ウィメンズヘルス リハビリテーション
定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
- B5判 340ページ 2色(一部カラー),イラスト189点,写真63点
- 2014年12月1日刊行
- ISBN978-4-7583-1493-0
序文
本書のねらいは,近年,関心が高まりつつあるウィメンズヘルス分野のリハビリテーションについて基礎から実践までを紹介し,初めて本分野にたずさわるセラピストから,さらに活動を広げようと考えているセラピストまでが活用しうる情報を提供することである。
理学療法においては,ウィメンズヘルス分野のなかでも,妊娠中および産後の女性へのアプローチについて関心をもつセラピストが増加している。また,『女性下部尿路症状診療ガイドライン』において,骨盤底筋トレーニングが高く評価されていることからも,リハビリテーション関連職種のかかわりが期待されていると考えられる。そして,がん患者に対するリハビリテーションが保険診療のなかで提供されることになり,婦人科系がん術後のリンパ浮腫に対応するセラピストも増加すると予測される。女性アスリートの健康管理の面では,2020年の東京オリンピックに向けてサポート体制の必要性が認識されつつある。こうした状況からも,リハビリテーション関連職種にかけられる期待は大きい。このようにウィメンズヘルス分野のリハビリテーションへ関心が高まる一方で,わが国では知識や技術を学ぶための書籍や資料は限られていたことから,ウィメンズヘルス分野に特化し,かつ包括的にまとめた書籍が求められていた。
本書の特徴は,ウィメンズヘルス分野のリハビリテーションに含まれる障害や問題を網羅していること,そして,女性の身体変化や障害に関する知識からアプローチまで紹介していることである。
PartⅠでは,わが国では新規分野であるウィメンズヘルスリハビリテーションを概説し,わが国の現状を紹介している。PartⅡでは,ウィメンズヘルス分野のリハビリテーションにおいて求められる基礎知識を紹介している。そして,Part Ⅲでは,思春期,成熟期,更年期・老年期といった年代に応じて生じうる変化および障害の特徴を収載した。Part Ⅳでは,各時期における女性の疾患・症状に対するリハビリテーションの基本的アプローチについて,事例などを交えて紹介している。最後のPart Ⅴでは,女性を取り巻く心理社会的状況について,女性と男性の視点からその状況や問題点を取り上げている。
本書は,わが国におけるウィメンズヘルス分野のリハビリテーションに関する最初の書籍である。本書の発刊にあたり,ウィメンズヘルス分野のリハビリテーションの発展にご理解をいただけたことは非常に心強いことであった。ご執筆いただいた諸先生方には,心より感謝申し上げたい。
本書が,リハビリテーションにかかわる医療従事者に活用していただき,一人でも多くの女性が毎日を活きいきと過ごせることに寄与できれば幸いである。
ウィメンズヘルス理学療法研究会 世話人
松谷綾子,須永康代,武田 要,平元奈津子,平川倫恵
理学療法においては,ウィメンズヘルス分野のなかでも,妊娠中および産後の女性へのアプローチについて関心をもつセラピストが増加している。また,『女性下部尿路症状診療ガイドライン』において,骨盤底筋トレーニングが高く評価されていることからも,リハビリテーション関連職種のかかわりが期待されていると考えられる。そして,がん患者に対するリハビリテーションが保険診療のなかで提供されることになり,婦人科系がん術後のリンパ浮腫に対応するセラピストも増加すると予測される。女性アスリートの健康管理の面では,2020年の東京オリンピックに向けてサポート体制の必要性が認識されつつある。こうした状況からも,リハビリテーション関連職種にかけられる期待は大きい。このようにウィメンズヘルス分野のリハビリテーションへ関心が高まる一方で,わが国では知識や技術を学ぶための書籍や資料は限られていたことから,ウィメンズヘルス分野に特化し,かつ包括的にまとめた書籍が求められていた。
本書の特徴は,ウィメンズヘルス分野のリハビリテーションに含まれる障害や問題を網羅していること,そして,女性の身体変化や障害に関する知識からアプローチまで紹介していることである。
PartⅠでは,わが国では新規分野であるウィメンズヘルスリハビリテーションを概説し,わが国の現状を紹介している。PartⅡでは,ウィメンズヘルス分野のリハビリテーションにおいて求められる基礎知識を紹介している。そして,Part Ⅲでは,思春期,成熟期,更年期・老年期といった年代に応じて生じうる変化および障害の特徴を収載した。Part Ⅳでは,各時期における女性の疾患・症状に対するリハビリテーションの基本的アプローチについて,事例などを交えて紹介している。最後のPart Ⅴでは,女性を取り巻く心理社会的状況について,女性と男性の視点からその状況や問題点を取り上げている。
本書は,わが国におけるウィメンズヘルス分野のリハビリテーションに関する最初の書籍である。本書の発刊にあたり,ウィメンズヘルス分野のリハビリテーションの発展にご理解をいただけたことは非常に心強いことであった。ご執筆いただいた諸先生方には,心より感謝申し上げたい。
本書が,リハビリテーションにかかわる医療従事者に活用していただき,一人でも多くの女性が毎日を活きいきと過ごせることに寄与できれば幸いである。
ウィメンズヘルス理学療法研究会 世話人
松谷綾子,須永康代,武田 要,平元奈津子,平川倫恵
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目次
PartⅠ 女性のためのリハビリテーション
1章 女性のためのリハビリテーションとは?
ウィメンズヘルスとは?
ウィメンズヘルスリハビリテーションとは?
リハビリテーションチームとなる医療専門職とは?
ウィメンズヘルスリハビリテーションでかかわる対象とは?:理学療法の場合から考える
世界のウィメンズヘルス
まとめ
2章 わが国におけるウィメンズヘルスの現状
はじめに
わが国におけるウィメンズヘルスの活動:専門職種の活動状況から
ウィメンズヘルスリハビリテーションの対象者の現状
わが国におけるウィメンズヘルス分野の教育
わが国における活動状況の紹介
まとめ
PartⅡウィメンズヘルスにおける基礎知識
1章 解剖生理学:女性の骨格・生殖器
骨格の性差
骨盤の骨格構造
女性の生殖器
女性泌尿器の構造と機能
女性生殖器の支持機構
2章 月経周期
月経と月経に関与するホルモン
月経周期とそれに伴うさまざまな周期的変化
月経の異常
小児期から思春期にかけての変化
3章 妊娠・出産
妊娠に伴う母体の変化
妊娠に伴う内臓器の変化
妊娠に伴う骨格の変化
妊娠に伴う内分泌系の変化
妊娠に伴う精神的な変化
分娩の過程と母体への影響
分娩の時間的流れ(経腟分娩)
分娩への医学的介入
母体の運動機能や日常生活活動に影響を及ぼす状況
出産後の過程
はじめに
産後の身体の変化
産後によくあるトラブルと訴えの対処法
産後ケアの必要性と今後の課題
PartⅢ 年代別の特徴と障害(概論)
1章 思春期:月経開始
はじめに
思春期
月経に関連する健康問題
性感染症(STI)に関連する健康問題
思春期の妊娠・出産に関連する健康問題
摂食障害に関連する健康問題
おわりに
2章 成熟期
1 妊娠・出産
はじめに
成熟期の特徴
成熟期における妊娠・出産で知っておきたい問題
妊娠・出産の各時期における経過と問題
産後の経過,問題
おわりに
2 乳癌・婦人科腫瘍
はじめに
各疾患について:発生状況,診断と治療など
3章 更年期・老年期
1 女性の老化の特徴と閉経
老化とは
女性の老化
更年期障害
骨粗鬆症
変形性関節症
サルコペニア
運動器不安定症とロコモティブシンドローム
2 尿失禁,骨盤臓器脱
はじめに
女性尿失禁
骨盤臓器脱(POP)
おわりに
PartⅣ 女性の疾患・症状に対するリハビリテーション
1章 思春期:女性アスリートに対して
はじめに
予防と対処法
現場での対応について
おわりに
2章 成熟期
1 妊娠期間中の生理学的・身体的特徴
はじめに
妊娠によって生じる筋骨格系の変化
2 妊娠期間中に生じる疾患・障害と理学療法
はじめに
妊娠期に生じる身体変化
妊娠に伴い生じる障害
3 妊娠期間中に理学療法士が行う基本的なアプローチ
妊娠中に生じる症状
4 産後に理学療法士が行う基本的なアプローチ
はじめに
出産に伴う女性の身体機能の変化
産後に生じる症状
5 産前・産後の実践例の紹介
はじめに
妊婦教室
産後教室
理学療法士という立場から
6 女性特有疾患(がん中心)に対するリハビリテーションの基本的理論と技術
はじめに
がんリハビリテーションの意義
乳癌のケア
婦人科がんのケア
リンパ浮腫のケア
7 女性性機能障害・外陰部痛に対するアプローチ:概論編
はじめに
女性性機能障害の分類と診断
女性性機能障害の治療
外陰痛症候群の行動療法
理学療法士に行ってほしいリハビリテーション
8 女性性機能障害・外陰痛症候群に対するアプローチ:実践編
はじめに
問診
患者教育
骨盤底の評価
理学療法の実際
治療時間と頻度について
症例紹介
おわりに
3章 更年期・老年期
1 更年期の運動療法
更年期女性における運動の重要性について
中高年女性の身体的,精神的特徴について
更年期とメタボリックシンドローム
更年期とロコモティブシンドローム
おわりに
2 女性の障害予防・健康増進のための人間工学的アプローチ
はじめに
更年期から老年期にかけての姿勢変化
更年期から老年期にかけての姿勢制御・動作の特徴
障害予防(転倒)と健康増進へのアプローチ
おわりに
3 骨粗鬆症と基本的アプローチ
骨粗鬆症の定義
骨粗鬆症の測定方法
わが国における骨折の状況
女性医学と骨
運動療法と骨の特性
骨粗鬆症・骨量減少に対する運動療法
骨粗鬆症の予防について
おわりに
4 骨盤底機能障害に対する基本的アプローチ
はじめに
問診
尿失禁の評価
骨盤臓器脱の評価
骨盤底機能の評価
尿失禁に対する基本的アプローチ
便失禁に対する基本的アプローチ
骨盤臓器脱に対する基本的アプローチ
わが国における現状と問題点
おわりに
PartⅤ 女性を取り巻く社会的状況
1章 ジェンダー・社会的役割や家庭での役割,メンタルヘルス
1 女性の視点から
はじめに
年代ごとの女性の社会的役割:歴史的背景と社会的背景から
社会における女性の現状
おわりに
2 男性の視点から
はじめに
学問のなかでのジェンダー
家庭のなかでのジェンダー
政治のなかでのジェンダー
労働のなかでのジェンダー
男性学とは何か?
海外の事例:フランスの場合
おわりに
索引
1章 女性のためのリハビリテーションとは?
ウィメンズヘルスとは?
ウィメンズヘルスリハビリテーションとは?
リハビリテーションチームとなる医療専門職とは?
ウィメンズヘルスリハビリテーションでかかわる対象とは?:理学療法の場合から考える
世界のウィメンズヘルス
まとめ
2章 わが国におけるウィメンズヘルスの現状
はじめに
わが国におけるウィメンズヘルスの活動:専門職種の活動状況から
ウィメンズヘルスリハビリテーションの対象者の現状
わが国におけるウィメンズヘルス分野の教育
わが国における活動状況の紹介
まとめ
PartⅡウィメンズヘルスにおける基礎知識
1章 解剖生理学:女性の骨格・生殖器
骨格の性差
骨盤の骨格構造
女性の生殖器
女性泌尿器の構造と機能
女性生殖器の支持機構
2章 月経周期
月経と月経に関与するホルモン
月経周期とそれに伴うさまざまな周期的変化
月経の異常
小児期から思春期にかけての変化
3章 妊娠・出産
妊娠に伴う母体の変化
妊娠に伴う内臓器の変化
妊娠に伴う骨格の変化
妊娠に伴う内分泌系の変化
妊娠に伴う精神的な変化
分娩の過程と母体への影響
分娩の時間的流れ(経腟分娩)
分娩への医学的介入
母体の運動機能や日常生活活動に影響を及ぼす状況
出産後の過程
はじめに
産後の身体の変化
産後によくあるトラブルと訴えの対処法
産後ケアの必要性と今後の課題
PartⅢ 年代別の特徴と障害(概論)
1章 思春期:月経開始
はじめに
思春期
月経に関連する健康問題
性感染症(STI)に関連する健康問題
思春期の妊娠・出産に関連する健康問題
摂食障害に関連する健康問題
おわりに
2章 成熟期
1 妊娠・出産
はじめに
成熟期の特徴
成熟期における妊娠・出産で知っておきたい問題
妊娠・出産の各時期における経過と問題
産後の経過,問題
おわりに
2 乳癌・婦人科腫瘍
はじめに
各疾患について:発生状況,診断と治療など
3章 更年期・老年期
1 女性の老化の特徴と閉経
老化とは
女性の老化
更年期障害
骨粗鬆症
変形性関節症
サルコペニア
運動器不安定症とロコモティブシンドローム
2 尿失禁,骨盤臓器脱
はじめに
女性尿失禁
骨盤臓器脱(POP)
おわりに
PartⅣ 女性の疾患・症状に対するリハビリテーション
1章 思春期:女性アスリートに対して
はじめに
予防と対処法
現場での対応について
おわりに
2章 成熟期
1 妊娠期間中の生理学的・身体的特徴
はじめに
妊娠によって生じる筋骨格系の変化
2 妊娠期間中に生じる疾患・障害と理学療法
はじめに
妊娠期に生じる身体変化
妊娠に伴い生じる障害
3 妊娠期間中に理学療法士が行う基本的なアプローチ
妊娠中に生じる症状
4 産後に理学療法士が行う基本的なアプローチ
はじめに
出産に伴う女性の身体機能の変化
産後に生じる症状
5 産前・産後の実践例の紹介
はじめに
妊婦教室
産後教室
理学療法士という立場から
6 女性特有疾患(がん中心)に対するリハビリテーションの基本的理論と技術
はじめに
がんリハビリテーションの意義
乳癌のケア
婦人科がんのケア
リンパ浮腫のケア
7 女性性機能障害・外陰部痛に対するアプローチ:概論編
はじめに
女性性機能障害の分類と診断
女性性機能障害の治療
外陰痛症候群の行動療法
理学療法士に行ってほしいリハビリテーション
8 女性性機能障害・外陰痛症候群に対するアプローチ:実践編
はじめに
問診
患者教育
骨盤底の評価
理学療法の実際
治療時間と頻度について
症例紹介
おわりに
3章 更年期・老年期
1 更年期の運動療法
更年期女性における運動の重要性について
中高年女性の身体的,精神的特徴について
更年期とメタボリックシンドローム
更年期とロコモティブシンドローム
おわりに
2 女性の障害予防・健康増進のための人間工学的アプローチ
はじめに
更年期から老年期にかけての姿勢変化
更年期から老年期にかけての姿勢制御・動作の特徴
障害予防(転倒)と健康増進へのアプローチ
おわりに
3 骨粗鬆症と基本的アプローチ
骨粗鬆症の定義
骨粗鬆症の測定方法
わが国における骨折の状況
女性医学と骨
運動療法と骨の特性
骨粗鬆症・骨量減少に対する運動療法
骨粗鬆症の予防について
おわりに
4 骨盤底機能障害に対する基本的アプローチ
はじめに
問診
尿失禁の評価
骨盤臓器脱の評価
骨盤底機能の評価
尿失禁に対する基本的アプローチ
便失禁に対する基本的アプローチ
骨盤臓器脱に対する基本的アプローチ
わが国における現状と問題点
おわりに
PartⅤ 女性を取り巻く社会的状況
1章 ジェンダー・社会的役割や家庭での役割,メンタルヘルス
1 女性の視点から
はじめに
年代ごとの女性の社会的役割:歴史的背景と社会的背景から
社会における女性の現状
おわりに
2 男性の視点から
はじめに
学問のなかでのジェンダー
家庭のなかでのジェンダー
政治のなかでのジェンダー
労働のなかでのジェンダー
男性学とは何か?
海外の事例:フランスの場合
おわりに
索引
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女性の一生涯にわたる健康に,リハビリテーションスタッフがどのようにかかわっていくかを解説
わが国におけるウィメンズヘルス(女性の健康)は,主に産科関連の医療職(産婦人科医など)により提供されてきた。以前はウィメンズヘルス=母性の健康とされ臓器別医学が中心であったが,現在は「一生涯にわたる健康」とする見方に変化してきている。思春期,青年期,老年期といった年代による生理・身体的変化や,社会・家庭における役割(仕事,出産・育児,家事など),さらに女性特有の疾患など,ウィメンズヘルスに関する内容は多岐にわたる。これらの問題に対して,リハビリテーションスタッフ(以下,リハスタッフ)も交えた多面的なアプローチを行うことで,対象者の日常生活はより機能的に改善することが期待される。
本書は女性の生涯にわたる健康に対して,リハスタッフがどのようにかかわっているか,またどうかかわればよいかを解説した書籍である。女性の解剖生理学,性周期,妊娠・出産といった基礎医学の内容から,思春期〜老年期にかけた年代別の特徴と障害,女性特有の疾患・症状に対する理学療法などを,豊富なイラストを用いてわかりやすく解説している。具体的なリハビリの内容も紹介しているので,これからウィメンズヘルスにかかわりたいという方にもお勧めである。
超高齢化による高齢女性の増加への対応,少子化対策,女性の社会的活躍促進のためにも,リハスタッフがウィメンズヘルスに果たせる役割は大きい。本書がウィメンズヘルスの発展に寄与できれば幸いである。