石井先生にもっと聞いてみよう患者の気持ち
糖尿病こころのよろづ相談
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定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
- B5判 168ページ オールカラー,イラスト97点
- 2012年5月24日刊行
- ISBN978-4-7583-0168-8
電子版
序文
プロローグ
本書は,『石井先生に聞いてみよう患者の気持ち-糖尿病診療よろづ相談』の続編である。前著では各種治療法,慢性合併症,低血糖などを中心に患者さんが困難を感じられる問題に焦点を当てて解説した。
今回は,「患者さんの行動面の問題へのアプローチ法」,「糖尿病治療エビデンスと個人の選択」,「医師(医療者)からの疑問」,「グループ治療」,「患者さんの感情面の問題へのアプローチ法」などに焦点を当てた。タイトルも,『石井先生にもっと聞いてみよう患者の気持ち-糖尿病こころのよろづ相談』となった。
糖尿病療養において良好な結果を得るためには,自己管理や行動修正が重要であり,患者の自発的な取り組みを支援し,励ますことによって,本人の糖尿病管理力を増していくことが医療者の役割であると認識されるようになった。
つまり,糖尿病療養においては,適切な治療を「する-しない」という行動面が重要であり,筆者はこれを「Doingの問題」-行動にかかわる問題-と名付けている。「患者さんの行動面の問題へのアプローチ法」はこれに関する世界的な心理学者の考えと実践を紹介している。
一方,治療学の領域では科学的根拠(エビデンス)に基づく診療が基本となっているが,それは個々の患者の価値観と選択や,医師の経験を取り入れることによって本来のevidence based medicineとなる。「糖尿病治療エビデンスと個人の選択」はそのような問題を取り上げている。
このような糖尿病診療の方針,あるいは医師(医療者)-患者関係に対して,本当にそうなのだろうか,実行可能なのだろうかという本質的な質問をいただいた。それを「医師(医療者)からの疑問」で紹介した。
「グループ治療」は当事者(患者さんたち)が自ら考えることによる問題解決力の素晴らしさを示している。まさにエンパワーメントの実践である。
最終章は,深い心の問題を取り上げた。糖尿病にはそれをもちながら生きていく自分に自信をもてない時期や局面がある。筆者はそれを「Beingの問題」-存在にかかわる問題-と名付けている。この問題に対しては“時間を捧げ,それを頼みにする”ことが一番重要であると筆者は考えているが,まだまだその問題の奥深さを十分には窮められていない。
本音を言うと,筆者としては,この本のタイトルは少し気恥ずかしい。尋ねられて本当にぴったりした回答ができる自信はまだない。あくまでも今の到達点としてお読みいただければ幸いである。
メジカルビュー社『Mebio』編集部の加賀智子さんには拙稿をいつもきれいに構成していただいた。本となる段階では藤原琢也さんの援助を得た。厚く感謝の意をお伝えしたい。
2012年4月
天理よろづ相談所病院副院長
石井 均
本書は,『石井先生に聞いてみよう患者の気持ち-糖尿病診療よろづ相談』の続編である。前著では各種治療法,慢性合併症,低血糖などを中心に患者さんが困難を感じられる問題に焦点を当てて解説した。
今回は,「患者さんの行動面の問題へのアプローチ法」,「糖尿病治療エビデンスと個人の選択」,「医師(医療者)からの疑問」,「グループ治療」,「患者さんの感情面の問題へのアプローチ法」などに焦点を当てた。タイトルも,『石井先生にもっと聞いてみよう患者の気持ち-糖尿病こころのよろづ相談』となった。
糖尿病療養において良好な結果を得るためには,自己管理や行動修正が重要であり,患者の自発的な取り組みを支援し,励ますことによって,本人の糖尿病管理力を増していくことが医療者の役割であると認識されるようになった。
つまり,糖尿病療養においては,適切な治療を「する-しない」という行動面が重要であり,筆者はこれを「Doingの問題」-行動にかかわる問題-と名付けている。「患者さんの行動面の問題へのアプローチ法」はこれに関する世界的な心理学者の考えと実践を紹介している。
一方,治療学の領域では科学的根拠(エビデンス)に基づく診療が基本となっているが,それは個々の患者の価値観と選択や,医師の経験を取り入れることによって本来のevidence based medicineとなる。「糖尿病治療エビデンスと個人の選択」はそのような問題を取り上げている。
このような糖尿病診療の方針,あるいは医師(医療者)-患者関係に対して,本当にそうなのだろうか,実行可能なのだろうかという本質的な質問をいただいた。それを「医師(医療者)からの疑問」で紹介した。
「グループ治療」は当事者(患者さんたち)が自ら考えることによる問題解決力の素晴らしさを示している。まさにエンパワーメントの実践である。
最終章は,深い心の問題を取り上げた。糖尿病にはそれをもちながら生きていく自分に自信をもてない時期や局面がある。筆者はそれを「Beingの問題」-存在にかかわる問題-と名付けている。この問題に対しては“時間を捧げ,それを頼みにする”ことが一番重要であると筆者は考えているが,まだまだその問題の奥深さを十分には窮められていない。
本音を言うと,筆者としては,この本のタイトルは少し気恥ずかしい。尋ねられて本当にぴったりした回答ができる自信はまだない。あくまでも今の到達点としてお読みいただければ幸いである。
メジカルビュー社『Mebio』編集部の加賀智子さんには拙稿をいつもきれいに構成していただいた。本となる段階では藤原琢也さんの援助を得た。厚く感謝の意をお伝えしたい。
2012年4月
天理よろづ相談所病院副院長
石井 均
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目次
Ⅰ こころと行動の問題へのアプローチと解決法
1 なぜもっと直接的な質問をしないのですか
2 こころの負担度を測定する
3 もう糖尿病に飽きました
4 食べ過ぎるときは、自分自身に対して何と言ってますか?
5 ずいぶん大きな注射器だろうね
Ⅱ エビデンスとこころの問題へのアプローチ
6 何をしても死ぬときは同じ
7 今から、そうしたとしても……
8 私にはこちらのほうがいいです
Ⅲ 医師の思いとこころの問題への関わり方(関係)の理念
9 やはり合併症のことを強く言ったほうが……
10 糖尿病の患者さんには特有の性格が……
11 話を聴く時間がとれません……
12 QOL測定が大切なことはわかりましたが……
13 エンパワーメントの意味するところ
Ⅳ グループ療法によるこころの問題へのアプローチ
14 他人の話を聞かないのが自慢です
15 医者も糖尿病になればいい
16 仲間で知恵を出しあえば
Ⅴ 希望をなくしている患者のこころの問題へのアプローチ
17 先生、こんなことができました
18 音を立てて水が飲みたい
19 糖尿病であること、糖尿病を生きること
1 なぜもっと直接的な質問をしないのですか
2 こころの負担度を測定する
3 もう糖尿病に飽きました
4 食べ過ぎるときは、自分自身に対して何と言ってますか?
5 ずいぶん大きな注射器だろうね
Ⅱ エビデンスとこころの問題へのアプローチ
6 何をしても死ぬときは同じ
7 今から、そうしたとしても……
8 私にはこちらのほうがいいです
Ⅲ 医師の思いとこころの問題への関わり方(関係)の理念
9 やはり合併症のことを強く言ったほうが……
10 糖尿病の患者さんには特有の性格が……
11 話を聴く時間がとれません……
12 QOL測定が大切なことはわかりましたが……
13 エンパワーメントの意味するところ
Ⅳ グループ療法によるこころの問題へのアプローチ
14 他人の話を聞かないのが自慢です
15 医者も糖尿病になればいい
16 仲間で知恵を出しあえば
Ⅴ 希望をなくしている患者のこころの問題へのアプローチ
17 先生、こんなことができました
18 音を立てて水が飲みたい
19 糖尿病であること、糖尿病を生きること
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糖尿病の患者さんのこころに寄り添うためのヒント,石井先生が答えます
2010年に刊行された「糖尿病診療よろづ相談」では,糖尿病診療において一般的に遭遇する問題(低血糖,合併症,血糖自己測定,インスリン導入など)についての患者さんのこころを解説した。本書では,具体的な治療における問題に限定せず,糖尿病患者さんが抱えているこころの問題について解説した。「糖尿病診療よろづ相談」を読んで「もっと石井先生に聞いてみたい」と感じた読者の先生方にお答えできる,また本書を読んで「糖尿病診療よろづ相談」も読んでみたいと思っていただける一冊である。