実践型鼓膜所見マニュアル
鼓膜を読む
定価 4,400円(税込) (本体4,000円+税)
- A5変型判 104ページ オールカラー,写真550点
- 2007年10月19日刊行
- ISBN978-4-7583-0860-1
序文
小児急性中耳炎の鼓膜所見を硬性鼓膜鏡を用いて詳細に観察し,その画像をファイリング,時系列で比較検討することでその情報が極めて高度なレベルのものとなりました。これらのデータを急性中耳炎の診断と治療に役立てていただきたいと思い,2005年「内視鏡画像による急性中耳炎・鼓膜アトラス」を刊行しました。
今回この「鼓膜を読む」を発刊した理由は,急性中耳炎の鼓膜所見から何を得て,そしてどこまで推測し,治療に役立てるかということです。
ATOMS(次頁)は和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科教授 山中 昇先生を中心として組織されている急性中耳炎に対する新しい研究グループであり,現在このグループに参加しています。ATOMSに依頼した中耳貯留液の起炎菌検索ではPBP変異,β-lactamase検索,マクロライド耐性検索,各種抗菌薬MIC,ウイルス検索結果を受けることができ,私の診療精度が向上しました。このこととOtoLAM(炭酸ガスレーザー鼓膜切開)による無血的鼓膜切開後の粘膜所見を組み合わせることで,私自身の鼓膜病態と粘膜病態に対する考えが飛躍的に進歩しました。
次に対象範囲を中耳疾患全般に広げ,さらなる情報の提供を意図しました。とくに長い時間軸の中で変化する難治性滲出性中耳炎の鼓膜変化や,弛緩部型真珠腫の形成過程などは珍しいものと思います。これらについては本書を監修いただいている東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科教授 森山 寛先生が第105回日本耳鼻咽喉科学会総会(2004年)において発表された宿題報告「中耳真珠腫の病態と治療」の際に私も協力させていただき,掲載された内容であります。
また,近年の航空機利用の増加,レジャーとしてのスキューバダイビングの普及に伴う気圧性中耳炎のトラブルもよく遭遇するようになりましたので,耳管機能に深く関わっている山口展正先生,スキューバダイビングのインストラクター免許をお持ちの三保 仁先生に執筆をお願いしました。
鼓膜は何を語り,何を伝えようとしているのか。
我々はどこまでそれを読み取れるのか。
前回以上の情報を皆様に提供できることを祈念します。
2007年9月
上出洋介
今回この「鼓膜を読む」を発刊した理由は,急性中耳炎の鼓膜所見から何を得て,そしてどこまで推測し,治療に役立てるかということです。
ATOMS(次頁)は和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科教授 山中 昇先生を中心として組織されている急性中耳炎に対する新しい研究グループであり,現在このグループに参加しています。ATOMSに依頼した中耳貯留液の起炎菌検索ではPBP変異,β-lactamase検索,マクロライド耐性検索,各種抗菌薬MIC,ウイルス検索結果を受けることができ,私の診療精度が向上しました。このこととOtoLAM(炭酸ガスレーザー鼓膜切開)による無血的鼓膜切開後の粘膜所見を組み合わせることで,私自身の鼓膜病態と粘膜病態に対する考えが飛躍的に進歩しました。
次に対象範囲を中耳疾患全般に広げ,さらなる情報の提供を意図しました。とくに長い時間軸の中で変化する難治性滲出性中耳炎の鼓膜変化や,弛緩部型真珠腫の形成過程などは珍しいものと思います。これらについては本書を監修いただいている東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科教授 森山 寛先生が第105回日本耳鼻咽喉科学会総会(2004年)において発表された宿題報告「中耳真珠腫の病態と治療」の際に私も協力させていただき,掲載された内容であります。
また,近年の航空機利用の増加,レジャーとしてのスキューバダイビングの普及に伴う気圧性中耳炎のトラブルもよく遭遇するようになりましたので,耳管機能に深く関わっている山口展正先生,スキューバダイビングのインストラクター免許をお持ちの三保 仁先生に執筆をお願いしました。
鼓膜は何を語り,何を伝えようとしているのか。
我々はどこまでそれを読み取れるのか。
前回以上の情報を皆様に提供できることを祈念します。
2007年9月
上出洋介
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目次
正常鼓膜所見と中耳炎鼓膜所見 上出洋介
正常鼓膜所見と解剖
用語に関する問題
1 急性中耳炎−単純型・遷延型の見分け方
2 一般的な滲出性中耳炎
3 注意すべき滲出性中耳炎鼓膜所見
Otitis Media Normalization/Improvement(OMNI) cycle 上出洋介
4 OMNI cycle
5 Acute 1,2,3 phase
6 Bulging phase, Bullae
7 Convalescent phase
急性中耳炎−種々の変化 上出洋介
8 単純型(軽症例)
9 単純型(水疱形成例)
10 単純型(乳児例)
11 単純型(乳児例)
12 鼻すすり誘因例
13 中耳炎後期の貯留液2層形成例
14 中耳炎後期の貯留液と中耳粘膜
15 単純型(乳児緩慢進行例)
16 単純型(乳児高度増悪例)
17 口蓋裂を伴った症例の長期観察例
気圧性中耳炎
航空性中耳炎 山口展正
18 アレルギーに上気道感染が加わり飛行
19 耳管開放型を伴った症例
20 小児鼓膜緊張部内陥症例
21 航空性中耳炎の鼓膜を読む
潜水に伴う中耳炎 三保 仁
22 Grade II,III症例
23 Grade IV症例
24 潜水による中耳炎の鼓膜を読む
急性中耳炎と粘膜病態 上出洋介
25 PISP感染初期例
26 PISP感染初期例
27 PISP
28 PRSP感染
29 PRSP感染
30 BLNAR感染
31 BLNAR感染−遷延性
32 中耳粘膜の感染性肉芽様病態
ウイルス・マイコプラズマ感染 上出洋介
33 RSウイルス中耳炎−混合感染
34 RSウイルス中耳炎
35 Human metapneumoウイルス中耳炎
36 Mycoplasma pneumoniae中耳炎
鼓膜弛緩部・鼓膜緊張部の変化 上出洋介
鼓膜弛緩部の変化
37 TosによるShrapnell膜の陥凹の分類
38 リヴィニ切痕の形状から
39 鼓膜弛緩部の変化
40 鼓膜弛緩部の変化
41 滲出性中耳炎から弛緩部型真珠腫形成
鼓膜緊張部の変化
42 穿孔,石灰化
43 切開跡,菲薄化
44 鼓膜瘢痕
その他の外耳道,鼓膜所見 上出洋介
45 サーファーズイヤー,外耳道外骨腫,外耳道真珠腫,鼓膜真菌症,鼓膜肉芽腫症
46 鼓膜損傷
47 Epithelial pear,鼓膜肉芽腫症
中耳真珠腫 上出洋介
48 小児先天性真珠腫
49 自然消失した小児先天性真珠腫
50 その他の先天性真珠腫例
51 後天性真珠腫−一次性真珠腫,二次性真珠腫
正常鼓膜所見と解剖
用語に関する問題
1 急性中耳炎−単純型・遷延型の見分け方
2 一般的な滲出性中耳炎
3 注意すべき滲出性中耳炎鼓膜所見
Otitis Media Normalization/Improvement(OMNI) cycle 上出洋介
4 OMNI cycle
5 Acute 1,2,3 phase
6 Bulging phase, Bullae
7 Convalescent phase
急性中耳炎−種々の変化 上出洋介
8 単純型(軽症例)
9 単純型(水疱形成例)
10 単純型(乳児例)
11 単純型(乳児例)
12 鼻すすり誘因例
13 中耳炎後期の貯留液2層形成例
14 中耳炎後期の貯留液と中耳粘膜
15 単純型(乳児緩慢進行例)
16 単純型(乳児高度増悪例)
17 口蓋裂を伴った症例の長期観察例
気圧性中耳炎
航空性中耳炎 山口展正
18 アレルギーに上気道感染が加わり飛行
19 耳管開放型を伴った症例
20 小児鼓膜緊張部内陥症例
21 航空性中耳炎の鼓膜を読む
潜水に伴う中耳炎 三保 仁
22 Grade II,III症例
23 Grade IV症例
24 潜水による中耳炎の鼓膜を読む
急性中耳炎と粘膜病態 上出洋介
25 PISP感染初期例
26 PISP感染初期例
27 PISP
28 PRSP感染
29 PRSP感染
30 BLNAR感染
31 BLNAR感染−遷延性
32 中耳粘膜の感染性肉芽様病態
ウイルス・マイコプラズマ感染 上出洋介
33 RSウイルス中耳炎−混合感染
34 RSウイルス中耳炎
35 Human metapneumoウイルス中耳炎
36 Mycoplasma pneumoniae中耳炎
鼓膜弛緩部・鼓膜緊張部の変化 上出洋介
鼓膜弛緩部の変化
37 TosによるShrapnell膜の陥凹の分類
38 リヴィニ切痕の形状から
39 鼓膜弛緩部の変化
40 鼓膜弛緩部の変化
41 滲出性中耳炎から弛緩部型真珠腫形成
鼓膜緊張部の変化
42 穿孔,石灰化
43 切開跡,菲薄化
44 鼓膜瘢痕
その他の外耳道,鼓膜所見 上出洋介
45 サーファーズイヤー,外耳道外骨腫,外耳道真珠腫,鼓膜真菌症,鼓膜肉芽腫症
46 鼓膜損傷
47 Epithelial pear,鼓膜肉芽腫症
中耳真珠腫 上出洋介
48 小児先天性真珠腫
49 自然消失した小児先天性真珠腫
50 その他の先天性真珠腫例
51 後天性真珠腫−一次性真珠腫,二次性真珠腫
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鼓膜所見はこう読め! 専門医が教える鼓膜の診かた,治療のポイント
鼓膜に関わる疾患は子供から大人まで日常臨床の場では診る機会が多い。そこではまず鼓膜を見て,必要に応じ他の検査を行ったり治療を開始したりする。鼓膜から何を読み取れるかが重要となる。
本書は一般研修医,小児科医,耳鼻科医を対象とした診療直前の鼓膜を診る実践的マニュアルである。基本的には種々の病態の鼓膜所見を時系列で提示し,所見と対応方法,具体的な治療法を解説する。とくに抗菌薬の適正使用法,鼓膜切開の時期などにも言及し,具体的な薬剤投与の方法などを解説した。