子宮鏡の臨床ABC

子宮鏡の臨床ABC

■著者 林 保良

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • i_dvd.jpg
  • B5判  144ページ  オールカラー,イラスト50点,写真200点,DVD-Video付き
  • 2014年2月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-1236-3

動画と写真でわかる,子宮鏡をゼロから習得できる必携の書

子宮鏡をゼロから習得したい医師のための教科書。外来で実施できる子宮鏡の検査・手術について,豊富な正常例から病変までの子宮内所見の写真,子宮鏡の手技を余すところなく掲載している。付録のDVD-Videoにより,子宮鏡の手技動作,ポイントを視覚的に理解できる。婦人科医必携の書籍である。


序文

 筆者は,1983年慶應義塾大学医学部産婦人科教室の人事で日本産婦人科内視鏡の発祥地である川崎市立川崎病院に転勤を命じられ,この病院で当時の腹腔鏡の第一人者である岩田嘉行先生と出会った。そして岩田先生に子宮鏡の研究を勧めていただき,子宮鏡検査を始めることとなった。
 そしてたまたま,日本が世界に誇るファイバースコープ分野の一つであるヒステロファイバースコープの開発機会に恵まれて,1985年に,ユニークな外径3.7mmの一部軟性一部硬性の診断用ヒステロファイバースコープを富士写真工機と一緒に開発することになった。これがきっかけとなって,一気に診断用ヒステロファイバースコープが世界的に席巻した。
 同じ1985年,筆者は川崎市立川崎病院泌尿器科の上野宗久先生に前立腺腫瘍切除用レゼクトスコープの使用方法の教えを受け,子宮腔内の手術を開始し,以来30年間約5,400例の子宮鏡下手術と19,600例の子宮鏡検査を行ってきた。
 さらに器械にも興味があったので,子宮鏡検査と手術に役に立つ数多くのLin式器具を開発した。なかでも1号から9号までの筋腫鉗子と筋腫剥離ループを開発したお陰で,いままで完全除去は困難であった無茎性粘膜下筋腫も一回の手術で完全に除去ができ,それまで不可能であった手術を可能にした。
 また,以前は入院で麻酔を要した子宮内膜ポリープの治療も,スネアシステムの開発によって,外来で麻酔も頸管拡張もなしで容易に除去できるようになった。さらには,持続灌流用外套管の開発によって,それまで困難であった月経中あるいは出血の時期での子宮鏡検査も可能になった。
 子宮鏡手術ではさまざまな合併症が生じうるので,簡単だと思って安易に始めると合併症に遭遇することもありうる。しかしながら,子宮鏡手術の書籍はあまり存在せず,教育を受ける機会が少ないのが現状であった。本書の執筆で,私の30年間の子宮鏡検査,ならびに手術経験を全国の先生方にお伝えできれば幸いである。
 最後に,私の仕事を応援してくださいました林 茂前院長,岩田嘉行前院長,関 賢一前副院長,宮本尚彦先生等のご支援に感謝を申し上げます。また,本書刊行にあたり企画編集に多大な協力を頂いたメジカルビュー社の原 鎮夫氏,清澤まや氏,浅見直博氏に心からお礼申し上げたい。
 本書は日本の診断子宮鏡の世界的パイオニアの故杉本 修教授と恩師である故飯塚理八先生の御霊前に捧げたい。

2014(平成26)年1月吉日
Bao-Liang Lin(林 保良)
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目次

子宮異常病変の子宮鏡所見
 1 粘膜下筋腫
 2 内膜ポリープ
 3 子宮腺筋腫
 4 ポリープ状異型腺筋腫
 5 子宮腔癒着症
 6 内膜増殖症
 7 体癌
 8 性索様腫瘍(sex cord-like tumour)
 9 IUDと異物

診断編
Ⅰ 子宮鏡検査の適応と実施時期

Ⅱ 外来検査室のセットアップ
 体位
 器具の配列
 腟内の消毒
 器具の消毒法
  1 薬液消毒
  2 高圧蒸気滅菌消毒
  3 酸化エチレン(EOG)ガス滅菌

Ⅲ 診断用子宮鏡と周辺器具
 ヒステロファイバースコープ
  1 診断用ヒステロファイバースコープ
  2 処置用ヒステロファイバースコープ
  3 Lin式持続灌流式ヒステロファイバースコピー用軟性外套管
 電子子宮鏡
 硬性子宮鏡
  1 診断用硬性子宮鏡
  2 手術用硬性子宮鏡
  3 ハーモウ子宮鏡
  4 バーサスコープシステム
 拡張媒体

Ⅳ 観察と処置手技
 ヒステロファイバースコープの操作法
  1 診断用ヒステロファイバースコープ
  2 処置用ヒステロファイバースコープ
 硬性子宮鏡の操作法
  1 診断用硬性子宮鏡
  2 手術用硬性子宮鏡
  3 腟子宮鏡

Ⅴ 子宮鏡検査の禁忌
 絶対的禁忌
 比較的禁忌
  1 妊娠
  2 大量の子宮出血
  3 子宮頸癌

Ⅵ 合併症
  1 子宮穿孔
  2 感染症
  3 出血
  4 拡張媒体による合併症

Ⅶ 子宮腔内病変の子宮鏡所見
  1 隆起所見
  2 血管所見
 粘膜下筋腫
 子宮内膜ポリープ
  1 機能性ポリープ
  2 無機能性ポリープ
 タモキシフェン投与による子宮内膜ポリープ
 子宮内膜増殖症
  1 単純型子宮内膜増殖症
  2 複雑型子宮内膜増殖症
  3 子宮内膜異型増殖症
 子宮内膜癌
  1 乳頭状
  2 結節状
  3 ポリープ状
  4 潰瘍状癌
  5 体癌の頸部浸潤
 子宮中隔
  1 子宮腔癒着症

手術編
Ⅰ 子宮鏡下手術の適応

Ⅱ 手術室のセットアップ
 体位
 器具の配列
 術野の消毒とドレーピング
 器具の消毒法
 麻酔

Ⅲ 手術用子宮鏡と周辺器具
 手術用硬性子宮鏡
 レゼクトスコープ
  1 モノポーラレゼクトスコープ
  2 バイポーラレゼクトスコープ
 拡張媒体
  1 CO2(炭酸ガス)
  2 液体媒体
 Lin式筋腫鉗子
 Lin式彎曲把持鉗子
 Lin式手術用腟鏡
 Lin式超音波プローブ自動固定器
 Lin式剥離ループ
 高周波電流発生ユニット
 Lin式ポリープ鉗子
 Lin式子宮内膜ポリープ スネアシステム

Ⅳ 操作の基本
 手術用硬性子宮鏡
 レゼクトスコープ
  1 ループとスコープの操作法
  2 止血法
  3 術中の注意点

Ⅴ 手術の監視法
 超音波断層による監視法
  1 two contrasts法
  2 three contrasts法
 腹腔鏡による監視法
  1 従来法
  2 Lin式法

Ⅵ 粘膜下筋腫の切除
 手術の適応
 術前検査
  1 超音波断層検査
  2 子宮鏡検査
  3 MRI検査
 GnRHアゴニストの投与
  1 目的
  2 欠点
 麻酔
 手術の時期
 手術の手順
  1 いわゆる筋腫分娩の切除
  2 ほかの粘膜下筋腫
 筋腫鉗子の嵌頓
 sinking submucous fiboid(沈下性粘膜下筋腫)
 腹腔鏡下筋腫核出術と一緒に行う場合
 術後の管理とフォローアップ

Ⅶ 子宮内膜ポリープの切除
 処置用ヒステロファイバースコープによる除去
 診断用ヒステロファイバースコープの直視下にLin式スネアシステムによる除去法
 5mm手術用硬性子宮鏡による除去
 診断用ヒステロファイバースコピーアシスト子宮内膜掻爬術(D&C)
 経頸管的切除術(TCR)

Ⅷ 子宮と腟の奇形に対する手術
 子宮奇形の分類
 対象
 術前検査
  1 腟鏡診
  2 MRI検査
  3 超音波断層検査
  4 子宮卵管造影(HSG)
  5 子宮鏡検査
 器具
 手術の時期
 手術の実際
  1 腟中隔の切断法
  2 不全子宮中隔の切断法
  3 完全子宮中隔の切断法
  4 弓状子宮の切断法
  5 T字型子宮の手術法
  6 腹腔鏡の実施
 術後の管理
 
Ⅸ 子宮腔癒着症の手術
 術前検査
  1 子宮卵管造影(HSG)
  2 子宮鏡検査
  3 超音波断層検査
 米国不妊学会(AFS)の子宮腔癒着症分類
 手術の時期
 使用器具
  1 子宮鏡
 手術の手順
  1 頸管の前処置
  2 頸管内の癒着の処置
  3 再度の診断子宮鏡検査
  4 子宮体部内の癒着の処置
 術中の合併症
  1 出血
  2 子宮穿孔
 腹腔鏡の実施
 術後の管理

Ⅹ 子宮内膜破壊術
 対象と適応
 第一世代子宮内膜破壊術
  1 レゼクトスコープによる子宮内膜破壊術
  2 レーザーによる内膜蒸散法
 第二世代子宮内膜破壊術
  1 バルーン温水法(UBT)
  2 熱水子宮内膜破壊法(HTA)
  3 マイクロ波子宮内膜破壊術(MEA)
  4 子宮内膜レーザー熱療法(ELITT)
  5 冷凍子宮内膜破壊術
  6 バイポーラ高周波子宮内膜破壊術
 子宮腺筋症患者の対応
 内膜破壊術後の子宮摘出

ⅩI 帝王切開後の頸管憩室の形成術
 手術方法

ⅩII 抜去困難な子宮内器具(IUD)の除去と子宮内異物の除去
 子宮内器具の除去
  1 IUDの種類
  2 IUDの除去法
 子宮内異物の除去

ⅩIII 合併症
 出血
  1 術中の出血
  2 術直後の出血
  3 術後の初回月経中の多量出血
  4 仮性動脈瘤による出血
 人為的な外傷
  1 頸管裂傷
  2 子宮穿孔と臓器損傷
  3 子宮腔癒着症
  4 子宮留血症
  5 拡張媒体による合併症
  6 静脈性空気塞栓症
  7 Postablation-Tubal Sterilization Syndrome
  8 感染
  9 内膜癌
  10 医原性子宮腺筋症
  11 神経損傷
  12 大腿内転筋の痙攣
  13 電気事故

症例集
 症例1 石灰化粘膜下筋腫
 症例2 子宮内反症
 症例3 仮性子宮動脈瘤
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