経尿道的尿管砕石術
[Web動画付]

安全・確実なTULの手術手技

経尿道的尿管砕石術[Web動画付]

■著者 松崎 純一

定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  180ページ  オールカラー,イラスト70点,写真80点,Web動画 96本/計57分
  • 2015年9月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1262-2

エキスパートに学ぶTULの手術手技

尿路結石は泌尿器科医が最も多く遭遇する疾患の1つで,泌尿器科医はその治療に精通しなければならない。経尿道的尿管砕石術(TUL)は機器の進歩によりその適応を広げ,施行数は増加の一途を辿っている。今後TULが結石治療の中心となっていくのは確実であるが,麻酔や入院を必要とし,尿管穿孔,尿管断裂などの重大な合併症の可能性もあり,手術の施行には安全・確実な手技の習得が不可欠である。
TULのエキスパートである著者の多くの経験を通して得られた,安全で確実に結石を除去するためのノウハウとコツをまとめた本書と動画から,TULの手技を学んでいただきたい。


序文

 尿路結石は数ミリの大きさで疼痛や発熱の原因となったり,数センチまで増大して珊瑚状結石となっても無症候のこともある。尿路結石は泌尿器科の診療のなかで日常的にみられる疾患であり,その治療に精通することは大事なことである。
 これまで尿路結石に対する治療はESWL(体外衝撃波砕石術)がその主役であった。ESWLは簡便性や低侵襲性が利点であったが,有効性は約80〜90%であり,即効性のある治療とはいえない。また,以前より硬性尿管鏡によるTUL(経尿道的尿管砕石術)は行われてきたが,下部尿管結石に対する治療であり,上部尿管や腎結石については内視鏡が到達不可能なため治療の対象とはならなかった。
 しかし,近年尿管鏡の細径化や軟性尿管鏡,ホルミウムヤグレーザーなど器機の進歩により上部尿管結石や腎結石の治療が可能となった。軟性尿管鏡と尿管アクセスシース,抽石用バスケットカテーテルを用いたTULをf-TULとよび,ほぼすべての部位の尿路結石に対し確実に結石を消失させる理想的な方法として認識されている。
 名称については本邦ではTUL,f-TULとよんでいるが,2014年EAUガイドラインではURS(ureterorenoscopy)と記載され,特に腎結石におけるf-TULをf-URSまたはRIRS(retrograde intrarenal surgery)と記載している。TULはESWLとPNL(経皮的腎砕石術)の中間的な位置を担う治療であり,その有効性から今後も普及していくと思われる。
 本書が尿路結石治療の一助となれば幸いである。

2015年5月
松崎純一
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目次

Ⅰ.TULの適応と治療方針
 尿管結石の治療方針
  上部尿管結石/中部尿管結石/下部尿管結石
 腎結石の治療方針
  10mm未満の腎結石/10mm以上20mm未満の腎結石/20mm以上の腎結石
 サンゴ状結石の治療方針
  患者側の因子/非患者側の因子
  
Ⅱ.TULの機器と使用方法
・使用機器と基本的使用法
 処置用膀胱鏡
 ガイドワイヤー
  ガイドワイヤーの特徴と種類/ガイドワイヤー操作時の注意点
 尿管カテーテル
 尿管アクセスシース(UAS)
  尿管アクセスシースの長所と短所/尿管アクセススシースの種類と選択/尿管アクセスシースのサイズの決定/尿管アクセスシースの挿入法
 破砕機器
  破砕機器の種類/ホルミウムヤグレーザー(Ho-YAG)/リトクラスト
 バスケットカテーテル
  バスケットの特徴/バスケットカテーテルの使用方法/バスケットカテーテルの把持方法
 バスケットカテーテルpushup防止用器具
  バスケットカテーテルpushup防止用機器の使用法
 尿管ステント
  尿管ステントの種類/ステント留置の実際
 周辺機器
  TVビデオシステム/X線透視装置(C-アーム)/ポートシール/灌流用生理食塩水(1〜2L)/灌流用ルート/Yアダプター
・硬性尿管鏡の基本的使用法
 硬性尿管鏡の種類と特徴
  硬性尿管鏡のメリット/硬性尿管鏡のデメリット
 硬性尿管鏡のセッティング
 硬性尿管鏡の操作法
  初心時の操作/尿管口への挿入法/尿管内での操作法/屈曲や狭窄がある場合の操作法/尿管鏡操作の注意点
 硬性尿管鏡による結石の破砕と摘出
  結石の破砕/結石の摘出
 硬性尿管鏡と尿管アクセスシースの併用
  併用の利点/併用の欠点
・軟性尿管鏡の基本的使用法
 軟性尿管鏡の特徴
 軟性尿管鏡の種類
 軟性尿管鏡のセッティング
 軟性尿管鏡の操作法
  姿勢/内視鏡の保持,機器のセッティング/軟性尿管鏡の操作を行う手の動き/軟性尿管鏡の挿入法/尿管内での尿管鏡の操作/腎盂内での尿管鏡の操作
 軟性尿管鏡による結石の破砕と摘出
  軟性尿管鏡下での破砕/レーザーによる破砕/バスケットカテーテルによる摘出/結石摘出後の腎盂の観察
  
Ⅲ.使用機器の配置とスタッフの配置
 使用機器の配置
  透視モニターとビデオモニター/器械台/レーザー本体
 必要な人員
 助手の役割
  灌流液のコントロール/レーザーファイバーやバスケットカテーテルの挿入の補助/内視鏡変更の際のケーブル着脱の補助/尿管ステント挿入の補助
 助手のいないTUL(one person TUL)
 メディカルスタッフの役割
  
Ⅳ.術前評価と術前準備
 結石の評価
  術前評価の方法/結石の大きさの評価/結石の位置の評価/尿路の形態の評価
 結石のリスクファクターの評価
 全身状態の評価
 術前準備
  
Ⅴ.手術の実際
・体位と麻酔
 体位
  体位と合併症の予防/砕石位の位置決め/レビテーターの使用法
 麻酔
・手術手技
下部尿管結石の手術手技
 硬性尿管鏡を用いたTUL
  ポイント/手技
 結石の破砕
  リトクラストⓇによる破砕/レーザーによる破砕
 結石の摘出
  バスケットカーテルによる膀胱内への結石摘出/尿管結石摘出後の観察/膀胱内の結石摘出
 結石摘出後の処置
中部尿管結石の手術手技
 硬性尿管鏡を用いたTUL
  ポイント/手技
 結石の破砕
  リトクラストⓇによる破砕/レーザーによる破砕
 結石の摘出
  バスケットカーテルによる膀胱内への結石摘出/尿管結石摘出後の確認/膀胱内の結石摘出(膀胱内に摘出した場合のみ)
 結石摘出後の処置
上部尿管結石の手術手技
 軟性尿管鏡を用いたf-TUL
  ポイント/手技
 上部尿管結石のpushupについて
  pushupを防止する方法/意図的にpushupする
 レーザーによる結石の破砕
 結石の摘出と摘出後の処置
腎結石の手術手技
 軟性尿管鏡を用いたf-TUL
  ポイント/手技
 結石の摘出と摘出後の処置
  結石の摘出/結石と尿管アクセスシースの距離/残石の確認と結石摘出後の処置
下腎杯結石の手術手技
 軟性尿管鏡を用いたf-TUL
  ポイント/器機の準備/手技
 下腎杯結石処置時のトラブルシューティング
  バスケットが抜けなくなった場合の対処/予防法
複数結石の手術手技
 治療方針
  ポイント/結石の部位,個数と治療方針
 手技
 ストーンストリートの場合の手術手技
  ポイント/ストーンストリートの距離が短い場合(〜2cmまで)/ストーンストリートの距離が長い場合(3cm以上)
ante-URSの手術手技
 軟性尿管鏡を用いたf-TUL(順行性)
  ポイント/適応症例
 手技
・トラブルシューティング
 結石までのアクセスの不良(屈曲,狭窄,嵌頓結石)
  尿管の屈曲のため,結石に尿管鏡が届かない/尿管の狭窄のため,結石に尿管鏡が届かない/嵌頓結石の尾側が浮腫状になって結石に届かない
 内視鏡の視野がよくない
  灌流の注入は良好であるか?/ドレナージが良好か?
 破砕の効率がよくない
  レーザーの設定と結石破砕効率/破砕時にレーザーファイバーがうまく結石に当たらない/呼吸性移動があってうまく破砕できない
 摘出の効率がよくない
  摘出結石のサイズ,尿路アクセスの内径/把持する方向/バスケットカテーテルの選択/内視鏡の出し入れの効率化/どこまで摘出するか?
 合併症
  尿管で結石を把持したらバスケットカテーテルが抜けなくなった/腎盂尿管粘膜を傷つけてしまった(エクストラができた)/尿管ステントが抜けない/尿管ステントが尿管内に挙上してしまった/術後に腎盂腎炎,敗血症となった場合の対処法/術後に腎機能が低下した場合の対処法
  
Ⅵ.術後評価
 結石の評価
  術後評価の方法/結石の大きさと位置の評価/尿路の形態の評価
 結石分析の評価
 再発予防
  
Ⅶ.合併症とその対策
 合併症の種類
 合併症を減少させるために
  
Ⅷ.インフォームドコンセント
 術前のインフォームドコンセント
  診断/治療/TULの手術手技,合併症についての説明/TULの日程の説明/術後の生活について/結石分析の重要性の説明
 術直後のインフォームドコンセント(家族に対して)
 術後(退院前)のインフォームドコンセント(患者に対して)
  
Ⅸ.軟性尿管鏡の応用
 腎性血尿に対する尿管鏡手術
  必要器機/手技
 上部尿路腫瘍
  ポイント/必要器機/手技/注意点
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