消化器外科手術 起死回生の一手

消化器外科手術 起死回生の一手

■編集 杉山 政則
正木 忠彦
阿部 展次

定価 9,350円(税込) (本体8,500円+税)
  • B5判  344ページ  オールカラー,イラスト70点,写真150点
  • 2017年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1528-9

手術中にトラブルが起こったときの「起死回生の一手」を経験豊富なベテラン医師が伝授!

現在,消化器外科領域のスタンダードな術式は鏡視下手術になりつつある。症例数は右肩上がりで,鏡視下手術の技術・機器の進歩も目覚ましい。医師には手術をトラブルなく遂行する能力が要求されるが,実際はどうしてもミスやトラブルが発生してしまう。では,ベテラン医師が手術中トラブルに遭遇したとき,「なにを考え」「どう機転を利かせて」無事に手術を成功に導くのだろうか。その疑問を解決するために編まれたのが本書である。
経験豊富なベテラン医師が「誰でも一度は経験するミス」「要注意症例」「勘違い症例」など,実際に起こったトラブル症例を挙げ,そのトラブルにどのように対処したかを丁寧に解説していくのが本書の軸である。解説は,対処方法をイメージしやすいように,多くの写真やイラストを用いて,視覚的に訴えるものとなっている。さらに,著者が独自に応用・活用しているテクニックなども「わたしの自慢のポイント」として掲載し,上級者になるためのヒントも提示している。
本書は上部消化管,肝胆膵,下部消化管まで,およそ消化器外科領域で必要なものはすべてカバーしている「消化器外科手術のトラブルシューター」である。ぜひこの1冊を読んで,事前にトラブルの芽を摘み取っていただきたい。


序文

 消化器外科学の進歩とともに外科手術の短期・長期成績は向上しつつある。この要因には手術術式の改良・洗練および定型化,手術器械の改良・開発,優れた手術材料の開発・普及,周術期管理の進歩などが挙げられる。しかし消化器外科手術においては,順調に行くことばかりではなく,さまざまなトラブルが起きる可能性があり,トラブルを適切に処置する必要がある。また,そのようなトラブルを未然に防ぐように手術を進めていくことも重要である。このようにトラブルを予防したり解決しながら手術を安全に遂行していく能力は,修練医とエキスパートとの間で経験の差として顕著に表れる。
 このようなトラブルシューティングは,従来は実際の症例で指導医から直接教わったり,医局のカンファランス,さらには先輩との雑談の中から学んできた。しかし消化器外科学の進歩とともに,手術・診療がますます高度かつ専門的になり,一部では細分化が進んでいる現状においては,消化器外科手術のすべての領域でトラブルシューティングを身につけることは困難である。
 そこで本書 「消化器外科手術 起死回生の一手」 を企画した。杏林大学外科で普段一緒に診療を行っている正木忠彦先生,阿部展次先生とともに企画会議を行ったが,自分の専門以外の領域では 「こんなトラブルもある。あんな偶発症もある」と自分の想像しなかったような種々のトラブルが起こり得ることに驚いた。特に高度進行癌に対する拡大手術や,内視鏡手術のような新規手術術式の導入にあたっては,新たな技術的問題点があることも知った。いずれにしても消化器外科医は手術中にたくさんのトラブルに遭遇し,それを克服しながら手術を遂行していることをあらためて実感した。
 消化器外科各分野のエキスパートに執筆していただいた原稿を読ませていただくと,数々のトラブルシューティングの方法が具体的に述べられており,私たち消化器外科医にとって強力な助けになるであろうと確信した。エキスパートの長年の経験から導かれた手術手技の真髄に,ぜひ読者にも触れていただきたいと思う。

2017年8月
杏林大学医学部消化器・一般外科教授
杉山政則
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目次

I 上部消化管

 胃癌手術No.11郭清における脾静脈からの出血! さあ,どうする?  (木下敬弘)
 主要動脈からの出血! さあ,どうする?  (柴崎 晋 ほか)
 脾臓からの出血が止まらない! 圧迫や止血剤で出血が止まらないときはどうする?  (橋本佳和 ほか)
 膵瘻,さあどうする?  (井田 智 ほか)
 食道空腸吻合:挙上空腸が届かない! さあ,どうする?  (江原一尚 ほか)
 食道空腸吻合:経鼻胃管をステイプラーで噛み込んだとき,どうする?  (大森 健 ほか)
 食道空腸吻合:Overlap法におけるトラブルシューティング  (稲木紀幸)
 食道空腸高位吻合:安全に行うためには? ―開胸を付加するか?―  (田中晃司 ほか)
 食道空腸高位吻合:胸腔鏡併用か?  (大平寛典 ほか)
 食道空腸吻合:経口アンビル使用時のトラブルシューティング  (桜本信一 ほか)
 食道残胃吻合:観音開き法のトラブルシューティング  ―残胃が細くなりフラップの作成に工夫を要した症例―  (布部創也)
 腹腔鏡下幽門側胃切除術におけるBillroth I法体腔内再建:その手技とトラブルシューティング  (谷口桂三 ほか)
 幽門側胃切除術:Roux-en-Y再建時のトラブルシューティング  (谷岡利朗 ほか)
 術中迅速診断にて十二指腸断端癌陽性  (安川佳美 ほか)
食道
 気管・気管支損傷,さあ,どうする?  (藤原尚志 ほか)
 肺損傷の対処法  (橘 啓盛 ほか)
 肺静脈損傷の対処法  (山﨑 誠 ほか)
 胸腔鏡下食道切除術 ―動脈系からの出血,さあどうする?  (坊岡英祐 ほか)
 反回神経損傷時のトラブルシューティング ―解剖と損傷時の対応―  (岡田尚也 ほか)
 再建臓器が持ち上がらない! さあ,どうする?  (大倉 遊 ほか)
 再建臓器循環不全,さあどうする?  (井垣弘康 ほか)
 食道切除後再建胃管盲端壊死! 再手術? ―有茎肋間筋弁充填とEloesser's flap法による開窓術―  (長尾 玄 ほか)

II 下部消化管
 直腸癌手術:側方郭清時の術中骨盤内大量出血に対するトラブルシューティング  (金光幸秀 ほか)
 直腸癌手術:吻合のトラブルシューティング  (板橋道朗 ほか)
 直腸癌腹腔鏡手術のトラブルシューティング―腹腔鏡下直腸癌手術における吻合トラブルとその対策術̶  (品川貴秀 ほか)
 潰瘍性大腸炎手術トラブルシューティング―J-pouchが肛門まで届かない!―  (池内浩基 ほか)
 Crohn病手術のトラブルシューティング  (杉田 昭 ほか)
 結腸癌手術:吻合,出血のトラブルシューティング  (高橋慶一 ほか)
 大腸癌高度腹膜播種治療のトラブルシューティング  (秀野泰隆 ほか)
 妊婦の虫垂炎 ―腹腔鏡手術の有用性―  (久森重夫 ほか)
 SMA閉塞症,NOMIの外科治療のトラブルシューティング 腸管切除をすべきか温存すべきか,判断に困った  (松田圭二 ほか)
 IBD以外の炎症性腸疾患治療のトラブルシューティング  (荒木俊光 ほか)
 
III 肝・胆・膵
肝切除術
 肝静脈・下大静脈からの出血の対処  (宇山直樹 ほか)
 肝門操作での肝動脈・門脈損傷  (山本順司 ほか)
 グリソン鞘一括処理時の出血  (有泉俊一 ほか)
 肝実質離断時の大量出血  (大坪毅人 ほか)
 肝切離面からの胆汁漏出,胆管損傷  (前田晋平 ほか)
 肝右葉の視野が不良  (齋浦明夫 ほか)
 再手術,高度癒着  (足立智彦 ほか)
 術中に門脈血栓が出現した  (尾上俊介 ほか)
 肝切除後の胆管空腸吻合が難しい  (松山隆生 ほか)
 腹腔鏡下肝切除術 ―肝静脈損傷  (武田 裕 ほか)
 肝実質切離操作における不慮の出血への対処―腹腔鏡下肝部分切除例について―  (久保田喜久 ほか)
胆摘術
 腹腔鏡下胆嚢摘出術 ―胆管損傷  (三澤健之 ほか)
 腹腔鏡下胆嚢摘出術 ―高度炎症例の手技的ポイント  (飯田 敦 ほか)
 膵切除術
 膵管非拡張例の膵再建  (鈴木 裕 ほか)
 門脈からの出血・損傷  (鈴木康之)
 膵頭十二指腸切除術・門脈合併切除術後の門脈狭窄に対する予防と治療  (廣野誠子 ほか)
 上腸間膜動脈・肝動脈の損傷  (加藤宏之 ほか)
 腹腔動脈根部狭窄  (阪本良弘 ほか)
 腹腔鏡下尾側膵切除術 ―術中脾静脈出血への対応  (大塚隆生 ほか)
 脾摘術
 脾門部からの出血  (吉田 寛 ほか)
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