講義録
医学英語 I
語彙の充実と読解力の向上
定価 2,750円(税込) (本体2,500円+税)
- B5判 168ページ 2色
- 2005年1月13日刊行
- ISBN978-4-7583-0407-8
電子版
序文
刊行に寄せて
本書は,医師・医療関係者に求められる英語力を総合的・体系的に習得するための全3巻の教科書として,日本医学英語教育学会により企画・編集されました。
かねてから医師には英語力も必要だと言われていたものの,医師・医学生への英語教育は「医学」と「英語教育」という2つの異なる専門分野での知識が要求され,体系的に教育できるカリキュラムや教材もないまま,現場で担当する先生たちは独自の工夫をこらしつつ大変な努力をなさっていました。日本医学英語教育学会が1998年に設立された際には,その大きな目的の一つとして,この2つの分野の専門家たちが協力することによって,日本における医学英語教育の指針となるべき教科書を制作することがありました。爾来6年,その努力が実を結んだ成果が本書です。
本書を企画段階において,医師に求められる英語力の到達目標として下記の3点が挙げられました。
1.英語で患者さんの診療を行える。
2.英語で医療・医学に関する発表・討論を行える。
3.英語で論文や書類を作成できる。
最終的にこれらの目標に到達するためのステップとして,本書の各章は構成されています。全3巻は英語力の段階に応じて分けられており,初級向けの第1巻では語彙の充実や読解力の養成を,第2巻では医学の専門的内容にさらに踏み込んで症例報告や論文を題材として採り上げ,第3巻では実践の準備段階として,患者さんとの会話や口頭発表,論文執筆について学びます。
言うまでもなく,外国語の習得に王道はありません。学生の間だけで上記の到達目標に到達するのは難しいかもしれませんが,卒業して医師となってからも,生涯続く英語学習の友として本書を活用していただければ,これに勝る喜びはありません。
現在のわが国は,残念ながら諸外国からの評価としては「医学・医療知識の輸入国」としての地位に甘んじています。しかし前途有望な医師・医学生の皆さんが本書を学習の友として英語力の研鑽に励まれれば,その汚名を返上できる日も遠くはないと確信しています。
2004年12月
日本医学英語教育学会理事長
東京慈恵会医科大学脳神経外科教授
大井 静雄
------------------------------
序文
20年以上前のことです。 私は「医学英語教育の現状を語ろう」というバロン先生(現・日本医学英語教育学会副理事長)の呼びかけに関心をもち,直接お電話をしました。あいにく先生はお留守でしたが,その10年余後,先生にお会いしたのは,多くの医学教育者と英語教育者が集まった日本医学英語教育研究会でした。研究会はさほど年月を要することなく学会へと成長しました。それは,医学生の英語力養成に悪戦苦闘する両分野の教師が,植村研一先生(初代理事長)の「国際的に通用する英語運用能力をもつ医師養成」への情熱に共鳴したためと思われます。
この度の3巻から成る『講義録 医学英語』の刊行が,医学教育と英語教育という立場の異なる学会員たちの活動が結実したものであることは,現理事長の大井静雄先生が「刊行に寄せて」に記しているとおりです。本書,第1巻は「基本語彙と読解力の育成」を目ざし,学習者が医学英語には初級者であることを考慮して,以下のように構成しました。
Chapter 1 日本の医療制度の特徴(英文と語彙)
Chapters 2〜5基礎的な語彙(語彙の構成要素と体系別身体語彙)
Chapters 6〜8ニュース番組から(糖尿病,自閉症,SARS,心疾患)
Chapters 9〜12 医療の現場で使う英語表現
(会話形式による医学・医療表現の習得)
各章には,学習内容の理解を深めるために詳細な説明を加え,学習を確実にするために練習問題を付しています。
医学英語運用能力の基礎である専門語彙は,一種の記号とみなして丸暗記していく学習方法もあります。けれども膨大な医学語彙数を記憶するには,それは効果的な方法とは言えません。ここでは徐々に,けれども確実に語彙学習の“こつ”を習得します。
英文読解力の養成は,身近な内容の英文や実際に診療に用いる会話体を,聞く・書く・発声することと併せて学習できるように構成しました。
言語習得には短期的な集中学習と,気が遠くなるような長期学習とを必要とします。また,対象とする言語を使えるようになるには,日本語運用能力や人としての総合力をも必要とします。典型的な英語表現を覚えても,内容がなければ空疎な自己表現に留まってしまうでしょう。本書が,伝えるべきメッセージを持つ医師を目指す第一歩となることを祈っております。
2004年12月
『講義録 医学英語I』編集委員
日本医学英語教育学会理事
川崎医療福祉大学英語教授
清水 雅子
本書は,医師・医療関係者に求められる英語力を総合的・体系的に習得するための全3巻の教科書として,日本医学英語教育学会により企画・編集されました。
かねてから医師には英語力も必要だと言われていたものの,医師・医学生への英語教育は「医学」と「英語教育」という2つの異なる専門分野での知識が要求され,体系的に教育できるカリキュラムや教材もないまま,現場で担当する先生たちは独自の工夫をこらしつつ大変な努力をなさっていました。日本医学英語教育学会が1998年に設立された際には,その大きな目的の一つとして,この2つの分野の専門家たちが協力することによって,日本における医学英語教育の指針となるべき教科書を制作することがありました。爾来6年,その努力が実を結んだ成果が本書です。
本書を企画段階において,医師に求められる英語力の到達目標として下記の3点が挙げられました。
1.英語で患者さんの診療を行える。
2.英語で医療・医学に関する発表・討論を行える。
3.英語で論文や書類を作成できる。
最終的にこれらの目標に到達するためのステップとして,本書の各章は構成されています。全3巻は英語力の段階に応じて分けられており,初級向けの第1巻では語彙の充実や読解力の養成を,第2巻では医学の専門的内容にさらに踏み込んで症例報告や論文を題材として採り上げ,第3巻では実践の準備段階として,患者さんとの会話や口頭発表,論文執筆について学びます。
言うまでもなく,外国語の習得に王道はありません。学生の間だけで上記の到達目標に到達するのは難しいかもしれませんが,卒業して医師となってからも,生涯続く英語学習の友として本書を活用していただければ,これに勝る喜びはありません。
現在のわが国は,残念ながら諸外国からの評価としては「医学・医療知識の輸入国」としての地位に甘んじています。しかし前途有望な医師・医学生の皆さんが本書を学習の友として英語力の研鑽に励まれれば,その汚名を返上できる日も遠くはないと確信しています。
2004年12月
日本医学英語教育学会理事長
東京慈恵会医科大学脳神経外科教授
大井 静雄
------------------------------
序文
20年以上前のことです。 私は「医学英語教育の現状を語ろう」というバロン先生(現・日本医学英語教育学会副理事長)の呼びかけに関心をもち,直接お電話をしました。あいにく先生はお留守でしたが,その10年余後,先生にお会いしたのは,多くの医学教育者と英語教育者が集まった日本医学英語教育研究会でした。研究会はさほど年月を要することなく学会へと成長しました。それは,医学生の英語力養成に悪戦苦闘する両分野の教師が,植村研一先生(初代理事長)の「国際的に通用する英語運用能力をもつ医師養成」への情熱に共鳴したためと思われます。
この度の3巻から成る『講義録 医学英語』の刊行が,医学教育と英語教育という立場の異なる学会員たちの活動が結実したものであることは,現理事長の大井静雄先生が「刊行に寄せて」に記しているとおりです。本書,第1巻は「基本語彙と読解力の育成」を目ざし,学習者が医学英語には初級者であることを考慮して,以下のように構成しました。
Chapter 1 日本の医療制度の特徴(英文と語彙)
Chapters 2〜5基礎的な語彙(語彙の構成要素と体系別身体語彙)
Chapters 6〜8ニュース番組から(糖尿病,自閉症,SARS,心疾患)
Chapters 9〜12 医療の現場で使う英語表現
(会話形式による医学・医療表現の習得)
各章には,学習内容の理解を深めるために詳細な説明を加え,学習を確実にするために練習問題を付しています。
医学英語運用能力の基礎である専門語彙は,一種の記号とみなして丸暗記していく学習方法もあります。けれども膨大な医学語彙数を記憶するには,それは効果的な方法とは言えません。ここでは徐々に,けれども確実に語彙学習の“こつ”を習得します。
英文読解力の養成は,身近な内容の英文や実際に診療に用いる会話体を,聞く・書く・発声することと併せて学習できるように構成しました。
言語習得には短期的な集中学習と,気が遠くなるような長期学習とを必要とします。また,対象とする言語を使えるようになるには,日本語運用能力や人としての総合力をも必要とします。典型的な英語表現を覚えても,内容がなければ空疎な自己表現に留まってしまうでしょう。本書が,伝えるべきメッセージを持つ医師を目指す第一歩となることを祈っております。
2004年12月
『講義録 医学英語I』編集委員
日本医学英語教育学会理事
川崎医療福祉大学英語教授
清水 雅子
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目次
■Part 1 Medical System in Japan
Chapter 1 Characteristics of the Medical System in Japan
The System by which Doctors are Qualified and Permitted to Open Offices Freely
The Free Choice System for Patients
Medical Care Insurance System for Everyone
■Part 2 Medical Terminology
Chapter 2 Medical Terminology (1)
法則を見つけよう
意味を共有する接尾辞を見つけよう
'o'に注目
Chapter 3 Medical Terminology (2)
基本的な接尾辞を覚えよう
-algia
-itis
-osis
-oma
連結形を変化させよう
gastr-(胃)+他の要素
cardi-(心臓)+他の要素
複雑な構造の語の要素
Chapter 4 Medical Terminology (3)
連結母音と構成要素の組合せ:4つの鉄則
鉄則1と2の組合せ
鉄則3
鉄則4
例外
語根が2つ以上ある例
接頭辞の最後の母音を取らない例
特定の個人の名前からつくられた用語
Chapter 5 Body Parts
External Body Parts 身体の外面
head 頭
face 顔
neck 頸,首
trunk 体幹
extremities 四肢
Musculoskeletal System 筋骨格系
bone 骨
muscle 筋肉
Blood & Immune System 血液・免疫系
heart 心臓
blood vessels 血管
blood 血液
lymph リンパ
Respiratory System 呼吸器系
Digestive System 消化器系
oral cavity 口腔
stomach 胃
small intestine 小腸
large intestine 大腸
Urinary System 泌尿器系
Endocrine System 内分泌系
Reproductive System (Genital System) 生殖器系
male genital organs 男性生殖器
female genital organs 女性生殖器
Nervous System 神経系
brain 脳
central nervous system 中枢神経系
Sensory Organs 感覚器官
visual organ 視覚器官
auditory organ 聴覚器官
Skin 皮膚
Miscellaneous その他
■Part 3 Listening to Medical News
Chapter 6 Listening to Medical News (1)
Silent Killer
Autism: Early Signs
Chapter 7 Listening to Medical News (2)
Coping with SARS in the U.S.
Caring for the First SARS Patient in the U.S.
Chapter 8 Listening to Medical News (3)
Heart Test
Growing Arteries
■Part 4 Learning Medical Expressions
Chapter 9 Expressions to Describe Signs and Symptoms
At an outpatient clinic: A case of digestive problems
After the physical examination
Word Check
症状
基本的な医学用語
動詞表現
その他
Word Study
symptomsとsignsの相違は?
「症状」に関する表現
「症状」を表す用語
会話表現
冠詞の用法
bring on ...(症状の増悪因子について確認する表現)
Chapter 10 Expressions to Describe Vital Signs
In the ER: Mr. Smith was brought to the ER by ambulance. He is suffering from an ongoing chest pain.
After further physical examinations
Word Check
vital signsに関する用語
基本的な医学用語
動詞表現
検査用語
その他
Word Study
「胸痛」について
「罹っている」の表現
患者さんを落ち着かせる表現
症状がいつから生じたのかを尋ねる表現
vital signsをチェックするときの表現
血圧値を英語で読む場合
脈拍数を英語で読む場合
「正常範囲内」という表現
会話で用いられる英単語と医療用語との違い
Chapter 11 Expressions to Describe Pains
A suspected case of angina pectoris
After the physical examination
Word Check
痛みに関する表現
基本的な医学用語・検査用語
動詞表現
会話表現
その他
Word Study
「痛み」の有無を尋ねる表現
「痛み」の存在を訴える
Chapter 12 Expressions to Use in the Examination
Case 1. A patient with bronchitis
Case 2. A patient with a sprained ankle
Word Check
Word Study
検査の表現
Glossary
COLUMN
医学英語にはなぜギリシャ語源とラテン語源が多いのか? 1ギリシャ語からラテン語へ
日本の医学用語のルーツ
医学英語はどう発音するか?
杉田玄白と前野良沢
医学英語にはなぜギリシャ語源とラテン語源が多いのか? 2ラテン語を仲介したフランス語
初診の患者さんに相対するときの心得 (1)
初診の患者さんに相対するときの心得 (2)
Vital Signs
癌はなぜカニなのか?
「痛み」の表現
さまざまな意味をもつ"colic"
Chapter 1 Characteristics of the Medical System in Japan
The System by which Doctors are Qualified and Permitted to Open Offices Freely
The Free Choice System for Patients
Medical Care Insurance System for Everyone
■Part 2 Medical Terminology
Chapter 2 Medical Terminology (1)
法則を見つけよう
意味を共有する接尾辞を見つけよう
'o'に注目
Chapter 3 Medical Terminology (2)
基本的な接尾辞を覚えよう
-algia
-itis
-osis
-oma
連結形を変化させよう
gastr-(胃)+他の要素
cardi-(心臓)+他の要素
複雑な構造の語の要素
Chapter 4 Medical Terminology (3)
連結母音と構成要素の組合せ:4つの鉄則
鉄則1と2の組合せ
鉄則3
鉄則4
例外
語根が2つ以上ある例
接頭辞の最後の母音を取らない例
特定の個人の名前からつくられた用語
Chapter 5 Body Parts
External Body Parts 身体の外面
head 頭
face 顔
neck 頸,首
trunk 体幹
extremities 四肢
Musculoskeletal System 筋骨格系
bone 骨
muscle 筋肉
Blood & Immune System 血液・免疫系
heart 心臓
blood vessels 血管
blood 血液
lymph リンパ
Respiratory System 呼吸器系
Digestive System 消化器系
oral cavity 口腔
stomach 胃
small intestine 小腸
large intestine 大腸
Urinary System 泌尿器系
Endocrine System 内分泌系
Reproductive System (Genital System) 生殖器系
male genital organs 男性生殖器
female genital organs 女性生殖器
Nervous System 神経系
brain 脳
central nervous system 中枢神経系
Sensory Organs 感覚器官
visual organ 視覚器官
auditory organ 聴覚器官
Skin 皮膚
Miscellaneous その他
■Part 3 Listening to Medical News
Chapter 6 Listening to Medical News (1)
Silent Killer
Autism: Early Signs
Chapter 7 Listening to Medical News (2)
Coping with SARS in the U.S.
Caring for the First SARS Patient in the U.S.
Chapter 8 Listening to Medical News (3)
Heart Test
Growing Arteries
■Part 4 Learning Medical Expressions
Chapter 9 Expressions to Describe Signs and Symptoms
At an outpatient clinic: A case of digestive problems
After the physical examination
Word Check
症状
基本的な医学用語
動詞表現
その他
Word Study
symptomsとsignsの相違は?
「症状」に関する表現
「症状」を表す用語
会話表現
冠詞の用法
bring on ...(症状の増悪因子について確認する表現)
Chapter 10 Expressions to Describe Vital Signs
In the ER: Mr. Smith was brought to the ER by ambulance. He is suffering from an ongoing chest pain.
After further physical examinations
Word Check
vital signsに関する用語
基本的な医学用語
動詞表現
検査用語
その他
Word Study
「胸痛」について
「罹っている」の表現
患者さんを落ち着かせる表現
症状がいつから生じたのかを尋ねる表現
vital signsをチェックするときの表現
血圧値を英語で読む場合
脈拍数を英語で読む場合
「正常範囲内」という表現
会話で用いられる英単語と医療用語との違い
Chapter 11 Expressions to Describe Pains
A suspected case of angina pectoris
After the physical examination
Word Check
痛みに関する表現
基本的な医学用語・検査用語
動詞表現
会話表現
その他
Word Study
「痛み」の有無を尋ねる表現
「痛み」の存在を訴える
Chapter 12 Expressions to Use in the Examination
Case 1. A patient with bronchitis
Case 2. A patient with a sprained ankle
Word Check
Word Study
検査の表現
Glossary
COLUMN
医学英語にはなぜギリシャ語源とラテン語源が多いのか? 1ギリシャ語からラテン語へ
日本の医学用語のルーツ
医学英語はどう発音するか?
杉田玄白と前野良沢
医学英語にはなぜギリシャ語源とラテン語源が多いのか? 2ラテン語を仲介したフランス語
初診の患者さんに相対するときの心得 (1)
初診の患者さんに相対するときの心得 (2)
Vital Signs
癌はなぜカニなのか?
「痛み」の表現
さまざまな意味をもつ"colic"
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医師・医療関係者に求められる英語力を体系的に学ぶための日本で初めての医学英語教科書(全3巻)初級編
英語での診療・学会発表・論文執筆を最終到達目標として,医師・医療関係者に求められる英語力を総合的・体系的に学ぶために企画された,日本で初めての医学英語教科書。本書はその第1段階(初級編)として,語彙の充実(専門用語の習得やその語源の理解,および文章としての表現)と読解力の向上(一般向け医療関連読み物を題材にして)を主眼とする12章から構成されている。