神経内科外来シリーズ 2
パーキンソン病外来
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定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- B5変型判 276ページ 2色(一部カラー)
- 2016年2月22日刊行
- ISBN978-4-7583-0383-5
電子版
序文
パーキンソン病診療の主たる場は,“外来”です。神経内科医や内科医,あるいは脳外科医などとして様々な領域でご活躍されている先生方がパーキンソン病患者を外来で診療する機会は多いと思います。そして日常診療の中で,先生方は患者の多種多様な訴えや症状に対してどうアプローチして治療していくのか,日々,創意工夫しながら診察をしておられることでしょう。そんな時,是非,実際の日常診療にお役立て頂きたく,本書を企画しました。
本書は,現在パーキンソン病の診療・研究の第一線でご活躍のエキスパートの先生方が長年にわたって“パーキンソン病専門外来”を通して学ばれた豊富な臨床経験,すなわち,“パーキンソン診療のコツ”が各項目の中で,ふんだんにかつ分かりやすく記載してあります。項目の順番は読者の皆様が理解しやすいように,我々専門医が患者を外来で実際に診察する流れを想定して決めました。最初にパーキンソン病に関する最近の知見を含んだ総論的なお話,外来診療に必要な基本的知識,治療の進め方について順に解説しました。次に実際の症例を提示しながらガイドラインを学べるようにし,パーキンソン診療のpitfallが理解できるような症例を提示,最後に社会資源の活用法について記載しました。本書の特徴は,パーキンソン病診療の専門の先生方が経験した症例を示し,様々な症状に対して実際にどのように対応しているのかを具体的に解説している点です。昨今,パーキンソン病に関する書籍は市場に多く出回っていますが,これらの多くはエビデンスのみに則した画一的な内容であり,エキスパートの先生方が診療に難渋する患者に対して,具体的な対応策を十分に提示しきれていないように思えます。本書に目を通すとお分かりになると思いますが,個々の症例に対してエビデンスに則った対処法が示されているだけではなく,執筆者自身の考えに基づく工夫も随所に記載されています。その上,各項目に図・表を多く用いて解説されていますので,本書を読んでいただくだけで,パーキンソン病患者の診療に必要な実践的な知識を効率よく学べるようになっています。
本書に書かれた最新の知識によって診療への備えを万端に整えていただくのはもちろんのこと,是非,本書を臨床の現場へ携えていただけるならば,編者にとって望外の幸せです。“パーキンソン病専門外来”はもちろん,パーキンソン病患者に関わるすべての"臨床現場"で,本書が座右の書としてひも解かれることを切望して,本書刊行の言葉と致します。
最後に,ご執筆いただきました先生方にこの場を借りまして改めて謝意を表します。本書は,神経内科専門外来シリーズの一冊として位置づけられます。総合監修にあたられた荒木信夫先生にも敬意を込めてお礼申し上げます。
2016年1月
埼玉医科大学神経内科
山元敏正
高橋一司
本書は,現在パーキンソン病の診療・研究の第一線でご活躍のエキスパートの先生方が長年にわたって“パーキンソン病専門外来”を通して学ばれた豊富な臨床経験,すなわち,“パーキンソン診療のコツ”が各項目の中で,ふんだんにかつ分かりやすく記載してあります。項目の順番は読者の皆様が理解しやすいように,我々専門医が患者を外来で実際に診察する流れを想定して決めました。最初にパーキンソン病に関する最近の知見を含んだ総論的なお話,外来診療に必要な基本的知識,治療の進め方について順に解説しました。次に実際の症例を提示しながらガイドラインを学べるようにし,パーキンソン診療のpitfallが理解できるような症例を提示,最後に社会資源の活用法について記載しました。本書の特徴は,パーキンソン病診療の専門の先生方が経験した症例を示し,様々な症状に対して実際にどのように対応しているのかを具体的に解説している点です。昨今,パーキンソン病に関する書籍は市場に多く出回っていますが,これらの多くはエビデンスのみに則した画一的な内容であり,エキスパートの先生方が診療に難渋する患者に対して,具体的な対応策を十分に提示しきれていないように思えます。本書に目を通すとお分かりになると思いますが,個々の症例に対してエビデンスに則った対処法が示されているだけではなく,執筆者自身の考えに基づく工夫も随所に記載されています。その上,各項目に図・表を多く用いて解説されていますので,本書を読んでいただくだけで,パーキンソン病患者の診療に必要な実践的な知識を効率よく学べるようになっています。
本書に書かれた最新の知識によって診療への備えを万端に整えていただくのはもちろんのこと,是非,本書を臨床の現場へ携えていただけるならば,編者にとって望外の幸せです。“パーキンソン病専門外来”はもちろん,パーキンソン病患者に関わるすべての"臨床現場"で,本書が座右の書としてひも解かれることを切望して,本書刊行の言葉と致します。
最後に,ご執筆いただきました先生方にこの場を借りまして改めて謝意を表します。本書は,神経内科専門外来シリーズの一冊として位置づけられます。総合監修にあたられた荒木信夫先生にも敬意を込めてお礼申し上げます。
2016年1月
埼玉医科大学神経内科
山元敏正
高橋一司
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目次
Ⅰ パーキンソン病についての基礎知識
パーキンソン病とは 山元敏正
はじめに
PDの疾患概念
PDの原因
パーキンソン病の疫学 野村哲志ほか
はじめに
有病率、罹患率とは
パーキンソン病の有病率
パーキンソン病の罹患率
パーキンソン病の性差
パーキンソン病の予後
パーキンソン病の病型による相違
早期のパーキンソン病スクリーニング方法
パーキンソン病の病理 齊藤祐子
はじめに
パーキンソン病の病理の基本
Lewy bodyの病理がみられる部位と症状との関連
Lewy小体病理の伝播
まとめ
遺伝性パーキンソン病 波田野 琢ほか
はじめに
常染色体優性遺伝性パーキンソン病
常染色体劣性遺伝性パーキンソン病
Glucocerebrosidaseとパーキンソン病
Ⅱ 外来診察の進め方
問診のポイント 野川 茂
はじめに
運動症状
非運動症状
社会的活動度
診察 三輪英人
はじめに
運動症状の評価
認知機能の評価
運動症状と診断基準・評価スケール 前田哲也
はじめに
運動症状
診断基準
評価スケール
おわりに
非運動症状と評価スケール 高橋一司
パーキンソン病の非運動症状
パーキンソン病の発症時/発症前駆期の非運動症状
自律神経症状
睡眠障害
精神・認知・行動障害
感覚障害
その他
ウェアリング・オフ現象に伴う非運動症状の増悪(nonmotor fluctuations)
検査 高橋一司
基本的な考え
MIBG心筋シンチグラフィー検査(MIBG)
ドパミントランスポーター(DAT)スキャン検査
鑑別診断:多系統萎縮症 渡辺宏久ほか
多系統萎縮症の概念
外来における診断の留意点
外来における画像検査
鑑別診断:進行性核上性麻痺 森 秀生
はじめに
こんな病歴のときにPSPを疑う
PSPが疑われるときの診察のポイント
鑑別診断と検査
薬物治療と対処方針
鑑別診断:大脳皮質基底核変性症 森 秀生
はじめに
こんな病歴のときにCBDを疑う
CBD(CBS)が疑われるときの診察のポイント
診断のための臨床検査
薬物治療と対処方針
鑑別診断:Lewy小体型認知症 波田野 琢ほか
はじめに
Lewy小体型認知症の診断基準および診断のポイント
Lewy小体型認知症の治療
鑑別診断:脳血管性パーキンソニズム 藤岡伸助ほか
はじめに
疫学
臨床症状
検査・診断
治療
予後
鑑別診断:正常圧水頭症 藤岡伸助ほか
はじめに
疫学
臨床症状
検査
診断
治療・予後
鑑別診断:薬剤性パーキンソニズム 藤岡伸助ほか
はじめに
疫学
臨床症状
検査・診断
治療・予後
外来診療のポイント 藤本健一
はじめに
病名告知
初期診療のコツ
進行期診療のコツ
Ⅲ 外来治療の進め方
薬物療法:運動症状に対する薬物療法 吉岡 勝ほか
パーキンソン病の病態進行に応じた治療の選択
早期治療
パーキンソン病治療薬の特徴
進行期治療
薬物療法:精神症状に対する薬物療法 柏原健一
はじめに
幻覚・妄想
うつ
睡眠障害
薬物療法:自律神経症状に対する薬物療法 渡辺宏久ほか
パーキンソン病で認める自律神経症状とその特徴
消化器(便秘など)
心血管系(起立性低血圧)
排尿・性機能
発汗障害
リハビリテーション 林 明人
はじめに
リハビリテーションの意味
リハビリテーションの種類・方法
重症度によるリハビリテーションの目標と介入方法
リハビリテーションの有効性のエビデンス
リハビリテーションとしての音楽療法
音楽療法前後での携帯歩行計の変化
パーキンソン病の症状・日常生活の問題点の把握
「ブラッシュアップ入院」について
リハビリテーションを継続させるために
脳深部刺激療法の適応・合併症 大山彦光ほか
はじめに
脳深部刺激療法のターゲットとその効果
脳深部刺激療法の適応
日常外来でDBSを考慮するタイミング
患者へのインフォームドコンセントのポイント
周術期の神経内科医の役割
日常外来でのDBS調整
DBSトラブルシューティング
おわりに
Ⅳ Case Study:症例を通してガイドラインを学ぶ
50歳代発症の職業運転手の症例 吉岡 勝ほか
60歳代発症の事務職の症例 吉岡 勝ほか
70歳代発症の症例 吉岡 勝ほか
ウェアリング・オフが主体の症例 前田哲也
ジスキネジアが主体の症例 前田哲也
起立性低血圧を呈する症例 山元敏正
重度の便秘を呈する症例 榊原隆次ほか
排尿障害を呈する症例 榊原隆次ほか
REM期睡眠行動異常症を呈する症例 野村哲志ほか
幻覚を呈する症例 柏原健一
重度の幻覚・妄想を呈する症例 柏原健一
アパシーを呈する症例 永山 寛
重度のうつを呈する症例 永山 寛
突発性睡眠を呈する症例 熊谷智昭ほか
日中過眠症を呈する症例 野村哲志ほか
姿勢異常を呈する症例 藤本健一
病的賭博を呈する症例 藤本健一
運動合併症に脳深部刺激が有効であった症例 大山彦光ほか
Ⅴ 外来診療のpitfall
当初はパーキンソン病と診断されていた多系統萎縮症のパーキンソンフォームの症例 山元敏正
実は薬剤性パーキンソニズムであった症例 藤岡伸助ほか
実はLewy小体型認知症であった症例 野川 茂
実は進行性核上性麻痺であった症例 森 秀生
慢性硬膜下血腫により症状が増悪したパーキンソン病の症例 山元敏正
Ⅵ 社会資源の活用法
特定疾患制度、身体障害者制度、介護保険による認定 市川 忠
はじめに
特定疾患制度から難病法への移行
難病法での認定と支援
身体障害者制度
介護保険制度
身体障害サービスと介護保険サービスが重複するとき
まとめ
患者支援組織 市川 忠
はじめに
全国パーキンソン病友の会
パーキンソン病友の会都道府県支部
日本パーキンソン病コングレス
友の会との関係
パーキンソン病とは 山元敏正
はじめに
PDの疾患概念
PDの原因
パーキンソン病の疫学 野村哲志ほか
はじめに
有病率、罹患率とは
パーキンソン病の有病率
パーキンソン病の罹患率
パーキンソン病の性差
パーキンソン病の予後
パーキンソン病の病型による相違
早期のパーキンソン病スクリーニング方法
パーキンソン病の病理 齊藤祐子
はじめに
パーキンソン病の病理の基本
Lewy bodyの病理がみられる部位と症状との関連
Lewy小体病理の伝播
まとめ
遺伝性パーキンソン病 波田野 琢ほか
はじめに
常染色体優性遺伝性パーキンソン病
常染色体劣性遺伝性パーキンソン病
Glucocerebrosidaseとパーキンソン病
Ⅱ 外来診察の進め方
問診のポイント 野川 茂
はじめに
運動症状
非運動症状
社会的活動度
診察 三輪英人
はじめに
運動症状の評価
認知機能の評価
運動症状と診断基準・評価スケール 前田哲也
はじめに
運動症状
診断基準
評価スケール
おわりに
非運動症状と評価スケール 高橋一司
パーキンソン病の非運動症状
パーキンソン病の発症時/発症前駆期の非運動症状
自律神経症状
睡眠障害
精神・認知・行動障害
感覚障害
その他
ウェアリング・オフ現象に伴う非運動症状の増悪(nonmotor fluctuations)
検査 高橋一司
基本的な考え
MIBG心筋シンチグラフィー検査(MIBG)
ドパミントランスポーター(DAT)スキャン検査
鑑別診断:多系統萎縮症 渡辺宏久ほか
多系統萎縮症の概念
外来における診断の留意点
外来における画像検査
鑑別診断:進行性核上性麻痺 森 秀生
はじめに
こんな病歴のときにPSPを疑う
PSPが疑われるときの診察のポイント
鑑別診断と検査
薬物治療と対処方針
鑑別診断:大脳皮質基底核変性症 森 秀生
はじめに
こんな病歴のときにCBDを疑う
CBD(CBS)が疑われるときの診察のポイント
診断のための臨床検査
薬物治療と対処方針
鑑別診断:Lewy小体型認知症 波田野 琢ほか
はじめに
Lewy小体型認知症の診断基準および診断のポイント
Lewy小体型認知症の治療
鑑別診断:脳血管性パーキンソニズム 藤岡伸助ほか
はじめに
疫学
臨床症状
検査・診断
治療
予後
鑑別診断:正常圧水頭症 藤岡伸助ほか
はじめに
疫学
臨床症状
検査
診断
治療・予後
鑑別診断:薬剤性パーキンソニズム 藤岡伸助ほか
はじめに
疫学
臨床症状
検査・診断
治療・予後
外来診療のポイント 藤本健一
はじめに
病名告知
初期診療のコツ
進行期診療のコツ
Ⅲ 外来治療の進め方
薬物療法:運動症状に対する薬物療法 吉岡 勝ほか
パーキンソン病の病態進行に応じた治療の選択
早期治療
パーキンソン病治療薬の特徴
進行期治療
薬物療法:精神症状に対する薬物療法 柏原健一
はじめに
幻覚・妄想
うつ
睡眠障害
薬物療法:自律神経症状に対する薬物療法 渡辺宏久ほか
パーキンソン病で認める自律神経症状とその特徴
消化器(便秘など)
心血管系(起立性低血圧)
排尿・性機能
発汗障害
リハビリテーション 林 明人
はじめに
リハビリテーションの意味
リハビリテーションの種類・方法
重症度によるリハビリテーションの目標と介入方法
リハビリテーションの有効性のエビデンス
リハビリテーションとしての音楽療法
音楽療法前後での携帯歩行計の変化
パーキンソン病の症状・日常生活の問題点の把握
「ブラッシュアップ入院」について
リハビリテーションを継続させるために
脳深部刺激療法の適応・合併症 大山彦光ほか
はじめに
脳深部刺激療法のターゲットとその効果
脳深部刺激療法の適応
日常外来でDBSを考慮するタイミング
患者へのインフォームドコンセントのポイント
周術期の神経内科医の役割
日常外来でのDBS調整
DBSトラブルシューティング
おわりに
Ⅳ Case Study:症例を通してガイドラインを学ぶ
50歳代発症の職業運転手の症例 吉岡 勝ほか
60歳代発症の事務職の症例 吉岡 勝ほか
70歳代発症の症例 吉岡 勝ほか
ウェアリング・オフが主体の症例 前田哲也
ジスキネジアが主体の症例 前田哲也
起立性低血圧を呈する症例 山元敏正
重度の便秘を呈する症例 榊原隆次ほか
排尿障害を呈する症例 榊原隆次ほか
REM期睡眠行動異常症を呈する症例 野村哲志ほか
幻覚を呈する症例 柏原健一
重度の幻覚・妄想を呈する症例 柏原健一
アパシーを呈する症例 永山 寛
重度のうつを呈する症例 永山 寛
突発性睡眠を呈する症例 熊谷智昭ほか
日中過眠症を呈する症例 野村哲志ほか
姿勢異常を呈する症例 藤本健一
病的賭博を呈する症例 藤本健一
運動合併症に脳深部刺激が有効であった症例 大山彦光ほか
Ⅴ 外来診療のpitfall
当初はパーキンソン病と診断されていた多系統萎縮症のパーキンソンフォームの症例 山元敏正
実は薬剤性パーキンソニズムであった症例 藤岡伸助ほか
実はLewy小体型認知症であった症例 野川 茂
実は進行性核上性麻痺であった症例 森 秀生
慢性硬膜下血腫により症状が増悪したパーキンソン病の症例 山元敏正
Ⅵ 社会資源の活用法
特定疾患制度、身体障害者制度、介護保険による認定 市川 忠
はじめに
特定疾患制度から難病法への移行
難病法での認定と支援
身体障害者制度
介護保険制度
身体障害サービスと介護保険サービスが重複するとき
まとめ
患者支援組織 市川 忠
はじめに
全国パーキンソン病友の会
パーキンソン病友の会都道府県支部
日本パーキンソン病コングレス
友の会との関係
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ガイドラインに基づくパーキンソン病治療を,Case Studyをとおして学べる1冊
神経内科医が接する機会の多い神経疾患(頭痛,認知症,パーキンソン病,てんかん,脳卒中)の外来診察に必要なノウハウを,シェーマ,フローチャートなどを多用しコンパクトにまとめて解説しているシリーズ。
今回は,「パーキンソン病」を取り上げる。超高齢社会をむかえ,パーキンソン病患者は増えつつあり,今後外来でも診療の機会が増えていくと考えられる。外来で必要な基本的知識,外来の基本的な流れを解説した後,パーキンソン病のさまざまな症状に対する治療を,Case Studyをとおして学べるようになっている。また合わせてガイドラインに基づく治療が身につけられるようにした。
パーキンソン病外来の基本が身につく1冊である。