骨盤臨床解剖に基づく
婦人科手術のキーポイント
安全・確実な手術をめざして
定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- B5判 144ページ オールカラー
- 2005年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-0523-5
電子版
序文
産婦人科の手術対象となる臓器は子宮,卵巣,卵管,腟,会陰などの女性の生殖臓器であり,臓器摘出,腫瘍摘出から,機能再建,形成に至るまで,多くの種類の手術がある。
手術のアプローチの仕方で腹式,腟式があり,また手技の相違により開腹手術と腹腔鏡下手術に分けられる。
従来,手術を学び,訓練し,実際に執刀医として独り立ちするまで,大学の先輩から教室の伝統的術式を見て学び,多くの手術経験を必要とした。そのような大学医局体制のもとで長い間手術の指導を受けてきたが,手術のたびに考えていたことは,『手術は結果として完遂されても,この手術に何か問題はなかったか?』『もっと工夫をすれば,出血量を減らせなかったか?』『思いがけない出血を何とか止めたが,出血部位はどこだったか,解剖的に説明できなかった』『骨盤の壁の裏はどうなっているのだろう』などなどの問題であった。
このような疑問に対して,今日まで骨盤の臨床解剖を学び,直腸癌の外科手術に手洗いして入り,学識豊かで技術に優れた手術の指導者から直接,間接にお教えいただいたことを整理してみると,産婦人科手術は名人芸でなく,誰でも受け入れられる,誰にでもできる,合理的で,安全で,確実な方法でなければならないと思われた。
そこで,今日多くの手術書がある中で,あえてこのタイトルの手術書を上梓するに当たり,腟式,腹式と関係なく,腹腔鏡や開腹にも共通な,安全・確実な手術のためには,骨盤臨床解剖の特徴を知って,組織間隙の展開と,集束結紮ではなく,組織や血管の分離結紮,そして摘出臓器の血流をあらかじめ遮断して出血を減らす工夫をすることなどが基本であるという立場に立って,自らが学ぶだけでなく,いかに指導していくかという視点を加えて,本書をまとめてみた。
われわれ産婦人科医は手術を手がけるプロであるだけに,完全な手術を目指して,学ぶものも,指導するものも,ともに本書の趣旨を理解していただき,手術をマスターするうえで参考にしていただきたい。
手術のアプローチの仕方で腹式,腟式があり,また手技の相違により開腹手術と腹腔鏡下手術に分けられる。
従来,手術を学び,訓練し,実際に執刀医として独り立ちするまで,大学の先輩から教室の伝統的術式を見て学び,多くの手術経験を必要とした。そのような大学医局体制のもとで長い間手術の指導を受けてきたが,手術のたびに考えていたことは,『手術は結果として完遂されても,この手術に何か問題はなかったか?』『もっと工夫をすれば,出血量を減らせなかったか?』『思いがけない出血を何とか止めたが,出血部位はどこだったか,解剖的に説明できなかった』『骨盤の壁の裏はどうなっているのだろう』などなどの問題であった。
このような疑問に対して,今日まで骨盤の臨床解剖を学び,直腸癌の外科手術に手洗いして入り,学識豊かで技術に優れた手術の指導者から直接,間接にお教えいただいたことを整理してみると,産婦人科手術は名人芸でなく,誰でも受け入れられる,誰にでもできる,合理的で,安全で,確実な方法でなければならないと思われた。
そこで,今日多くの手術書がある中で,あえてこのタイトルの手術書を上梓するに当たり,腟式,腹式と関係なく,腹腔鏡や開腹にも共通な,安全・確実な手術のためには,骨盤臨床解剖の特徴を知って,組織間隙の展開と,集束結紮ではなく,組織や血管の分離結紮,そして摘出臓器の血流をあらかじめ遮断して出血を減らす工夫をすることなどが基本であるという立場に立って,自らが学ぶだけでなく,いかに指導していくかという視点を加えて,本書をまとめてみた。
われわれ産婦人科医は手術を手がけるプロであるだけに,完全な手術を目指して,学ぶものも,指導するものも,ともに本書の趣旨を理解していただき,手術をマスターするうえで参考にしていただきたい。
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目次
I はじめに
II 安全・確実な手術のための前提条件
1 患者の術前状態の把握−リスク因子の評価ができること
2 合併症患者の術前の評価をしておく
3 麻酔科と他科との緊密な連携をとる
4 術後合併症予防とその早期発見および対策を行う
III 安全確実な手術とは
1 腫瘍学上の安全性
2 確実性
IV 安全・確実な産婦人科手術のトレーニングガイドライン
V 骨盤内手術の基本的指導目標
V-1 骨盤臨床解剖の理解
1 組織間隙の展開の臨床的意義
2 骨盤結合織の構成
3 直腸側腔
4 膀胱側腔
5 膀胱腟間隙
6 直腸腟間隙
V-2 組織と血管の遊離・結紮・切断
1 子宮動脈の上行枝の遊離
2 子宮と子宮付属器を切り離す場合
3 基靱帯血管の処理
V-3 出血を最少にする工夫をする
1 摘出臓器の血流をあらかじめ遮断しておく
2 子宮と直腸の強固な癒着の場合は,剥離面からの出血
をふせぐために,血流が遮断されるまでは剥離しない
3 卵巣固有靱帯と卵管間膜・卵管とを分けて分離・結紮し,
切断して子宮から卵巣を外す
4 子宮摘出の際は腟断端を挟鉗してから切断する
V-4 尿管の確認と広間膜後葉からの遊離
V-5 ドレーンの適切な留置
VI 子宮への動脈血流の遮断による血流の変化
1 正常な子宮体部と頸部の血流
2 子宮動脈上行枝の血流遮断
3 子宮動脈本幹の血流遮断
4 内腸骨動脈の血流遮断
5 総腸骨動脈と大動脈の一時的血流遮断
VII 単純子宮全摘術
1 仙骨子宮靱帯の重要性を認識する
2 子宮動脈上行枝を遊離し単独で結紮切断する
3 基靱帯の子宮頸部付着部から尿管までの距離は約13〜15mmである
4 卵巣固有靱帯と卵管間膜血管・卵管は別々に結紮切断する
5 腟壁は挟鉗してから切断・縫合する
VIII-A ダグラス窩閉塞を合併した子宮内膜症・子宮腺筋症の腹式単純子宮全摘術
1 手術方法の選択
2 ダグラス窩閉塞をと伴う子宮内膜症第㈿期症例の骨盤内所見の特徴と問題点
3 手術に関連した問題点と対策
VIII-B 難しい腹式単純子宮全摘術の症例
1 チョコレート嚢胞の穿刺吸引
2 尿管の遊離と両側子宮動脈本幹の結紮
3 卵管,卵管間膜血管,卵巣固有靱帯の分離結紮
4 右側および左側子宮動脈上行枝の分離結紮
5 膀胱腟間隙の展開と前腟壁切開
6 直腸の子宮後壁からの癒着剥離
7 基靱帯の結紮切断
8 仙骨子宮靱帯と腟後壁の結紮切断
9 腟断端の処理と剥離創面の縫合止血
10 腹膜縫合終了時
IX-A 広汎子宮全摘術
1 指導上の留意点
2 標準的術式の手順
IX-B 広汎子宮全摘術の症例
1 左右膀胱側腔,直腸側腔,膀胱腟間隙,直腸腟間隙の展開
2 基靱帯の血管の分離・結紮・切断
3 リンパ節郭清の準備
4 直腸腟中隔の分離切断
5 膀胱子宮靱帯前層と後層の処理
6 傍腟結合織を腟壁から遊離して結紮・切断する
7 腟壁の切断
X 出血量の目標
XI 学び方と教え方
XII おわりに
II 安全・確実な手術のための前提条件
1 患者の術前状態の把握−リスク因子の評価ができること
2 合併症患者の術前の評価をしておく
3 麻酔科と他科との緊密な連携をとる
4 術後合併症予防とその早期発見および対策を行う
III 安全確実な手術とは
1 腫瘍学上の安全性
2 確実性
IV 安全・確実な産婦人科手術のトレーニングガイドライン
V 骨盤内手術の基本的指導目標
V-1 骨盤臨床解剖の理解
1 組織間隙の展開の臨床的意義
2 骨盤結合織の構成
3 直腸側腔
4 膀胱側腔
5 膀胱腟間隙
6 直腸腟間隙
V-2 組織と血管の遊離・結紮・切断
1 子宮動脈の上行枝の遊離
2 子宮と子宮付属器を切り離す場合
3 基靱帯血管の処理
V-3 出血を最少にする工夫をする
1 摘出臓器の血流をあらかじめ遮断しておく
2 子宮と直腸の強固な癒着の場合は,剥離面からの出血
をふせぐために,血流が遮断されるまでは剥離しない
3 卵巣固有靱帯と卵管間膜・卵管とを分けて分離・結紮し,
切断して子宮から卵巣を外す
4 子宮摘出の際は腟断端を挟鉗してから切断する
V-4 尿管の確認と広間膜後葉からの遊離
V-5 ドレーンの適切な留置
VI 子宮への動脈血流の遮断による血流の変化
1 正常な子宮体部と頸部の血流
2 子宮動脈上行枝の血流遮断
3 子宮動脈本幹の血流遮断
4 内腸骨動脈の血流遮断
5 総腸骨動脈と大動脈の一時的血流遮断
VII 単純子宮全摘術
1 仙骨子宮靱帯の重要性を認識する
2 子宮動脈上行枝を遊離し単独で結紮切断する
3 基靱帯の子宮頸部付着部から尿管までの距離は約13〜15mmである
4 卵巣固有靱帯と卵管間膜血管・卵管は別々に結紮切断する
5 腟壁は挟鉗してから切断・縫合する
VIII-A ダグラス窩閉塞を合併した子宮内膜症・子宮腺筋症の腹式単純子宮全摘術
1 手術方法の選択
2 ダグラス窩閉塞をと伴う子宮内膜症第㈿期症例の骨盤内所見の特徴と問題点
3 手術に関連した問題点と対策
VIII-B 難しい腹式単純子宮全摘術の症例
1 チョコレート嚢胞の穿刺吸引
2 尿管の遊離と両側子宮動脈本幹の結紮
3 卵管,卵管間膜血管,卵巣固有靱帯の分離結紮
4 右側および左側子宮動脈上行枝の分離結紮
5 膀胱腟間隙の展開と前腟壁切開
6 直腸の子宮後壁からの癒着剥離
7 基靱帯の結紮切断
8 仙骨子宮靱帯と腟後壁の結紮切断
9 腟断端の処理と剥離創面の縫合止血
10 腹膜縫合終了時
IX-A 広汎子宮全摘術
1 指導上の留意点
2 標準的術式の手順
IX-B 広汎子宮全摘術の症例
1 左右膀胱側腔,直腸側腔,膀胱腟間隙,直腸腟間隙の展開
2 基靱帯の血管の分離・結紮・切断
3 リンパ節郭清の準備
4 直腸腟中隔の分離切断
5 膀胱子宮靱帯前層と後層の処理
6 傍腟結合織を腟壁から遊離して結紮・切断する
7 腟壁の切断
X 出血量の目標
XI 学び方と教え方
XII おわりに
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初心者から手術指導医まで必携の書
骨盤臨床解剖に基く子宮周囲の6カ所の組織間隙を開放することにより,安全・確実に子宮を摘出できる。婦人科手術の神髄を説く,初心者から手術指導医まで必携の書。