講義録

腎臓学

腎臓学

■編集 木村 健二郎
富野 康日己

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5変型判  400ページ  2色
  • 2004年11月12日刊行
  • ISBN978-4-7583-0057-5

腎臓学の基礎から臨床的症候を理解し治療に結びつけられるよう,必要,十分な内容をまとめた必携の教科書

内容は大きく2章に分けている。I章『腎臓を深く知るための基本講義』では病態生理の理解するために基本的な症候を解説し,病態に基づいて診断を進めていくための基礎としての症候と検査の基本を記述している。II章『腎疾患を深く学ぼう』は,個々の疾患を学びながら適宜,症候と疾患の関係や病理形態学の基礎に戻り,個々の疾患の理解を深め,さらに疾患の関係を立体的に理解するようまとめてある。また疾患編では腎疾患だけではなく尿路疾患についても解説している。
 囲み記事のBasic pointでは,腎臓学を理解するために必要な解剖学,生理学,生化学,発生学などの基礎知識の重要ポイントを解説し,掲載している。さらにLevel Up Viewではより深い知識を得たいと考えている学生のために,臨床現場の最新情報や,最近注目の研究発表などさらにレベルアップした内容について掲載している。
 なお各項目の終わりにQ&Aを設けて,重要なポイントが理解できているかself checkできるようにしてある。解答・解説は巻末のまとめて記載してあるので力試しにも利用できる。
 腎臓学を病態生理に基づいて症候を理解し,診断を進め,疾患に対して確実に対処できる医師となるための基礎を身に付けられる本である。


序文

 私たち医師は症候から病める患者の病態を的確に把握し,診断を進め,さらに最適な治療を行っていかなければならない。そのためには臓器の構造や働きに対する理解はもちろんのこと,それらが異常となったときどのような機序で臨床症候が現れてくるのか,その病態生理を理解していなければならないし,さらに個々の疾患に対する確実な知識も必要である。しかし,形態学(解剖学,組織学),病理学,あるいは生理学といった基礎医学で学んだことを臨床的な症候と結びつけて,病態生理を理解することに,多くの医学生が困難を感じているのが現状であろう。
 腎臓病学においては特にこの病態生理の理解が治療に直結する重要なポイントとなる。そこで,本教科書では基本的な症候を理解し病態に基づいて診断を進めていくための基礎としての『I.腎臓を深く知るための基本講義』で症候と検査の基本を記述した。腎臓の形態学や生理学は一通り勉強した学生を対象とすることを前提にしているが,重要なところは適宜Basic Pointでまとめてある。学生諸君には形態学や生理学で学んだことと症候学とを関連付けて理解する努力を是非行って頂きたい。そして『II.腎疾患を深く学ぼう』は,症候と疾患の関係を理解し,さらに病理形態学の基礎を復習してから,個々の疾患を学ぶような流れで構成した。個々の疾患を学びながら適宜,症候と疾患の関係や病理形態学の基礎に戻り,個々の疾患の理解を深め,さらに疾患の関係を立体的に理解するように努めて頂きたい。この疾患編では腎疾患のみならず尿路疾患も広く解説している。
 本書の執筆は実際に学生の講義を担当されて教育の第一線で活躍されている先生方にお願いした。実際の講義で学生にとって理解し難いポイントはどこか,どのように講義を進めたら学生が理解しやすいかを熟知されている先生方なので,図表を効果的に使って大変に分かり易く記述していただいている。本書を通読することにより腎疾患を病態に基づいてしっかりと理解することが出来るようになると確信している。また,適宜,囲みで記載されているLevel Up Viewのコーナーでは,基本的な教科書の記述と腎臓学における常識や一段高い知識の隙間を埋めるような内容を記述した。また,診療において重要な最近のclinical evidenceに関してもこのコーナーに記載した。また,各項目の終わりにQ&Aをもうけて,重要なポイントが理解できているかself checkできるようにしてある。必ずこのQ&Aにはトライして頂きたい。
腎臓学を勉強をし始めた学生にも,また,医師国家試験のためのまとめとしても本書は極めて有用な教科書であると考えている。しかし,本書の意図するところは,病態生理に基づいて症候を理解し,診断を進め,疾患に対して確実に対処できる医師となるための基礎を,腎臓学を通して,築くことにある。本書を一人でも多くの学生が活用して,腎臓学に対する理解を深めていただけきたいと願っている。

2004年9月
聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科教授  木村健二郎
順天堂大学医学部腎臓内科学教授  富野康日己
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目次

腎臓を学ぶために必要な解剖図
腎臓学で使われる略語
腎疾患に関するガイドライン一覧
凡例(本書の特徴)

I.腎臓を深く知るための基本講義
 A.腎臓の症候を学ぶ
  腎臓の症候学
  尿の性状の異常
  尿量の異常
  電解質異常
  酸塩基平衡とその異常
  浮腫
  高血圧
  尿毒症
  排尿障害
 B.診断と検査の基本を学ぶ
  尿検査
  血液生化学的検査
  腎機能検査
  画像検査
  腎生検法
II.腎疾患を深く学ぼう
 A.症候と疾患の関係の理解
  症候と疾患の関係の理解
 B.腎疾患を理解するための病理形態学の基礎
  腎疾患を理解するための病理形態学の基礎
 C.糸球体病変
  微小変化型ネフローゼ症候群
  巣状糸球体硬化症
  IgA腎症
  管内性増殖性糸球体腎炎
  膜性腎症
  膜性増殖性糸球体腎炎
  半月体形成性腎炎(急速進行性糸球体腎炎)
  家族性・遺伝性腎炎
  全身疾患に伴う糸球体疾患
  糸球体病変の知識をさらに深めよう
 D.血管・尿細管・間質病変
  腎硬化症
  血栓形成性微小血管障害
  尿細管・間質性腎炎
  急性尿細管壊死
  尿細管機能異常
  腎静脈血栓症
  腎梗塞,腎動静脈瘻,腎動脈瘤
  腎血管性高血圧
 E.腎機能障害
  腎不全
 F.尿路結石
  尿路結石
 G.腎・尿路感染症
  腎盂腎炎
  腎膿瘍
  膀胱炎,尿道炎,前立腺炎
  尿路結核
 H.腎・尿路の腫瘍
  腎腫瘍
  尿路上皮癌(腎盂・尿管癌,膀胱癌)
 I.その他の腎・尿路の異常
  単純性腎嚢胞  
  多発性嚢胞腎  
  海綿腎  
  馬蹄鉄腎  
  先天性水腎症  
  重複腎盂尿管  
  尿管瘤  

Basic Point  
 I.腎臓を深く知るための基本講義 
  ネフローゼ症候群における浮腫と低アルブミン血症
  ネフロンの構造および尿生成とその破綻のメカニズム
  糸球体濾過のメカニズム
  電解質異常総論
  血液ガスの読み方の実際/血液ガスの読み方の手順
  浮腫のメカニズムを理解する
  高血圧の原因臓器としての腎臓と高血圧の標的臓器としての腎臓
  腎臓の機能とその障害による病態
  排尿障害を理解するための排尿のメカニズム
  血清蛋白のいろいろ
  ネフロンにおける糸球体濾過,再吸収および分泌の関係
  腎血流量と尿量との関係
  糸球体濾過
  画像診断理解のための腎・尿路の発生および形態の生理
  腎生検における病理診断の条件(検体処理から染色まで)
 II.腎疾患を深く学ぼう 
  語句の説明(病理形態学)
  低アルブミン血症
  腎の血行動態
  補体活性化経路
  腎炎惹起性菌株
  糸球体性蛋白尿
  腎機能を規定するのは糸球体?
  RPGNとは
  糸球体基底膜
  血管レベルの疾患概念
  ループス腎炎の腎糸球体病変に関する用語
  結節性病変の鑑別ポイント
  糸球体毛細血管壁の構成要素
  補体/免疫複合体型腎炎の発生機序/補体の活性化
  Bence Jones蛋白
  AASK研究
  vWF-cleaving protease活性
  腎生検の有用性
  尿細管障害部位の特徴
  近位尿細管における再吸収機構
  腎静脈血栓症の病理
  コレステロール塞栓症
  血圧の上昇するメカニズム
  GFR低下のメカニズム
  急性腎不全と慢性腎不全の鑑別点
  診断のポイント/救急検査のポイント(尿路結石)
  尿路結石のポイント
  男性における腎盂腎炎
  誘因(腎膿瘍)
  前立腺への薬剤移行性
  難治性尿路感染症
  腎細胞癌の組織学的分類
  膀胱癌の病理組織学
  腎の発生
  多発性嚢胞腎の病理
  腎髄質の組織
  腎臓の発生における腎臓の上昇
  腎盂尿管移行部の組織
  腎・尿管の発生
  Wolff管(中腎管)と尿管芽の発生
Level up View  
 I.腎臓を深く知るための基本講義 
  腎症候と感度と特異度
  厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班報告
  糸球体バリアー機能と尿蛋白
  水チャネル
  電解質代謝異常を伴う遺伝性疾患
  アニオンギャップ(anion gap)と浸透圧ギャップ(osmolar gap)
  薬物の副作用としての浮腫
  腎障害を伴う高血圧の治療
  尿毒素として可能性のあるものの分類と概要
  排尿障害の薬物療法
  心血管系疾患の危険因子としての微量アルブミン尿
  血清シスタチンC
  血清β2-ミクログロブリン
  クリアランスの概念
  1 / Cr/採尿せずGFRを推定する方法
  腎動脈狭窄診断におけるMRAと3D-CT
  in situ hybridization
 II.腎疾患を深く学ぼう 
  糸球体腎炎の発症機序
  ネフリン
  podocyte injury
  IgA1糖鎖不全説
  急性発症の糸球体腎炎
  膜性腎症の発症機序
  C3NeF
  肺腎症候群
  Alport症候群,爪膝蓋骨症候群の遺伝子異常
  SLEの腎糸球体病変の新たな分類(ISN / RPS 2003)
  糖尿病性腎症治療におけるレニン-アンジオテンシン系抑制の意義
  リポ蛋白糸球体症
  糖尿病性腎症でみられる結節性病変
  WHO病理組織学的分類
  多発性骨髄腫にみられる腎障害の頻度
  JNC第7次報告
  HELLP症候群
  間質の線維化
  壊死とアポトーシス(apoptosis)
  尿細管機能異常と遺伝子
  ネフローゼ症候群と腎静脈血栓症の因果関係
  腎動脈瘤の外科的治療の適応
  実験的高血圧成立機序
  腎前性腎不全と腎性腎不全の鑑別
  二次性副甲状腺機能亢進症におけるリン管理の意義
  新しい治療法(尿路結石)
  細菌性ショック
  急性腎盂腎炎の疫学
  基礎疾患の治療(腎膿瘍)
  細菌性前立腺炎の診断(Meares and Stamey法)
  萎縮膀胱
  結核の診断法
  腹腔鏡下腎摘除術
  腎細胞癌の免疫療法
  尿路変向術
  腹腔鏡下腎嚢胞壁切除術(腎嚢胞開窓術)
  常染色体劣性多発性嚢胞腎
  多発性嚢胞腎の遺伝子診断
  腎に石灰化をきたす疾患
  馬蹄鉄腎の水腎症に対するendopyelotomy
  膀胱尿管逆流現象
  尿管の発生に関する遺伝子
  尿管瘤の成因
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