精神科臨床ニューアプローチ 1

症候からみた精神医学

症候からみた精神医学

■担当編集委員 市橋 秀夫

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  168ページ  2色
  • 2007年2月5日刊行
  • ISBN978-4-7583-0226-5

在庫僅少です。


症候から精神障害をどう捉えるか。第一線の臨床現場で活躍する医師から精神医学の現状を踏まえて伝授

現在の精神医学,障害の現状を踏まえ,診断の鍵となる要素を「精神科面接」「状態把握」「症候・症状学」「ICD-10分類」といったあらゆる方向から切り込み,盛り込んだ実践書。
第一線の医師からのヒントやポイントは,定番の教科書から得た知識を臨床の場でどのように使いこなすのか,現在の精神医学の実際・精神障害の実状を把握し,診断していくうえで有用である。
最終章には対話形式による診断の実例を掲載。

■シリーズ監修
上島国利

■シリーズ編集委員
上島国利/市橋秀夫/保坂 隆/朝田 隆


序文

 症候学は診断学の要であり,診断は治療の入り口である。症候学を中心とした診断体系はDSM診断方式をはじめとする操作的診断学の隆盛を作り上げたが,その効用は認めるものの,操作的診断学は本来研究用・統計用の診断学であって,臨床診断には適していない。ICD-10は記載診断学であることと,国際分類であるので,本書ではICD-10に準拠して構成した。
 近年,診断能力の低下をベテラン医師が危惧する意見が多くなっているが,症候を部分として切り離し,症候の寄せ集めで診断とするクライテリア方式が横行して,その結果,考えられない誤診をすることが少なくないように思われる。
 「新しい診断学の登場によって旧来の知識は全くいらなくなった」という驚くべき発言をする精神科医もいるが,精神疾患というものは症状に特有な構造(精神病理学)をもつものであり,例えば,うつ病性の不安と不安障害の不安と統合失調症の不安は構造的に異なるものである。症候を立体的に,全体的に,構造的に把握することによって診断のカオスから逃げることができると信じる。
 「どのように症状を捉えたら,正しい診断に至るか」という視点を理解する執筆者によって構成されている点が本書のユニークなところであると自負している。

2006年12月 市橋秀夫
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目次

用語解説一覧    
略語一覧    
掲載薬剤一覧    

I 診断のための精神科面接    
 1 診断のための精神科面接   牛島定信
   初回面接のあり方 
   ある病歴から 
   病歴に対するコメント 
    病歴作成において求められる視点
    本症例の病歴の前半をどうみるか
   具体的なカルテの記載 
    主訴
    現病歴
    生活史とパーソナリティの把握
    家族歴
    その他既往歴など
II 状態像把握から診断へ    
 1 状態像把握から診断へ  永田俊彦
   状態像把握の意義 
   うつ状態—「同調性」(synton)と各種の病態 
    うつ病と大うつ病性障害
    気分変調症
    統合失調症
    分裂気質者の抑うつ
    うつ病と認知症の交差領域
   不安状態(仮称)—「不安」な時代と各種の「切り口」 
    不安性障害
    うつ病性障害
    統合失調症
    その他
   対人恐怖(緊張)状態(仮称)—「中間帯」構造を手がかりに 
   神経衰弱状態—統合失調症の仮装 
   情緒不安定状態(仮称)—境界性パーソナリティ障害の鑑別 
   幻覚・妄想状態—病因論的な特異性 
    幻覚を主とするもの
    妄想を主とするもの
   躁状態,精神運動性興奮状態—気分障害の誤診 
   例外状態(ausnahmezustand)—解離性障害の誤診 
   その他,付記 
III 診断のための症候・症状学    
 1 はじめに  針間博彦
   精神科臨床における「症状」とは 
   症状における形式と内容 
   精神科臨床における症状と診断 
 2 客観的所見:表出  針間博彦
   身だしなみ・服装 
   礼容,姿態,振る舞い 
   表情 
   会話 
 3 主観症状:体験症状  針間博彦
   意識の障害 
   記憶の障害 
   知覚の障害 
    感覚変化
    幻覚
   思考の障害 
    思考形式の異常
    思考内容の障害 — 妄想
   自我体験の障害 
    離人・現実感喪失症候群
    被影響体験(させられ体験,作為体験)
    気分・感情の障害 
    気分
    感情
   意志発動性の障害 
   おわりに 
IV 精神障害の診断 診断の鍵    
 1 F0 症候性・器質性精神障害  三山吉夫
   急性器質性脳症候群 
   慢性器質性脳症候群 
   F00 アルツハイマー型認知症 
   F01 血管性認知症 
   F02 その他の認知症性疾患 
    びまん性レビー小体病
    前頭側頭型認知症
 2 F1 物質誘発性精神障害  三山吉夫
   物質誘発性精神障害 
   アルコール関連障害 
   薬物依存・乱用 
 3 F2 精神病性障害の診断  市橋秀夫
   定義 
   他の群との鑑別 
   鑑別を要する障害 
   F20 統合失調症 
    統合失調症の診断基準
    下位診断について
   F21 統合失調型障害 
   F22 持続性妄想性障害 
    F22.0 妄想性障害
    F22.8 その他の持続性妄想性障害
   F23 急性一過性精神病性障害 
    F23.0 統合失調症症状を伴わない急性多形性精神病性障害
    F23.1 統合失調症症状を伴う急性多形性精神病性障害
    F23.2 急性統合失調症様精神病性障害
    F23.3 妄想を主とする他の急性精神病性障害
    F23.8 他の急性一過性精神病性障害
   F24 感応性妄想障害 
   F25 統合失調感情障害 
    F25.0 統合失調感情障害,躁病型
    F25.1 統合失調感情障害,うつ病型
    F25.2 統合失調感情障害,混合型
 4 F3 気分障害  松浪克文
   気分障害圏の診断をめぐる問題 
   「うつ病」診断の鍵;「健常者の憂うつ感」の違いという視点から 
    「うつ病」の抑うつ気分は患者の人生にとって「異質」である
    具体的な悩み事についての訴えに終始する人は「うつ病」ではない
    短期間に気分状態が変化する場合は「うつ病」ではない
    「うつ病」の症状は,ひとまとまりのセットで捉える
    悩みや苦痛を切実に表現する人が「うつ病」である可能性は低い
    情報への感受性を有する人は「うつ病」ではない
   「うつ病」診断に要請される仮説 
    「抑うつ気分」
    「制止症状」
    生気性
    病前性格
   「うつ病」の辺縁病態との区別 
    F34 持続性気分(感情)障害
    統合失調気質(分裂気質)者のうつ状態
 5 F4 神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害  市橋秀夫
   F40 恐怖症性不安障害 
    F40.0 広場恐怖
    F40.1 社会恐怖
    F40.2 特定の(個別的)恐怖症
   F41 他の不安障害 
    F41.0 パニック(恐慌性)障害
    F41.1 全般性不安障害
    F41.2 混合性不安抑うつ障害
   F42 強迫性障害 
   F43 重度ストレス反応および適応障害 
    F43.0 急性ストレス反応
    F43.1 外傷後ストレス障害(PTSD)
    F43.2 適応障害
   F44 解離性障害(転換性障害) 
   F45 身体表現性障害 
    F45.0 身体化障害
    F45.1 心気障害
    F45.3 身体表現性自律神経機能不全
    F45.4 持続性身体表現性疼痛
   F48 他の神経症性障害 
    F48.0 神経衰弱
    F48.1 離人・現実感喪失症候群
 6 F5 生理的障害および身体要因に関連した行動症候群  柴山雅俊
   F50 摂食障害 
    分類
   摂食障害の臨床像と症候学 
    F50.0 神経性無食欲症
    F50.2 神経性大食症
   産後の精神疾患 
    マタニティーブルーズ(maternity blues)
    産後うつ病(postpartum depression)
    産褥精神病(puerperal psychosis)
 7 F6 成人の人格および行動の障害  松浪克文
   「パーソナリティ障害の診断」をめぐる問題 
    「パーソナリティ」概念について
    パーソナリティの異常という判断について
    国際分類における「パーソナリティ障害」のタイプについて
    パーソナリティの「障害」について
    事例化ということについて
    診断項目の普遍妥当性について
    Personality traitについて
   パーソナリティ障害の診断;診断の鍵 
    パーソナリティ障害診断の手がかり
   個々のパーソナリティ障害診断のヒント 
    F60.0 妄想性パーソナリティ障害
    F60.1 統合失調質パーソナリティ障害
    F60.2 非社会性パーソナリティ障害
    F60.3 情緒不安定性パーソナリティ障害
    F60.4 演技性パーソナリティ障害
    F60.5 強迫性パーソナリティ障害
    F60.6 不安性(回避性)パーソナリティ障害
    F60.7 依存性パーソナリティ障害
    F60.8 他の特定のパーソナリティ障害
   おわりに
 8 F8 心理発達の障害  岡野高明
   定義 
   他の群との鑑別 
   F80 会話および言語の特異的発達障害 
    会話および言語の特異的発達障害の診断基準
    F80.0 特異的会話構音障害
    F80.1 表出性言語障害
    F80.2 受容性言語障害
   F81 学力[学習能力]の特異的発達障害(SDDSS) 
    学力[学習能力]の特異的発達障害の診断基準
    F81.0 特異的読字障害
    F81.1 特異的綴字[書字]障害
    F81.2 特異的算数能力障害[算数能力の特異的障害]
   F82 運動機能の特異的発達障害 
   F83 混合性特異的発達障害 
   F84 広汎性発達障害 
    F84.0 小児自閉症
    F84.1 非定型自閉症
    F84.2 レット症候群
    F84.3 他の小児期崩壊性障害
    F84.4 精神遅滞および常同運動に関連した過動性障害
    F84.5 アスペルガー症候群
 9 F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害  岡野高明
   F9カテゴリーの特徴 
   F90 多動性障害 
    概念
    障害の特徴
    鑑別診断
   F91 行為障害 
    概念
    行為障害の全般的診断基準
    鑑別診断
    F91.0 家庭内に限られる[家庭限局性]行為障害
    F91.1 非社会性[非社会化型]行為障害
    F91.2 社会性[社会型]行為障害
    F91.3 反抗挑戦性障害
    F91.8 その他の行為障害/F91.9 行為障害,特定不能のもの
   F92 行為および情緒の障害 
    概念
    F92.0 抑うつ性行為障害  
    F92.8 その他の行為および情緒の混合性障害  
   F93 小児期に特異的に発症する情緒障害 
    概念
    F93.0 小児期の分離不安障害
    F93.1 小児期の恐怖症性不安障害
    F93.2 小児期の社会性[社交]不安障害
    F93.3 同胞葛藤性[抗争]障害
    F93.8 他の小児期の情緒障害
   F94 小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害 
    概念
    F94.0 選択性縅黙
    F94.1 小児期の反応性愛着障害
    F94.2 小児期の脱抑制性愛着障害
   F95 チック障害 
    概念
    F95.0 一過性チック障害
    F95.1 慢性運動性あるいは音声チック障害
    F95.2 音声および多発運動性の合併したチック障害
   F98 通常小児期および青年期に発症する他の行動および情緒の障害 
    概念
    F98.0 非器質性遺尿症
    F98.1 非器質性遺糞症
    F98.2 乳児[乳幼児]期および小児期の哺育障害
    F98.3 乳児[乳幼児]期および小児期の異食(症)
V 実例 診断の進め方    
 1 心因反応か,精神病性障害か  市橋秀夫
 2 全般性不安障害か,気分変調性障害か,回避性人格障害か  市橋秀夫
 3 統合失調症か,思春期妄想症か,離人症か,解離か  市橋秀夫
 4 引きこもりと家庭内暴力で,統合失調症を疑われた症例  市橋秀夫
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