ジュニアアスリートをサポートする 
スポーツ医科学ガイドブック
[Web動画付]

ジュニアアスリートをサポートする スポーツ医科学ガイドブック[Web動画付]

■編集 金岡 恒治
赤坂 清和

定価 5,940円(税込) (本体5,400円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  376ページ  2色(一部カラー),イラスト168点,写真443点,Web動画 14本/計29分
  • 2015年9月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-1691-0

子どもたちに充実した競技生活を送ってもらうために

近年, 2020年東京オリンピックに向けて,各競技団体でジュニア選手の育成が活発になっている。本格的に練習を開始する小学校高学年〜高校は,急激な身長・体重の増加が生じる二次性徴期にあたり,発育発達の観点から年齢に応じた練習が必要で,不適切な練習を行うと容易にスポーツ外傷・障害(傷害)が発生する。ジュニア期のスポーツ傷害を予防し,起こった場合は早く治療して復帰させ再発させないためには,整形外科的知識だけではなく,発育発達,運動学習,競技特有の動作など,さまざまな知識が必要となる。
本書は,ジュニアアスリートの傷害の治療・予防,さらには競技力向上に必要な知識・技術をわかりやすく解説。各種目の著名な執筆陣が,競技スキルと外傷の関係,傷害予防のためのトレーニング・スキル練習までをかなり具体的に詳しく記載している。
子どもたちに充実した競技生活を送ってもらうために,ジュニアアスリートをサポートする医療スタッフ・指導者に役立つ知識が満載の1冊。


序文

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会が決定し,日本ではスポーツへの参加や観戦,スポーツと健康活動などに対する関心が高まってきている。2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会において活躍が期待される選手に目を向けてみると,彼らの多くは現在ジュニアアスリートとして競技に取り組んでいることがわかる。ジュニアアスリートをサポートする環境として,それぞれの競技では,監督,コーチ,医師,理学療法士,トレーナー,栄養士,そして家族など,多くの関係者が彼らの競技力向上のために取り組むとともに,科学的なトレーニング方法や外傷・障害予防としてさまざまなプログラムが取り入れられるようになってきている。

 そのような状況のなかで,多くのジュニアアスリートの健全なスポーツへの取り組みをサポートするとともに,彼らの競技力を向上させるメディカルサポートとトレーニングサポートの現状を理解し,充実させることが喫緊の課題であると考えた。その達成のために,本書は大きく2部構成として,次の内容を明確にし,読者とともに共有することとした。本書のPartⅠではジュニアアスリートに共通する総論として,身体面や精神面の発育・発達に関する知識とそれに対応するトレーニング方法の理解,短期的および長期的な栄養に関する知識と具体的な工夫,長期休暇などに実施される合宿の運営方法の注意点,救急救命が必要となる状況と対応策についての理解,大会での医療サポートにおける必要事項,テーピングの知識と技能,障害者スポーツにおけるジュニアアスリート特有の注意点などをまとめた。PartⅡでは,ジュニア選手が多い競技種目を選択し,各競技特有のメディカルサポートおよびトレーニングサポートの観点から,競技特性をさらに掘り下げて,競技力向上と外傷・障害予防を実践していくために,われわれが覚えておくべき内容を網羅するように努めた。

 本書は,それぞれの学問領域や競技種目の第一線で活躍されている先生方にご執筆を賜り,大変実践的で読者の方が望まれる内容に仕上がっている。本書の企画編集を担当した金岡恒治先生と小生の2人で詳細な構成と執筆者を決めさせていただいたが,ご多忙のなか,すばらしい原稿をまとめあげていただいた先生方に心より感謝申し上げる。
 刊行にこぎつけるまで,担当いただいた阿部篤仁氏の献身的で丁寧な編集作業と,本書の企画にご理解いただき辛抱強くご協力をいただいたメジカルビュー社に深謝申し上げる。

2015年8月
埼玉医科大学 赤坂清和
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目次

Part Ⅰ 総論
1 ジュニアスポーツの現状と展望
 子どもの体力・運動能力の現状とその背景
  近年の子どもの体力低下
  子どもの体力低下の原因
  体力・運動能力の二極化
 ジュニアスポーツを取り巻く環境:スポーツクラブと学校運動部活動
 子どもの体力向上に向けた取り組みと課題
  スポーツ基本法とスポーツ基本計画
 今後の展望
  子どもの体力向上に向けた学校・家庭・地域の連携
  一生涯の健康の礎としての体力・運動能力の視点から
  将来のトップアスリートを発掘・育成・強化するための視点から
 おわりに

2 ジュニア期の発育発達と運動・スポーツ
 ジュニア期の発育
 発育のためのスポーツ
 ジュニア期のスポーツ歴と成人後の骨密度の関連
 発育に合わせた発達を促すトレーニング
  幼児〜児童期
  9〜12歳:ゴールデンエイジ
  思春期
 まとめ

3 ジュニアアスリートのメディカルチェック
 はじめに
 メディカルチェックの意義
  整形外科的メディカルチェック
  内科的メディカルチェック

4 ジュニア期のスポーツ外傷と障害
 はじめに
 ジュニア期のスポーツ外傷
  骨折
  裂離骨折
  筋損傷(肉離れ)
 ジュニア期のスポーツ障害
  骨端症
  離断性骨軟骨炎
  疲労骨折
 ジュニア期に発生しやすいその他のスポーツ障害
  分裂膝蓋骨
  外脛骨
  シンスプリント
 ジュニア期のスポーツ外傷・障害の治療と予防

5 ジュニアアスリートにおける救命救急の現状
 はじめに
 頭部外傷
  概要
  受傷直後の対応
  脳振盪の評価
  セカンドインパクト症候群
 頸椎・頸髄外傷
  概要
  頸椎・頸髄損傷を疑う
  受傷直後の対応
  頸髄損傷を疑う所見
  救急隊到着までの対応
 顔面外傷
  概要
  受傷直後の対応
  外傷部位の観察と対応
 胸腹部外傷
  概要
  受傷直後の対応
  救急車要請の判断
 心臓震盪
 日常の備え
  個人の情報管理
  医療機関との連携
  BLS

6 ジュニア期のメンタルトレーニングとこころの問題
 はじめに
 ジュニア期における発達段階別の心理的特徴
  なぜ発達段階別の心理的特徴を理解すべきか
  発達段階別の主な心理的特徴
 ジュニア期のスポーツメンタルトレーニング
  スポーツメンタルトレーニングとは
  ジュニア期におけるメンタルトレーニングの目的
  心理的スキルのトレーニング
 ジュニア期の競技における心理的問題とその対応
  スポーツ傷害の心理的問題
  バーンアウト(燃え尽き症候群)
  摂食障害

7 ジュニアアスリートの栄養サポート
 ジュニア期の栄養・食事の重要性
  ジュニア期に身につけたい4つの習慣
 ジュニア期に必要なエネルギーと栄養素量
  エネルギー
  栄養素
 アスリートの基本的な食事の形
  栄養素の働きと栄養素を多く含む食品
  補食の活用
  「基本的な食事の形」の実践を身につける
 試合期の栄養サポート
  試合前・調整期の食事
  試合前日の食事
  試合当日の食事と具体的な食べ方の例

8 ジュニアアスリートのためのテーピング
 はじめに
 テーピングとは
 適切な診断・治療を受ける
 テーピングの実際
  テープの種類と選択
  テーピング適応前の注意点
 上肢のテーピング
  不安定肩のテーピング
  肘関節外側不安定性や外反ストレスによる痛みに対するテーピング
 肘関節伸展に伴う痛みや不安定性に対するテーピング
 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)のテーピング
 手指のテーピング
 膝関節内側不安定性制限のテーピング
 膝関節前方不安定性・過伸展制限のテーピング
 大腿遠位内側・外側の痛みに対するテーピング
 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対するテーピング
 Osgood-Schlatter病に対するテーピング
 足関節捻挫に対するテーピング

9 学校部活動の実際
 はじめに
 学校教育における部活動とは
  部活動の制度的位置づけ,理念
  部活動指導の実際
 部活動での体力要素のトレーニングの実施方法
  中学生と高校生のトレーニング方法の違い
  パフォーマンス測定と個別トレーニングメニュー作成
 学校部活動での医療サポートの実際
  学校内における保健室の利用
  救急時の対応
  地域医療機関との連携
  トレーナーの帯同など
 勉強との両立について
 部活動の目標について
  チーム目標について
  個人の目標について
 学校部活動の問題点:課題と解決策
  わが国の顧問教員の課題
  海外のジュニア期のスポーツ活動
  教員の負担,生徒の負担
  保護者,地域との関係・協力体制
 おわりに

10 合宿の開催方法と医療サポート
 はじめに
 季節休業に開催される合宿の実態と開催方法
 合宿時のスケジュール
 合宿時の医療サポート
  合宿中の医療スタッフの業務内容
 合宿地における医療サポート
  菅平高原の例
  合宿地の経済波及効果
 スポーツと法
 おわりに

11 各種競技大会における医療サポート
 はじめに
 事前確認と準備
  緊急時の対応と役割分担
  設備確認と物品準備
  出場選手の健康状態の把握:検診やアンケートによる確認
  サポートスタッフの育成
 試合時の医療サポート
  高校野球甲子園大会
  全国学童軟式野球大会
 試合後のクールダウンと障害予防の啓発(教育)
  高校野球甲子園大会
  全国学童軟式野球大会
 大会参加中のチーム内における医療サポート体勢
 投手の投球制限について
 おわりに

12 国際大会参加時の注意点
 はじめに
 国際大会参加に向けた準備
  渡航先の情報に関する入手と一般的注意
  渡航前の健康管理
  渡航中の手続き
 現地での対応
  生活に関する留意点
  医療機関を受診する必要が生じた場合
  競技会でのドーピング検査対応
  長期滞在によるストレス
  帰国時の対応
  その他

13 障害者スポーツにおけるジュニアアスリートの現状と展望
 はじめに
 パラリンピックとは
 障害者スポーツの特徴
  種目
  クラス分け
 各種目の紹介
  陸上競技(Athletics)
  ボッチャ(Boccia)
  5人制サッカー(Football-a-side)
  ゴールボール(Goalball)
  ウィルチェアーラグビー(Wheelchair Rugby)
  車いすテニス(Wheelchair Tennis)
 障害者スポーツのトレーニング方法
  車椅子を使用する場合
  義足を使用する場合
  視覚に障害を有する場合
 ジュニアアスリート発掘・育成の現状
  競技団体の活動
  国際大会
  法人や企業などの取り組み
 外傷の発生と予防
 障害をもった子どもをスポーツでサポートするには?
 おわりに

Part Ⅱ 競技種目別各論
1 野球
 はじめに
 過労性障害の科学
 パフォーマンス構造とパフォーマンス前提条件
 野球選手の短期的および長期的育成
  投球障害
  打撃障害
 野球指導者育成
  コーチ育成システムの構築
  コーチ自身の取り組み
 指導要領作成
  各年代での勝利至上主義
  育成のロードマップ

2 陸上競技
 はじめに
 競技人口
 学校体育としての陸上競技:学習指導要領から
  部活動としての陸上競技
  各年代におけるトレーニング
 外傷・障害の発生件数
  安全対策
 ジュニア期のスポーツ傷害
  腰椎分離症
  骨端症
  分裂膝蓋骨
  (母趾)種子骨障害
  有痛性外脛骨
  裂離骨折(骨盤)
  疲労骨折
 まとめ

3 サッカー
 サッカーのジュニア競技の実際
 サッカーの各年代における練習/トレーニング方法
  プレ・ゴールデンエイジ(5〜8歳ごろ)
  ゴールデンエイジ(9〜12歳ごろ)
  ポスト・ゴールデンエイジ(13〜15歳ごろ)
  インディペンデントエイジ(16〜18歳ごろ)
 サッカージュニア期に特異的な外傷・障害:評価から治療,リハビリテーション,予防方法まで
  サッカージュニア期に特異的な外傷・障害の疫学
  評価から治療,リハビリテーション,予防方法

4 ラグビー
 はじめに
  ラグビー人気の高まり
  ラグビーの特徴
  WRによる外傷・障害対策『RugbyReady』
 年代別ラグビーについて
  ミニラグビー
  ジュニアラグビー
  ユースラグビー
 ミニ,ジュニア,ユースラグビーのスポーツ損傷
  ミニラグビー(小学生ラグビー)のスポーツ損傷
  ジュニアラグビー(中学生ラグビー)のスポーツ損傷
  ユースラグビーのスポーツ損傷
 ミニ,ジュニア,ユースラグビーにおけるスポーツ損傷の予防
  競技規則による予防
  ラグビーの技術での予防
 ミニ,ジュニア,ユースラグビーの脳振盪
  年代別リスク
  確認されたら退場になる徴候・症状
  脳振盪からの復帰
 まとめ

5 ハンドボール
 ハンドボールの特徴
 ハンドボールの競技人口
 ハンドボールのジュニア選手における傷害
 部位別各論
  頭部・顔面・頸部
  脊椎・体幹
  肩関節
  肘関節
  手関節・手・手指
  膝関節・下腿
 各年代におけるトレーニング
  小学生期:正しく豊かなスキルを身につける
  中学生期:適度な負荷でけがの予防と体力アップ
  高校生期:競技力向上に向けた高負荷トレーニング

6 柔道
 はじめに
 柔道ジュニア競技の実際
  ジュニア期の競技人口
  外傷・障害の実情
 発育段階に応じた練習
  Scammonの発育曲線
  小学生期
  中学生期以降
 柔道に特異的な外傷
  頸髄損傷
  肘関節脱臼
 柔道に特異的な障害
  肘関節骨軟骨障害
  変形性肘関節症:Judo elbow

7 バレーボール
 はじめに
 わが国におけるジュニア世代のバレーボール競技人口
 バレーボールにおける外傷と障害
  競技レベルと損傷部位
  競技種目別の外傷発生件数
 ジュニア期の練習・トレーニングの方法
 障害予防のためのセルフケア:ウォームアップ,クールダウン,ストレッチング
 ジュニア選手へのセルフケアの指導
 バレーボールに特異的な外傷・障害:治療,リハビリテーション,予防法
  上肢:手指外傷
  体幹
  下肢

8 体操競技・新体操
 ジュニア(子ども),その重要性
 体操・新体操選手の競技人口
  スポーツ界における少子化の影響
 体操・新体操の競技特性
  体操競技
  新体操
 体操・新体操の傷害発生状況と特性
  体操競技
  新体操
 ジュニア選手の傷害の特徴
 ジュニア選手の競技生活充実のために
  自分の体に向き合うことを指導する
 世代別アプローチのポイント
  13歳以下の選手における指導のポイント
  14〜18歳の選手へのアプローチ

9 テニス
 テニス競技の特徴
  テニスに必要な体力要素
  テニススタイルの進化
 ジュニアテニス選手の育成の方針
 ジュニアテニス選手の段階的練習プログラムの考え方
  ゴールデンエイジ
 ジュニアテニス選手にみられる傷害の発生部位
 ジュニアテニス選手の傷害の種類と特徴
  腰の痛み
  肩の痛み
  肘の痛み
  膝の痛み
  下腿の痛み
  足部の痛み
 テニス選手にみられる傷害の発症原因の特徴
  カウンタームーブメントとクロスモーション
 ケアの考え方
 ジュニアテニス選手の競技復帰とリハビリテーションの考え方
 傷害予防として行うべき基本的なストレッチング,トレーニング
 まとめ

10 バスケットボール
 バスケットボールのジュニア競技の実際
  競技人口とチーム数
  主要大会
  地域性
  エンデバー制度(一貫指導システム)
 各年代における練習・トレーニング方法
  ミクロミニ(小学校1,2年),フレッシュミニ(小学校3,4年)年代
  ミニ(小学校5,6年)年代
  中学校年代
  高校年代
  トレーニングの実際
 バスケットボールにおける傷害
  バスケットボールの特性
  バスケットボールにおける傷害の発生数・頻度
  足関節捻挫・靱帯損傷
  シンスプリント
  アキレス腱炎
  足底腱膜炎
  ACL損傷
  半月板損傷
  ジャンパー膝,Osgood-Schlatter病
  腰椎分離症
  手・手指の外傷
  マレットフィンガー
  PIP関節掌側板損傷
  PIP関節側副靱帯損傷
  母指中手指節間(MP)関節尺側側副靱帯損傷
  指節骨・中手骨骨折
  舟状骨骨折

11 水泳競技
 はじめに
 各種目のジュニア期における活動状況
  競泳
  飛込
  シンクロナイズドスイミング
  水球
  競泳から各競技へ
 年代別の身体機能とトレーニングの考え方
  幼児期から小学校期
  中学校〜高校期
 種目特異的な外傷・障害
  競泳
  飛込
  シンクロナイズドスイミング
  水球
 セルフコンディショニングの重要性
  症例紹介:胸郭可動性低下による腰椎分離症
 その他,ジュニアアスリートにかかわる情報
  ジュニアスイマーを取り巻く環境
 まとめ
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