骨折 髄内固定治療マイスター
定価 16,500円(税込) (本体15,000円+税)
- B5変型判 282ページ オールカラー,イラスト500点,写真300点
- 2016年3月28日刊行
- ISBN978-4-7583-1369-8
電子版
序文
骨折治療の目的は損傷された四肢機能を早期に回復し,1日も早く受傷前の社会生活に復帰させることにあります。もちろん保存療法により良好な結果の得られる骨折も少なくありませんが,多くの骨折では観血的整復内固定を必要とします。プレート固定に関しては,2012年に刊行した『骨折 プレート治療マイスター』が好評をいただき,『髄内固定治療マイスター』刊行の要望を多数いただきました。そこで髄内釘のみに限らず,髄内で固定する方法としてスクリューやKirschner鋼線を含めて網羅することにいたしました。『骨折 プレート治療マイスター』と合わせると,成人の四肢骨折手術の大部分をカバーできると思います。
骨折治療を髄内から固定する試みは,古くは16世紀の中米アステカ帝国において,長管骨の偽関節に対して木製の棒を髄内に挿入する治療が行われていました。また19世紀から20世紀初頭にかけてドイツを中心に象牙のペグで固定することが試みられました。第一次世界大戦ではイギリスのHey Grovesが,骨折部から挿入した金属製の髄内釘を使用しましたが,高い感染率を伴いました。1931年にアメリカのSmith-Petersenが,大腿骨頚部骨折に対するステンレススチール製の三翼釘による良好な成績を報告して以降,金属製インプラントによる髄内釘が普及するようになりました。また同じアメリカのRushらは,尺骨近位部骨折と大腿骨近位部骨折にRushピンを用いた固定を行っております。
長管骨骨幹部骨折に対する髄内釘は,1940年にドイツのGerhard Küntscherにより報告されました(Marknagelung)。当初は懐疑的な意見が多く,なかなか受け入れられませんでしたが第二次世界大戦後,世界的に急速に普及するようになりました。Küntscherの功績は,骨幹部骨折の髄内固定に加えて,骨折部から離れた場所から髄内釘を挿入することにより骨折部を損傷しない閉鎖性髄内固定と,早期機能運動を推奨したことにあります。その後,髄内釘は髄内リーマーやX線透視装置の進歩,さらには横止め髄内釘の導入による適応の拡大があり,現在のような著しい進歩を遂げています。
わが国におけるKüntscher髄内釘は,1950年代初めに神戸大学 柏木大治教授,久留米大学 宮城成圭教授により導入され,さらに1970年代には北里大学 山本 真教授,糸満盛憲教授のグループが,詳細な基礎研究による円筒横止め髄内釘を開発しています。
本書では各部位の髄内からの固定に関して,エキスパートの先生方に豊富な経験と工夫に基づいて,適応,局所解剖,各インプラントの特徴,骨折分類,画像診断と読影のポイント,手術体位,手術アプローチ,整復と固定のコツ,後療法,合併症予防について詳述いただきました。骨折状態の正しい評価,しっかりとした術前計画,そして解剖を熟知して手術を行うことが非常に大切です。また軟部組織の状態をしっかり評価することも重要です。本書は髄内固定に関する実践的マニュアルです。皆様には本書を活用され,着実な骨折治療を行っていただけることを期待しております。最後に多忙ななか,執筆いただいた先生方に厚くお礼申し上げます。
2016年3月
富山市民病院副院長・整形外科部長 澤口 毅
骨折治療を髄内から固定する試みは,古くは16世紀の中米アステカ帝国において,長管骨の偽関節に対して木製の棒を髄内に挿入する治療が行われていました。また19世紀から20世紀初頭にかけてドイツを中心に象牙のペグで固定することが試みられました。第一次世界大戦ではイギリスのHey Grovesが,骨折部から挿入した金属製の髄内釘を使用しましたが,高い感染率を伴いました。1931年にアメリカのSmith-Petersenが,大腿骨頚部骨折に対するステンレススチール製の三翼釘による良好な成績を報告して以降,金属製インプラントによる髄内釘が普及するようになりました。また同じアメリカのRushらは,尺骨近位部骨折と大腿骨近位部骨折にRushピンを用いた固定を行っております。
長管骨骨幹部骨折に対する髄内釘は,1940年にドイツのGerhard Küntscherにより報告されました(Marknagelung)。当初は懐疑的な意見が多く,なかなか受け入れられませんでしたが第二次世界大戦後,世界的に急速に普及するようになりました。Küntscherの功績は,骨幹部骨折の髄内固定に加えて,骨折部から離れた場所から髄内釘を挿入することにより骨折部を損傷しない閉鎖性髄内固定と,早期機能運動を推奨したことにあります。その後,髄内釘は髄内リーマーやX線透視装置の進歩,さらには横止め髄内釘の導入による適応の拡大があり,現在のような著しい進歩を遂げています。
わが国におけるKüntscher髄内釘は,1950年代初めに神戸大学 柏木大治教授,久留米大学 宮城成圭教授により導入され,さらに1970年代には北里大学 山本 真教授,糸満盛憲教授のグループが,詳細な基礎研究による円筒横止め髄内釘を開発しています。
本書では各部位の髄内からの固定に関して,エキスパートの先生方に豊富な経験と工夫に基づいて,適応,局所解剖,各インプラントの特徴,骨折分類,画像診断と読影のポイント,手術体位,手術アプローチ,整復と固定のコツ,後療法,合併症予防について詳述いただきました。骨折状態の正しい評価,しっかりとした術前計画,そして解剖を熟知して手術を行うことが非常に大切です。また軟部組織の状態をしっかり評価することも重要です。本書は髄内固定に関する実践的マニュアルです。皆様には本書を活用され,着実な骨折治療を行っていただけることを期待しております。最後に多忙ななか,執筆いただいた先生方に厚くお礼申し上げます。
2016年3月
富山市民病院副院長・整形外科部長 澤口 毅
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目次
Ⅰ 上肢
鎖骨骨折 井上悟史ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
上腕骨近位部骨折 井上尚美
手術の基礎知識
髄内固定手技
上腕骨骨幹部骨折(順行性髄内釘固定) 白濵正博
手術の基礎知識
髄内固定手技
前腕骨骨幹部骨折 小林由香
手術の基礎知識
髄内固定手技
尺骨(順行性髄内釘固定)
橈骨(逆行性髄内釘固定)
橈骨遠位端骨折 黒田 司ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
手指骨折 大久保宏貴ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
Ⅱ 骨盤・下肢
骨盤輪骨折(スクリュー固定) 澤口 毅
手術の基礎知識
髄内固定手技
Iliosacral スクリュー固定
恥骨上枝逆行性髄内スクリュー固定
臼蓋上方腸骨髄内スクリュー固定
大腿骨頚部骨折(Hansson Pin固定) 野々宮廣章
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨頚部骨折(スクリュー固定・SHS固定) 坂越大悟ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
CCHS固定
SHS固定
大腿骨転子部骨折(short femoral nail固定) 徳永真巳
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨転子部骨折(PFNA固定) 南里泰弘
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨骨幹部骨折(順行性髄内釘固定) 渡部欣忍
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨骨幹部骨折(逆行性髄内釘固定) 吉田健治
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨遠位部(顆部・顆上)骨折 最上敦彦
手術の基礎知識
髄内固定手技
脛骨骨幹部骨折 生田拓也
手術の基礎知識
髄内固定手技
脛骨遠位部骨折 伊勢福修司
手術の基礎知識
髄内固定手技
踵骨骨折(Westhues変法) 北村貴弘ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
中足骨骨折 寺本 司ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
鎖骨骨折 井上悟史ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
上腕骨近位部骨折 井上尚美
手術の基礎知識
髄内固定手技
上腕骨骨幹部骨折(順行性髄内釘固定) 白濵正博
手術の基礎知識
髄内固定手技
前腕骨骨幹部骨折 小林由香
手術の基礎知識
髄内固定手技
尺骨(順行性髄内釘固定)
橈骨(逆行性髄内釘固定)
橈骨遠位端骨折 黒田 司ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
手指骨折 大久保宏貴ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
Ⅱ 骨盤・下肢
骨盤輪骨折(スクリュー固定) 澤口 毅
手術の基礎知識
髄内固定手技
Iliosacral スクリュー固定
恥骨上枝逆行性髄内スクリュー固定
臼蓋上方腸骨髄内スクリュー固定
大腿骨頚部骨折(Hansson Pin固定) 野々宮廣章
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨頚部骨折(スクリュー固定・SHS固定) 坂越大悟ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
CCHS固定
SHS固定
大腿骨転子部骨折(short femoral nail固定) 徳永真巳
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨転子部骨折(PFNA固定) 南里泰弘
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨骨幹部骨折(順行性髄内釘固定) 渡部欣忍
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨骨幹部骨折(逆行性髄内釘固定) 吉田健治
手術の基礎知識
髄内固定手技
大腿骨遠位部(顆部・顆上)骨折 最上敦彦
手術の基礎知識
髄内固定手技
脛骨骨幹部骨折 生田拓也
手術の基礎知識
髄内固定手技
脛骨遠位部骨折 伊勢福修司
手術の基礎知識
髄内固定手技
踵骨骨折(Westhues変法) 北村貴弘ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
中足骨骨折 寺本 司ほか
手術の基礎知識
髄内固定手技
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骨折にはプレート治療だけじゃない! 髄内固定治療の手技もおさえ,真の骨折治療マイスターに!
本書は,2012年に刊行した『骨折 プレート治療マイスター』の姉妹編である。
髄内固定治療の大きな特徴は,プレート治療に比較し,骨折部周囲の軟部組織に低侵襲なことである。本書では,1章で上肢・骨盤骨折,2章で下肢骨折と全身の髄内固定治療が適応となる骨折を対象にして,その治療法を詳述している。
画像情報を基に,どの位置にリーミングし,どの長さの髄内釘を選択し,そして実際の髄内釘の挿入時に何に気を付けなければいけないのか,エキスパートの術者が丁寧にわかりやすく解説している。特にプレートと比較した髄内固定の長所や短所は,それぞれの特性を理解し,ぜひ骨折治療の選択肢を増やしていただきたい。
プレート治療とあわせ,本書で髄内固定治療を学び,真の骨折治療マイスターをめざしてほしい。