涙道内視鏡 入門!
[Web動画付]
知りたかったすべてがここにある!
定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- A4判 176ページ オールカラー,イラスト60点,写真320点,Web動画 72本/計108分
- 2016年3月30日刊行
- ISBN978-4-7583-1620-0
序文
近年,様々な場面でQuality of life(QOL)が話題になる。眼科領域ではQuality of vision(QOV)に関する議論も盛んである。我々は日常生活において外界からの情報の約80%を視覚から得ている。質の高い人生を送るためには,質の高い視機能を維持することが必要不可欠であると言える。今後の社会ではさらに高齢化とともに情報化が進むことが予想されるため,QOVとともにQOLに配慮した眼科診療を進めていく必要がある。
涙液は眼表面を湿潤し,瞬目を円滑にし,酸素などを供給するだけでなく,光学的に平滑な涙液フィルムを形成することにより視機能にも貢献している。また,涙液の排水システムである涙道は眼表面の衛生状態を保ち,適正な涙液量を維持するために必要不可欠である。その機能低下は流涙や眼脂による不快感,過剰な涙液が形成する不均一な涙液フィルムによる視機能障害を伴い,QOLのみならずQOVをも低下させる。一般に眼科外来でこのような症例に遭遇する機会は決して少なくはないが,様々な理由で診断および治療が積極的に行われているとは言えないのが実情であった。最も大きな理由は,涙道内の病変を直接観察できず,病態の把握が容易ではなかったことにあると考えられる。
このような背景の中,2000年の涙道内視鏡の薬事承認は涙道内腔の観察を可能にしたことにより大きなブレークスルーとなった。涙道内視鏡により観察される涙道内腔の画像は多くの眼科医に驚きを与え,その後急速に導入する施設が増加していった。涙道内視鏡のアシストによる涙管チューブ挿入術も徐々に一般化し,さらには派生する様々な術式も登場してきている。当初は経験者から初心者へと個々のつながりで普及してきたが,最近は技術習得の途上にある,もしくはこれから技術習得を目指す眼科医の数も増加してきており,本書のようにこの一冊ですべてが分かる,涙道内視鏡のバイブルとなりえるテキストブックが必要とされていた。
本書では涙道内視鏡の構造,そのセッティング,涙道内視鏡検査など基本的な事項から,動画を用いた手術手技の解説さらにはトラブルとトラブルシューティングについても動画により解説が行われており,幅広く具体的で,臨床に役立つ内容が網羅されている。涙道内視鏡を使用するすべての臨床医の診療の一助となれば幸いである。末尾ながら,多忙の中快く執筆を引き受けていただいた先生方に,この場を借りて心より御礼を申し上げる。
2016年2月
井上 康,鈴木 亨,佐々木次壽
涙液は眼表面を湿潤し,瞬目を円滑にし,酸素などを供給するだけでなく,光学的に平滑な涙液フィルムを形成することにより視機能にも貢献している。また,涙液の排水システムである涙道は眼表面の衛生状態を保ち,適正な涙液量を維持するために必要不可欠である。その機能低下は流涙や眼脂による不快感,過剰な涙液が形成する不均一な涙液フィルムによる視機能障害を伴い,QOLのみならずQOVをも低下させる。一般に眼科外来でこのような症例に遭遇する機会は決して少なくはないが,様々な理由で診断および治療が積極的に行われているとは言えないのが実情であった。最も大きな理由は,涙道内の病変を直接観察できず,病態の把握が容易ではなかったことにあると考えられる。
このような背景の中,2000年の涙道内視鏡の薬事承認は涙道内腔の観察を可能にしたことにより大きなブレークスルーとなった。涙道内視鏡により観察される涙道内腔の画像は多くの眼科医に驚きを与え,その後急速に導入する施設が増加していった。涙道内視鏡のアシストによる涙管チューブ挿入術も徐々に一般化し,さらには派生する様々な術式も登場してきている。当初は経験者から初心者へと個々のつながりで普及してきたが,最近は技術習得の途上にある,もしくはこれから技術習得を目指す眼科医の数も増加してきており,本書のようにこの一冊ですべてが分かる,涙道内視鏡のバイブルとなりえるテキストブックが必要とされていた。
本書では涙道内視鏡の構造,そのセッティング,涙道内視鏡検査など基本的な事項から,動画を用いた手術手技の解説さらにはトラブルとトラブルシューティングについても動画により解説が行われており,幅広く具体的で,臨床に役立つ内容が網羅されている。涙道内視鏡を使用するすべての臨床医の診療の一助となれば幸いである。末尾ながら,多忙の中快く執筆を引き受けていただいた先生方に,この場を借りて心より御礼を申し上げる。
2016年2月
井上 康,鈴木 亨,佐々木次壽
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目次
Ⅰ 涙道内視鏡による診断
涙道疾患の診断方法
問診,触診・視診のポイントと診断フローチャート
細隙灯顕微鏡検査,色素残留試験,涙管通水検査
前眼部OCT による涙液メニスカス測定,涙液クリアランステスト
涙道内視鏡検査
涙道内視鏡の所見
鼻内視鏡検査 使い方と検査
Ⅱ 涙道内視鏡手術を始めるときに知っておくべき基本知識と基本セッティング
涙道内視鏡の歴史
涙道内視鏡装置の特性
涙道内視鏡システム
FiberTech
町田製作所
鼻内視鏡システム
手術器具
チューブ① LACRIFAST
チューブ② PF カテーテル
チューブ③ NST
新しいチューブ
シース&シースストッパー
特殊なチューブ
バルーン
内視鏡の取り扱い方と消毒方法
手術室の設置,術前の処置&セッティング
眼科専門病院の手術室の設置
クリニックの手術室の設置①手術室編
クリニックの手術室の設置②外来処置室編
コラム 助手がいなかったら? シリンジポンプで行う涙道内視鏡の灌流
Ⅲ 術式の選択と代表的な疾患
●術式の選択
涙道内視鏡の使い方,チューブの入れ方
手術一連の流れ 涙点〜下鼻道までの動き,涙小管系・鼻涙管系★
右利き術者の左涙小管の挿入方法①★
右利き術者の左涙小管の挿入方法②★
左利き術者の右涙小管の挿入方法★
内視鏡的直接穿破法(DEP)★
シース誘導内視鏡下穿破法(SEP)★
コラム SEP 私の工夫
シース誘導チューブ挿入術(SGI)★
G-SGI★
lidocaine jelly expanded intubation(LJEI)★
ズームテクニック★
ブラインド挿入&確認★
シース誘導非内視鏡下穿破法(SNEP)★
麻酔(伝達麻酔)★
●代表的な疾患
涙点閉塞,涙小管閉塞★
コラム ブジーでも開放できないような難治例
鼻涙管閉塞,慢性涙囊炎,急性涙囊炎★
涙小管炎,涙道涙石症 ★
小児の涙道内視鏡手術★
コラム TS-1
Ⅳ 術後処置
チューブ留置中の点眼処方と通水
チューブの抜去方法と時期
Ⅴ 症例の選択
初心者が執刀すべきでない症例
Ⅵ トラブルとトラブルシューティング
術中トラブルの予防と対処法
球後出血
手術操作に伴う疼痛管理
涙点拡張がうまくできない,涙小管が見えない★
内総涙点閉塞を解除できない★
涙囊癒着,涙囊が確認できない,涙囊内が分泌物や出血で見えない
涙道内出血,眼瞼浮腫(涙小管仮道)
鼻涙管仮道★
涙囊鼻涙管移行部閉塞の出口が見つからない★
鼻涙管の全長閉塞(広範型鼻涙管閉塞)が予測され先がわからない/鼻涙管下部閉塞の開放ができない
下鼻甲介が大きくて下鼻道が見えない/鼻内視鏡の接触による出血で下鼻道が見えない★
シース迷入★
鼻内視鏡下の操作で,鉗子でチューブがつかめない/ SGI 2 本目のチューブ留置で内眼角部のチューブのセンタリングが出せない★
上下涙小管閉塞で涙小管が₁ 本しか閉塞解除できなかったら/涙道内視鏡の破損
術後トラブルの対処法・追加処置
チューブ脱落,チーズワイアリング, Monotube の迷入,涙点に肉芽ができたら,チューブ迷入★
出血,異物感,ドライアイ
Ⅶ こんな場合も使える涙道内視鏡
涙点プラグ迷入と涙小管肉芽
涙小管断裂時の涙小管形成
★:Web動画があります
涙道疾患の診断方法
問診,触診・視診のポイントと診断フローチャート
細隙灯顕微鏡検査,色素残留試験,涙管通水検査
前眼部OCT による涙液メニスカス測定,涙液クリアランステスト
涙道内視鏡検査
涙道内視鏡の所見
鼻内視鏡検査 使い方と検査
Ⅱ 涙道内視鏡手術を始めるときに知っておくべき基本知識と基本セッティング
涙道内視鏡の歴史
涙道内視鏡装置の特性
涙道内視鏡システム
FiberTech
町田製作所
鼻内視鏡システム
手術器具
チューブ① LACRIFAST
チューブ② PF カテーテル
チューブ③ NST
新しいチューブ
シース&シースストッパー
特殊なチューブ
バルーン
内視鏡の取り扱い方と消毒方法
手術室の設置,術前の処置&セッティング
眼科専門病院の手術室の設置
クリニックの手術室の設置①手術室編
クリニックの手術室の設置②外来処置室編
コラム 助手がいなかったら? シリンジポンプで行う涙道内視鏡の灌流
Ⅲ 術式の選択と代表的な疾患
●術式の選択
涙道内視鏡の使い方,チューブの入れ方
手術一連の流れ 涙点〜下鼻道までの動き,涙小管系・鼻涙管系★
右利き術者の左涙小管の挿入方法①★
右利き術者の左涙小管の挿入方法②★
左利き術者の右涙小管の挿入方法★
内視鏡的直接穿破法(DEP)★
シース誘導内視鏡下穿破法(SEP)★
コラム SEP 私の工夫
シース誘導チューブ挿入術(SGI)★
G-SGI★
lidocaine jelly expanded intubation(LJEI)★
ズームテクニック★
ブラインド挿入&確認★
シース誘導非内視鏡下穿破法(SNEP)★
麻酔(伝達麻酔)★
●代表的な疾患
涙点閉塞,涙小管閉塞★
コラム ブジーでも開放できないような難治例
鼻涙管閉塞,慢性涙囊炎,急性涙囊炎★
涙小管炎,涙道涙石症 ★
小児の涙道内視鏡手術★
コラム TS-1
Ⅳ 術後処置
チューブ留置中の点眼処方と通水
チューブの抜去方法と時期
Ⅴ 症例の選択
初心者が執刀すべきでない症例
Ⅵ トラブルとトラブルシューティング
術中トラブルの予防と対処法
球後出血
手術操作に伴う疼痛管理
涙点拡張がうまくできない,涙小管が見えない★
内総涙点閉塞を解除できない★
涙囊癒着,涙囊が確認できない,涙囊内が分泌物や出血で見えない
涙道内出血,眼瞼浮腫(涙小管仮道)
鼻涙管仮道★
涙囊鼻涙管移行部閉塞の出口が見つからない★
鼻涙管の全長閉塞(広範型鼻涙管閉塞)が予測され先がわからない/鼻涙管下部閉塞の開放ができない
下鼻甲介が大きくて下鼻道が見えない/鼻内視鏡の接触による出血で下鼻道が見えない★
シース迷入★
鼻内視鏡下の操作で,鉗子でチューブがつかめない/ SGI 2 本目のチューブ留置で内眼角部のチューブのセンタリングが出せない★
上下涙小管閉塞で涙小管が₁ 本しか閉塞解除できなかったら/涙道内視鏡の破損
術後トラブルの対処法・追加処置
チューブ脱落,チーズワイアリング, Monotube の迷入,涙点に肉芽ができたら,チューブ迷入★
出血,異物感,ドライアイ
Ⅶ こんな場合も使える涙道内視鏡
涙点プラグ迷入と涙小管肉芽
涙小管断裂時の涙小管形成
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これから涙道内視鏡を始めるすべての人へ
涙道内視鏡を始めるにあたり必要となる基本的知識(手術環境,セットアップ,周術期管理など)を噛み砕いた表現で容易に理解できる書籍。初心者が執刀すべきではない症例も,その理由とともに明確に掲載している。
付録として,術者の手元と内視鏡画像の連動をストリーミング動画で学ぶことができる。