IgA腎症診断Navi

IgA腎症診断Navi

■著者 片渕 律子

定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
  • B5判  128ページ  オールカラー,写真120点
  • 2013年6月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-0367-5

在庫僅少です。


多彩な病理像を呈するIgA腎症をやさしく詳しくナビゲート!

IgA腎症は成人の原発性糸球体腎炎の多数を占め,発症後20年以内に約40%が末期腎不全に至る疾患であり,予後不良因子を有する患者では,早期より積極的な治療が推奨される。多彩な病理像を呈する本疾患の診断には腎生検が欠かせず,腎生検での正しい病理診断が重要である。
2007年に刊行された「腎生検診断Navi」の著者による本書は,腎生検によるIgA腎症の病理像をアトラス的に掲載し,豊富な病理像アトラスと,重症度分類についての詳しい解説の2本柱で,IgA腎症の重症度までを診断できる内容となっている。


序文

はじめに

 『腎生検診断Navi』を出版して6年が経過しました。今回,私のライフワークであるIgA腎症に関する本を出版できるのは望外の喜びです。
 今回の出版のきっかけのエピソードについて語ると,『腎生検診断Navi』のときと同様,またしても聖マリアンナ医科大学の安田 隆先生にご登場いただくことになります。
 2012年1月,平成24年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「進行性腎障害に関する調査研究」IgA腎症診療ガイドライン作成委員会(委員長:藤田保健衛生大学医学部腎内科学教授 湯澤由起夫先生)に途中から入れていただきました。当初のメンバーの先生のお1人がご多忙で,メンバーを1人穴埋めしなければならなくなったのです。私の主な担当はIgA腎症の病理分類でした。IgA腎症の病理分類は古くから有名な分類が多数あり,私自身も,どの分類がどうなっているのか,きちんと頭に入っていませんでした。そこで,歴史的背景や,互いの分類の関係などをふまえて,自分なりにまとめてみました。表も作成し,順番に解説を加えていきました。オリジナル版はとても長く,診療ガイドラインにはそぐわないものでしたので,かなりの部分をそぎ落とさざるを得ませんでした。ところが,同じくIgA腎症診療ガイドライン作成委員会のメンバーである安田 隆先生が,私の原稿をいたく気に入って下さって,“そぎ落とさなくて済むように,本にすればいい”と言われました。IgA腎症診療ガイドライン作成委員会会議の帰り,会議室のあったビルから品川駅までの歩道上で,それならば,私が講演で使っている病理の画像も掲載したらいいかも,などと盛り上がったのがきっかけでした。そして安田 隆先生は本当に,出版社に連絡をしてくださり,このたびの出版の運びとなりました。
 この本の構成は,三部形式になっています。Part ⅠはIgA腎症の病理で,できるだけたくさんの画像を掲載しました。また,随所に“Oxford分類の定義”について触れています。Oxford分類は2009年に国際IgA腎症ネットワークと国際腎病理協会の協力のもとに作成された画期的なIgA腎症の国際分類です。この分類で最も評価されるべきは,国際協力のもとに,IgA腎症の多彩な病変の一つ一つの定義を明確に示したことです。定義の内容には検証が必要な部分もありますが,病変の定義を明確にすることがIgA腎症に限らず,病理診断の出発点です。従って,病変の解説の際に,Oxford分類の定義について触れるようにしました。
 また,画像についてですが,『腎生検診断Navi』ではクリアカットな説明に終始しました。腎生検診断に親しんでいただくために,分かりやすい説明が必要でした。しかし,実際には,病変診断に悩む場合も少なくありません。IgA腎症は病変が多彩であり,各種病変が混在しており,どこがどうなっているのか解らずに泣きそうになることもあります。そんなとき,筆者は“ええい”と長刀をふるって決めることにしています。しかし,実際には,迷うこともかなりあります。この『IgA腎症診断Navi』では,“病変診断や解釈に迷う病変たち”と題して,実際には迷うことも多々あるという実態をそのまま示してみました。すなわち同じ病変を複数の病理医が何と診断するか,をそのまま出してみました。これをみて,“本当に病理とは,わけのわからん分野だ”,“だから病理は好かんのだ”,と思われるか,“やはり病理が奥が深く,だから大変興味深い”,と思っていただけるかは,貴方(貴女)次第です。私は皆さんが後者であることを心より願います。
 Part ⅡはIgA腎症の組織分類です。前述のようにIgA腎症診療ガイドライン用に書いた原稿をもとに作成しました。
 Part ⅢはIgA腎症のステロイド治療です。これは2012年の『腎と透析』72巻1月号に掲載された“特集 IgA腎症―明らかになったことと今年の問題点”の副腎皮質ステロイド療法の項目の総説と,2012年の日本腎臓学会西部学術大会の教育講演のスライドをもとに書きました。Part ⅡとⅢは,文献的考察で,内容が古くなるため,病理を中心としたこの種の本に掲載するのは不適切かもしれません。その点はご了承いただきたく存じます。
 ひとの出会いとは不思議なもので,私がIgA腎症診療ガイドライン作成委員会委員の穴埋めとして参加させていただいていなかったら,この本は日の目を見ていません。ひと様から背中を押されて,調子に乗ってできたのがこの本です。IgA腎症診療ガイドラインはメンバーが総力をあげて作成したもので,2014年春に出版予定です。非常に完成度の高いものになっていますので,ご期待ください。この本がIgA腎症診療ガイドラインの前座としての役割を果たせれば幸いです。

2013年6月吉日
福岡東医療センター
片渕律子
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目次

part Ⅰ IgA腎症の病理
 IgA腎症の定義と病理の特徴
  IgA腎症の定義
  IgA腎症の病理の特徴
 多彩なIgA腎症の糸球体病変
  1.メサンギウム病変
    メサンギウム細胞増多(mesangial hypercellularity)
    メサンギウム基質の増加
    メサンギウムへの均質無構造物質の沈着
    メサンギウム病変のいろいろ
    メサンギウム融解(mesangiolysis)
  2.管内細胞増多(endocapillary hypercellularity)
  3.係蹄壊死(tuft necrosis)
    管内細胞増多から係蹄壊死まで:連続切片での確認
    核崩壊像(karyorrhexis)
  4.管外病変(extracapillary lesions)
    細胞性半月体
    線維細胞性半月体
    線維性半月体
    collagen collar:無理して和訳するとコラーゲンの襟(?)
  5.分節性硬化(segmental sclerosis)
    半月体、分節性硬化の混在
  6.係蹄壁の癒着(tuft adhesion)
  7.基底膜の二重化
  8.全節性硬化(global sclerosis)
 IgA腎症の糸球体病変の特徴—新旧の病変が混在していること
  1.1つの糸球体内の新旧の病変
  2.同一切片内の新旧の病変
  3.advanced caseにみられる急性病変
 解釈や診断に迷う病変たち
 間質、尿細管病変
  1.間質病変と糸球体病変の関係
  2.肉眼的血尿の際の急性腎障害(acute kidney injury;AKI)—赤血球円柱と尿細管障害—
 血管病変
  1.弓状動脈線維性内膜肥厚
  2.小葉間動脈線維性内膜肥厚
  3.細動脈硝子様変化(hyaline change)
 IgA腎症における病変進展過程(想像図)
 
part Ⅱ IgA腎症の分類
 Oxford分類以前の組織重症度分類
  grading (lumped system)による分類
    SM Leeらの分類(1982年)
    HS Leeらの分類(1987年)
    IgA腎症診療指針第2版(2002年)
    Refined HS Leeの分類
    IgA腎症診療指針第3版(2011年)
    Haasの分類(1997年)
    Mannoらの分類(2007年)
  scoring(split system)による分類
    Alamartineらの分類(1990年)
    Radfordらの分類(1997年)
    Katafuchiらの分類(1998年)
 Oxford分類
  目的 
  対象と方法
    適応基準 
    除外基準 
  病変の定義
  病変診断の再現性
  病変間の相関
  臨床背景と予後
  病理と予後の関係:臨床パラメーターと独立して予後に影響を及ぼす病変の選択
  病変と予後の関係に関する治療の交互作用
  Oxford分類の確定
  Oxford分類の問題点
  Oxford分類:成人と小児に分けた解析
 Oxford分類のvalidation study
  さまざまなvalidation studyの報告
  小児のvalidation study
 IgA腎症診療指針第3版
 
part Ⅲ IgA腎症のステロイド治療
 IgA腎症に対するステロイド療法の時代的変遷:年表を用いて
 IgA腎症のステロイド治療に関する主な論文の要約
    Kobayashi Y, et al. (Japan)
    Waldo FB, et al. (USA)
    Welch TR, et al. (USA)
    Pozzi C, et al. (Italy)
    Shoji T, et al. (Japan)
    Katafuchi R, et al (Japan)
  ステロイドの効果の予測をメインテーマにした論文
    Koike M, et al. (Japan)
    Honda K, et al (Japan)
    Tomiyoshi Y, et al. (Japan)
    Harada K, et al (Japan)
    Shimizu A, et al. (Japan)
  寛解と再燃の予測に関する論文
    Suzuki T, et al (Japan)
  Steroid protocolの違いによる効果の差
    Katafuchi R, et al. (Japan)
  ステロイド単独療法以外の主要論文
    Yoshikawa N, et al. (Japan)
    Ballardie FW, et al. (UK)
    Hotta O, et al. (Japan)
 総括:IgA腎症のステロイド療法―明らかになったことと今後の問題点
    明らかになったこと(あるいは明らかになりつつあること)
    今後の問題点
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