「うつ」を見抜く! 対処する! プライマリケア医のための
うつ病診療

定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
- B5判 176ページ 2色
- 2009年7月16日刊行
- ISBN978-4-7583-0236-4
在庫僅少です。
序文
ここ数年,うつ病は増加傾向にあり,精神科医,心療内科医ばかりでなく,産業医やプライマリケア医もその診断や治療に関わらざるをえない状況となっています.
また,社会的にもうつ病に関する知識は一般化しつつあり,最近では患者さんのほうから「これこれこういううつなので治療をして下さい」と言ってこられたりします.
SSRI など副作用が少なく,一般医にも使いやすい抗うつ薬が登場したこともこうした傾向に拍車をかけているのかも知れません.
確かに,うつやうつ病に対する知識,治療はよく知られるようになってきてはいます.しかし,それでもなお,医療にかかっていない患者さんの数は多く,全体の5分の1 くらいしか医師にかかっていないとされています.
また,知識としては知っていても,実際にうつになったらどうしたらよいか,うつの人にどう接したらよいかは,案外わからないものです.
ところで,ここまで読んでこられておわかりのように,この本では,“うつ”と“うつ病”を使い分けて用いております.
ここでは“うつ”を,正常の悲哀反応,対象喪失反応,ストレス反応,適応障害などによる“抑うつ状態”から,うつ病までを含めた広い意味で用いております.
あいまいな感じがされるかもしれませんが,実際の臨床の場では,正常反応や適応障害としてのうつ状態なのか,うつ病なのか,すぐには判断できないケースも多いので,単に“うつ”としたほうが,実際の感覚に近いと思ったからです.英語の“depression”にあたるとお考え下さい.
この本が,正常のうつからうつ病までを取り扱わなければならないプライマリケアの先生方のお役に少しでも立てれば,編者としてこれに勝る幸せはありません.
2009 年6 月
坪井康次
久保木富房
神庭重信
また,社会的にもうつ病に関する知識は一般化しつつあり,最近では患者さんのほうから「これこれこういううつなので治療をして下さい」と言ってこられたりします.
SSRI など副作用が少なく,一般医にも使いやすい抗うつ薬が登場したこともこうした傾向に拍車をかけているのかも知れません.
確かに,うつやうつ病に対する知識,治療はよく知られるようになってきてはいます.しかし,それでもなお,医療にかかっていない患者さんの数は多く,全体の5分の1 くらいしか医師にかかっていないとされています.
また,知識としては知っていても,実際にうつになったらどうしたらよいか,うつの人にどう接したらよいかは,案外わからないものです.
ところで,ここまで読んでこられておわかりのように,この本では,“うつ”と“うつ病”を使い分けて用いております.
ここでは“うつ”を,正常の悲哀反応,対象喪失反応,ストレス反応,適応障害などによる“抑うつ状態”から,うつ病までを含めた広い意味で用いております.
あいまいな感じがされるかもしれませんが,実際の臨床の場では,正常反応や適応障害としてのうつ状態なのか,うつ病なのか,すぐには判断できないケースも多いので,単に“うつ”としたほうが,実際の感覚に近いと思ったからです.英語の“depression”にあたるとお考え下さい.
この本が,正常のうつからうつ病までを取り扱わなければならないプライマリケアの先生方のお役に少しでも立てれば,編者としてこれに勝る幸せはありません.
2009 年6 月
坪井康次
久保木富房
神庭重信
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目次
はじめに 本書を利用される先生方に 久保木富房
学ぶ前に押さえておきたい用語 一覧
略語 一覧
1.うつ病とは 伊藤克人
うつ病とは
抑うつ症状,抑うつ気分
精神運動抑制—おっくう
興味・関心の喪失
気分の日内変動
自責(罪悪感)
食欲不振
睡眠障害
思考力・集中力の減退
希死念慮
易疲労性,気力減退
Clinical Q&A
1一般の診療科でどうしてうつ病の治療を行うことが大切なのですか?
2うつ病と診断をつけた場合,一般の診療科ではどこまで治療をすればよいのですか?
2.どのように診断するか 菅原裕子,坂元 薫
診断のポイント
うつ病診断の基本
問診のコツ
気分障害の分類
大うつ病性障害の分類
診断の流れ
プライマリケア医の役割
身体症状を主訴としたうつ病
身体疾患によるうつ状態
Clinical Q&A
1うつ病を正しく診断するためのコツや問診の仕方を教えてください
2軽症のうつ状態の患者を見逃さないためのよい方法を教えてください
3うつ病と似ている身体症状を引き起こす精神疾患の見分け方やその対応方法を教えてください
4内科医はどのようなタイプのうつ病を診療可能なのですか?
5マニュアル的な診断方法があれば教えてください
3.うつ病患者との接し方 江花昭一
病気(診断名)の伝え方
うつ病の経過・予後の伝え方
初期治療上の留意点
生活面での留意点
家族や職場への対応,サポート,アドバイス
うつ病患者の家族への対応
職場関係者への対応
自殺リスクの回避
慢性期の治療上の留意点
Clinical Q&A
1うつ病の回復過程について,もう少し詳しく教えてください
2うつ病の“急性期の小精神療法”について,詳しく教えてください
3希死念慮や自殺念慮を持つうつ病患者に対して,どのように対応したらよいですか?
4“慢性期うつ病への小精神療法”について教えてください
4.治療 山田武史,佐々木夏子,神尾 聡,中込和幸
治療の基本
休養
薬物療法
サポート
高照度光療法
電気けいれん療法
断眠療法
認知療法
認知のゆがみ
認知療法の実際
職場復帰に向けての取り組み
職場復職援助プログラムの実際
Clinical Q&A
1うつ病は,どのくらいまで改善すれば寛解状態と言えるのですか?
2電気けいれん療法で改善しても再発しやすいと聞きましたが,どうなのですか?
3どのようなうつ病の患者が認知療法の適応になるのですか?
薬を飲みたくない患者の場合,認知療法だけでうつ病を治療することはできますか?
4近くに職場復職援助プログラムを実施してくれるところがありません.
日常生活のなかで,職場復帰に役立つ生活指導法はありますか?
5患者は休職するとすぐに気分が回復し,すぐに復職するのですが,なかなか続きません.
どのような点に気をつけたらよいですか?
6若年発症のうつ病患者に多いとされる非定型うつ病について教えて下さい.
対応はどうしたらよいですか?
5.薬(抗うつ薬)の使い方 平野仁一,渡邊衡一郎
三環系(TCA)
四環系
トラゾドン塩酸塩
SSRI
SNRI
スルピリド
ベンゾジアゼピン系化合物
セロトニン1A受容体作動薬
気分安定薬,その他
甲状腺ホルモン製剤
抗てんかん薬
非定型抗精神病薬
アルゴリズム
Clinical Q&A
1アルゴリズムどおりの薬物治療で,どれだけの症例が寛解するのですか?
2augmentationとcombinationの違いはなんですか?
31つ目の薬剤が奏効しなかったときには,ほかの抗うつ薬に変えるべきですか?
それとも増強療法を行うべきですか?
4うつ病で発症して躁うつ病になる症例にはどんな特徴がありますか?
6.抗うつ薬の副作用,問題点 菊地俊暁,渡邊衡一郎
どのような副作用が起きやすいのか
各副作用と対処法
新しい抗うつ薬に特徴的な副作用や留意すべき症状
賦活症候群
セロトニン症候群
中断症候群
Clinical Q&A
1それぞれの副作用に対して,どのように対応したらよいですか?
2新しい抗うつ薬を使うと自殺が多くなると聞きましたが,本当はどうなのですか?
3抗うつ薬は攻撃性が増すと聞きましたが,どうなのですか?
7.専門医との連携 林 果林,端詰勝敬,坪井康次
診断は正しいか
うつ病患者の受診行動状況
わかりにくいうつ症状を疑うポイント
うつ症状の奥にある成因を見立てる
専門医紹介における注意点
チーム医療と連携プレイ
入院治療の注意点
Clinical Q&A
1どのように診断が正しいかを判断するのですか?
2専門医への紹介のタイミングはいつですか?
3専門医にお願いした後はどう対応したらよいですか?
4チーム医療をする際の注意点はなんですか?
8.身体的病気に伴ううつ 中尾睦宏,竹内武昭,細井昌子
脳血管障害(脳卒中後うつ病)
虚血性心疾患
Parkinson病・認知症
糖尿病
内分泌疾患
甲状腺機能低下症
Cushing症候群
産褥期うつ
薬物性うつ
警告うつ病
仮面うつ病
疼痛性障害
うつと疼痛の関連
Clinical Q&A
1身体的病気を診療しているときにうつを診断するコツはありますか?
また,うつ症状を認めたとしてどこまで治療をすべきですか?
2検査しても異常がないのに,痛みの訴えが続くときには,どのように痛みを理解したらよいですか?
3痛みの訴えに心理的なものが関与していることが疑われ,心療内科や精神神経科に紹介するときには,
患者にどのように説明したらよいですか?
9.うつ病の予防法 熊野宏昭
うつ病の一次予防は可能か
ストレスマネージメント
個人差要因への介入
うつ病の早期発見・早期治療のために
軽症うつ病の見立て
早期治療のポイント
遷延化の防止と再発の予防
治療者としてのスタンス
抗うつ薬の維持療法の有効性
考え方と気分の関係
Clinical Q&A
1うつ病とストレスとのかかわりにはどの程度のエビデンスがありますか?
2うつ病はどれくらいの頻度で再発するものなのですか?
10.うつ病の原因 加藤隆弘,門司 晃,溝口義人,堀川英喜,神庭重信
病前性格
モノアミン欠乏仮説
受容体機能亢進仮説
二次メッセンジャー不均衡仮説
リズム障害
セロトニントランスポータ遺伝子
神経新生・BDNF仮説
グリア・サイトカイン仮説
11.緩和ケアとうつ 吉内一浩
がん患者における“うつ”
がん患者における自殺の危険度
がん患者における“うつ”の治療
Clinical Q&A
1がん患者のうつ病を診断するうえで,留意する点はなんですか?
2がん患者の心理状態を知るための簡便なツールがあれば教えて下さい.
3がん患者でうつ病になりやすい危険因子にはどのようなものがありますか?
4がんの部位とうつ病とのあいだに関連はありますか?
5血液癌においてとくに考慮すべきことがありますか?
6がん患者の疼痛とうつの関連に関して教えて下さい
7がん患者に希死念慮について尋ねることによって,かえって自殺を誘発することはないですか?
8がん患者の治療アルゴリズムのようなものは存在しますか?
9がん患者の心のケアを行ううえで,医学的知識以外に必要なものがありますか?
学ぶ前に押さえておきたい用語 一覧
略語 一覧
1.うつ病とは 伊藤克人
うつ病とは
抑うつ症状,抑うつ気分
精神運動抑制—おっくう
興味・関心の喪失
気分の日内変動
自責(罪悪感)
食欲不振
睡眠障害
思考力・集中力の減退
希死念慮
易疲労性,気力減退
Clinical Q&A
1一般の診療科でどうしてうつ病の治療を行うことが大切なのですか?
2うつ病と診断をつけた場合,一般の診療科ではどこまで治療をすればよいのですか?
2.どのように診断するか 菅原裕子,坂元 薫
診断のポイント
うつ病診断の基本
問診のコツ
気分障害の分類
大うつ病性障害の分類
診断の流れ
プライマリケア医の役割
身体症状を主訴としたうつ病
身体疾患によるうつ状態
Clinical Q&A
1うつ病を正しく診断するためのコツや問診の仕方を教えてください
2軽症のうつ状態の患者を見逃さないためのよい方法を教えてください
3うつ病と似ている身体症状を引き起こす精神疾患の見分け方やその対応方法を教えてください
4内科医はどのようなタイプのうつ病を診療可能なのですか?
5マニュアル的な診断方法があれば教えてください
3.うつ病患者との接し方 江花昭一
病気(診断名)の伝え方
うつ病の経過・予後の伝え方
初期治療上の留意点
生活面での留意点
家族や職場への対応,サポート,アドバイス
うつ病患者の家族への対応
職場関係者への対応
自殺リスクの回避
慢性期の治療上の留意点
Clinical Q&A
1うつ病の回復過程について,もう少し詳しく教えてください
2うつ病の“急性期の小精神療法”について,詳しく教えてください
3希死念慮や自殺念慮を持つうつ病患者に対して,どのように対応したらよいですか?
4“慢性期うつ病への小精神療法”について教えてください
4.治療 山田武史,佐々木夏子,神尾 聡,中込和幸
治療の基本
休養
薬物療法
サポート
高照度光療法
電気けいれん療法
断眠療法
認知療法
認知のゆがみ
認知療法の実際
職場復帰に向けての取り組み
職場復職援助プログラムの実際
Clinical Q&A
1うつ病は,どのくらいまで改善すれば寛解状態と言えるのですか?
2電気けいれん療法で改善しても再発しやすいと聞きましたが,どうなのですか?
3どのようなうつ病の患者が認知療法の適応になるのですか?
薬を飲みたくない患者の場合,認知療法だけでうつ病を治療することはできますか?
4近くに職場復職援助プログラムを実施してくれるところがありません.
日常生活のなかで,職場復帰に役立つ生活指導法はありますか?
5患者は休職するとすぐに気分が回復し,すぐに復職するのですが,なかなか続きません.
どのような点に気をつけたらよいですか?
6若年発症のうつ病患者に多いとされる非定型うつ病について教えて下さい.
対応はどうしたらよいですか?
5.薬(抗うつ薬)の使い方 平野仁一,渡邊衡一郎
三環系(TCA)
四環系
トラゾドン塩酸塩
SSRI
SNRI
スルピリド
ベンゾジアゼピン系化合物
セロトニン1A受容体作動薬
気分安定薬,その他
甲状腺ホルモン製剤
抗てんかん薬
非定型抗精神病薬
アルゴリズム
Clinical Q&A
1アルゴリズムどおりの薬物治療で,どれだけの症例が寛解するのですか?
2augmentationとcombinationの違いはなんですか?
31つ目の薬剤が奏効しなかったときには,ほかの抗うつ薬に変えるべきですか?
それとも増強療法を行うべきですか?
4うつ病で発症して躁うつ病になる症例にはどんな特徴がありますか?
6.抗うつ薬の副作用,問題点 菊地俊暁,渡邊衡一郎
どのような副作用が起きやすいのか
各副作用と対処法
新しい抗うつ薬に特徴的な副作用や留意すべき症状
賦活症候群
セロトニン症候群
中断症候群
Clinical Q&A
1それぞれの副作用に対して,どのように対応したらよいですか?
2新しい抗うつ薬を使うと自殺が多くなると聞きましたが,本当はどうなのですか?
3抗うつ薬は攻撃性が増すと聞きましたが,どうなのですか?
7.専門医との連携 林 果林,端詰勝敬,坪井康次
診断は正しいか
うつ病患者の受診行動状況
わかりにくいうつ症状を疑うポイント
うつ症状の奥にある成因を見立てる
専門医紹介における注意点
チーム医療と連携プレイ
入院治療の注意点
Clinical Q&A
1どのように診断が正しいかを判断するのですか?
2専門医への紹介のタイミングはいつですか?
3専門医にお願いした後はどう対応したらよいですか?
4チーム医療をする際の注意点はなんですか?
8.身体的病気に伴ううつ 中尾睦宏,竹内武昭,細井昌子
脳血管障害(脳卒中後うつ病)
虚血性心疾患
Parkinson病・認知症
糖尿病
内分泌疾患
甲状腺機能低下症
Cushing症候群
産褥期うつ
薬物性うつ
警告うつ病
仮面うつ病
疼痛性障害
うつと疼痛の関連
Clinical Q&A
1身体的病気を診療しているときにうつを診断するコツはありますか?
また,うつ症状を認めたとしてどこまで治療をすべきですか?
2検査しても異常がないのに,痛みの訴えが続くときには,どのように痛みを理解したらよいですか?
3痛みの訴えに心理的なものが関与していることが疑われ,心療内科や精神神経科に紹介するときには,
患者にどのように説明したらよいですか?
9.うつ病の予防法 熊野宏昭
うつ病の一次予防は可能か
ストレスマネージメント
個人差要因への介入
うつ病の早期発見・早期治療のために
軽症うつ病の見立て
早期治療のポイント
遷延化の防止と再発の予防
治療者としてのスタンス
抗うつ薬の維持療法の有効性
考え方と気分の関係
Clinical Q&A
1うつ病とストレスとのかかわりにはどの程度のエビデンスがありますか?
2うつ病はどれくらいの頻度で再発するものなのですか?
10.うつ病の原因 加藤隆弘,門司 晃,溝口義人,堀川英喜,神庭重信
病前性格
モノアミン欠乏仮説
受容体機能亢進仮説
二次メッセンジャー不均衡仮説
リズム障害
セロトニントランスポータ遺伝子
神経新生・BDNF仮説
グリア・サイトカイン仮説
11.緩和ケアとうつ 吉内一浩
がん患者における“うつ”
がん患者における自殺の危険度
がん患者における“うつ”の治療
Clinical Q&A
1がん患者のうつ病を診断するうえで,留意する点はなんですか?
2がん患者の心理状態を知るための簡便なツールがあれば教えて下さい.
3がん患者でうつ病になりやすい危険因子にはどのようなものがありますか?
4がんの部位とうつ病とのあいだに関連はありますか?
5血液癌においてとくに考慮すべきことがありますか?
6がん患者の疼痛とうつの関連に関して教えて下さい
7がん患者に希死念慮について尋ねることによって,かえって自殺を誘発することはないですか?
8がん患者の治療アルゴリズムのようなものは存在しますか?
9がん患者の心のケアを行ううえで,医学的知識以外に必要なものがありますか?
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医師として押さえておきたい「うつ」への対処法が満載の納得できる実用書
日本では,うつ病患者の多くがうつ病を専門としないプライマリ・ケア医を受診しており,そのため約半分の患者が正しく診断されず,また,うつ病と診断されている患者も十分で適切な治療を受けていないことがわかっている。
そこで,本書では精神科専門医以外の臨床医を対象に,うつ病診療の基本から診断のポイントまでをわかりやすく解説してある。また患者との接し方のポイントや抗うつ薬の使い方を具体的に示し,さらには専門医との連携のあり方を示した。
うつ病診療にかかわるすべての臨床医のための実用書である。