日本医師会生涯教育シリーズ

脳血管障害診療のエッセンス

脳血管障害診療のエッセンス

■監修 北川 泰久
寺本 明
磯部 光章
弓倉 整

■編集 鈴木 則宏
峰松 一夫
寳金 清博
水間 正澄

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  348ページ  2色(一部カラー)
  • 2017年7月18日刊行
  • ISBN978-4-7583-1778-8

日本医師会生涯教育シリーズを単行本化。脳血管障害についてすべてを解説!

新たな局面を迎えている脳血管障害の診断から治療,リハビリテーションの実際に至るまでを,各領域のスペシャリストに解説してもらった,最新の情報と診療のエッセンスが詰まった1 冊!


序文



 脳血管障害は,がん,心疾患,肺炎に次いでわが国における死因の第4位であり,また,死亡を免れたとしても後遺症が残る可能性が高く,寝たきりになる最大の原因になっている.患者の多くは脆弱した血管をもつ高齢者であり,超高齢社会のわが国においては,脳血管障害の発症予防と発症後の対策はきわめて重要な課題と言える.
 脳血管障害は生命の危機や重大な後遺症を生ずるため,早期における適切な診断と治療が予後の改善に重要であるが,救急搬送の整備や検査機器の発達により,早期に明確な病変を発見することが可能になり,また治療デバイスや薬剤なども新たに開発され,脳血管障害診療は目覚ましい進歩を遂げている.
 本書は,脳血管障害の最新の知見を知っていただくために企画された.新たな局面を迎えている脳血管障害の診断から治療,リハビリテーションの実際に至るまで,各領域のスペシャリストに解説していただき,最新の情報と診療のエッセンスが詰まった1 冊に仕上がっている.会員の先生方が脳血管障害に関する最新の知識を吸収し,日々の診療に大いに活用していただければ幸いである.
 最後に,本書の企画から刊行までご尽力をいただいた監修の北川泰久先生,寺本 明先生,磯部光章先生,弓倉 整先生,編集の鈴木則宏先生,峰松一夫先生,寳金清博先生,水間正澄先生をはじめ,ご執筆に当たられた先生方に心より感謝申し上げる.

平成29年6月
日本医師会会長
横倉 義武

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監修・編集のことば

 脳血管障害は国民病の1つとして,長らく死亡原因の上位に位置し,寝たきりの原因の第1位の座を占め,今後ますます増えることが予想される認知症の原因としても重要である.
 脳血管障害の診断は,その成因の解明については生化学的,生理学的,血液学的検査によるところが多いが,その病変部位診断,血管病変の成り立ちについては,CT,MRI,SPECT,PET,脳血管撮影,超音波検査などの画像検査が重要な役割を担っている.
 脳血管障害の治療について,一昨年,『脳卒中治療ガイドライン2015』が発刊され,各部門,領域における治療の目安が示された.脳血管障害初期の診療手順と救急処置,救急隊との連携の体制づくりが行われ,早期発見と早期治療の重要性が確立された.虚血性脳血管障害の超急性期のt-PA療法は,本邦では2005年に認可され,その後10余年を経過しているが,その有効性については必ずしも十分とは言えず,最近,適応を絞った機械的血栓回収療法を主とする血管内治療の有効性が証明され,今後新たなデバイスによる効果がさらに期待されている.内科的治療としては,ラクナ梗塞,アテローム血栓性梗塞に対する抗血小板療法が行われ,最近は抗血小板薬の併用療法の是非が議論されている.近年,心原性脳塞栓症に対して,ワルファリンに代わる4種類のDirect Oral Anticoagulant(DOAC)が普及し,出血合併症の少ない抗凝固薬として注目されている.脳出血,くも膜下出血の手術療法においてもさまざまな進歩がみられる.
 脳卒中のリハビリテーションは近年,さまざまな機器,手法,薬剤を用いた治療法が開発され,機能障害の改善効果をもたらしている.脳血管障害の医療連携は超急性期から在宅に至る切れ目のないパスが運用されている.本書においては脳血管障害の診断,治療,リハビリ,医療連携すべての領域における現状と課題について,その領域の専門の先生に解説いただいた.
 実地医家の先生方にとって,本書が日常診療のお役に立てば幸いである.

平成29年6月
監修・編集者を代表して
北川 泰久
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目次

カラー口絵
 脳血管障害を知るための解剖   清水利彦,鈴木則宏
 脳血管障害の病態   瀧澤俊也,北川泰久
 脳血管障害の画像   塩澤真之,横田千晶,峰松一夫
 脳血管障害の典型的な手術写真   月花正幸,寳金清博

Ⅰ.総論
 脳血管障害の最近の動向   髙橋愼一,鈴木則宏
 脳卒中治療ガイドライン2015   小川 彰

Ⅱ.疫学
 地域住民を対象とした疫学研究   秦 淳,二宮利治
 脳卒中データバンク2015   小林祥泰
 福岡脳卒中データベース− Fukuoka Stroke Registry −   喜友名扶弥,鴨打正浩,北園孝成
 J-ASPECT Study −脳卒中医療の可視化に向けたビッグデータの活用−   飯原弘二

Ⅲ.脳卒中の診断手順
 脳血管障害発症直後の医療連携
  脳血管障害の市民啓発とFAST   横田千晶
  病院前脳卒中救護   井口保之
  救急搬送システム   青木淳哉,木村和美
  遠隔医療システム(ICT)   石原秀行,鈴木倫保
  脳卒中センターと脳卒中ケアユニット   長谷川泰弘
 脳血管障害急性期患者の問診と身体診察   岡田 靖
 脳血管障害急性期患者の神経学的検査の評価   橋本洋一郎
 脳卒中の評価スケール   寺山靖夫

Ⅳ.病型分類
 NINDS-Ⅲ   星野晴彦
 TOAST   髙尾昌樹

Ⅴ.脳血管障害の危険因子
 高血圧   棚橋紀夫
 糖尿病   守屋里織,北川一夫
 脂質異常症   伊藤義彰
 心血管疾患
  心房細動   合屋雅彦
  心房細動以外の心血管疾患   前嶋康浩
 血液凝固異常   安部貴人
 喫煙・飲酒   大木宏一
 ヘマトクリット高値   小泉健三
 無症候性頸動脈狭窄症   秋山武紀
 遺伝子多型   宮脇 哲,斉藤延人
 炎症マーカー   北川一夫
 メタボリックシンドローム   目黒 周,伊藤 裕
 睡眠時無呼吸症候群   宮本雅之
 慢性腎臓病   徳山博文,伊藤 裕

Ⅵ.脳血管障害の画像検査・血液学的検査
 脳灌流画像   高木 亮
 脳血管撮影   鈴木海馬,栗田浩樹
 脳神経超音波検査  玉置智規,久保田 稔
 SPECT・PET スキャン   成相 直
 血液凝固線溶異常   竹川英宏,五十嵐晴紀,平田幸一
 脳卒中のバイオマーカー   古井英介
 心電図   今井 靖
 心血管系における塞栓源の探索   宮崎 徹,磯部光章

Ⅶ.主な脳血管障害の診断と治療
 脳梗塞の診断と治療
  脳梗塞の病態と診断
   アテローム血栓性脳梗塞   藤本 茂
   ラクナ梗塞   中島 誠
   心原性脳塞栓症   菊野宗明,豊田一則
   Branch atheromatous disease   尾原知行
   一過性脳虚血発作   上原敏志
   頸動脈狭窄症   山上 宏
  脳梗塞超急性期の診断と治療
   血栓溶解療法   平野照之
   血管内治療
    機械的血栓回収療法   吉村紳一
    その他の急性期血行再建 −特に頸部頸動脈および脳主幹動脈閉塞
       (いわゆるタンデム病変)に対する再開通治療−   松丸祐司,宮内淑史
 脳出血の診断と治療
  高血圧性脳出血の診断と内科的治療   山﨑貴史,長田 乾
  脳出血の手術療法   西原哲浩
  抗血栓療法・血栓溶解療法に伴う脳出血   本山 靖,中瀬裕之
 くも膜下出血の診断と治療
  脳動脈瘤
   外科的療法−くも膜下出血に対する日本の外科的治療の現状−  井川房夫
   脳血管内手術−破裂脳動脈瘤に対する脳血管内治療−   杉生憲志
  遅発性血管攣縮の予防と治療   大熊洋揮
 急性期脳血管障害の血圧管理   丸山大輔,髙橋 淳
 脳血管障害の抗脳浮腫療法   渡部寿一,大里俊明
 脳保護療法   鐙谷武雄
 再生医療の進歩   黒田 敏

Ⅷ.その他の脳血管障害の診断と治療
 頭蓋内・外動脈解離   鈴木謙介,兵頭明夫
 脳動静脈奇形・海綿状血管腫   石川達哉
 硬膜動静脈瘻   坂井信幸,今村博敏
 外傷に伴う脳血管障害   卜部貴夫
 卵円孔開存   白井康大,磯部光章
 脳静脈・静脈洞血栓症   伊藤康男,荒木信夫
 もやもや病   黒田 敏
 脳アミロイドアンギオパチー   坂井健二,山田正仁
 高安動脈炎   中岡良和
 抗リン脂質抗体症候群   大熊壮尚,北川泰久
 トルソー症候群   野川 茂
 潜因性脳塞栓症(ESUS)への対応と課題   内山真一郎
 可逆性脳血管攣縮症候群   下田雅美
 小児の脳血管障害  武井 剛,久保田雅也
 妊娠期の脳血管障害   吉田和道,宮本 享

Ⅸ.無症候性脳血管障害
 脳ドックの現状   小林祥泰
 無症候性脳梗塞   髙橋 務,松本昌泰
 未破裂脳動脈瘤   森田明夫
 無症候性脳血管障害とmicrobleeds   佐藤 悠,西山和利
 無症候性脳血管病変   塩川芳昭

Ⅹ.脳梗塞の再発予防
 抗血小板療法
  各種抗血小板薬の適応と効果  田口芳治,田中耕太郎
  DAPT の有効性と課題   山下 徹,阿部康二
 抗凝固療法
  ワルファリン   尾林 徹
  NOAC(DOAC)の効果と課題   山内康照
 周術期における抗血栓療法の取扱い   伊澤良兼
 降圧療法   足立智英,高木 誠
 スタチン療法  温井孝昌,高嶋修太郎
 外科療法
  頸動脈内膜剥離術とステント留置術   遠藤英徳,冨永悌二
  EC-ICバイパス   小笠原邦昭

XI.脳血管障害に伴う慢性期症状の管理
 嚥下性肺炎   丹羽 篤,冨本秀和
 脳卒中後うつ状態   谷口 彰,冨本秀和
 脳卒中後てんかん   田中智貴,松本理器,池田昭夫
 脳血管性認知症   猪原匡史
 中枢性疼痛   美津島 隆

XII.リハビリテーション
 急性期リハビリテーション   中村 健
 回復期リハビリテーション   園田 茂
 生活(維持)期リハビリテーション   石川 誠
 口腔ケア   藤谷順子
 ボツリヌス毒素療法   正門由久
 ロボット支援練習   才藤栄一,平野 哲,向野雅彦
 摂食嚥下障害への対応   出江紳一
 高次脳機能障害に対するアプローチ   渡邉 修

XIII.脳卒中医療連携
 脳卒中地域連携   安保雅博
 DPC と脳卒中医療   伏見清秀
 脳卒中患者の在宅医療の実際   西田伸一
 脳卒中患者の身体障害認定と介護保険   中島英樹
 脳卒中医療:かかりつけ医と医師会の役割   弓倉 整
 熊本における脳卒中地域連携20 年間の歩み   平田好文
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