MEA マイクロ波
子宮内膜アブレーションの臨床
定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- B5判 116ページ オールカラー,イラスト50点,写真50点
- 2018年3月17日刊行
- ISBN978-4-7583-1753-5
電子版
序文
序
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)は,閉経すれば解消する過多月経に対する子宮全摘術が過剰な治療ではないか,という想起から開発された侵襲の少ない子宮内膜の破壊術です。産婦人科診療ガイドライン−婦人科外来編にも,器質性疾患のない過多月経に対する薬物療法以外の治療法の一つとして記載されています。
子宮内膜アブレーションの萌芽期には,まず子宮内膜の化学凝固や凍結等によって行われていました。その後,1980年代以降になると,マイクロ波やラジオ波などを使用することにより,子宮内膜組織を壊死させて切除術と同等の効果を得られたと報告されるようになりました。第1世代の子宮内膜アブレーションでは子宮鏡下での高周波やレーザーを用いた焼灼術が主流でしたが,第2世代では子宮鏡を使用せず,熱水バルーン・ラジオ波・マイクロ波・凍結などを使用する子宮内膜アブレーション専用器械で行うようになりました。
本邦で使用しているマイクロ波手術器(マイクロターゼ)は,田伏・銭谷先生が開発された純国産の医療機器であり,電子レンジ等で日常的に使用されている周波数2.45GHzのマイクロ波を生体組織に照射することにより発熱させるものです。この機器は厚生労働省の製造承認を1980年代に得ており,肝細胞癌,転移性肝癌,腎細胞癌,前立腺癌などの熱凝固等に用いられてきました。婦人科領域への導入にあたっては,金岡先生が大阪市立大学在籍時に開発された彎曲したアプリケーターの承認(2004年8月)から始まりました。その後2009年1月にマイクロ波子宮内膜アブレーションの治療が先進医療となり,限られた施設ではじまりました。そのエビデンスの集積を基に,子宮鏡下子宮内膜焼灼術が保険収載(2012年4月)され,マイクロ波子宮内膜アブレーションもこれに準ずるとの解釈から,実施施設と手術件数が大幅に増加しました。
子宮内膜アブレーションの利点は,子宮全摘術に比較して,より少ない手術侵襲であること,より早く日常生活へ復帰できること,より低額な医療費であることなどであるため,今後は過多月経に悩んでいる多くの女性を低侵襲に救うことができる,有力な手段の一つとなっていくでしょう。この手技をより多くの産婦人科医に臨床に取り入れていただけるように,基礎的な知識,手術手技から患者さんへの説明資料等々,すべてを網羅した解説書として本書を編集しました。本書が広く読まれることによって,一人でも多くの患者さんの悩みを解消する一助になることを祈っております。
最後に,東邦大学へのマイクロ波子宮内膜アブレーション導入のきっかけは,東邦大学名誉教授久保春海先生の朝の恒例の医局での気まぐれな独り言から始まりました。そこから,先進医療,保険導入,本書の作成までに至っており,感慨深いものがあります。
さまざまなご支援・ご協力をいただいた現東邦大学医療センター大森病院産婦人科教授森田峰人先生,東邦大学医療センター大森病院産婦人科医局員,東邦大学医療センター大橋病院教授久布白兼行先生,医療法人晧慈会浅川産婦人科星野真也子先生,油田啓一先生,浅川麻里子先生,花上まゆ先生,加藤沙絵先生,山田真理子先生に感謝いたします。
2018年3月
医療法人晧慈会浅川産婦人科
理事長 浅川 恭行
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)は,閉経すれば解消する過多月経に対する子宮全摘術が過剰な治療ではないか,という想起から開発された侵襲の少ない子宮内膜の破壊術です。産婦人科診療ガイドライン−婦人科外来編にも,器質性疾患のない過多月経に対する薬物療法以外の治療法の一つとして記載されています。
子宮内膜アブレーションの萌芽期には,まず子宮内膜の化学凝固や凍結等によって行われていました。その後,1980年代以降になると,マイクロ波やラジオ波などを使用することにより,子宮内膜組織を壊死させて切除術と同等の効果を得られたと報告されるようになりました。第1世代の子宮内膜アブレーションでは子宮鏡下での高周波やレーザーを用いた焼灼術が主流でしたが,第2世代では子宮鏡を使用せず,熱水バルーン・ラジオ波・マイクロ波・凍結などを使用する子宮内膜アブレーション専用器械で行うようになりました。
本邦で使用しているマイクロ波手術器(マイクロターゼ)は,田伏・銭谷先生が開発された純国産の医療機器であり,電子レンジ等で日常的に使用されている周波数2.45GHzのマイクロ波を生体組織に照射することにより発熱させるものです。この機器は厚生労働省の製造承認を1980年代に得ており,肝細胞癌,転移性肝癌,腎細胞癌,前立腺癌などの熱凝固等に用いられてきました。婦人科領域への導入にあたっては,金岡先生が大阪市立大学在籍時に開発された彎曲したアプリケーターの承認(2004年8月)から始まりました。その後2009年1月にマイクロ波子宮内膜アブレーションの治療が先進医療となり,限られた施設ではじまりました。そのエビデンスの集積を基に,子宮鏡下子宮内膜焼灼術が保険収載(2012年4月)され,マイクロ波子宮内膜アブレーションもこれに準ずるとの解釈から,実施施設と手術件数が大幅に増加しました。
子宮内膜アブレーションの利点は,子宮全摘術に比較して,より少ない手術侵襲であること,より早く日常生活へ復帰できること,より低額な医療費であることなどであるため,今後は過多月経に悩んでいる多くの女性を低侵襲に救うことができる,有力な手段の一つとなっていくでしょう。この手技をより多くの産婦人科医に臨床に取り入れていただけるように,基礎的な知識,手術手技から患者さんへの説明資料等々,すべてを網羅した解説書として本書を編集しました。本書が広く読まれることによって,一人でも多くの患者さんの悩みを解消する一助になることを祈っております。
最後に,東邦大学へのマイクロ波子宮内膜アブレーション導入のきっかけは,東邦大学名誉教授久保春海先生の朝の恒例の医局での気まぐれな独り言から始まりました。そこから,先進医療,保険導入,本書の作成までに至っており,感慨深いものがあります。
さまざまなご支援・ご協力をいただいた現東邦大学医療センター大森病院産婦人科教授森田峰人先生,東邦大学医療センター大森病院産婦人科医局員,東邦大学医療センター大橋病院教授久布白兼行先生,医療法人晧慈会浅川産婦人科星野真也子先生,油田啓一先生,浅川麻里子先生,花上まゆ先生,加藤沙絵先生,山田真理子先生に感謝いたします。
2018年3月
医療法人晧慈会浅川産婦人科
理事長 浅川 恭行
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目次
Chapter 1 手術の実際
術前管理
検査
適応条件
問診
各種検査
手術の予定
術前検査
麻酔
術前
麻酔管理に使う薬剤と器具
声門上器具
実際の麻酔管理について
術後麻酔覚醒時と呼吸管理について
術前処置(頸管拡張)
術前処置としての頸管拡張
頸管拡張処置後の対応
手術室でのセッティング
使用する器具
手術体位
手術手技
焼灼を開始するまで
焼灼
頸管の確認
内腔の掃除〜焼灼組織片の除去
手術終了
術後管理
退院まで
外来にて
早期管理
長期管理
Chapter 2 合併症について その対策やリカバリー法
子宮穿孔,子宮外臓器の熱傷
水様性分泌物
感染症
残存する子宮内膜による合併症
子宮内膜アブレーション後子宮内膜癌(PAEC)
postablation-tubal sterilization syndrome(PATSS)
子宮内膜アブレーション後妊娠
筆者らの施設での術後管理
Chapter 3 外来でのインフォームドコンセント
筆者らの施設の状況
MEA の適応
MEA のアウトカム
患者の満足度調査
外来でのインフォームドコンセント
Chapter 4 機械,器具の基礎知識
マイクロ波による生体組織の発熱
安全に臨床でマイクロ波加熱を使いこなすための知識
マイクロ波照射中のマイクロ波アプリケーター周囲の組織内温度分布
実際の子宮筋腫組織中での温度勾配はどのくらいの大きさか?
ミリ単位の注意が結果の明暗を分ける!
生体組織を加熱する際の血流の影響は?
Chapter 5 症例の選択,成績
MEA の短期予後
大量子宮出血に対するMEA の止血効果
MEA の長期予後
長期フォローで注意すべき症例
患者はMEA に何を望むのか
Chapter 6 インフォームドコンセントのための資料
過多月経診断のチェックポイント
子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮内膜ポリープ
過多月経と診断されたら
過多月経の治療法
疾患別治療法
Appendix 2.45GHz マイクロ波で行うマイクロ波子宮内膜アブレーション 実施ガイドライン
術前管理
検査
適応条件
問診
各種検査
手術の予定
術前検査
麻酔
術前
麻酔管理に使う薬剤と器具
声門上器具
実際の麻酔管理について
術後麻酔覚醒時と呼吸管理について
術前処置(頸管拡張)
術前処置としての頸管拡張
頸管拡張処置後の対応
手術室でのセッティング
使用する器具
手術体位
手術手技
焼灼を開始するまで
焼灼
頸管の確認
内腔の掃除〜焼灼組織片の除去
手術終了
術後管理
退院まで
外来にて
早期管理
長期管理
Chapter 2 合併症について その対策やリカバリー法
子宮穿孔,子宮外臓器の熱傷
水様性分泌物
感染症
残存する子宮内膜による合併症
子宮内膜アブレーション後子宮内膜癌(PAEC)
postablation-tubal sterilization syndrome(PATSS)
子宮内膜アブレーション後妊娠
筆者らの施設での術後管理
Chapter 3 外来でのインフォームドコンセント
筆者らの施設の状況
MEA の適応
MEA のアウトカム
患者の満足度調査
外来でのインフォームドコンセント
Chapter 4 機械,器具の基礎知識
マイクロ波による生体組織の発熱
安全に臨床でマイクロ波加熱を使いこなすための知識
マイクロ波照射中のマイクロ波アプリケーター周囲の組織内温度分布
実際の子宮筋腫組織中での温度勾配はどのくらいの大きさか?
ミリ単位の注意が結果の明暗を分ける!
生体組織を加熱する際の血流の影響は?
Chapter 5 症例の選択,成績
MEA の短期予後
大量子宮出血に対するMEA の止血効果
MEA の長期予後
長期フォローで注意すべき症例
患者はMEA に何を望むのか
Chapter 6 インフォームドコンセントのための資料
過多月経診断のチェックポイント
子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮内膜ポリープ
過多月経と診断されたら
過多月経の治療法
疾患別治療法
Appendix 2.45GHz マイクロ波で行うマイクロ波子宮内膜アブレーション 実施ガイドライン
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マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)導入のための必須テキスト!
過多月経の外科的療法として注目される,マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)を行うために必要なセットアップ・機器の紹介から手技までを1冊で学べる書籍。詳細で平易な解説,患者に説明するためのインフォームドコンセント用の資料ページ, MEA施行のためのガイドラインを付録し,本書一冊で外来から手術までMEA導入における一通りの準備ができるようになっている。