手術領域医療機器の操作・管理術
定価 5,720円(税込) (本体5,200円+税)
- B5判 288ページ 2色(一部カラー),イラスト100点,写真500点
- 2015年3月9日刊行
- ISBN978-4-7583-1685-9
電子版
序文
編集の序
私にとっては,手術中の電気メスによる「熱傷」事故の経験が臨床工学技士の原点です。現在の電気メスでは安全機能が充実しており,今では到底起こりえない事故です。電気メスをはじめ手術室内の医療機器はまさに日進月歩といえます。
さて,「臨床工学技士基本業務指針2010」が公表され既に5年目になりましたが,今回「手術領域医療機器の操作・管理術」を刊行できるのも,この業務指針の歩みなくしてはあり得ませんでした。
まず,2006年の厚生労働省告示第384号において,高度先進医療を提供する手術室の施設基準に「臨床工学技士」の配置が具体的に明記されました。また,翌年の2007年には日本臨床工学技士会によるアンケート調査が行われ,手術室関連業務で清潔補助に臨床工学技士が従事している事実が明らかになりました。旧臨床工学技士業務指針には,手術室領域での具体的な業務について何も明記されていなかったため,日本臨床工学技士会の川崎忠行会長より,手術室業務のガイドライン作成指示を受け,2008年「臨床工学技士の手術室(周術期)業務ガイドライン案」を作成し,すぐに「新しい業務指針」の準備を進めました。
「臨床工学技士業務指針2010」が公表されて以降,単に手術室だけでなく,手術・周術期領域に携わる臨床工学技士数が増加している現状に,業務指針の重みを実感しております。また,「もっと詳細なテキスト」を早期に作成してほしいとの多くのご意見を頂戴し,今回この「手術領域医療機器の操作・管理術」を刊行する運びとなりました。
手術・周術期領域で臨床工学技士が,より安全かつ的確に操作・保守といった機器管理をするには,手術野への参加が不可欠です。そのため,手術野での業務についても記載し,手術・周術期領域の業務に現在かかわっている技士,将来かかわるであろう学生諸君の共通言語のテキストとしての活用が,私をはじめ著者一同の願いです。
しかし,日進月歩する手術・周術期領域のテキストに完成版はありません。著者全員が次の改訂を視野に入れ,準備を進めていかなければならないと思っています。
これは手術室業務検討委員会の永続的な使命だと思っています。
最後になりましたが,本書を刊行するにあたりご多忙のなかご指導いただきました,私の恩師でもある奈良県立医科大学透析部病院教授・吉田克法先生に深謝申し上げます。
2015年2月
(公社)日本臨床工学技士会 手術室業務検討委員会 委員長
萱島道徳
私にとっては,手術中の電気メスによる「熱傷」事故の経験が臨床工学技士の原点です。現在の電気メスでは安全機能が充実しており,今では到底起こりえない事故です。電気メスをはじめ手術室内の医療機器はまさに日進月歩といえます。
さて,「臨床工学技士基本業務指針2010」が公表され既に5年目になりましたが,今回「手術領域医療機器の操作・管理術」を刊行できるのも,この業務指針の歩みなくしてはあり得ませんでした。
まず,2006年の厚生労働省告示第384号において,高度先進医療を提供する手術室の施設基準に「臨床工学技士」の配置が具体的に明記されました。また,翌年の2007年には日本臨床工学技士会によるアンケート調査が行われ,手術室関連業務で清潔補助に臨床工学技士が従事している事実が明らかになりました。旧臨床工学技士業務指針には,手術室領域での具体的な業務について何も明記されていなかったため,日本臨床工学技士会の川崎忠行会長より,手術室業務のガイドライン作成指示を受け,2008年「臨床工学技士の手術室(周術期)業務ガイドライン案」を作成し,すぐに「新しい業務指針」の準備を進めました。
「臨床工学技士業務指針2010」が公表されて以降,単に手術室だけでなく,手術・周術期領域に携わる臨床工学技士数が増加している現状に,業務指針の重みを実感しております。また,「もっと詳細なテキスト」を早期に作成してほしいとの多くのご意見を頂戴し,今回この「手術領域医療機器の操作・管理術」を刊行する運びとなりました。
手術・周術期領域で臨床工学技士が,より安全かつ的確に操作・保守といった機器管理をするには,手術野への参加が不可欠です。そのため,手術野での業務についても記載し,手術・周術期領域の業務に現在かかわっている技士,将来かかわるであろう学生諸君の共通言語のテキストとしての活用が,私をはじめ著者一同の願いです。
しかし,日進月歩する手術・周術期領域のテキストに完成版はありません。著者全員が次の改訂を視野に入れ,準備を進めていかなければならないと思っています。
これは手術室業務検討委員会の永続的な使命だと思っています。
最後になりましたが,本書を刊行するにあたりご多忙のなかご指導いただきました,私の恩師でもある奈良県立医科大学透析部病院教授・吉田克法先生に深謝申し上げます。
2015年2月
(公社)日本臨床工学技士会 手術室業務検討委員会 委員長
萱島道徳
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目次
Ⅰ 手術領域の基礎知識
1 手術領域(周術期)における臨床工学技士の役割
はじめに(業務指針の流れ)
基本業務指針の要約
臨床工学技士が清潔補助業務を行う意義
今後の展望
2 清潔補助業務の実際
はじめに
清潔と不潔
清潔野における補助業務の実際
最後に
Ⅱ 手術領域医療機器の操作・管理法
1 麻酔器
麻酔器の保守点検に関する法律と体制
麻酔器の原理
麻酔器の安全機構
始業点検と保守点検
2 精密持続注入ポンプ(シリンジポンプ・輸液ポンプ)
はじめに
輸液ポンプの構造と原理
シリンジポンプの構造と原理
輸液ポンプの保守点検
シリンジポンプの保守点検
取り扱い上の注意事項
手術室で使用されるシリンジポンプ
3 麻酔中のモニタリング装置
心電図
血圧
BISⓇモニタ
筋弛緩モニタ
無侵襲混合血酸素飽和度監視装置
パルスオキシメータ
カプノメータ
4 術中神経モニタリング装置
術中神経モニタリング業務とは
機器の概要
術中神経モニタリングの基礎
術中モニタリングの実際
5 レーザー手術装置
はじめに
レーザー光の特徴
レーザーの発振方法
レーザー手術装置の原理
医用レーザーの作用
医用レーザーの種類
レーザー手術装置の使用上の注意
レーザー手術装置の点検
6 超音波凝固切開装置
超音波凝固切開装置とは
保険適応
取り扱い上の注意事項
ハンドピースの使用限度回数制限と確認方法
各社各製品の使い分け
日常点検
定期点検
7 超音波外科吸引装置
機器の概要
歴史
臨床応用される領域
超音波外科吸引装置の基本構成
超音波外科吸引装置の原理
使用上の注意点
日常点検
定期点検
8 電気メス
はじめに
電気メスの歴史
電気メスの基本構成
高周波電流発生方式の違い
メス先電極(アクティブ電極)
対極板
電気メスの原理
日常点検
定期点検
9 手術用顕微鏡
はじめに
歴史
手術用顕微鏡の構成
原理
手術用顕微鏡の使用上の注意事項
手術用顕微鏡の機器管理
10 内視鏡手術装置(腹腔鏡手術)
はじめに
歴史
内視鏡手術の利点と欠点
内視鏡手術装置の原理
内視鏡手術装置の基本構成
内視鏡手術システム
内視鏡手術関連機器(エネルギーデバイスを用いた手術治療機器)
内視鏡手術装置の使用上の注意事項
定期点検(滅菌前点検)
内視鏡(腹腔鏡)手術業務の実際
11 内視鏡手術装置(胸腔鏡・腹腔鏡手術)
内視鏡手術と臨床工学技士
内視鏡手術装置の基本構成
内視鏡手術装置の部品交換
内視鏡手術での装置準備と装置操作
内視鏡手術での清潔補助業務
12 手術支援ロボット(da VinciⓇ)
概要
機器説明
手術室レイアウト
ロボット手術における臨床工学技士の業務
実際の点検
トラブル対応
アラーム
13 眼科用手術装置
はじめに
眼科手術における臨床工学技士の役割
白内障手術
硝子体手術
保守点検
14 脳神経外科手術用ナビゲーション装置
はじめに
歴史
手術用ナビゲーション装置の原理
手術用ナビゲーション装置の構成
手術用ナビゲーション装置の注意事項
禁忌・禁止
精度管理
手術用ナビゲーション装置の機器管理
15 整形外科手術用ナビゲーション装置
総論
THA
THAとナビゲーション
手術適応
実際の操作
点検
TKA
TKAとナビゲーション装置
手術適応
実際の操作
定期点検
16 回収式自己血輸血装置
回収式自己血輸血とは
輸血の分類
回収式自己血輸血の利点と欠点
回収式自己血輸血の適応と禁忌症例
保険適応
自己血回収装置の基本構成
工程と原理
濃厚洗浄赤血球液の患者への返血
日常点検
定期点検
17 手術用照明器(無影灯)・手術台
手術用照明器(無影灯)
手術台
18 手術室設備(ガス・電気・空調)
医療ガス
はじめに
医療ガスの供給方式
医療ガス配管設備
保守点検
電気設備
はじめに
医用接地方式
非接地配線方式
医用室への適応
空調
はじめに
病院空調設備の特徴と構成
清浄度の維持
空調設備メンテナンスのポイント
19 中央材料室業務(洗浄・消毒・滅菌)
中央材料室業務とは
洗浄
スポルディング(Spaulding)の分類
滅菌
滅菌の質の管理
消毒
1 手術領域(周術期)における臨床工学技士の役割
はじめに(業務指針の流れ)
基本業務指針の要約
臨床工学技士が清潔補助業務を行う意義
今後の展望
2 清潔補助業務の実際
はじめに
清潔と不潔
清潔野における補助業務の実際
最後に
Ⅱ 手術領域医療機器の操作・管理法
1 麻酔器
麻酔器の保守点検に関する法律と体制
麻酔器の原理
麻酔器の安全機構
始業点検と保守点検
2 精密持続注入ポンプ(シリンジポンプ・輸液ポンプ)
はじめに
輸液ポンプの構造と原理
シリンジポンプの構造と原理
輸液ポンプの保守点検
シリンジポンプの保守点検
取り扱い上の注意事項
手術室で使用されるシリンジポンプ
3 麻酔中のモニタリング装置
心電図
血圧
BISⓇモニタ
筋弛緩モニタ
無侵襲混合血酸素飽和度監視装置
パルスオキシメータ
カプノメータ
4 術中神経モニタリング装置
術中神経モニタリング業務とは
機器の概要
術中神経モニタリングの基礎
術中モニタリングの実際
5 レーザー手術装置
はじめに
レーザー光の特徴
レーザーの発振方法
レーザー手術装置の原理
医用レーザーの作用
医用レーザーの種類
レーザー手術装置の使用上の注意
レーザー手術装置の点検
6 超音波凝固切開装置
超音波凝固切開装置とは
保険適応
取り扱い上の注意事項
ハンドピースの使用限度回数制限と確認方法
各社各製品の使い分け
日常点検
定期点検
7 超音波外科吸引装置
機器の概要
歴史
臨床応用される領域
超音波外科吸引装置の基本構成
超音波外科吸引装置の原理
使用上の注意点
日常点検
定期点検
8 電気メス
はじめに
電気メスの歴史
電気メスの基本構成
高周波電流発生方式の違い
メス先電極(アクティブ電極)
対極板
電気メスの原理
日常点検
定期点検
9 手術用顕微鏡
はじめに
歴史
手術用顕微鏡の構成
原理
手術用顕微鏡の使用上の注意事項
手術用顕微鏡の機器管理
10 内視鏡手術装置(腹腔鏡手術)
はじめに
歴史
内視鏡手術の利点と欠点
内視鏡手術装置の原理
内視鏡手術装置の基本構成
内視鏡手術システム
内視鏡手術関連機器(エネルギーデバイスを用いた手術治療機器)
内視鏡手術装置の使用上の注意事項
定期点検(滅菌前点検)
内視鏡(腹腔鏡)手術業務の実際
11 内視鏡手術装置(胸腔鏡・腹腔鏡手術)
内視鏡手術と臨床工学技士
内視鏡手術装置の基本構成
内視鏡手術装置の部品交換
内視鏡手術での装置準備と装置操作
内視鏡手術での清潔補助業務
12 手術支援ロボット(da VinciⓇ)
概要
機器説明
手術室レイアウト
ロボット手術における臨床工学技士の業務
実際の点検
トラブル対応
アラーム
13 眼科用手術装置
はじめに
眼科手術における臨床工学技士の役割
白内障手術
硝子体手術
保守点検
14 脳神経外科手術用ナビゲーション装置
はじめに
歴史
手術用ナビゲーション装置の原理
手術用ナビゲーション装置の構成
手術用ナビゲーション装置の注意事項
禁忌・禁止
精度管理
手術用ナビゲーション装置の機器管理
15 整形外科手術用ナビゲーション装置
総論
THA
THAとナビゲーション
手術適応
実際の操作
点検
TKA
TKAとナビゲーション装置
手術適応
実際の操作
定期点検
16 回収式自己血輸血装置
回収式自己血輸血とは
輸血の分類
回収式自己血輸血の利点と欠点
回収式自己血輸血の適応と禁忌症例
保険適応
自己血回収装置の基本構成
工程と原理
濃厚洗浄赤血球液の患者への返血
日常点検
定期点検
17 手術用照明器(無影灯)・手術台
手術用照明器(無影灯)
手術台
18 手術室設備(ガス・電気・空調)
医療ガス
はじめに
医療ガスの供給方式
医療ガス配管設備
保守点検
電気設備
はじめに
医用接地方式
非接地配線方式
医用室への適応
空調
はじめに
病院空調設備の特徴と構成
清浄度の維持
空調設備メンテナンスのポイント
19 中央材料室業務(洗浄・消毒・滅菌)
中央材料室業務とは
洗浄
スポルディング(Spaulding)の分類
滅菌
滅菌の質の管理
消毒
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手術領域医療機器の基礎知識から使用・管理上の注意点まで徹底解説!
手術室では電気メスやレーザーメス,内視鏡,手術支援ロボットなどさまざまな医療機器が使用されているが,これらの機器は高価かつ繊細なため,専門知識を有する臨床工学技士(CE)の関与が欠かせない。本書はこれら手術領域医療機器の基本構成・原理から使用上の注意点,禁忌・禁止事項,使用前のセッティング法,点検法について,CEに向けて解説した書籍である。また,近年CEの参画が求められている清潔野補助業務についても,実際の手術の流れに沿ってポイントを記載している。
「(公社)日本臨床工学技士会 手術室業務検討委員会」が編集する本書は,手術領域業務に携わるCEにとってスタンダードとなる1冊である。