がん診療のUNCOMMON
対応マニュアル

がん診療のUNCOMMON対応マニュアル

■編集 内藤 陽一

定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
  • A5判  140ページ  2色
  • 2016年9月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-0393-4

誰も教えてくれなかった“Uncommon”ながん種・副作用・病態の具体的な治療がわかる!

がん診療においては,典型的ながん種・副作用・病態の患者ばかりが受診してくるとは限らない。ときには,これまでのがんの解説書には掲載されていないような“Uncommon”なケースに遭遇してしまうこともある。そのようなとき患者にどう説明し,どう治療を行うべきか,誰も教えてはくれなかった。
本書は,このような“Uncommon”なケースに遭遇してしまった場合の知っておくべき知識・対処法を,具体的かつ簡潔に解説している。すべてのがん診療を行う医師必携の書である。


序文

 がんは日本人の病死の原因のうちで最多であり,今や2人に1人は生涯のうちにがんに罹患するといわれています。したがって,がんを専門としていなくても,がん患者を診療することは(もちろん,専門医へ紹介する,ということも含めてですが),避けられない時代となってきています。一方でがんの治療のほうも進歩がみられ,特に最近話題になっているのは,免疫チェックポイント阻害薬といわれる,ニボルマブ(オプジーボ®)のような薬剤です。非常に期待される薬剤であると同時に,有害事象もユニークです。
 たとえば,がん死亡の中で最多である肺がんを例にとってみましょう。
 ニボルマブで治療中の肺がんの70歳男性が,「風邪気味です」といって夜間の救急外来を受診。微熱,食欲が少し落ちているくらいだったので,感冒薬で経過観察を指示。その3日後には糖尿病性昏睡で入院し,集中治療室管理となる,なんていうのも現実に起こりうる話です。これは,免疫チェックポイント阻害薬のまれな有害事象に,劇症1型糖尿病があることを念頭に置かなければ,なかなかチェックできないかもしれません。しかし,肺がん患者に対するニボルマブ投与はすでに国内で幅広く行われるようになってきているのです。
 あるいは,多発する脳梗塞を発症した患者を目の前にして,心原性脳梗塞以外に,Trousseau症候群を鑑別に挙げられるでしょうか。
 本書は「がんを専門にする医師が,コンサルトを受けたときに適切に回答できるような,比較的まれだけれども知っておくべき病態や疾患,有害事象」を網羅するとともに,「がんを専門としていない医師であっても,知っておいたほうがよいような病態」について,わかりやすくまとめたものになっています。本書が皆様の日常診療の一助になることを願います。

2016年8月
国立がん研究センター東病院 先端医療科/乳腺・腫瘍内科
国立がん研究センター 希少がんセンター
内藤 陽一
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目次

Ⅰ こんなときどうしよう:疾患編
 1 前縦隔に腫瘍が  内藤陽一
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①胚細胞腫瘍
  ②リンパ芽球性リンパ腫(LBL)
  ③びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
  ④Hodgkinリンパ腫(HL)
  ⑤胸腺腫
  ⑥胸腺がん
  どんなときに専門家を紹介するか
  
 2 脳腫瘍:脳にのみ病変がみられたときどうするか  宮北康二、成田善孝
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①転移性脳腫瘍
  ②悪性神経膠腫
  ③中枢神経系原発悪性リンパ腫
  ④頭蓋内原発胚細胞腫瘍
  どんなときに専門家を紹介するか
  
 3 眼腫瘍  鈴木茂伸
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①脈絡膜悪性黒色腫
  ②転移性脈絡膜腫瘍
  ③眼内悪性リンパ腫
  ④網膜芽細胞腫
  ⑤眼付属器腫瘍
  どんなときに専門家を紹介するか
  
 4 胸水のみの疾患の鑑別  佐々木政興
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①悪性リンパ腫
  ②悪性胸膜中皮腫
  
 5 腹水のみの疾患の鑑別  下井辰徳
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①原発性腹膜がん
  ②腹膜中皮腫
  ③偽粘液腫
  ④虫垂がん
  ⑤小腸がん
  どんなときに専門家を紹介するか
  
 6 副腎がはれている  古川孝広
  鑑別疾患
  ①副腎皮質腫瘍
  ②機能性腫瘍
  ③副腎髄質腫瘍
  ④その他
  各疾患における診断と治療
  ①副腎皮質がん
  ②褐色細胞腫
  ③転移性副腎がん
  どんなときに専門家を紹介するか
  
 7 腎臓に腫瘍  松原伸晃
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①腎細胞がん
  ②上部尿路がん(腎盂がん、尿管がん)
  ③集合管がん(Bellini 管がん)
  ④他の悪性腫瘍の腎転移
  
 8 血液の異常  成川研介、塚崎邦弘
  (汎)血球減少症
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①骨髄異形成症候群
  ②急性前骨髄球性白血病
  ③急性骨髄球性白血病
  (汎)血球増多症:赤血球、顆粒球を主とした白血球、血小板の増多
  鑑別疾患
  各疾患における診断と治療
  ①慢性骨髄性白血病
  ②真性多血症
  ③本態性血小板血症
  ④原発性骨髄線維症
  
 9 Spindle cell tumorというけれど:肉腫  公平 誠
  鑑別疾患
  ①肉腫
  ②がん肉腫
  ③上皮系腫瘍
  各疾患における診断と治療
  ①平滑筋肉腫
  ②脂肪肉腫
  ③未分化多形肉腫
  ④炎症性筋線維芽細胞腫瘍(IMT)
  ⑤Ewing肉腫
  ⑥横紋筋肉腫
  どんなときに専門家を紹介するか
  
Ⅱ こんなときどうしよう:病態・副作用編
 1 目がかすむ  鈴木茂伸
  目がかすむ原因と病態
  ①角膜上皮障害
  ②ぶどう膜炎
  ③漿液性網膜剥離(SRD)
  ④嚢胞様黄斑浮腫(CME)
  ⑤がん関連網膜症(CAR)
  ⑥メラノーマ関連網膜症(MAR)
  
 2 肝臓の異常  高橋秀明
  結節性再生性過形成
  ①病態
  ②診断
  ③原因
  ④予後
  ⑤治療
  びまん性類洞内転移
  ①病態
  ②診断
  ③原因
  ④予後
  B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化
  ①背景
  ②病態
  ③予防(HBs抗原陽性例)
  ④モニタリング(HBc抗体陽性もしくはHBs抗体陽性)
  ⑤まとめ
  
 3 急速な呼吸困難:PTTM  善家義貴
  PTTMとは?
  
 4 多発する血栓:Trousseau症候群  橋本 淳
  Trousseau症候群とは?
  Trousseau症候群による脳梗塞
  ①担がん患者のTrousseau症候群による脳梗塞の病型
  ②鑑別
  ③治療・予防
  
 5 水腎症/後腹膜線維化  横山雄章、内藤陽一
  後腹膜線維化(retroperitoneal fibrosis)とは?
  IgG4関連疾患
  Erdheim-Chester病(ECD)
  ①鑑別
  ②治療
  
 6 irAE:免疫関連の有害事象  久保木恭利
  総論
  頻度、原因
  代表的なirAE
  治療
  参考 オプシーボ®国内臨床試験において使用している過度の免疫反応による副作用の対処法アルゴリズム
  肺関連有害事象の対処法アルゴリズム
  胃腸関連有害事象の対処法アルゴリズム
  肝関連有害事象の対処法アルゴリズム
  内分泌障害の対処法アルゴリズム
  皮膚関連有害事象の対処法アルゴリズム
  
 7 高リン血症  近藤俊輔
  高リン血症とは?
  
 8 皮膚(デルマドローム)  上野真紀子、山﨑直也
  デルマドロームの定義、概念
  日常診療で遭遇しやすいデルマドローム
  ①診断が比較的容易で、デルマドロームとして気づくべきもの
  ②高頻度に内臓悪性腫瘍を伴う皮膚疾患
  ③日常診療で遭遇しやすい皮膚症状や疾患のなかで、悪性腫瘍合併の頻度は高くないがその存在に注意すべき疾患
  ④対策・治療
  
 9 腫瘍随伴症候群(PNS)  山﨑知子
  腫瘍随伴症候群の背景
  ①日常臨床において腫瘍随伴症候群を疑うべき症状
  ②臨床診断がついた際に腫瘍随伴症候群を再度疑うべき病態
  ③注意すべきこと
  ④検査方法
  ⑤一般的な治療法
  ⑥分類
  まとめ
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