏡視
  後外側からの鏡視
   1 関節鏡の挿入〜橈骨頭の確認
   2 補助ポータルの作製
 肘関節内遊離体に対する鏡視下摘除術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 関節内遊離体の確認
   3 前方鏡視
   4 前方鏡視による遊離体の切除
   5 後方鏡視のための補助ポータルの作製
   6 後方鏡視
   7 後方鏡視による遊離体の摘除
 肘関節リウマチ,肘関節炎に対する鏡視下滑膜切除術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 前方鏡視
   3 前方滑膜切除
   4 後方鏡視および後方滑膜切除
 上腕骨外上顆炎に対する鏡視下短橈側手根伸筋腱腱膜切除術
 ◆手術器具
 ◆手術手技
   1 セッティング
   2 前方鏡視
   3 短撓側手根伸筋腱(ECRB)腱膜の切除
   4 後方鏡視および後方滑膜ヒダの切除
  
  索引
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