周生期循環異常

周生期循環異常

■編集 中澤 誠

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  232ページ  2色(一部カラー)
  • 2007年8月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-0176-3

周生期(児における出生時)に起こる循環異常を幅広く,わかりやすく解説した1冊

本書の特徴は,まず第1に周生期(児における出生時)に起こる循環異常を幅広く網羅している点である。周生期に起こる循環異常だけに内容を絞り込み,簡潔に図表を交えてわかりやすく解説することを目指して編集している。
 第2に,患者の治療の流れに沿うような項目立てで編集している点が挙げられる。「周生期」という言葉の意味を理解し,基礎知識を理解した後に,さまざまな個々の疾患について具体例を織り交ぜ,実際に役立つように解説。周生期循環異常で大切な患者家族との対話についても編者のエピソードを紹介しながら,どのように接すればいいのか,話し合いを行えばいいのかを解説している。また,診断後にどのように対応すればいいのかを,一般医療機関と専門医療機関にわけて解説し,患者,患者家族にとってどのようにフォローすることがいいのかについても理解できるように編集している。


序文

序 ヒトは周生期を経て誕生

 出産・出生は,出産する女性にとって,そして新しく出生する児にとっても一生のうちで最もリスクの高い生理的現象である。女性にとっては,児の娩出によって,胎盤剥離・子宮収縮,それらによる血行態的変化,凝固系も含む血液学的変化,神経内分泌学的変化,そして精神的変化などが短時間のうちに劇的に起こる。その後にも子宮出血,産褥期感染症,産褥心筋症,精神障害などの危機がある。すなわち,出産は女性共通の最大の生命ないし生存の危機の1つである。近年,周産期医学・医療(peripartum medicine)の発達によってこの危機は著明に改善したとはいえ,この危機が消失した訳ではない。
 一方,児は胎内では羊水中で胎盤循環につながり,ほぼ全面的に母体に守られて安定し生育している,いわば母体依存個体である。しかし出生,母親にとっては出産,を期に母体から分離し独立個体へと180度変化する。chronologicalには水棲動物が陸棲動物へ進化した何億年の時間をきわめて短時間に辿る瞬間であり,これこそ人生最大の危機である。その主たる変化は,胎盤循環停止をきっかけに,呼吸開始,動脈管および静脈管の閉鎖,嫌気性代謝から好気性代謝への急速な変化,血液学的変化(たとえばヘモグロビンFの減少など),さらには,肺血管抵抗の低下などである。これらの変化が円滑に進行するように,児は出生のとき,妊婦からすれば出産のとき,に向け在胎後半に急速にその準備を整える。したがってその準備前に「陸へ揚がること」を強いられた場合には種々の問題が起きることは想像に難くない。
 ヒトは,この激動の“出生”において病児も健常児も医療・看護の助けを経て独立個体としての命を確保する。この時期の医療は,母からみた「周産期」に対して,児本人からみると「周生期医療:perinatal medicine」といえる。この周生期には,心疾患のみならず多くの疾患でなんらかの循環異常をきたし,その適切な管理が生命の維持確保に重要であることは周知であり,この分野の循環器医療は「周生期心臓病学:perinatal cardiology」といえる。
 本書では,この周生期に起こる循環異常を,広く,そして,簡潔に解説している。また,項立てとして,患者の流れに沿うような形で編集した。また,今回の特長として,患者家族との対話を取り上げ,編者の思い入れもあって1章を当てた。いくつかの初めての試みがあり多少の不安はあるが,周生期に関わる多くの医療関係者,特に,看護師,研修医,専門医を目指す医師に読んでいただき,是非感想をお聞かせ願いたい。本書が読者の日常の臨床になんらかのお役に立てば,編者および執筆者としては望外の喜びである。

2007年8月
総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所所長
中澤 誠
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目次

序 ヒトは周生期を経て誕生 
I 基礎知識 
 周生期の循環の変化(中澤 誠)
   胎内循環
   出生時〜出生直後の循環変化
 発生・形態形成と機能(山岸敬幸,仲澤麻紀,古道一樹)
   心臓大血管の発生
   心臓大血管の発生と先天性心疾患の成り立ち
   先天性心疾患発生における遺伝と環境
 病態(藤原優子)
   総論
   胎児心不全
   出生後の心不全
 主要疾患(中澤 誠)
   機能異常
   形態異常
II アプローチ 
 胎内(産科的)(藤森敬也,佐藤 章)
   胎児心拍数モニタリングによる胎児評価
   BPSを用いたNRFS(non-reassuring fetal status)の診断
   BPSと胎児血流計測を用いた胎児評価
   胎児心疾患スクリーニングの基準(倫理問題も含めて)
   biophysicalパラメータ評価のコツ
 胎内(循環器的)(川滝元良)
   断層エコーによる胎児心スクリーニング
   カラードプラを活用した心スクリーニング
 コラム:心磁図(堀米仁志)
   胎児心磁図(fetal magnetocardiography:fMCG)とはなにか
   計測方法
   臨床応用
   時間指標(cardiac time intervals)の正常値
   胎児不整脈の診断
 症状・徴候と病態(桃井伸緒)
   出生診断
   出生直後・新生児早期
   新生児期後期・乳児期早期
 理学所見(桃井伸緒)
   視診
   触診
   聴診
 臨床検査(寺野和宏)
   経皮的酸素飽和度モニターの測定
   単純X線撮影
   標準12誘導心電図
   超音波診断
   血管造影検査
III 患者さん家族との対話 
 患者さん家族との対話 適正な情報提供と判断のために(中澤 誠)
   総論:医師と患者が医療をつくる
   各論
   一般の情報
IV 産科からみた児にベストな対応 
 妊娠中の生活(松田義雄,三谷 穣)
   先天性心疾患の発生要因と妊娠中の指導
   スクリーニング検査
   出産に向けて
 妊娠中の薬剤(松田義雄,三谷 穣)
   催奇形性
   胎児毒性
   抗うつ薬と新生児肺高血圧症の関係
 分娩時期と方法の選択および注意点
   分娩時期
   分娩方法
V 診断後どう対応するか? 
 一般医療機関での対応
  胎児(川滝元良)
   どのような症例をスクリーニングし,三次周産期施設に精査を依頼すべきか?
   なにをどのようにスクリーニングすべきか?
   どの時期にスクリーニングするか?
   スクリーニングは何回行うか?
   妊婦検診で胎児の心形態異常がみつかったらどうするべきか?
   三次周産期施設に紹介する前に家族にどのような説明をすべきか?
   三次周産期施設との連携
  新生児(寺野和宏)
   小児循環器専門医がいない場合
   小児循環器専門医がいる場合
  乳児早期(藤原優子)
   循環異常を疑うポイント
   専門機関に紹介するタイミング
 専門医療機関での対応
  胎児(川滝元良)
   精査
   告知(カウンセリング)とサポート
   フォロー
   分娩と出生直後の処置
   一般医療機関への連携
  新生児(山村英司)
   総論
   診断の確定と方針の決定
   新生児早期の発症
   各論
  乳児早期(山村英司)
   肺血流量増加型心疾患
   Fallot四徴症類似のチアノーゼ性心疾患
   今後の展望
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