足の運動療法
術前・術後にも効果的な外来テクニック
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定価 9,350円(税込) (本体8,500円+税)
- B5判 212ページ オールカラー,イラスト162点,写真254点
- 2015年3月23日刊行
- ISBN978-4-7583-1362-9
電子版
序文
人類は直立二足歩行を獲得して両手が自由になり,物の運搬,外敵からの守りや道具の作製が可能になり,さらには言語と文化の発達,技術の進歩,環境のコントロールなどが計られて,他の哺乳動物と異なる進化を経てきました。ヒトの足も魚類の尾鰭から両生類の後ろ脚,爬虫類の後ろ肢や鳥類の足,さらには哺乳動物や霊長類の足へと進化してきました。
このような進化の過程を経た足部に発生する疾患の歴史を繙くと,紀元前のエジプトにおけるポリオなどの麻痺足や内反足などの先天性疾患,さらには外傷治療の足蹠がありますが,主として保存療法でした。一方,外部環境の変化とともに発生した外反母趾や扁平足が話題になるのは16世紀に入ってからであり,靴を常用する現代人の母趾は外反傾向にあり,疼痛を伴う外反母趾は増加の一途をたどりつつあります。他の哺乳動物には認められないアーチも,近年の車社会による筋力低下と栄養過多による肥満のために崩れて扁平足変形を呈し,ときに直立二足歩行を困難にしています。このような足部の進化の過程に逆らったり,逆戻りさせるような生活環境が足部疾患や傷害を生んできたように思えます。しかし,他の哺乳動物と異なって,ヒトは起こった疾患や傷害の原因を知り,局所を休ませたり,鍛えたりして治療や予防することができる機能を持ち合わせています。
そこで,この原点に立ち返り保存療法の中心である運動療法(以下,リハビリテーション)を活用して足部疾患の治療にあたることは極めて重要です。本書ではそれぞれの足部疾患や外傷の病態や診断を簡単に記載して,まず行うべき保存療法を解説し,その疾患特有のリハビリテーションの施術を,著者らの実際の経験に基づいた写真やシェーマで詳細に紹介しました。さらにリハビリテーションの限界についても言及し,手術療法への適応も示しました。また,術後のリハビリテーションだけではなく,最近注目されている術前リハビリテーションの実際や,その効果についても記載しました。本書は『図説 足の臨床』の姉妹編として上梓しましたので,疾患の病因,診断および治療の詳細については同書を参考にしていただければ幸いです。
近年,生活様式の欧風化に伴って足部疾患は急増しており,その治療にあたられている整形外科医も増加傾向にあります。本書では,整形外科医の日常診療において,すぐに応用していただけるリハビリテーションを中心とした保存療法を網羅しましたので,大いに利用いただけるものと思います。書名を『足の運動療法』といたしましたが,内容は足部のリハビリテーションに重きを置きましたので,実際に日常で施術をされている理学療法士の方々にも,十分に活用していただけるものと確信しています。
最後に,今回の刊行にあたり,ご協力いただきました高倉整形外科クリニックの理学療法士の飯田美穗,福西 梓,久保多喜子,窪田健児の諸氏,ならびにご協力とご尽力いただきましたメジカルビュー社の松原かおる氏に深謝いたします。
2015年2月吉日
高倉 義典
このような進化の過程を経た足部に発生する疾患の歴史を繙くと,紀元前のエジプトにおけるポリオなどの麻痺足や内反足などの先天性疾患,さらには外傷治療の足蹠がありますが,主として保存療法でした。一方,外部環境の変化とともに発生した外反母趾や扁平足が話題になるのは16世紀に入ってからであり,靴を常用する現代人の母趾は外反傾向にあり,疼痛を伴う外反母趾は増加の一途をたどりつつあります。他の哺乳動物には認められないアーチも,近年の車社会による筋力低下と栄養過多による肥満のために崩れて扁平足変形を呈し,ときに直立二足歩行を困難にしています。このような足部の進化の過程に逆らったり,逆戻りさせるような生活環境が足部疾患や傷害を生んできたように思えます。しかし,他の哺乳動物と異なって,ヒトは起こった疾患や傷害の原因を知り,局所を休ませたり,鍛えたりして治療や予防することができる機能を持ち合わせています。
そこで,この原点に立ち返り保存療法の中心である運動療法(以下,リハビリテーション)を活用して足部疾患の治療にあたることは極めて重要です。本書ではそれぞれの足部疾患や外傷の病態や診断を簡単に記載して,まず行うべき保存療法を解説し,その疾患特有のリハビリテーションの施術を,著者らの実際の経験に基づいた写真やシェーマで詳細に紹介しました。さらにリハビリテーションの限界についても言及し,手術療法への適応も示しました。また,術後のリハビリテーションだけではなく,最近注目されている術前リハビリテーションの実際や,その効果についても記載しました。本書は『図説 足の臨床』の姉妹編として上梓しましたので,疾患の病因,診断および治療の詳細については同書を参考にしていただければ幸いです。
近年,生活様式の欧風化に伴って足部疾患は急増しており,その治療にあたられている整形外科医も増加傾向にあります。本書では,整形外科医の日常診療において,すぐに応用していただけるリハビリテーションを中心とした保存療法を網羅しましたので,大いに利用いただけるものと思います。書名を『足の運動療法』といたしましたが,内容は足部のリハビリテーションに重きを置きましたので,実際に日常で施術をされている理学療法士の方々にも,十分に活用していただけるものと確信しています。
最後に,今回の刊行にあたり,ご協力いただきました高倉整形外科クリニックの理学療法士の飯田美穗,福西 梓,久保多喜子,窪田健児の諸氏,ならびにご協力とご尽力いただきましたメジカルビュー社の松原かおる氏に深謝いたします。
2015年2月吉日
高倉 義典
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目次
I.足のリハビリテーションに必要な基礎知識
足の解剖
足の機能解剖
徒手筋力テスト Mannual muscle testing(MMT)
疼痛部位と疾患
II.リハビリテーションの基本
ストレッチング
筋力トレーニング
アスレチック リハビリテーション
装具療法(足底挿板)の利用
III. リハビリテーション効果のある疾患
変形性足関節症(OA)
扁平足
外反母趾
足関節靱帯損傷
IV. リハビリテーション効果の期待できる疾患
1.先天性疾患および全身性疾患
先天性内反足
麻痺足
関節リウマチ
痛風
2.前足部の外傷・疾患
強剛母趾
内反小趾
母趾種子骨障害
Freiberg病
中足骨・趾骨骨折,第5中足骨基部骨折(下駄履き骨折)
中足骨疲労骨折(行軍骨折)
第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)
3.中足部の外傷・疾患
リスフラン関節脱臼骨折(靱帯損傷)
リスフラン関節症
第1Kohler病
外脛骨障害
舟状楔状骨癒合症
舟状骨疲労骨折
4.後足部の外傷・疾患
アキレス腱断裂
アキレス腱炎および周囲炎
アキレス腱付着部障害
果部骨折
距骨骨折(骨軟骨損傷)
踵骨骨折
踵骨骨端症(Sever病)
足根骨癒合症
足底腱膜炎
三角骨症候群
足根洞症候群
腓骨筋腱脱臼
足関節内果疲労骨折
足の解剖
足の機能解剖
徒手筋力テスト Mannual muscle testing(MMT)
疼痛部位と疾患
II.リハビリテーションの基本
ストレッチング
筋力トレーニング
アスレチック リハビリテーション
装具療法(足底挿板)の利用
III. リハビリテーション効果のある疾患
変形性足関節症(OA)
扁平足
外反母趾
足関節靱帯損傷
IV. リハビリテーション効果の期待できる疾患
1.先天性疾患および全身性疾患
先天性内反足
麻痺足
関節リウマチ
痛風
2.前足部の外傷・疾患
強剛母趾
内反小趾
母趾種子骨障害
Freiberg病
中足骨・趾骨骨折,第5中足骨基部骨折(下駄履き骨折)
中足骨疲労骨折(行軍骨折)
第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)
3.中足部の外傷・疾患
リスフラン関節脱臼骨折(靱帯損傷)
リスフラン関節症
第1Kohler病
外脛骨障害
舟状楔状骨癒合症
舟状骨疲労骨折
4.後足部の外傷・疾患
アキレス腱断裂
アキレス腱炎および周囲炎
アキレス腱付着部障害
果部骨折
距骨骨折(骨軟骨損傷)
踵骨骨折
踵骨骨端症(Sever病)
足根骨癒合症
足底腱膜炎
三角骨症候群
足根洞症候群
腓骨筋腱脱臼
足関節内果疲労骨折
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足のスペシャリスト高倉義典先生による保存療法の決定版!
足のスペシャリスト高倉義典先生と高倉整形外科クリニックで行われている足の保存療法の実際が解説された書籍。保存療法の中心となる運動療法(リハビリテーション)については,術前・術後にも効果的な方法が多数のイラストとともに充実した内容で解説されている。保存療法のみでは対応しきれない場合に選択される手術療法についても触れられており,保存療法の限界を見極めるための“手術のタイミング”も明記されている。
多種多様な足の診療に携わる整形外科医の診療室に常備していただきたい1冊である。