医学生のための画像診断マニュアル

　私が編者の１人として参加し，1998年に上梓した『国試画像診断突破マニュアル（メジカルビュー社刊行）』は，医師国家試験に出題された画像をもとに画像診断のトレーニングを積むという実際的なアプローチで，多くの医学生の皆さんに好評をもって迎えられました。しかしその後，一時的に医師国家試験問題が非公開だったことなどの理由で，改訂が滞っていました。本書はその『国試画像診断突破マニュアル』の編集方針を基盤としながらも，まったく新たに書き下ろしたものです。
　あれから10年以上経ち，この間のめざましい画像診断の進歩を反映して，医師国家試験の内容も大きく様変わりしました。画像問題の出題数が格段に増えるとともに，当時はまだ出題されなかったMRIが日常茶飯事のように出題され，最近は3次元画像も珍しくありません。また，画像が単なる付け足しではなく，画像の読みそのものを問う設問，画像が読めないと先に進めない出題が増えています。
　画像診断が扱う領域は，文字通り頭のテッペンからツマ先まで，全領域・全診療科にまたがり，さらに検査方法もエックス線検査，MRI，超音波検査，核医学など多岐にわたります。日々の講義・実習に忙殺される医学生にとって，画像診断を系統的に勉強するのは至難の業です。重要なところを，要領よく勉強しないと間に合いません。いろいろな勉強法があると思いますが，“試験問題を有効に利用して勉強する”のは，よい方法の1つです。試験に出るのは，当然のことながら臨床的にも重要な領域ですから，まずそこをおさえて，さらに輪を拡げてゆけば，拡がった輪が重なり合って大きな領域をカバーできます。決して試験のための勉強というわけではなく，試験勉強の枠を超えて短時間に実力を養成することができます。
　本書は，過去10年間の既出問題（第95回〜第104回）のうち，画像が出題された問題のほとんどすべてを取り上げています。よく似た画像が繰り返し出題されている場合も少なくありませんが，類似症例を比較することの意義を考えてあえて重複をいとわずに掲載し，その違いを解説することによって重要ポイントを浮き彫りにするように配慮しています。また必要に応じて，第94回以前の問題や，オリジナル症例も加えて，出題範囲を漏れなくカバーするように努めました。
　本書を通じて，多くの医学生の皆さんが画像診断に興味をもち，臨床に活用する力を身につけられることを願っています。最後になりましたが，膨大な編集の労をとられた編集部の吉川みゆきさん，高橋　学さんに深甚の謝意を表する次第です。

2010年8月
百島祐貴