DCAスターターマニュアル
定価 5,500円(税込) (本体5,000円+税)
- B5判 156ページ 2色(一部カラー),イラスト20点,写真200点
- 2016年3月14日刊行
- ISBN978-4-7583-1431-2
電子版
序文
1992年に当院で初めてのDCAを経験して以来,約800例のDCAを行ってきた。その間デバイスの2回のモデルチェンジがあり,1997年に高速回転DCAを考案し日本各地の先生方に使用していただいた。その後,薬剤溶出ステント(DES)の出現により非常に使用が少なくなり,ついに2008年にガイダント社の製造販売が中止された。われわれDCAの大好きだったユーザーにおいては,寂しい限りであった。
2010年にニプロで新しいDCA開発の話が持ち上がり,2011年2月28日に私にDCA開発の依頼が届いた。東日本大震災により一時期立ち消えになっていたが,翌年再度計画が始まり,以来どのようにして世の中に出そうか木島先生に御相談し,ニプロの技術者と話をし,さまざまな実験を繰り返し新しいDCAを完成させ,以前のDCAを上回る効率と弱点を克服したものができたかに思えた。しかし,2013年の暮れに加藤先生にお願いして見ていただくと“このままではだめだ!安全を担保しなさい”との意見をいただき,再度改造作業に入った。このハードルが非常に高く何度もくじけそうになったが,加藤先生,木島先生をはじめ多くの先生方からのアドバイスを受け,何とか世の中に出すことができた。現在の形になったものができたのが2015年の冬である。
現在のPCIはDESが主流であり,ほとんどがステントで治療が完結される。その時代になぜDCAなのかという声が聞かれる。分岐部病変にそのままステントを挿入し拡張すると,側枝の入口が狭窄状態になることが結構な確立で見られる。側枝に何らかのストレスを与えるのは紛れもない事実である。分岐部病変のプラークボリュームが影響しているのではないかと考え,分岐部病変に対してはDCAで削って終わるか,もしくは削った後にステントを挿入するかがよい成績につながるのではと考える。今までのDCA症例を振り返ってみると,optimalなDCA症例は非常によい結果を得ているし,長期予後もすばらしいものがある。しかし,DCAは削り取るという道具の特性から冠動脈穿孔という重篤な合併症が存在することをしっかり認識しなければいけない。そのような合併症を回避するためには,angioとIVUSの読みが大変重要となる。DCAに特化したIVUSとangioの読みが存在し,それを術者のみならずスタッフ全員で理解することにより,より安全なDCAの手技が施行できると考える。また,合併症発生時には如何に素早く処置の対応できるかが鍵となる。皆様にこのデバイスの原理,構造,IVUSとangioの正しい読み方等をよく理解していただき,安全なDCAを施行して患者様に対してよりよい長期予後を目指していただきたいと考える。
2016年2月
編者を代表して
公益財団法人星総合病院医療技術部長 添田信之
2010年にニプロで新しいDCA開発の話が持ち上がり,2011年2月28日に私にDCA開発の依頼が届いた。東日本大震災により一時期立ち消えになっていたが,翌年再度計画が始まり,以来どのようにして世の中に出そうか木島先生に御相談し,ニプロの技術者と話をし,さまざまな実験を繰り返し新しいDCAを完成させ,以前のDCAを上回る効率と弱点を克服したものができたかに思えた。しかし,2013年の暮れに加藤先生にお願いして見ていただくと“このままではだめだ!安全を担保しなさい”との意見をいただき,再度改造作業に入った。このハードルが非常に高く何度もくじけそうになったが,加藤先生,木島先生をはじめ多くの先生方からのアドバイスを受け,何とか世の中に出すことができた。現在の形になったものができたのが2015年の冬である。
現在のPCIはDESが主流であり,ほとんどがステントで治療が完結される。その時代になぜDCAなのかという声が聞かれる。分岐部病変にそのままステントを挿入し拡張すると,側枝の入口が狭窄状態になることが結構な確立で見られる。側枝に何らかのストレスを与えるのは紛れもない事実である。分岐部病変のプラークボリュームが影響しているのではないかと考え,分岐部病変に対してはDCAで削って終わるか,もしくは削った後にステントを挿入するかがよい成績につながるのではと考える。今までのDCA症例を振り返ってみると,optimalなDCA症例は非常によい結果を得ているし,長期予後もすばらしいものがある。しかし,DCAは削り取るという道具の特性から冠動脈穿孔という重篤な合併症が存在することをしっかり認識しなければいけない。そのような合併症を回避するためには,angioとIVUSの読みが大変重要となる。DCAに特化したIVUSとangioの読みが存在し,それを術者のみならずスタッフ全員で理解することにより,より安全なDCAの手技が施行できると考える。また,合併症発生時には如何に素早く処置の対応できるかが鍵となる。皆様にこのデバイスの原理,構造,IVUSとangioの正しい読み方等をよく理解していただき,安全なDCAを施行して患者様に対してよりよい長期予後を目指していただきたいと考える。
2016年2月
編者を代表して
公益財団法人星総合病院医療技術部長 添田信之
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目次
序章 Mission前に押さえておくべきこと
1 DCAの構造 木島幹博
DCAとは? 復活までの経緯
DCAの構造
現時点におけるデバイスの問題点
DCAカテーテルの将来
2 DCAの操作法 濱嵜裕司
Step1 DCAカテーテルの準備
Step2 DCAカテーテルの挿入
Step3 カットの実際
Step4 デバイスの抜去
step5 切除デバイスの取り出し
3 DCAの適応 濱嵜裕司
病変形態からの適応
DCAの使用を控えるべき病変
患者背景からの適応
4 DCAのエンドポイント 濱嵜裕司
DCA後に追加治療を予定している場合のエンドポイント
DCA単独治療を目指す場合のエンドポイント
DCAを中断すべき状況
5 オリエンテーションはこう理解する 朝倉 靖
側枝を用いる方法
テストカットを確認する方法
ガイドカテーテルの側孔を利用する方法
IVUSカテーテルのバイアスを利用する方法
IVUSとガイドワイヤーの位置関係を利用する方法
まとめと筆者からのアドバイス
Ⅰ 1st mission まずはここから
1 左主幹部〜前下行枝近位部病変 濱嵜裕司
使用デバイス
デバイスの挿入
キーとなる撮影方向
方向性の理解
回転の方向
切除の実際
テストカット
プラーク切除
DCAのエンドポイント
Ⅱ 2nd mission 徐々に適応拡大
1 前下行枝中間部〜遠位部,対角枝 那須賢哉
症例選択
イメージングデバイスによるプラーク分布の考え方
ブランチ法の基本
ガイドワイヤーバイアス法の注意点
DCA aloneで終了すべき症例はあるか?
DCAが有効と考えられるLAD中間部症例
まとめ
2 右冠動脈(入口部を除く) 及川裕二
使用デバイス
デバイスの挿入
キーとなる撮影方向
方向性の確認
回転の方向
右冠動脈に対するDCAのまとめ
3 左回旋枝(入口部を除く) 五十嵐康己
入口部を除く左冠動脈回旋枝への適応はまれ
至適撮影方向
カテーテルのwhip motion
IVUSによる切除方向の決定
Ⅲ 3rd mission これができればもうマスター!
1 左回旋枝入口部 羽原真人,那須賢哉,土金悦夫
症例1 70歳代,女性
症例2 60歳代,男性
症例3 80歳代,男性
まとめ
2 石灰化病変 平瀬裕章
DCAと石灰化
新しいDCA:ATHEROCUT®
石灰化病変に対するDCA適応の実際
IVUSからみた切削しやすい石灰化病変の特徴
石灰化へのDCAのエンドポイント
石灰化切削時の注意点
症例提示
今後の展望
Ⅳ トラブルシューティング
1 DCAが入らないときの挿入のコツ 小澤典行
DCA治療成績と手技を行う際の心構え
DCAを安全に行うためのステップとデバイス挿入のコツ
2 合併症への対応 清野義胤
冠穿孔
IVUSにおける血管径の評価
IVUSにおけるプラークの局在と性状
テストカット
冠穿孔をきたした症例
冠穿孔の対応
その他の合併症
今後の展望
Ⅴ カテ室スタッフのためのDCA講座
1 バルーン,ステントとは違います。DCAではここに注意! 添田信之
DCAの構造と従来品との違い
1 DCAの構造 木島幹博
DCAとは? 復活までの経緯
DCAの構造
現時点におけるデバイスの問題点
DCAカテーテルの将来
2 DCAの操作法 濱嵜裕司
Step1 DCAカテーテルの準備
Step2 DCAカテーテルの挿入
Step3 カットの実際
Step4 デバイスの抜去
step5 切除デバイスの取り出し
3 DCAの適応 濱嵜裕司
病変形態からの適応
DCAの使用を控えるべき病変
患者背景からの適応
4 DCAのエンドポイント 濱嵜裕司
DCA後に追加治療を予定している場合のエンドポイント
DCA単独治療を目指す場合のエンドポイント
DCAを中断すべき状況
5 オリエンテーションはこう理解する 朝倉 靖
側枝を用いる方法
テストカットを確認する方法
ガイドカテーテルの側孔を利用する方法
IVUSカテーテルのバイアスを利用する方法
IVUSとガイドワイヤーの位置関係を利用する方法
まとめと筆者からのアドバイス
Ⅰ 1st mission まずはここから
1 左主幹部〜前下行枝近位部病変 濱嵜裕司
使用デバイス
デバイスの挿入
キーとなる撮影方向
方向性の理解
回転の方向
切除の実際
テストカット
プラーク切除
DCAのエンドポイント
Ⅱ 2nd mission 徐々に適応拡大
1 前下行枝中間部〜遠位部,対角枝 那須賢哉
症例選択
イメージングデバイスによるプラーク分布の考え方
ブランチ法の基本
ガイドワイヤーバイアス法の注意点
DCA aloneで終了すべき症例はあるか?
DCAが有効と考えられるLAD中間部症例
まとめ
2 右冠動脈(入口部を除く) 及川裕二
使用デバイス
デバイスの挿入
キーとなる撮影方向
方向性の確認
回転の方向
右冠動脈に対するDCAのまとめ
3 左回旋枝(入口部を除く) 五十嵐康己
入口部を除く左冠動脈回旋枝への適応はまれ
至適撮影方向
カテーテルのwhip motion
IVUSによる切除方向の決定
Ⅲ 3rd mission これができればもうマスター!
1 左回旋枝入口部 羽原真人,那須賢哉,土金悦夫
症例1 70歳代,女性
症例2 60歳代,男性
症例3 80歳代,男性
まとめ
2 石灰化病変 平瀬裕章
DCAと石灰化
新しいDCA:ATHEROCUT®
石灰化病変に対するDCA適応の実際
IVUSからみた切削しやすい石灰化病変の特徴
石灰化へのDCAのエンドポイント
石灰化切削時の注意点
症例提示
今後の展望
Ⅳ トラブルシューティング
1 DCAが入らないときの挿入のコツ 小澤典行
DCA治療成績と手技を行う際の心構え
DCAを安全に行うためのステップとデバイス挿入のコツ
2 合併症への対応 清野義胤
冠穿孔
IVUSにおける血管径の評価
IVUSにおけるプラークの局在と性状
テストカット
冠穿孔をきたした症例
冠穿孔の対応
その他の合併症
今後の展望
Ⅴ カテ室スタッフのためのDCA講座
1 バルーン,ステントとは違います。DCAではここに注意! 添田信之
DCAの構造と従来品との違い
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今こそDCAを使いこなせ! DCAを行うための「思考力」と「技術力」を身につける
方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)はカテーテル治療の1つで,血管内部にできた粥腫(プラーク)を鉋のようなデバイスを用いて削り取る方法であり,バルーンやステントに比べて難易度が高い。しかし,その一方で粥腫部分の血管を広げるのではなく完全に削り落とすため,梗塞や再狭窄を起こす可能性も低く,分岐部病変でバルーンやステントを挿入することが不可能な場合にも適応できるなどメリットも多い。
本書は,DCAを今こそ学びたいドクター,今まで一度も手技を行っていない若手ドクターに向けて,どのような症例を選び,どのように考え,検査を行い,手技を行えばいいのかを具体的に解説。DCA機器の構造から操作法,病変別の実例やトラブルシューティングまで,豊富な画像とイラストを用いて徹底解説。カテ室スタッフが知っておくべき注意点等についても具体的に記載。
DCAを行うための「思考力」と「技術力」を身につけられる1冊である。