理学療法マネジメント
足部・足関節理学療法マネジメント
機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く
定価 5,940円(税込) (本体5,400円+税)
- B5判 264ページ 2色(一部カラー),イラスト150点,写真380点
- 2018年3月31日刊行
- ISBN978-4-7583-1912-6
電子版
序文
監修の序
運動器障害理学療法の臨床において,足部・足関節の評価をする機会は少なくない。下肢アライメントや動作機能にも影響を与える足部・足関節は,運動器障害を対象とした様々な場面で評価の対象となる関節であり部位でもある。しかしながら,その重要性は認識されながらも評価や治療のポイントを明確にすることは難しいとする声も多い。この背景には,巧妙で秀逸な足部・足関節の構造と機能の関係が,網羅すべき知識の整理を難しくしているのかもしれない。
本書では,足部・足関節の理学療法を進めるうえで有益な知見を系統的に整理し,評価と治療計画の考え方を示しながらそのプロセスマネジメントを的確に解説している。特に,構造と機能を意識した評価実施のポイントを整理するとともに,その解釈と治療プログラムを考えていく臨床判断のプロセスのコツを,経験のみならず多彩な研究成果を基盤にしながら解説することを心がけている。また,具体的な臨床イメージを高めるためのケーススタディも確保し,経験の浅い理学療法士にも具体的臨床マネジメントの理解を深めてもらう工夫をしている。
これらの執筆を担当したのは,足部・足関節の臨床に魅せられ,自ら足部・足関節の研究を精力的に進めている先生方である。本書の構成にもその研究成果が盛り込まれている。研究成果としてのエビデンスを臨床に活用することの気概が随所に感じられ,本書の内容に深みを増すとともに特色の一つになったように思う。
多くの理学療法士の方々,そして理学療法士を志す学生のみなさんに本書を活用いただき,足部・足関節の効果的な理学療法が展開されることを願ってやまない。あわせて,足部・足関節の理学療法評価と治療の特性を理解する有用な参考書として,医師をはじめとしたそのほかのメディカルスタッフにも活用いただくことができれば幸いである。
最後に,編集の労を執られた小林 匠先生,三木貴弘先生,またご執筆にご尽力をいただいた先生方に,この場を借りて厚くお礼申し上げたい。
2018年2月
片寄正樹
--------------------------
編集の序
我が国では,理学療法士は「医師の指示の下に,理学療法を行うことを業とする者」と定義される(理学療法士及び作業療法士法 第2 条)。そのため,理学療法士は,医師の診断名に応じて患者を評価し,治療を行う。しかしながら,同じ診断名の患者でも訴える症状は異なり,有する機能障害も異なるのが実際である。臨床現場の理学療法士には,「医師の指示の下に,患者の機能障害を適切に評価し,効率的な理学療法を行う」ということを要求されているのが現状である。
「足」には多くの骨・関節が存在し,その可動性や安定性に関与する組織も多数存在する。荷重動作において,常に「足」は土台であり,この土台を構成する一つひとつの骨が複雑かつ正確に動くことで,さまざまな動作を行うことが可能となる。我々理学療法士にとって,この構成要素の多さと動きの複雑さが,「足」を難解なものとしている。また,荷重の有無でも「足」の形状は変化し,動作によって求められる役割が異なる。このような背景から,「足」は非常に重要な組織であると認識されながらも,敬遠されがちな印象を受ける。
本書は,診断名ではなく「足」で代表的な機能障害に焦点を当て,それぞれの機能障害が生じる原因や評価・治療法を,一つひとつの関節レベルまで落とし込んで詳細に解説した。また,執筆に際しては,可能な限り現時点で知り得るエビデンスを整理し,そのうえで各執筆者の臨床経験に基づく知見をプラスさせていただいた。一方で,疾患に応じた代表的な機能障害を「疾患別索引」(p244)として巻末に加えた。対峙する「足」が有する機能障害の判断に困る際には,この「疾患別索引」を参考にしていただけると幸いである。
「足」の動きは三次元的である。本書における運動の表現は,すべて『足の外科学用語集第3 版(日本足の外科学会 編)』に準じた。すなわち,前額面上の運動は「内がえし/外がえし」と表現し,中足骨や趾骨の運動のみ「回内・回外」を使用した。また,水平面上の運動は,後足部では「内旋/外旋」,中・前足部では「内転/外転」を使用した。矢状面上の運動は,「底屈/背屈」もしくは「屈曲/伸展」で表現している。本書を読む際には,この点にご注意いただきたい(巻頭の「関節可動域表示ならびに測定法」(p ⅹ)を参照)。
最後に,診断名ではなく機能障害に焦点を当てるという本書のコンセプトは,斬新である一方,執筆には多大な労力を要しました。難しいテーマであったにも拘わらず,本書のコンセプトにご理解いただき,ご執筆いただいた「足」のスペシャリストの先生方に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。また,企画から出版までの全てのプロセスにおいて,サポートいただいた共同編集者の三木貴弘先生,そして多大なるご尽力をいただいたメジカルビュー社の小松朋寛氏,榊原優子氏にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。 本書が,読者の方々にとって少しでも「足」を好きになるきっかけとなることを願います。
2018年2月
編集を代表して
小林 匠
運動器障害理学療法の臨床において,足部・足関節の評価をする機会は少なくない。下肢アライメントや動作機能にも影響を与える足部・足関節は,運動器障害を対象とした様々な場面で評価の対象となる関節であり部位でもある。しかしながら,その重要性は認識されながらも評価や治療のポイントを明確にすることは難しいとする声も多い。この背景には,巧妙で秀逸な足部・足関節の構造と機能の関係が,網羅すべき知識の整理を難しくしているのかもしれない。
本書では,足部・足関節の理学療法を進めるうえで有益な知見を系統的に整理し,評価と治療計画の考え方を示しながらそのプロセスマネジメントを的確に解説している。特に,構造と機能を意識した評価実施のポイントを整理するとともに,その解釈と治療プログラムを考えていく臨床判断のプロセスのコツを,経験のみならず多彩な研究成果を基盤にしながら解説することを心がけている。また,具体的な臨床イメージを高めるためのケーススタディも確保し,経験の浅い理学療法士にも具体的臨床マネジメントの理解を深めてもらう工夫をしている。
これらの執筆を担当したのは,足部・足関節の臨床に魅せられ,自ら足部・足関節の研究を精力的に進めている先生方である。本書の構成にもその研究成果が盛り込まれている。研究成果としてのエビデンスを臨床に活用することの気概が随所に感じられ,本書の内容に深みを増すとともに特色の一つになったように思う。
多くの理学療法士の方々,そして理学療法士を志す学生のみなさんに本書を活用いただき,足部・足関節の効果的な理学療法が展開されることを願ってやまない。あわせて,足部・足関節の理学療法評価と治療の特性を理解する有用な参考書として,医師をはじめとしたそのほかのメディカルスタッフにも活用いただくことができれば幸いである。
最後に,編集の労を執られた小林 匠先生,三木貴弘先生,またご執筆にご尽力をいただいた先生方に,この場を借りて厚くお礼申し上げたい。
2018年2月
片寄正樹
--------------------------
編集の序
我が国では,理学療法士は「医師の指示の下に,理学療法を行うことを業とする者」と定義される(理学療法士及び作業療法士法 第2 条)。そのため,理学療法士は,医師の診断名に応じて患者を評価し,治療を行う。しかしながら,同じ診断名の患者でも訴える症状は異なり,有する機能障害も異なるのが実際である。臨床現場の理学療法士には,「医師の指示の下に,患者の機能障害を適切に評価し,効率的な理学療法を行う」ということを要求されているのが現状である。
「足」には多くの骨・関節が存在し,その可動性や安定性に関与する組織も多数存在する。荷重動作において,常に「足」は土台であり,この土台を構成する一つひとつの骨が複雑かつ正確に動くことで,さまざまな動作を行うことが可能となる。我々理学療法士にとって,この構成要素の多さと動きの複雑さが,「足」を難解なものとしている。また,荷重の有無でも「足」の形状は変化し,動作によって求められる役割が異なる。このような背景から,「足」は非常に重要な組織であると認識されながらも,敬遠されがちな印象を受ける。
本書は,診断名ではなく「足」で代表的な機能障害に焦点を当て,それぞれの機能障害が生じる原因や評価・治療法を,一つひとつの関節レベルまで落とし込んで詳細に解説した。また,執筆に際しては,可能な限り現時点で知り得るエビデンスを整理し,そのうえで各執筆者の臨床経験に基づく知見をプラスさせていただいた。一方で,疾患に応じた代表的な機能障害を「疾患別索引」(p244)として巻末に加えた。対峙する「足」が有する機能障害の判断に困る際には,この「疾患別索引」を参考にしていただけると幸いである。
「足」の動きは三次元的である。本書における運動の表現は,すべて『足の外科学用語集第3 版(日本足の外科学会 編)』に準じた。すなわち,前額面上の運動は「内がえし/外がえし」と表現し,中足骨や趾骨の運動のみ「回内・回外」を使用した。また,水平面上の運動は,後足部では「内旋/外旋」,中・前足部では「内転/外転」を使用した。矢状面上の運動は,「底屈/背屈」もしくは「屈曲/伸展」で表現している。本書を読む際には,この点にご注意いただきたい(巻頭の「関節可動域表示ならびに測定法」(p ⅹ)を参照)。
最後に,診断名ではなく機能障害に焦点を当てるという本書のコンセプトは,斬新である一方,執筆には多大な労力を要しました。難しいテーマであったにも拘わらず,本書のコンセプトにご理解いただき,ご執筆いただいた「足」のスペシャリストの先生方に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。また,企画から出版までの全てのプロセスにおいて,サポートいただいた共同編集者の三木貴弘先生,そして多大なるご尽力をいただいたメジカルビュー社の小松朋寛氏,榊原優子氏にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。 本書が,読者の方々にとって少しでも「足」を好きになるきっかけとなることを願います。
2018年2月
編集を代表して
小林 匠
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目次
Ⅰ章 足部・足関節理学療法の概要
1 足部・足関節障害に対する理学療法の考え方 小林 匠
はじめに
足部・足関節疾患の機能障害
病期に応じたマネジメント
おわりに
2 足部・足関節の機能解剖とバイオメカニクス 野崎修平
足関節の機能解剖
足関節のバイオメカニクス
足部の機能解剖
足部のバイオメカニクス
足趾の機能解剖
Ⅱ章 病期別マネジメント
1 足部・足関節における病期別マネジメントのポイント 三木貴弘, 仲澤一也
概要
急性期のマネジメントのポイント
慢性期のマネジメントのポイント
おわりに
Ⅲ章 機能障害別マネジメント
1 足関節背屈可動性障害 小林 匠
はじめに
基本的知識
足関節背屈可動性障害の評価
運動連鎖による影響
足関節背屈可動性障害の治療
2 足関節底屈可動性障害 小林 匠
はじめに
基本的知識
足関節底屈可動性障害の評価
運動連鎖による影響
足関節底屈可動性障害の治療
3 足関節底屈機構(heel cord)の障害 江玉睦明
はじめに
基本的知識
heel cord障害の評価
運動連鎖による影響
heel cord障害に対するアプローチ
4 足関節安定性障害 越野裕太
はじめに
基本的知識
足関節安定性障害の評価
運動連鎖
足関節安定性障害に対するアプローチ
5 足部アーチの過剰低下(扁平足) 阿久澤 弘
はじめに
基本的知識
足部アーチの過剰低下の評価
運動連鎖
足部アーチの過剰低下の治療
6 足部アーチの低下障害(ハイアーチ) 谷口達也, 三木貴弘
はじめに
基本的知識
足部アーチの低下障害(ハイアーチ)の評価
運動連鎖による影響
足部アーチの低下障害(ハイアーチ)の治療
7 足趾機能の障害(開張足・外反母趾) 三木貴弘, 鴇田拓也
はじめに
基本的知識
足趾機能障害の評価
足趾機能障害の治療
Ⅳ章 機能障害別ケーススタディ
1 足関節底背屈可動性障害① 小林 匠,斉藤淳基
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
2 足関節底背屈可動性障害② 須賀康平
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
3 足関節底屈機構(heel cord)の障害 江玉睦明
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
4 足関節安定性障害 越野裕太
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
5 足部アーチの過剰低下(扁平足) 疋田佳希
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
6 足部アーチの低下障害(ハイアーチ) 谷口達也, 三木貴弘
症例情報
理学療法評価(受傷後10週,全荷重開始)
治療および治療効果
まとめ
7 足趾機能の障害 仲澤一也
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
1 足部・足関節障害に対する理学療法の考え方 小林 匠
はじめに
足部・足関節疾患の機能障害
病期に応じたマネジメント
おわりに
2 足部・足関節の機能解剖とバイオメカニクス 野崎修平
足関節の機能解剖
足関節のバイオメカニクス
足部の機能解剖
足部のバイオメカニクス
足趾の機能解剖
Ⅱ章 病期別マネジメント
1 足部・足関節における病期別マネジメントのポイント 三木貴弘, 仲澤一也
概要
急性期のマネジメントのポイント
慢性期のマネジメントのポイント
おわりに
Ⅲ章 機能障害別マネジメント
1 足関節背屈可動性障害 小林 匠
はじめに
基本的知識
足関節背屈可動性障害の評価
運動連鎖による影響
足関節背屈可動性障害の治療
2 足関節底屈可動性障害 小林 匠
はじめに
基本的知識
足関節底屈可動性障害の評価
運動連鎖による影響
足関節底屈可動性障害の治療
3 足関節底屈機構(heel cord)の障害 江玉睦明
はじめに
基本的知識
heel cord障害の評価
運動連鎖による影響
heel cord障害に対するアプローチ
4 足関節安定性障害 越野裕太
はじめに
基本的知識
足関節安定性障害の評価
運動連鎖
足関節安定性障害に対するアプローチ
5 足部アーチの過剰低下(扁平足) 阿久澤 弘
はじめに
基本的知識
足部アーチの過剰低下の評価
運動連鎖
足部アーチの過剰低下の治療
6 足部アーチの低下障害(ハイアーチ) 谷口達也, 三木貴弘
はじめに
基本的知識
足部アーチの低下障害(ハイアーチ)の評価
運動連鎖による影響
足部アーチの低下障害(ハイアーチ)の治療
7 足趾機能の障害(開張足・外反母趾) 三木貴弘, 鴇田拓也
はじめに
基本的知識
足趾機能障害の評価
足趾機能障害の治療
Ⅳ章 機能障害別ケーススタディ
1 足関節底背屈可動性障害① 小林 匠,斉藤淳基
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
2 足関節底背屈可動性障害② 須賀康平
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
3 足関節底屈機構(heel cord)の障害 江玉睦明
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
4 足関節安定性障害 越野裕太
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
5 足部アーチの過剰低下(扁平足) 疋田佳希
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
6 足部アーチの低下障害(ハイアーチ) 谷口達也, 三木貴弘
症例情報
理学療法評価(受傷後10週,全荷重開始)
治療および治療効果
まとめ
7 足趾機能の障害 仲澤一也
症例情報
理学療法評価
治療および治療効果
まとめ
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足部・足関節の機能障害に対する評価・解釈・治療アプローチを詳細に解説!
『関節理学療法マネジメント シリーズ』のうちの「足部・足関節」の巻。
本書では足部・足関節における機能障害として,足関節底背屈可動性の障害,足関節底屈機構(heel cord)の障害,足関節安定性の障害,足部アーチの障害,足趾機能の障害を取り上げ,評価法や評価結果の解釈の仕方,理学療法アプローチについてエビデンスを交えながら詳細に解説。また,それぞれの障害についてケーススタディも掲載している。
機能障害を的確に見つめ理解することで,限られた期間でも効果的で計画的なリハビリテーションを実施する「理学療法マネジメント能力」を身に付けられる1冊となっている。