もう質疑応答も怖くない!

学会発表のためのサバイバル英語術

学会発表のためのサバイバル英語術

■著者 マイク・ゲスト

■訳 南部 みゆき

定価 2,860円(税込) (本体2,600円+税)
  • A5判  152ページ  
  • 2014年10月27日刊行
  • ISBN978-4-7583-0440-5

質問が聴き取れなくても,答えに窮しても大丈夫!  日本人に贈る国際学会発表のための実戦テクニック!

日本人の英語の悩み・弱点を知り尽くした著者が贈る学会発表のための実戦テクニック。単なる口頭発表用フレーズ集に留まらず,学会発表における最大の難関とも言える質疑応答を乗り切るためのさまざまな戦略を中心に,困ったときの具体的な対策や心理面でのアドバイスを満載。


序文

Introduction
はじめに―この本について。この本の特長は?

 英語でのプレゼンテーション・スキルを伸ばすために書かれた本は,オンラインでも日本国内の書店でもすぐに見つかりますし,その数も膨大です。では,この本はこれまでの本とどう違うのでしょう。
 まずは,医療のための英語プレゼンテーションに焦点が絞られていることです。私は宮崎大学医学部で働いていますが,日本の医師(に限らず医療従事者も含めて)が,いかに自らのプレゼンテーション・スキルに満足していないか,とりわけ,こうありたいと自身が願うスキル,あるいは職場の上司から求められる期待に添えていないと感じているか,折に触れて見聞きしてきました。そこで,このような問題を解くためには,どういう点において自身のプレゼンテーションに失敗を感じているのか,そしてそれはいったい何故なのか,が鍵となります。本書は,このような疑問に一つ一つ答えるとともに,どう対処すればよいのか助言を試みたいと思います。
 今回,この課題に取り組むにあたって大変良い機会に恵まれました。前述の問題に取り組むにあたり,2012年に科学研究費助成事業から研究助成金を得ることができたのです。多くの日本人医師と直接お会いして得られた調査結果については本書でご紹介しますが,すでに学術論文としても出版されています。
 この経験が,次の課題につながりました。ある意味,この本が他と一線を画すのはそこだ,と感じています。つまり,本書は,医師用に便利な決まり文句を単に羅列するのでもなく,グーグルで検索すればすぐに見つかるような,よくある会話のコツをここで改めて述べるのでもありません。それよりも,もっとメンタルな部分を考えます。すなわち,日本人である医師にとってかなり重要な部分を占める文化心理学的な側面を捉え,英語によるパフォーマンスに不安を感じている医師を取り巻く背景や環境を明らかにしながら,解決策や糸口を見つけ出したいと思います。
 このことが3番目の特長への糸口となりました。本書は英語で書いた原稿を日本語に翻訳したものですが,特に日本人を対象として,日本人の言語,社会,医療システムに結びつく感情的な要因に注目しています。私は20年以上日本に住み,そのうち16年間を医師,看護師,医学生と関わってきました。その経験から,国際学会等における日本人による英語パフォーマンスに影響する文化的な問題については,私自身,的確に把握しているつもりです。
 日本人医師,日本人医学生と密接に関わってきた経験をもとに,国際医学学会で行われた,100人を超す日本人医師によるプレゼンテーション(加えて70名を超す非英語母語話者のプレゼンテーションも含めます)を観察してきた具体的な事象についても,より細かく描写しました。(この研究結果については,部分的な報告を日本医学英語教育学会誌[Vol. 12, No. 3, Oct. 2013, p.47-55]にて出版済みです。)本書では,よく見受けられる弱点だけではなく,長所についても触れながら提案や助言を施しました。言葉を換えて言うならば,文中の助言は理想論や抽象論に基づくものではなく,あくまで学会会場で私が実際に目にした,日本人医師のパフォーマンスに基づいています。
 最後に,本書には4つ目の特長があります。皆さんのほとんどの方がお気づきのように,医学の国際学会では,プレゼンテーション用に作成されたスライドの1枚目からが英語のパフォーマンスが始まる,というわけではありません。また,最後のクリックで映し出されるThank you.のスライドで,プレゼンテーションが終わるわけでもありません。手ごわい質疑応答の時間が待っているのです。さらに,プレゼンテーションが終わってからも世間話をしなくてはならないでしょう。ポスター・セッションで苦戦したり,ディスカッションの参加を余儀なくされる医師も多いでしょう。本書では,このような「生きた」英語の領域についても取り上げています。単にプレゼンテーションそのものだけを取り上げているのではありません。
 前述したような,平均的な日本人による英語プレゼンテーションにまつわる種々の問題について,私は臨床的アプローチを取っています。つまり,初めに「今そこにある問題」について病状を記録し,面接を施し,検査結果を観察し,仮説を立て,最後に,治療法はこうですよ,と提示しています。
 これまで実施してきた調査・観察・関連研究等から得た知見は,私が勤務する大学の医学生5,6年生向けの,英語プレゼンテーションスキルの講義でも活用していますし,キャンパス内の大学病院の医師向けに実施される英語プレゼンテーションワークショップでも多いに役立っています。(少なくとも,役立ったであろうと願っています!)
 この本が読者の方々にとって,「文字化された」ちょっとしたワークショップになれば幸いです。

2014年10月
マイク・ゲスト
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目次

Introduction はじめに―この本について。この本の特長は?

Chapter 1 英語コンプレックス:原因と解決法 The English Complex—Sources and Solutions
 1.誤解1:英語はネイティブ(特に英米人)だけのものではありません
 2.誤解2:「外国」=アメリカではありません,西洋ですらありません
 3.誤解3:ネイティブスピーカーへの精神的服従は不要!
 4.アジアの英語
  4.1.スライドの英語
  4.2.発音の問題について
  4.3.発音に関して提案
 5.静的英語 vs 動的英語
  5.1.原因1:論文を読むという考え方 vs 説得力のあるレトリック技法の採用
  5.2.原因2:エンターテインメント禁止の学界
  5.3.原因3:プレゼンテーションは義務,やらされるもの?
  5.4.原因4:出版物のデータベース的価値 vs プレゼンテーション
 6.間違うことへの過剰な恐れ

Chapter 2 弱点と対策 Problems and Remedies
 1.質問調査:英語プレゼンテーションに対する最大の不安要因
 2.学会で成功する実践的なアイデアと提言
  2.1.質疑応答の対処戦略
   A.意味の明確化 
   B.逃避戦略
   C.謝辞(懐柔)戦略 
   D.自白戦略 
   E.質疑応答対策としてリスニング能力を伸ばすには  
  2.2.プレゼンテーションの始まりと終わり
   A.概要を示すスライドは本当に必要?
  2.3.プレゼンテーションのまとめと結論
   A.I think(特に文末で使用した場合) 
   B. まとめや結論で使用するmaybe 
 3.移行表現のうまい使い方
  3.1.詳細に述べる・強調する
  3.2.研究方法を詳細に述べる
  3.3.研究結果について詳しく述べる
  3.4.参照する
  3.5.次のセクションに移る

Chapter 3 その他の落とし穴と対策 Other Common Pitfalls and Possible Fixes
 1.イントネーションの効果
 2.視覚資料用のナレーションや説明
  2.1.ボディランゲージについてちょっと一言
   A.聴衆とアイコンタクトを取らないといけませんか?
   B.大型スクリーンを見ないといけませんか? 
   C.体(腰,脚,手)の位置や方向は,5分置きくらいに変えながら,緊張をほぐしリラックスしましょう
 3.その他の学会用の英語
  3.1.意志疎通ができなくなったら(修復)
   A.間違ってしまった場合(例:...in Yamakawa Prefecture) 
   B.撤回するときの表現
   C.明確化するときの表現
 4.座長の英語
  4.1.美辞麗句を並べ立てた紹介は逆効果
  4.2.シンポジウムやワークショップの導入部
  4.3.フォーマルな言葉遣いから急に乱暴な言い方へ
  4.4.名前に注意を払いましょう
 5.聴衆として質問してみよう
  5.1.質疑応答セッションでの質問
   A.質問したい内容をあらかじめ示すフレーズ
   B.質問を切り出すフレーズ
  5.2.ポスター発表の内容に関する質問
  5.3.セッション終了後や休憩時間での発表者に対する質問
 6.プレゼンテーションの後で:おしゃべりと人づきあい
  6.1.ポスターセッションや展示会場での効果的な会話の切り出し方
  6.2.会話の終わり方
  6.3.本当の自己紹介とは
 7.医療ディスコース・コミュニティの言語
  7.1.研究方法,仮説,描写等に関する表現
  7.2.結果,考察,まとめ,結論に関する表現
 8.面倒だけど重要な,文法事項のあれこれ
  8.1. 連結詞(is/was/has)+動詞
  8.2. 助動詞
   A. We could find/understand X.
   B. have to/should/must
  8.3. 類義語の使い分け
   A. almost/almost all
   B. completely/perfectly
   C. exactly/actually/really
   D. after all/eventually/finally
  8.4. of
  8.5. 形容詞
   A. terrible
   B. excellent
  8.6. 比較構文
   A. more better(不適切)
   B. than
  8.7. 前置詞
   A. about, as for
   B. at first, first, in the first

Chapter 4 プレゼンテーションのサンプル Sample Presentation
 1.プレゼンテーションのサンプル
 2.プレゼンテーションの分析—この発表者のどこが良かったでしょうか?

Chapter 5 プレゼンテーションの準備—最後の助言 Preparing for the Big English Presentation—Some Final-stage Tips
 1.深呼吸しましょう!
 2.質疑応答のシミュレーションをして,返答の仕方の練習をしましょう
 3.ネイティヴ・スピーカーを活用してチェックしてもらいながら準備しましょう
 4.プレゼンテーション直前の練習として
 5.プレゼンテーションでの動作も考えておきましょう
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