新 目でみる循環器病シリーズ 18

冠危険因子

冠危険因子

■編集 野出 孝一

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • B5判  224ページ  2色(一部カラー)
  • 2006年11月10日刊行
  • ISBN978-4-7583-0140-4

冠危険因子を理解し,臨床に活かすための1冊

JSH2004の高血圧ガイドラインでもみられるように,冠危険因子に肥満,腎機能障害といった新しい因子が加わってきている。また近年の生活習慣の大きな変化や,年齢の高齢化等も重なり,わが国の虚血生心疾患は益々増加していくことが考えられる。
本書では,わが国での虚血性心疾患の現状から,肥満,メタボリックシンドロームを含めた新しい冠危険因子,大血管障害をターゲットとした冠危険因子への具体的な介入方法等を中心に執筆していただいた。


序文

 生活習慣の変遷に伴い,日本人の疾病構造が変化している。沖縄26ショックという言葉に代表されるように,従来,長寿の地域であった沖縄県の男性は,心筋梗塞による死亡率が全国で5位以内に増加している。戦後いち早くファーストフードを中心としたアメリカの食文化の流入,車社会による運動不足が背景に存在し,日本人が人種的に心筋梗塞の発症が少なくないことを意味する。もともと日本人はインスリン分泌が少ない民族であり,魚を中心とした低脂質,低カロリーの食習慣により糖尿病の発症が少なかったが,生活習慣の変遷によって20年後はアジア世界では最も糖尿病患者が多くなることが予想されている。
 このことから,高脂血症,糖尿病が基盤となった大血管障害による致死性の心筋梗塞,脳梗塞が増加している。これは死亡率に影響するだけでなく,寝たきり人口の増加により健康寿命・QOLの低下が生じ,介護医療の増加,勤労人口の低下による社会的な損失につながっている。したがって,大血管障害を予防するための冠危険因子の厳格な早期からの管理が重要である。
 JSH2004の高血圧ガイドラインにも見られるように,冠危険因子に肥満,腎機能障害といった新しいファクターが加わっている。メタボリックシンドロームは軽症の危険因子の重複が従来の冠危険因子と同等の動脈硬化のリスクになるという概念であるが,重複したリスクのマルチケアが必要であることを示唆する。
 また,生活習慣関連病(life style related disease)は,冠危険因子の重症度が各個人の感受性によって異なっていることも最近のゲノム研究の進歩により明らかになってきている。冠危険因子の介入をどこまで行うかは各個人の病態,遺伝的な素因によって細かく検討されるべきである。
 心筋梗塞,不安定狭心症,アテローム血栓性の脳梗塞は血管の炎症を基盤とした不安定プラークの破綻が関与する。喫煙,肥満いずれも血管炎症を惹起するが血管炎症,血管内皮機能低下は動脈硬化疾患の原因となるだけではなく,高血圧,糖尿病等の冠危険因子の原因ともなっており,動脈硬化予防には,抗炎症,血管機能改善も一つの方法である。本書では,本邦での虚血性心疾患の現状,肥満,メタボリックシンドロームを含めた新しい冠危険因子,大血管障害をターゲットにした冠危険因子への具体的な介入方法を中心に,第一線の研究者の先生方に解説していただいた。本書が日本人における循環器病の新しい予防法の一助になることを編者として期待している。

平成18年8月
佐賀大学医学部循環器・腎臓内科教授
野出孝一
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目次

I−なぜ危険因子が重要なのか
 わが国における虚血性心疾患の動態:疫学研究より  中村保幸
 冠動脈硬化病変の形成  吉田雅幸
 虚血性心疾患の一次予防ガイドライン  倉林正彦
II−冠危険因子を知る 1
 高脂血症  寺本民夫
 糖尿病  小田原雅人
 高血圧  植田真一郎
 虚血性心疾患と炎症  井上晃男
 冠動脈と血栓  後藤信哉
 冠攣縮における危険因子  吉村道博
III−冠危険因子を知る 2:ライフスタイルと虚血性心疾患
 肥満  庄野菜穂子
 喫煙  加藤 徹,野出孝一
IV−冠危険因子を知る 3
 虚血性心疾患と性差  河野宏明
 虚血性心疾患と加齢  大田秀隆,秋下雅弘,大内尉義
 透析と虚血性心疾患  細井雅之,川崎 勲,佐藤利彦
V−メタボリックシンドローム  島本和明
VI−冠危険因子への介入
 高脂血症のコントロール目標と治療  吉岡 淳,野出孝一
 糖尿病のコントロール目標と治療  山岸昌一,今泉 勉
 高血圧のコントロール目標と治療  東 幸仁
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