チームステップス[日本版] 医療安全
チームで取り組むヒューマンエラー対策
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定価 2,860円(税込) (本体2,600円+税)
- A5判 192ページ オールカラー
- 2012年12月3日刊行
- ISBN978-4-7583-0040-7
電子版
序文
■推薦の言葉
住吉蝶子
Team STEPPS マスタートレーナー
東京慈恵会医科大学客員教授
社団法人東京慈恵会綜合医学研究センター医療教育部
本書では,Team STEPPS の概念だけでなく,東京慈恵会医科大学附属病院の医療安全活動の取り組みの中でTeam STEPPS プログラムがどのように導入され活用されているかについて,詳細にわたり説明されている。医療の質や成果の向上,医療安全,チーム医療,患者中心のケアという言葉は普段から頻繁に耳にするものであり,特に医療ケア提供者たちは1 年365 日,これらを実践するべくエネルギーを使っているはずである。確実かつ,より効率的に,これらの言葉を実践,展開するために,すでにTeam STEPPS プログラムを実践し進行している医療機関の人々,また,これらの課題に戸惑っている医療機関の人々,さらに,その他多くの医療教育者・医療従事者に,この書を読むことを勧める。
日本の医療界では,Team STEPPS という米国生まれの医療安全プログラムは,残念ながらさして広がりを持っていない。Team STEPPSとはどんなことなのか? 何故Team STEPPS に投資するのか? このプログラムは患者に医療ケア提供者に何をもたらすのか? 認知度の低い本邦では多くの疑問が示されるであろう。それに対しては,単なる外国の方法を日本語訳したものとは違い,多岐にわたる専門分野での導入方法と実践,導入後の変化についての実例など,実際に本邦の医療現場の中で展開された事実を通したプログラム活用や,それによる組織への成果,これからの課題などについて言及している本書が,大いに参考になる。本書は慈恵医大という本邦の大学附属病院の職員を対象に行っている医療安全研修会の内容を,教科書としてまとめたもので,Team STEPPS プログラムの活用方法が,日本の医療現場,臨床現場に合うように落しこまれているため,Team STEPPS になじみのない,あるいは疑問視している日本の医療関係者にも理解しやすい構成になっている。
Team STEPPS を初めて日本の医療界に紹介した者として,より多くの方々に,この書を読まれることをお勧めいたします。
2012 年10 月
------------------------------------------------------------
■序文
東京慈恵会医科大学附属病院 副院長・医療安全管理部部長
落合和徳
10年前の2002年11月,慈恵医大はマスコミの渦中にありました。医療ミスの言葉が新聞紙上を飾り,テレビでは連日センセーショナルに慈恵の名前が取り上げられました。慈恵人の誇りが傷つけられる思いでした。忘れることのできない青戸事件の真っただ中だったのです。それから10年,わたしたちは安心して受けられる医療の提供はどうしたらできるのか,日々頭を悩ませてきました。医療は,目的としたエンドポイントに限りなく近くなければなりません。予想された効果が発揮できず,かえって合併症で苦しむような結果は,医療を受ける側も,提供する側も望んでいません。われわれが取り組んだ医療安全対策は組織作りと教育・研修そして意識改革でした。
医療事故の原因・責任を個人に求め,事故を起こした個人を教育することによって医療安全対策を行っていた時代がありました。まさに医療安全対策前期といえましょう。その後,人は誰でも間違えるものだという考えから,誤りを犯す個人を責めるのではなく,その環境,組織の整備により,誤りが起きにくくするという組織の構造改革の時代を迎えました。医療事故をシステムの欠陥としてとらえ,システムを改善することで医療安全を確保しようというわけです。
はたして,これでどれだけ医療事故を減らすことができたでしょうか? 日々上がってくる医療問題報告書を見てみると,いくら組織改革を行っても医療事故が解決するわけではないことに気づきます。そこで改めてヒューマンエラー対策が求められるようになったのです。医療事故が起こりにくいシステムの上でヒトの特性を理解して医療安全に取り組む,これがTeam STEPPS導入のきっかけでした。この方法を学ぶことで,今まで当然として見過ごされてきたことの重要性に改めて気づきました。
Team STEPPSはチームで取り組む意識改革です。医療における安全対策だけでなく,いろいろな職場,環境で応用可能です。簡単なことの積み重ねです。ぜひ明日から実践してみてください。変わってきたなと実感できるはずです。
2012年10月
住吉蝶子
Team STEPPS マスタートレーナー
東京慈恵会医科大学客員教授
社団法人東京慈恵会綜合医学研究センター医療教育部
本書では,Team STEPPS の概念だけでなく,東京慈恵会医科大学附属病院の医療安全活動の取り組みの中でTeam STEPPS プログラムがどのように導入され活用されているかについて,詳細にわたり説明されている。医療の質や成果の向上,医療安全,チーム医療,患者中心のケアという言葉は普段から頻繁に耳にするものであり,特に医療ケア提供者たちは1 年365 日,これらを実践するべくエネルギーを使っているはずである。確実かつ,より効率的に,これらの言葉を実践,展開するために,すでにTeam STEPPS プログラムを実践し進行している医療機関の人々,また,これらの課題に戸惑っている医療機関の人々,さらに,その他多くの医療教育者・医療従事者に,この書を読むことを勧める。
日本の医療界では,Team STEPPS という米国生まれの医療安全プログラムは,残念ながらさして広がりを持っていない。Team STEPPSとはどんなことなのか? 何故Team STEPPS に投資するのか? このプログラムは患者に医療ケア提供者に何をもたらすのか? 認知度の低い本邦では多くの疑問が示されるであろう。それに対しては,単なる外国の方法を日本語訳したものとは違い,多岐にわたる専門分野での導入方法と実践,導入後の変化についての実例など,実際に本邦の医療現場の中で展開された事実を通したプログラム活用や,それによる組織への成果,これからの課題などについて言及している本書が,大いに参考になる。本書は慈恵医大という本邦の大学附属病院の職員を対象に行っている医療安全研修会の内容を,教科書としてまとめたもので,Team STEPPS プログラムの活用方法が,日本の医療現場,臨床現場に合うように落しこまれているため,Team STEPPS になじみのない,あるいは疑問視している日本の医療関係者にも理解しやすい構成になっている。
Team STEPPS を初めて日本の医療界に紹介した者として,より多くの方々に,この書を読まれることをお勧めいたします。
2012 年10 月
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■序文
東京慈恵会医科大学附属病院 副院長・医療安全管理部部長
落合和徳
10年前の2002年11月,慈恵医大はマスコミの渦中にありました。医療ミスの言葉が新聞紙上を飾り,テレビでは連日センセーショナルに慈恵の名前が取り上げられました。慈恵人の誇りが傷つけられる思いでした。忘れることのできない青戸事件の真っただ中だったのです。それから10年,わたしたちは安心して受けられる医療の提供はどうしたらできるのか,日々頭を悩ませてきました。医療は,目的としたエンドポイントに限りなく近くなければなりません。予想された効果が発揮できず,かえって合併症で苦しむような結果は,医療を受ける側も,提供する側も望んでいません。われわれが取り組んだ医療安全対策は組織作りと教育・研修そして意識改革でした。
医療事故の原因・責任を個人に求め,事故を起こした個人を教育することによって医療安全対策を行っていた時代がありました。まさに医療安全対策前期といえましょう。その後,人は誰でも間違えるものだという考えから,誤りを犯す個人を責めるのではなく,その環境,組織の整備により,誤りが起きにくくするという組織の構造改革の時代を迎えました。医療事故をシステムの欠陥としてとらえ,システムを改善することで医療安全を確保しようというわけです。
はたして,これでどれだけ医療事故を減らすことができたでしょうか? 日々上がってくる医療問題報告書を見てみると,いくら組織改革を行っても医療事故が解決するわけではないことに気づきます。そこで改めてヒューマンエラー対策が求められるようになったのです。医療事故が起こりにくいシステムの上でヒトの特性を理解して医療安全に取り組む,これがTeam STEPPS導入のきっかけでした。この方法を学ぶことで,今まで当然として見過ごされてきたことの重要性に改めて気づきました。
Team STEPPSはチームで取り組む意識改革です。医療における安全対策だけでなく,いろいろな職場,環境で応用可能です。簡単なことの積み重ねです。ぜひ明日から実践してみてください。変わってきたなと実感できるはずです。
2012年10月
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目次
1章 ヒューマンエラー対策の重要性とTeam STEPPS
1 チーム医療と医療安全
2 医療安全活動Team STEPPSとは
3 東京慈恵会医科大学附属病院の医療安全への取り組み
4 文化の醸成を始める前に
5 事例から学ぶ
6 アサーティブコミュニケーションの重要性
7 システムエラー対策の限界
8 危機感と変化の必要性を植えつける
9 エラーはなぜ起こるのか
10 チームワークの重要性
11 医療安全対策のパラダイムシフト
12 チームワークとは、その構成要素
13 コミュニケーションの難しさの体感
14 Team STEPPSを実践しよう
2章 チーム構成
1 最善の結果を生み出す医療チームとは
2 チーム活動への障害
3 患者ケアにおける医療チーム
4 医療チームの構成
5 当院でのチーム医療への取り組み
6 患者とのパートナーシップ
7 患者とのパートナーシップの例
8 Team STEPPSにおける患者とのパートナーシップ
3章 リーダーシップ
1 チーム活動とリーダー、リーダーシップ
2 リーダーとリーダーシップ
3 誰がリーダーになるか
4 全員がリーダーシップを意識する
5 あるべきリーダー、求められるリーダーシップ
6 ダニエル・キムの組織の成功循環モデル
7 チームリーダーの責務①業務の依頼
8 チームリーダーの責務②メンタルモデルの共有
9 チームリーダーの責務③フィードバック
10 メンタルモデルを共有するためのブリーフィング
4章 状況観察
1 状況観察と状況認識
2 個人の状況観察からチームの認識・行動へ
3 状況観察・状況認識・メンタルモデルの共有
4 観察すべき要点
5 自己の観察・評価
6 相手のクロスモニタリング
7 避けられない人間の基本特性
5章 相互支援
1 労務支援
2 情報支援
3 2チャレンジルール
4 CUS(カス)
5 “2チャレンジルール”“CUS(カス)”を実行するうえで大切なこと
6 擁護(アドボカシー)と主張(アサーション)
6章 コミュニケーション
1 有効なコミュニケーションとそのための戦略
2 コミュニケーションを確実にするツール
3 エスバー(SBAR;Situation, Background, Assessment, Recommendation)
4 ハンドオフ(引き継ぎ)
5 チェックバック(再確認)
6 コールアウト(大声発信)
7章 臨床現場におけるTeam STEPPSの取り組み
1 院内感染対策におけるTeam STEPPS
2 看護実践におけるTeam STEPPS ①
3 看護実践におけるTeam STEPPS ②
4 眼科病棟での事例とTeam STEPPS
5 薬剤師とTeam STEPPS
6 臨床工学技士とTeam STEPPS
7 放射線技師とTeam STEPPS
8 臨床検査技師とTeam STEPPS
9 病院事務職員とTeam STEPPS
8章 あたり前のことをやる、それがTeam STEPPS
1 ペリル、ハザード、リスクとTeam STEPPS
2 チームワーク改善後の医療現場での満足度の向上
3 「仕方がない」をなくすために
4 Team STEPPSにより職務満足度を高めて医療安全の実現を
5 WIN-WIN-WIN(3WINs)のために
6 Team STEPPSはそこにある
7 おわりに
1 チーム医療と医療安全
2 医療安全活動Team STEPPSとは
3 東京慈恵会医科大学附属病院の医療安全への取り組み
4 文化の醸成を始める前に
5 事例から学ぶ
6 アサーティブコミュニケーションの重要性
7 システムエラー対策の限界
8 危機感と変化の必要性を植えつける
9 エラーはなぜ起こるのか
10 チームワークの重要性
11 医療安全対策のパラダイムシフト
12 チームワークとは、その構成要素
13 コミュニケーションの難しさの体感
14 Team STEPPSを実践しよう
2章 チーム構成
1 最善の結果を生み出す医療チームとは
2 チーム活動への障害
3 患者ケアにおける医療チーム
4 医療チームの構成
5 当院でのチーム医療への取り組み
6 患者とのパートナーシップ
7 患者とのパートナーシップの例
8 Team STEPPSにおける患者とのパートナーシップ
3章 リーダーシップ
1 チーム活動とリーダー、リーダーシップ
2 リーダーとリーダーシップ
3 誰がリーダーになるか
4 全員がリーダーシップを意識する
5 あるべきリーダー、求められるリーダーシップ
6 ダニエル・キムの組織の成功循環モデル
7 チームリーダーの責務①業務の依頼
8 チームリーダーの責務②メンタルモデルの共有
9 チームリーダーの責務③フィードバック
10 メンタルモデルを共有するためのブリーフィング
4章 状況観察
1 状況観察と状況認識
2 個人の状況観察からチームの認識・行動へ
3 状況観察・状況認識・メンタルモデルの共有
4 観察すべき要点
5 自己の観察・評価
6 相手のクロスモニタリング
7 避けられない人間の基本特性
5章 相互支援
1 労務支援
2 情報支援
3 2チャレンジルール
4 CUS(カス)
5 “2チャレンジルール”“CUS(カス)”を実行するうえで大切なこと
6 擁護(アドボカシー)と主張(アサーション)
6章 コミュニケーション
1 有効なコミュニケーションとそのための戦略
2 コミュニケーションを確実にするツール
3 エスバー(SBAR;Situation, Background, Assessment, Recommendation)
4 ハンドオフ(引き継ぎ)
5 チェックバック(再確認)
6 コールアウト(大声発信)
7章 臨床現場におけるTeam STEPPSの取り組み
1 院内感染対策におけるTeam STEPPS
2 看護実践におけるTeam STEPPS ①
3 看護実践におけるTeam STEPPS ②
4 眼科病棟での事例とTeam STEPPS
5 薬剤師とTeam STEPPS
6 臨床工学技士とTeam STEPPS
7 放射線技師とTeam STEPPS
8 臨床検査技師とTeam STEPPS
9 病院事務職員とTeam STEPPS
8章 あたり前のことをやる、それがTeam STEPPS
1 ペリル、ハザード、リスクとTeam STEPPS
2 チームワーク改善後の医療現場での満足度の向上
3 「仕方がない」をなくすために
4 Team STEPPSにより職務満足度を高めて医療安全の実現を
5 WIN-WIN-WIN(3WINs)のために
6 Team STEPPSはそこにある
7 おわりに
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アメリカで実績を上げている医療安全対策Team STEPPSのわが国での実践を紹介
チームステップス(Team STEPPS;Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safety=医療の成果と患者の安全を高めるためにチームで取り組む戦略と方法)は,アメリカ発信の,良好なチームワークを形成することによって医療の安全推進と質の向上に成果を上げるためのチーム戦略(行動ツール)で,エビデンスに基づく方法である。Team STEPPSで重要な(1)チーム構成,(2)リーダーシップ,(3)状況観察,(4)相互支援,(5)コミュニケーションの5つを詳解している。このプログラムをいち早く学び,わが国の医療現場に則して改良を加え効果を上げてきた東京慈恵会医科大学附属病院の,医療安全対策ならびに各臨床分野での取り組みの実際を余すところなく紹介。