精神科臨床ニューアプローチ 5

パーソナリティ障害・摂食障害

パーソナリティ障害・摂食障害

■担当編集委員 市橋 秀夫

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  200ページ  2色
  • 2006年5月12日刊行
  • ISBN978-4-7583-0230-2

問診時の言葉や解釈,臨床現場で苦慮する患者や家族への対応の仕方など具体的に提示した臨床で役立つ実践書

本書は臨床実践書であるので,パーソナリティ障害や摂食障害,解離性同一性障害など新しいタイプの障害をどう理解し,どう治療すべきかをできるだけ具体的に提示することを試みた。そのため,症例をあげ,実際の問診時の対応(言葉),解釈を示した。最終章にはQ&Aにより,臨床現場で苦慮する患者や家族への対応の仕方などわかりやすく述べている。

■シリーズ監修
上島国利

■シリーズ編集委員
上島国利/市橋秀夫/保坂 隆/朝田 隆


序文

 これまで精神医学は統合失調症と気分障害および物質依存,老年期器質性障害(かつてはてんかんが含まれていた)などに力を注いできたが,近年新しいタイプの障害に臨床現場で遭遇することが多くなり,その対応に苦慮するようになってきた。その代表がパーソナリティ障害や摂食障害,解離性同一性障害など,一連の幼児期の養育に端を発する心理発達上の障害を基盤とする障害である。これらは優れて現代という時代を反映する病態であろう。
 これらの障害は従来精神医学が扱ってきた障害のような治療ガイドラインが成立しておらず,臨床家はいわば手探りのような形でこうした障害に取り組んでいるというのが現実である。しかも,こうした障害がこれまで精神分析学派の文法によって理解され,治療されてきたことも一般臨床家が敬遠する要因にもなっている。もっと実践的な治療法はないのかという声を反映して本書が企画された。
 本書は臨床実践書であるので,こうした障害をどう理解し,どう治療すべきかをできるだけ具体的に提示することを試みた。執筆者に現代求められる最高の著者を選ぶことができたことは編集者としての誇りである。著者によって重複する部分はあってもそのまま残すことにした。また,部分では著者によって見解が異なることもあろう。しかし,こうした障害はまだ定説が確定しておらず,読者はその相違を執筆者の持ち味としてとらえ,自分なりの臨床経験のなかで自己薬籠中のものにしてほしいと願う。

2006年4月 市橋秀夫
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目次

I パーソナリティ障害の概念と分類   
 パーソナリティ障害の概念と分類  藤澤大介,大野 裕
  はじめに 
  パーソナリティとは 
  パーソナリティ障害の診断 
  文化,年齢,性別に関する特徴 
  パーソナリティ障害の各論 
  鑑別診断 
  パーソナリティ障害の経過 
  DSM-㈿におけるパーソナリティ障害の診断基準の問題点 
  ディメンジョン方式を用いたパーソナリティ分類 
  今後の課題 

II 境界性パーソナリティ障害   
 境界性パーソナリティ障害とはどういう障害か  林 直樹
  はじめに:境界性パーソナリティ障害概念の歴史と臨床的意味 
  定義・診断 
  疫学 
  臨床的特徴 
  病態:精神病理 
   パーソナリティ構造の観点
   疾病論的位置づけ
  病因論 
   生物学的要因
   養育環境の要因
  治療 
   精神療法
   薬物療法
  経過・予後 
  まとめと結語 
 診断のための鍵  山科 満
  初診面接での診断 
   漠然とした主訴
   特異的な症状:行動面への注目
  面接の流れと診断 
  診療継続の鍵 
 初回面接の留意点  守屋直樹
  境界性パーソナリティ障害と神経症の鑑別 
   概念と治療目標
   神経症圏の患者との相違点:原始的防衛機制
  診断面接の進め方 
  並存する診断,入院治療の適応 
  治療目標の設定と治療契約,限界設定 
 入院治療の治療構造  吉永陽子,柏瀬宏隆
  はじめに 
  入院時診察 
   来院するまでの経緯
   入院時診察医のアレンジ
   入院治療の目標
  開放病棟における治療構造 
   開放病棟の適応
   治療契約
  閉鎖病棟における治療構造 
   治療契約をめぐって——その1
   治療契約をめぐって——その2
   治療契約をめぐって——その3
   スタッフ
   行動制限と,行動化への対応
   入院期間
  まとめ 
 外来治療の治療構造  市橋秀夫
  はじめに 
  初診時 
   早期診断の鍵
  診察と面接 
   導入
   病名告知
   治療契約
  外来マネージメント 
   ATスプリット
   家族面接
   危機対応
   薬物管理
   睡眠管理
   入院管理を要する時
   外来治療のコツ
 精神療法の基本原理  成田善弘
  個人精神療法の位置づけ,定義,適応 
  個人精神療法の基本原則 
   治療目標を明確にする
   治療を構造化する
   行動化に限界設定を行う
   表出的技法と支持的技法を組み合わせる
   患者の脆弱性を考慮しつつ直面化と解釈を行う
   治療の枠組みのなかで治療者の限界を提示する
   治療者の感情(逆転移)を自覚し検討する
   能動性と情緒的応答性に心がける
   精神療法と薬物療法を切り離さない
  治療者の資質,教育,訓練 
 境界性パーソナリティ障害症例記述−クライン派の臨床的視点から−  衣笠隆幸
  はじめに:クライン派の理論と治療技法 
  症例 
   治療経過
  おわりに 
 家族療法  信田さよ子
  はじめに 
  困っているのは誰か 
  家族の孤立感を解消する 
   孤立の要因
   孤立感の解消法
  援助の実際—グループカウンセリング 
   教育プログラム
   母親のグループカウンセリング
  おわりに 
 薬物療法とその留意点  吉永陽子,柏瀬宏隆
  はじめに 
  処方の組み立て方 
  処方例と留意点 
   BPDの症状に対して
   興奮,攻撃,暴力に対して
   不眠に対して
   うつ病に対して
   身体合併症に対して
  大量服薬・過量服薬 
  まとめ 

III 自己愛性パーソナリティ障害   
 自己愛性パーソナリティ障害とはどういう障害か  狩野力八郎
  自己愛性パーソナリティ障害の特徴 
  診断上の問題点 
  症例 
  自己愛性パーソナリティ障害の臨床像 
  NPDをめぐる臨床的な留意点 
   健康な自己愛と自己愛性パーソナリティ障害の区別
   NPDと病態レベル
   ライフサイクルとの関係
   恥の感情
   早期の治療終了は必ずしも悪くない
  おわりに 
 診断のための鍵  市橋秀夫
  はじめに 
  診断のための精神病理 
   NPD
   BPD
  NPDの受診の動機 
  BPDの治療動機 
  生活史の特徴と印象 
  発症状況 
  抑うつの特徴 
  対人関係機能 
  発症時期と気分障害の持続期間 
 初診時の対応  山家卓也
  主訴を明確にする 
  患者の感情体験(「怒り」)を是認する 
   「批判的介入」を行わない
   患者の感情体験を是認する
  診断を確定する 
   「自己愛の病理」の把握
  「自己愛の病理の構造」について提示する 
   「自己不信」に焦点を当てる
   「等身大の自分」の欠如を指摘する
  治療の枠組みと方向性を提示する 
  依存欲求への適切な対応 
   「面接者が患者の代わりに決断しない」こと
   「保護」と「免責」を求める「依存欲求」を封じ込めること
   薬物療法について
 精神療法の基本  牛島定信
  精神療法を始める前の整理 
  心得ておくべき自己愛性障害の心理構造 
   偽りの自己
  治療初期における精神療法の基本 
   最初の見立て
   治療を始める
  治療発展期 
  治療後期から終結へ 
 家族面接と家族療法  山家卓也
  家族全体における自己愛の病理 
  混乱している家族への家族療法的な面接構造の導入 
  「夫婦面接」の要点および構造化 
  子どもに家族が同伴して来談する場合の面接の構造化 
  母親(父親)面接の要点 
   母親への初回面接
   母親面接の内容
   再診時における母親への具体的な投げかけ
  子どもの行動化が激しい場合の治療的介入 
  家族内の関係性の変化〜子どもの「動き出し」へ 

IV 摂食障害   
 摂食障害の概念と分類  館 直彦
  思春期痩せ症から摂食障害へ 
  摂食障害の病因 
  摂食障害の症状と病態 
  摂食障害の診断基準 
  摂食障害の経過と予後 
  鑑別診断とco-morbidity 
 診断と診察・診療のポイント─社会的背景と精神病理をふまえて─  市橋秀夫
  診断分類 
  摂食障害の身体症状 
  摂食障害が生じる心理社会的背景 
  症状と精神病理 
   なぜ過食するのか
   それでは拒食はどうして生じるか
   行動化が併発するのはなぜか
   基本病理は自尊心
  診察 
   初回面接における留意点
   面接の方法
  診療の実際 
  薬物療法 
  身体管理 
 身体管理と入院治療  加藤 温
  はじめに 
  食障害にみられる身体合併症とその管理 
   身体状態の評価
   合併症への対応
  摂食障害の入院治療 
   入院治療への導入
   身体状態の評価と入院治療計画の設定
   入院治療の実際
  おわりに 
 家族療法  信田さよ子
  はじめに 
  現状 
  介入的アドバイス 
   食習慣
   家族関係
   金銭にかかわる問題
  暴力への対処 
  おわりに 

V Q&A   
 全般的な問題  市橋秀夫
  ・ パーソナリティ障害の患者さんには基本的にはどういう接し方が必要でしょうか? 
  ・ パーソナリティ障害の患者さんは,応対や手続きを巡って受付スタッフやナースとのトラブ 
  ルが絶えません。どういう接し方がよいのでしょうか? 
  ・ 統合失調症やうつ病なら症状の消失,社会適応の回復という明確な治療目標があります。たぶんパーソナリティ障害でも同じだとは思いますが,行動化の消失や人間関係や社会との適 
  応を高めることが治療の目標とすると,どうしても治療がうまくいきません。 
  ・ 治療はいつをもって終了となるのでしょうか? 
  ・ 統合失調症では心理教育ということが行われていますが,パーソナリティ障害では家族面接 
  の基本は何でしょうか? 
  ・ パーソナリティ障害の薬物療法の基本は何でしょうか? 
 境界性パーソナリティ障害(BPD)  市橋秀夫
  ・ BPDの患者から診療中でも,夜でも電話がかかってきて困ります。「これから自殺する」な 
  どという切迫した電話なので,むげに断れずにどうしたものかと悩んでいます。 
  ・ 治療契約と治療同盟とは具体的にどうするのでしょう。 
  ・ BPDの患者はクリニックや病棟の人間関係を破壊します。些細なことで暴れたり,居座ったり,大声でわめいたり,怒りをぶつけてきたりしてものすごいストレスです。また人間関係を操作して,スタッフの人間関係が混乱して対立関係になったりするのも困ります。自殺企図,OD,リストカットを繰り返すのも困りものです。どうしたら,そういう問題を引き起こ 
  さなくなるのでしょうか? 
  ・ BPDの治療の初期目標は何でしょうか? 
  ・ 「スプリット」といいますがよくわかりません。統合はどのようにすれば可能になるでしょ 
  うか? アダルトとチャイルドというのと関係がありますか? 
  ・ 面接はどのくらいかけていますか? 保険診療ではどのようにしたらよいでしょうか? 
  ・ 面接におけるワンポイントレッスン法とはどういうことですか? 
  ・ 行動化を少なくするにはどうしたらよいでしょうか? 
 自己愛性パーソナリティ障害(NPD)  市橋秀夫
  ・ 最近増えてきたのは抗うつ剤が効かないうつ病の患者です。従来のメランコリー親和型とか,執着気質といった,他者配慮がみられ,律儀で,責任感の強いタイプのうつ病患者が減って,警戒的で,構えが堅く,うそを言ったり,傲慢な態度を示すうつ病の患者が増えてきた印象 
  があり,対応に苦慮しています。 
  ・ 初期に診断を思いつくにはどうしたらよいでしょうか? 
  ・ 自己愛性パーソナリティ障害というと,ナルシストというイメージがあります。たしかに自分だけが偉いと思っているところはありますが,むしろ自分のことを嫌っていて,自己陶酔 
  的な感じがありませんが。 
  ・ そういう患者さんに接するにはどういう注意が必要ですか? 
  ・ 理想化転移とはなんですか。どうすることが理想化転移を引き受けるということになるので 
  しょうか? 
  ・ 家族面接で「私はこの子を力の限り愛してきた。それなのに愛情が足りないといわれても納得できない」と言い張る人がいます。患者さんは愛されていないといいますし,どれが本当 
  なのでしょうか? 
  ・ 面接にたくさんの時間が割けませんが,NPDの患者さんの面接で琴線に触れる言葉をいくつ 
  か教えてください。 
4 解離性同一性障害(DID)  市橋秀夫
  ・ 解離性同一性障害(DID)の患者さんが最近増えてきました。どう治療したらよいのでしょう 
  か? 
5 摂食障害(ED)  市橋秀夫
  ・ 摂食障害についておたずねします。EDはどういう機序で生じるものなのでしょうか? 
  ・ 行動療法がEDの主流になっていると思いますが,再発しやすいのですが。行動療法の何が 
  問題なのでしょうか? 
  ・ どうなれば過食を治すことができますか? 
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