新 癌の外科 -手術手技シリーズ 9
肺癌
定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- A4判 168ページ 2色,イラスト200点
- 2005年11月28日刊行
- ISBN978-4-7583-0455-9
序文
肺癌手術に共通の留意点について概観し,序に代える。
手術と解剖
解剖学的知識が手術に必須であることは論を待たない。ではどのような知識が必要だろうか。臓器の相互の位置関係や血管の走行を知ることとともに,臓器を囲む皮膜の構造を知ることが出血の少ない手術を実現する。ことに縦隔郭清ではリンパ節を採り出すのではなく,縦隔リンパ節を周囲の脂肪織と一塊にして周囲臓器より剥き出すことが求められる。そのためには上大静脈や肺動脈,気管などの皮膜の特徴を知っておくことが重要である。気管については,支配血管を含む層を気管側に残して剥離することが必要である。支配血管の層まで剥離すると術後に気管の壊死をきたし,狭窄の原因となる。
解剖書と目の前の解剖が異なるときには,解剖書の方が間違いであることを認識することも重要である。解剖書に基づいた既成概念にとらわれると,バリエーションを伴う「真の解剖」に気づかず,血管や隣接臓器を損傷する原因となる。常に冷静で柔軟な考えを維持することが大切である。
鋏の使いよう
道具の特徴を知り,操作部位ごとに使い分けることが必要である。ことに最近では電気メスを多用し,ステイプラーやハーモニック・スカルペルをはじめ,新しい器械を使うことが多いので,これらの器械の特性を知っておくことが大切である。胸腔鏡を用いる手術で電気メスを使用する際には,ビデオ画面で見えている視野より手前で,電気メスが周囲臓器に接してないか気をつける必要がある。ステイプラー は ステイプルの大きさ,すなわち,幅と高さを知っておきたい。道具の使い勝手が悪いと感じたら,反対側から用いてみると容易に操作できることが多い。術者としての位置を代わって使い直すのも,一法である。
手技と手順
手技は経験とともに上達するが,手順は考えることによって経験を乗り越えることができる。すなわち,自分に足りないレパートリーの手技は手順を考えることで,他の手技で補うことができることがある。あるいは自分のレパートリーに足りない手技を他の人から借りてきて,計画した手順を維持する方法もある。すなわち己を知り,己に合った手順を考え,己の足りないところの援助を頼めるのが「術者」である。安全第一であるべき手術において,意地を張って無理をするのは愚の骨頂である。したがって,外科医の教育は,手技とともに手順の組み立て方を教えるのである。
早期癌と手術
CTの発達と普及によっていわゆる「限局性のすりガラス影:GGA ground glass attenuation」の症例が多く発見され,治療されるようになってきた。これらの性質が明かになるにつれ,区域切除や楔状切除で根治できると考えられる症例の性状も明らかになってきた。楔状切除はほとんどが胸腔鏡手術で容易に,患者の負担を最小にして行うことができるので,急速に普及し治療の主役に躍り出てきた。しかし,消化器癌の粘膜癌や肺門部肺癌の治療の歴史を顧みると,これらのいわゆる早期癌はすでに外科的手術の対象から外れている。したがって,楔状切除で根治てきるような症例に対しては,あるいは,単純肺葉切除で根治できる症例まで含めて,外科的手術以外の治療法によって治癒されるのは時間の問題といえよう。
手術の標準化
典型的な肺癌の根治術式である「系統的肺門縦隔郭清を伴う肺葉切除術」は広く行われており,一部の施設では胸腔鏡で十分に遂行可能であるとされている。肺門縦隔郭清と肺葉切除を的確に遂行することが目的であるので,この目的が達成できるのであれば,傷は小さいに越したことはない。したがって,胸腔鏡の使用は使い方の差はあれ,さらに普及し必須のものとなっていくであろう。手術は安全が第一であるので,「系統的肺門縦隔郭清を伴う肺葉切除術」が標準化される必要はあるが,アプローチの方法である胸腔鏡の使い方を標準化する必要性は低いといえる。先に述べた,己に合った手順の選択の問題であり,己に合った胸腔鏡の使い方が必要である。
術前評価と術後管理
術前評価は肺切除後の残存肺機能予測方法などさまざまな工夫がされてきた。しかし,患者をトータルで評価するには,一緒に歩行したり,階段を2階分(1階より3階:2 flight test)昇ることが可能であるかで判断するのが良い。通常速度での歩行が可能であれば肺葉切除が可能で,階段が昇れれば,年齢に関係なく肺全摘除が可能であろう。
術後の管理は,早期離床につきる。しかし,手術に勝る術後管理はない。手術の失敗は術後管理では取り返せない。
外科の研究
肺癌診療において外科の役割は,局所限局型肺癌に対する治療法である。例外として,局所進行肺癌である隣接臓器への直接浸潤例や気管分岐部への浸潤例,遠隔転移である脳転移や副腎転移の症例は外科的手術の対象とされてきた。限局型肺癌の治癒率のさらなる向上や,局所進行肺癌の根治率の向上,遠隔転移例の延命を目的に術前や術後の化学療法,あるいは化学放射線療法が研究されてきた。しかし,これらの研究は本来,化学療法や放射線療法の効果が研究の対象であり,外科的研究ではない。では外科の研究とは何か。肺機能の温存と根治性がより向上する術式の開発,肺移植の適応の是非,再生医学導入の検討,メス・鋏・電気メス・レーザ以外の新規局所治療手段の導入などであろうか?
2005年11月
土屋了介
手術と解剖
解剖学的知識が手術に必須であることは論を待たない。ではどのような知識が必要だろうか。臓器の相互の位置関係や血管の走行を知ることとともに,臓器を囲む皮膜の構造を知ることが出血の少ない手術を実現する。ことに縦隔郭清ではリンパ節を採り出すのではなく,縦隔リンパ節を周囲の脂肪織と一塊にして周囲臓器より剥き出すことが求められる。そのためには上大静脈や肺動脈,気管などの皮膜の特徴を知っておくことが重要である。気管については,支配血管を含む層を気管側に残して剥離することが必要である。支配血管の層まで剥離すると術後に気管の壊死をきたし,狭窄の原因となる。
解剖書と目の前の解剖が異なるときには,解剖書の方が間違いであることを認識することも重要である。解剖書に基づいた既成概念にとらわれると,バリエーションを伴う「真の解剖」に気づかず,血管や隣接臓器を損傷する原因となる。常に冷静で柔軟な考えを維持することが大切である。
鋏の使いよう
道具の特徴を知り,操作部位ごとに使い分けることが必要である。ことに最近では電気メスを多用し,ステイプラーやハーモニック・スカルペルをはじめ,新しい器械を使うことが多いので,これらの器械の特性を知っておくことが大切である。胸腔鏡を用いる手術で電気メスを使用する際には,ビデオ画面で見えている視野より手前で,電気メスが周囲臓器に接してないか気をつける必要がある。ステイプラー は ステイプルの大きさ,すなわち,幅と高さを知っておきたい。道具の使い勝手が悪いと感じたら,反対側から用いてみると容易に操作できることが多い。術者としての位置を代わって使い直すのも,一法である。
手技と手順
手技は経験とともに上達するが,手順は考えることによって経験を乗り越えることができる。すなわち,自分に足りないレパートリーの手技は手順を考えることで,他の手技で補うことができることがある。あるいは自分のレパートリーに足りない手技を他の人から借りてきて,計画した手順を維持する方法もある。すなわち己を知り,己に合った手順を考え,己の足りないところの援助を頼めるのが「術者」である。安全第一であるべき手術において,意地を張って無理をするのは愚の骨頂である。したがって,外科医の教育は,手技とともに手順の組み立て方を教えるのである。
早期癌と手術
CTの発達と普及によっていわゆる「限局性のすりガラス影:GGA ground glass attenuation」の症例が多く発見され,治療されるようになってきた。これらの性質が明かになるにつれ,区域切除や楔状切除で根治できると考えられる症例の性状も明らかになってきた。楔状切除はほとんどが胸腔鏡手術で容易に,患者の負担を最小にして行うことができるので,急速に普及し治療の主役に躍り出てきた。しかし,消化器癌の粘膜癌や肺門部肺癌の治療の歴史を顧みると,これらのいわゆる早期癌はすでに外科的手術の対象から外れている。したがって,楔状切除で根治てきるような症例に対しては,あるいは,単純肺葉切除で根治できる症例まで含めて,外科的手術以外の治療法によって治癒されるのは時間の問題といえよう。
手術の標準化
典型的な肺癌の根治術式である「系統的肺門縦隔郭清を伴う肺葉切除術」は広く行われており,一部の施設では胸腔鏡で十分に遂行可能であるとされている。肺門縦隔郭清と肺葉切除を的確に遂行することが目的であるので,この目的が達成できるのであれば,傷は小さいに越したことはない。したがって,胸腔鏡の使用は使い方の差はあれ,さらに普及し必須のものとなっていくであろう。手術は安全が第一であるので,「系統的肺門縦隔郭清を伴う肺葉切除術」が標準化される必要はあるが,アプローチの方法である胸腔鏡の使い方を標準化する必要性は低いといえる。先に述べた,己に合った手順の選択の問題であり,己に合った胸腔鏡の使い方が必要である。
術前評価と術後管理
術前評価は肺切除後の残存肺機能予測方法などさまざまな工夫がされてきた。しかし,患者をトータルで評価するには,一緒に歩行したり,階段を2階分(1階より3階:2 flight test)昇ることが可能であるかで判断するのが良い。通常速度での歩行が可能であれば肺葉切除が可能で,階段が昇れれば,年齢に関係なく肺全摘除が可能であろう。
術後の管理は,早期離床につきる。しかし,手術に勝る術後管理はない。手術の失敗は術後管理では取り返せない。
外科の研究
肺癌診療において外科の役割は,局所限局型肺癌に対する治療法である。例外として,局所進行肺癌である隣接臓器への直接浸潤例や気管分岐部への浸潤例,遠隔転移である脳転移や副腎転移の症例は外科的手術の対象とされてきた。限局型肺癌の治癒率のさらなる向上や,局所進行肺癌の根治率の向上,遠隔転移例の延命を目的に術前や術後の化学療法,あるいは化学放射線療法が研究されてきた。しかし,これらの研究は本来,化学療法や放射線療法の効果が研究の対象であり,外科的研究ではない。では外科の研究とは何か。肺機能の温存と根治性がより向上する術式の開発,肺移植の適応の是非,再生医学導入の検討,メス・鋏・電気メス・レーザ以外の新規局所治療手段の導入などであろうか?
2005年11月
土屋了介
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目次
●肺癌肺切除患者の管理
肺癌肺切除術のクリティカルパス 吉田幸弘・淺村尚生
入院経過に沿って時間割表を作成する
網羅的,体系的な指示表であること
作業の効率化とミスの軽減
本院におけるクリティカルパスの実際(術前)
本院におけるクリティカルパスの実際(術後)
定期的な見直しと更新
患者の理解を助けること
退院後の留意点を理解する
術前評価 吉田幸弘/鈴木健司
確定診断
病期診断
耐術性の評価
麻酔・術中管理 本田 完
麻酔術前評価
前投薬
術中麻酔管理
肺切除術における気道管理
術後フォローアップ 吉田幸弘/鈴木健司
●術式と手技
開胸法 鈴木健司
後側方開胸
前方腋窩開胸
hemi-clamshell incision
胸骨正中切開
季肋下切開を追加した後側方開胸
縦隔リンパ節郭清術 淺村尚生
縦隔郭清手技
肺切除手術手技のエレメント:必要な器具 鈴木健司
摂子
電気メス
剪刀
鉗子
持針器と綿棒
ステイプラー
肺切除手術手技のエレメント:気管支に用いる手技 淺村尚生
気管支断端の創傷治癒:治癒しにくい理由
気管支閉鎖の基本−いわゆるSweet法とOverholt法ー
気管支の閉鎖法
気管支断端の被覆
被覆法の実際:心膜脂肪織
肺切除手術手技のエレメント:肺血管に用いる手技 淺村尚生
肺血管の剥離法
出血への対処
肺切除手術手技のエレメント:分葉不全の処理 鈴木健司
右肺切除術における葉間形成
左肺切除術における葉間形成
肺切除手術手技のエレメント:癒着剥離 鈴木健司
癒着剥離の種類
胸腔内癒着剥離
胸膜外癒着剥離
肺葉切除術:右肺上葉切除術 淺村尚生
手術手技
肺葉切除術:右肺中葉切除術 渡辺俊一
開胸
肺静脈の処理
肺動脈の処理および葉間の切離
気管支の処理
高度分葉不全のとき
肺葉切除術:右肺下葉切除術 渡辺俊一
開胸
肺靱帯の切離 と下肺静脈の処理
肺動脈の処理と葉間形成
気管支の処理
肺葉切除術:左肺上葉切除術 淺村尚生
手術手技
分葉不全のときの手順
肺葉切除術:左肺下葉切除術 渡辺俊一
開胸
肺靱帯の切離 と下肺静脈の処理
肺動脈の処理と葉間形成
高度分葉不全のときの肺動脈処理
気管支の処理
肺葉切除術:二葉切除術 淺村尚生
上中葉切除術の手術手技
中下葉切除術の手術手技
肺全摘術:右肺全摘術 鈴木健司
適応
解剖学的考察
手術手技
その他の留意点
肺全摘術:左肺全摘術 鈴木健司
適応
解剖学的考察
手術手技
その他の留意点
区域切除術 渡辺俊一
肺区域間の切離法
肺部分切除術 渡辺俊一
適応
術式の選択
手術手技
管状肺葉切除術と管状肺全摘術 中山治彦
管状肺葉切除術
管状肺全摘術
拡大切除術とPancoast腫瘍切除術 近藤晴彦
拡大切除術
Pancoast腫瘍切除術
胸腔鏡手術:審査胸腔鏡 渡辺俊一
適応
手技
その他の適応
胸腔鏡手術:治療胸腔鏡 淺村尚生
胸腔鏡手術の準備,条件
胸腔鏡操作
肺部分切除術(楔状切除術)
肺葉切除術
合併症と問題点
心嚢ドレナージ術 渡辺俊一
適応と術式の選択
術前検査
体位と準備
手術手技
術後管理
悪性胸水に対するタルク散布術 奥村武弘
悪性胸水の病態生理と原疾患
胸水コントロールの意義
胸水コントロールの手段と胸膜癒着剤
胸膜癒着術施行のタイミング
胸腔鏡下タルク散布術の実際
合併症
縦隔鏡 鈴木健司
頸部縦隔鏡(cervical mediastinoscopy)
前方縦隔鏡(anterior mediastinoscopy)
●肺切除術後合併症とその対策
術後合併症と術死 渡辺俊一
術後合併症
術死
今後の課題
気管支瘻と急性膿胸:開窓術と胸郭形成術 中川加寿夫
気管支瘻
急性膿胸
肺瘻:肺瘻閉鎖術 中川加寿夫
術後肺瘻予防のための対策
肺瘻閉鎖の手技
肺瘻の発生部位による取り扱いの相違
術後肺瘻の管理法
乳び胸:胸管結紮術 奥村武弘
胸管の解剖
乳び胸とは
乳び胸の診断
肺切除術後乳び胸の治療戦略
胸管結紮の手技
肺癌肺切除術のクリティカルパス 吉田幸弘・淺村尚生
入院経過に沿って時間割表を作成する
網羅的,体系的な指示表であること
作業の効率化とミスの軽減
本院におけるクリティカルパスの実際(術前)
本院におけるクリティカルパスの実際(術後)
定期的な見直しと更新
患者の理解を助けること
退院後の留意点を理解する
術前評価 吉田幸弘/鈴木健司
確定診断
病期診断
耐術性の評価
麻酔・術中管理 本田 完
麻酔術前評価
前投薬
術中麻酔管理
肺切除術における気道管理
術後フォローアップ 吉田幸弘/鈴木健司
●術式と手技
開胸法 鈴木健司
後側方開胸
前方腋窩開胸
hemi-clamshell incision
胸骨正中切開
季肋下切開を追加した後側方開胸
縦隔リンパ節郭清術 淺村尚生
縦隔郭清手技
肺切除手術手技のエレメント:必要な器具 鈴木健司
摂子
電気メス
剪刀
鉗子
持針器と綿棒
ステイプラー
肺切除手術手技のエレメント:気管支に用いる手技 淺村尚生
気管支断端の創傷治癒:治癒しにくい理由
気管支閉鎖の基本−いわゆるSweet法とOverholt法ー
気管支の閉鎖法
気管支断端の被覆
被覆法の実際:心膜脂肪織
肺切除手術手技のエレメント:肺血管に用いる手技 淺村尚生
肺血管の剥離法
出血への対処
肺切除手術手技のエレメント:分葉不全の処理 鈴木健司
右肺切除術における葉間形成
左肺切除術における葉間形成
肺切除手術手技のエレメント:癒着剥離 鈴木健司
癒着剥離の種類
胸腔内癒着剥離
胸膜外癒着剥離
肺葉切除術:右肺上葉切除術 淺村尚生
手術手技
肺葉切除術:右肺中葉切除術 渡辺俊一
開胸
肺静脈の処理
肺動脈の処理および葉間の切離
気管支の処理
高度分葉不全のとき
肺葉切除術:右肺下葉切除術 渡辺俊一
開胸
肺靱帯の切離 と下肺静脈の処理
肺動脈の処理と葉間形成
気管支の処理
肺葉切除術:左肺上葉切除術 淺村尚生
手術手技
分葉不全のときの手順
肺葉切除術:左肺下葉切除術 渡辺俊一
開胸
肺靱帯の切離 と下肺静脈の処理
肺動脈の処理と葉間形成
高度分葉不全のときの肺動脈処理
気管支の処理
肺葉切除術:二葉切除術 淺村尚生
上中葉切除術の手術手技
中下葉切除術の手術手技
肺全摘術:右肺全摘術 鈴木健司
適応
解剖学的考察
手術手技
その他の留意点
肺全摘術:左肺全摘術 鈴木健司
適応
解剖学的考察
手術手技
その他の留意点
区域切除術 渡辺俊一
肺区域間の切離法
肺部分切除術 渡辺俊一
適応
術式の選択
手術手技
管状肺葉切除術と管状肺全摘術 中山治彦
管状肺葉切除術
管状肺全摘術
拡大切除術とPancoast腫瘍切除術 近藤晴彦
拡大切除術
Pancoast腫瘍切除術
胸腔鏡手術:審査胸腔鏡 渡辺俊一
適応
手技
その他の適応
胸腔鏡手術:治療胸腔鏡 淺村尚生
胸腔鏡手術の準備,条件
胸腔鏡操作
肺部分切除術(楔状切除術)
肺葉切除術
合併症と問題点
心嚢ドレナージ術 渡辺俊一
適応と術式の選択
術前検査
体位と準備
手術手技
術後管理
悪性胸水に対するタルク散布術 奥村武弘
悪性胸水の病態生理と原疾患
胸水コントロールの意義
胸水コントロールの手段と胸膜癒着剤
胸膜癒着術施行のタイミング
胸腔鏡下タルク散布術の実際
合併症
縦隔鏡 鈴木健司
頸部縦隔鏡(cervical mediastinoscopy)
前方縦隔鏡(anterior mediastinoscopy)
●肺切除術後合併症とその対策
術後合併症と術死 渡辺俊一
術後合併症
術死
今後の課題
気管支瘻と急性膿胸:開窓術と胸郭形成術 中川加寿夫
気管支瘻
急性膿胸
肺瘻:肺瘻閉鎖術 中川加寿夫
術後肺瘻予防のための対策
肺瘻閉鎖の手技
肺瘻の発生部位による取り扱いの相違
術後肺瘻の管理法
乳び胸:胸管結紮術 奥村武弘
胸管の解剖
乳び胸とは
乳び胸の診断
肺切除術後乳び胸の治療戦略
胸管結紮の手技
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国立がんセンターで行われている安全,確実な肺癌の手術手技を解説した外科手術書の決定版
肺癌は,大腸癌,乳癌などと並び,罹患率が増加傾向にある癌である。また,死亡率は男性で全癌の1位であり,女性は胃癌に次いで第2位となっている。
本書は,このような増加傾向にある肺癌の手術療法について,国立がんセンターで行われている標準の手術手技を,イラストを駆使して解説した。本シリーズの他巻と同様,手術の流れが簡潔に記載されており,さらにイラストにより手技上のポイントが明確に理解できるようになっている。