プリンシプル産科婦人科学 1
婦人科編
第3版
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定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
- B5判 920ページ 2色
- 2014年3月24日刊行
- ISBN978-4-7583-1219-6
序文
序文
[第3版刊行にあたって]
1987年,『プリンシプル産科婦人科学』の初版が刊行された。当時の産婦人科学は,産科学として周産期医学を,婦人科学として生殖内分泌学,婦人科腫瘍学を扱っていた。産婦人科学はその後大きく変貌を遂げ,現在は,前述の各領域を機軸としつつも,女性医学として,女性特有の生理・病理の基本的理解のもと,思春期から老年期までの女性の健康維持・増進,疾病の予防・治療などの諸問題を統合的・全人的に把握し,臨床への還元を志向する学問になっている。
『プリンシプル産科婦人科学』はこうした産婦人科学の変貌を先見し,初版の段階ですでに,女性のライフサイクルや生殖現象において生起する多くの現象を分断的に捉えるのではなく,連続した生命現象として統合的に捉えるという視点で編集された。従って,単に学生の知識の整理や試験対策のために編集したものではなく,女性の生理,病理を生物学,生命科学の原点に立脚して,包括的に解説したものであった。
生殖現象は女性特有の生命現象であるが,その現象は子宮,卵巣といった,いわゆる生殖器官にとどまらず,全身において,順次ダイナミックに展開する。女性のライフサイクルの各期,また個々の器官に起こる現象は,一見独立しているように見えるが,それぞれの底流には,共通のメカニズムが働き,全身に起こっている現象の一局面として表出しているにすぎない。本書は,こうした点にまで踏み込んで解説しており,最初は難しく,馴染みにくい印象を与えるかもしれないが,いったん理解してしまえば,産婦人科学の個々の現象を統合的に理解できるようになると考えられる。
1997年の前回改訂においては,初版の精神を踏襲しつつも,さらに深く解明された前述の共通メカニズムを解説し,それに伴う診断,治療の改変を記述した。またきわめてスピーディーに進行する産婦人科学の細分化,すなわち生殖医学,女性腫瘍学,周産期医学あるいは女性のヘルスケア領域への分化を受けて,初版の婦人科編,産科編という呼称を改め,単に第1巻,第2巻として,構成も専門分化に対応して再編した。
その後,17年が経過し,産婦人科学は,さらに基礎,臨床両面で大きく進歩した。今回改訂においては,改訂2版の様式を踏襲しつつ,この間に新たに解明,あるいは概念が変更された女性生命現象の生理と病理を解説し,また目覚ましく進歩した医療技術を記述,解説した。また,産婦人科学は,社会や関連他分野との係わりを無視しては成り立たなくなっており,こうした面についても解説を加えた。
本書は,東京大学産科婦人科学教室同窓により作成され,同教室で徹底的に議論され,実施されてきた産婦人科学を中心に記述されているが,決して独りよがりにならぬよう,内外の文献を広く考慮して作成したものである。特に今回改訂においては,日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会の産婦人科診療ガイドラインをはじめ,次々と公開されている診療ガイドラインと整合性を図り,読者が疑問を感じないように注意して作成した。
本書の特徴である基礎知識も大幅に改訂した。これらの知識は,今日話題になっているテーマを取り上げたものであるが,必ずしも評価が定まっていないものを含む。教科書は確立した知識を記載することが原則であるが,それだけではダイナミックに変化している産婦人科学を捉えることができず,過去の知識を習得するだけのものになってしまう。あえて,最先端のテーマ,また社会との係わりに関するテーマを記載することにより,読者が,現在進行形の産婦人科学に興味を持ち,さらに自ら探究していただければと思う。
最後に,多忙を極める同窓諸兄の本書執筆に注がれた努力に心から感謝するとともに,本第3版の刊行に尽力されたメジカルビュー社鳥羽清治社長,編集の原鎮夫氏,清澤まや氏ほか,スタッフ各位に深い感謝を捧げたい。
2014(平成26)年1月
監修者,編集者を代表して
東京大学医学部産科婦人科学教室
主任教授 藤井知行
[第3版刊行にあたって]
1987年,『プリンシプル産科婦人科学』の初版が刊行された。当時の産婦人科学は,産科学として周産期医学を,婦人科学として生殖内分泌学,婦人科腫瘍学を扱っていた。産婦人科学はその後大きく変貌を遂げ,現在は,前述の各領域を機軸としつつも,女性医学として,女性特有の生理・病理の基本的理解のもと,思春期から老年期までの女性の健康維持・増進,疾病の予防・治療などの諸問題を統合的・全人的に把握し,臨床への還元を志向する学問になっている。
『プリンシプル産科婦人科学』はこうした産婦人科学の変貌を先見し,初版の段階ですでに,女性のライフサイクルや生殖現象において生起する多くの現象を分断的に捉えるのではなく,連続した生命現象として統合的に捉えるという視点で編集された。従って,単に学生の知識の整理や試験対策のために編集したものではなく,女性の生理,病理を生物学,生命科学の原点に立脚して,包括的に解説したものであった。
生殖現象は女性特有の生命現象であるが,その現象は子宮,卵巣といった,いわゆる生殖器官にとどまらず,全身において,順次ダイナミックに展開する。女性のライフサイクルの各期,また個々の器官に起こる現象は,一見独立しているように見えるが,それぞれの底流には,共通のメカニズムが働き,全身に起こっている現象の一局面として表出しているにすぎない。本書は,こうした点にまで踏み込んで解説しており,最初は難しく,馴染みにくい印象を与えるかもしれないが,いったん理解してしまえば,産婦人科学の個々の現象を統合的に理解できるようになると考えられる。
1997年の前回改訂においては,初版の精神を踏襲しつつも,さらに深く解明された前述の共通メカニズムを解説し,それに伴う診断,治療の改変を記述した。またきわめてスピーディーに進行する産婦人科学の細分化,すなわち生殖医学,女性腫瘍学,周産期医学あるいは女性のヘルスケア領域への分化を受けて,初版の婦人科編,産科編という呼称を改め,単に第1巻,第2巻として,構成も専門分化に対応して再編した。
その後,17年が経過し,産婦人科学は,さらに基礎,臨床両面で大きく進歩した。今回改訂においては,改訂2版の様式を踏襲しつつ,この間に新たに解明,あるいは概念が変更された女性生命現象の生理と病理を解説し,また目覚ましく進歩した医療技術を記述,解説した。また,産婦人科学は,社会や関連他分野との係わりを無視しては成り立たなくなっており,こうした面についても解説を加えた。
本書は,東京大学産科婦人科学教室同窓により作成され,同教室で徹底的に議論され,実施されてきた産婦人科学を中心に記述されているが,決して独りよがりにならぬよう,内外の文献を広く考慮して作成したものである。特に今回改訂においては,日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会の産婦人科診療ガイドラインをはじめ,次々と公開されている診療ガイドラインと整合性を図り,読者が疑問を感じないように注意して作成した。
本書の特徴である基礎知識も大幅に改訂した。これらの知識は,今日話題になっているテーマを取り上げたものであるが,必ずしも評価が定まっていないものを含む。教科書は確立した知識を記載することが原則であるが,それだけではダイナミックに変化している産婦人科学を捉えることができず,過去の知識を習得するだけのものになってしまう。あえて,最先端のテーマ,また社会との係わりに関するテーマを記載することにより,読者が,現在進行形の産婦人科学に興味を持ち,さらに自ら探究していただければと思う。
最後に,多忙を極める同窓諸兄の本書執筆に注がれた努力に心から感謝するとともに,本第3版の刊行に尽力されたメジカルビュー社鳥羽清治社長,編集の原鎮夫氏,清澤まや氏ほか,スタッフ各位に深い感謝を捧げたい。
2014(平成26)年1月
監修者,編集者を代表して
東京大学医学部産科婦人科学教室
主任教授 藤井知行
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目次
Ⅰ 生殖医学の基礎
1.生殖器系の発生・解剖
A.性分化の仕組み
B.性腺の発生
C.卵の形成と精子の形成
D.生殖器系の局所解剖
2.生殖器系の生理
A.性周期
B.性中枢
C.卵巣の周期的変化
D.子宮の性周期
E.性器外の変化
F.乳房の変化
G.思春期
H.加齢による変化
3.生殖器系の診察・検査
A.問診
B.診察法
C.所見の記載と診断
D.症候
Ⅱ 不妊・生殖内分泌
1.生殖器系の検査法
A.内分泌検査法
B.不妊検査
C.染色体検査,遺伝子診断
D. 内視鏡検査
E.画像診断
2.生殖器系の異常(疾患各論)
A.性分化異常
B.生殖器奇形
C.月経異常
D.内分泌疾患
E.不妊症・不育症
F.子宮内膜症
G.子宮腺筋症
H.子宮筋腫
3.生殖器系の治療法
A.ホルモン療法
B.リプロダクティブサージェリー
C.生殖補助医療
Ⅲ 女性腫瘍学
1.overview・疫学
A.子宮頸癌
B.子宮体癌
C.卵巣癌
2.検査
A.細胞診
B.組織診
C.腫瘍マーカー
D.内視鏡
E.画像診断
F.乳癌検診
3.婦人科腫瘍の治療
A.婦人科悪性腫瘍手術の留意点
B.放射線療法
C.化学療法
D.ホルモン療法
E.その他の治療法
4.腫瘍とその関連病変
A.外陰
B.腟
5.子宮頸部の腫瘍
A.類腫瘍と良性腫瘍
B.前癌病変と上皮内癌
C. 子宮頸癌
6.子宮体部の腫瘍
A.類腫瘍,子宮腺筋症
B.良性腫瘍・子宮筋腫
C.悪性腫瘍
7.卵巣腫瘍
A.類腫瘍(腫瘍様病変)
B.良性腫瘍
C.境界悪性腫瘍
D.悪性腫瘍
E.悪性腫瘍の手術療法
F.悪性腫瘍の化学療法
G.放射線療法
8.卵管,腹膜
A.類腫瘍
B.卵管癌
C.(原発性)腹膜癌
9.絨毛性疾患
10.婦人科悪性腫瘍の緩和ケア
Ⅳ 女性のヘルス・ケア
1.小児・思春期婦人科学
A.概要
B.小児・思春期の婦人科疾患
C.性行動と10代妊娠
D.思春期の健康管理
2.中高年女性の好発疾患と健康管理
A.概要
B.好発疾患と管理
C.閉経期女性の健康管理
3.婦人科感染症
A.婦人科感染症の現状
B.検査
C.婦人科感染症の症候群
D.原因微生物
Ⅴ 婦人科疾患の手術療法
1.手術療法
2.腟式手術
3.腹式開腹手術手技
4.内視鏡手術
5.子宮の手術
6.付属器の手術
7.外陰,腟の手術
8.その他の手術
進行期分類
外陰癌の進行期分類
腟癌の進行期分類
子宮頸癌の進行期分類
子宮体癌の進行期分類
子宮肉腫の進行期分類
卵巣癌の進行期分類
卵管癌の進行期分類
絨毛性疾患の分類
妊娠性絨毛性腫瘍の臨床進行期分類
コルポスコピー所見分類
基礎知識
癌遺伝子・癌抑制遺伝子
HPVワクチン
分子標的治療薬
インプリンティングと胚発生・発癌
GnRH1,GnRH2,GnIHと受容体
ES細胞,iPS細胞
遺伝子改変マウス
エピジェネティクス
網羅的遺伝子解析
卵巣局所調節因子
ステロイドホルモン受容体
免疫細胞(樹状細胞,Th17細胞,制御性T細胞)
費用対効果分析
サイトカイン,ケモカイン,アディポカイン
粘膜免疫
脂質と抗炎症
抗菌薬・抗癌剤の耐性
酸化ストレス
腫瘍と細胞極性
DDS
付録:略語一覧
1.生殖器系の発生・解剖
A.性分化の仕組み
B.性腺の発生
C.卵の形成と精子の形成
D.生殖器系の局所解剖
2.生殖器系の生理
A.性周期
B.性中枢
C.卵巣の周期的変化
D.子宮の性周期
E.性器外の変化
F.乳房の変化
G.思春期
H.加齢による変化
3.生殖器系の診察・検査
A.問診
B.診察法
C.所見の記載と診断
D.症候
Ⅱ 不妊・生殖内分泌
1.生殖器系の検査法
A.内分泌検査法
B.不妊検査
C.染色体検査,遺伝子診断
D. 内視鏡検査
E.画像診断
2.生殖器系の異常(疾患各論)
A.性分化異常
B.生殖器奇形
C.月経異常
D.内分泌疾患
E.不妊症・不育症
F.子宮内膜症
G.子宮腺筋症
H.子宮筋腫
3.生殖器系の治療法
A.ホルモン療法
B.リプロダクティブサージェリー
C.生殖補助医療
Ⅲ 女性腫瘍学
1.overview・疫学
A.子宮頸癌
B.子宮体癌
C.卵巣癌
2.検査
A.細胞診
B.組織診
C.腫瘍マーカー
D.内視鏡
E.画像診断
F.乳癌検診
3.婦人科腫瘍の治療
A.婦人科悪性腫瘍手術の留意点
B.放射線療法
C.化学療法
D.ホルモン療法
E.その他の治療法
4.腫瘍とその関連病変
A.外陰
B.腟
5.子宮頸部の腫瘍
A.類腫瘍と良性腫瘍
B.前癌病変と上皮内癌
C. 子宮頸癌
6.子宮体部の腫瘍
A.類腫瘍,子宮腺筋症
B.良性腫瘍・子宮筋腫
C.悪性腫瘍
7.卵巣腫瘍
A.類腫瘍(腫瘍様病変)
B.良性腫瘍
C.境界悪性腫瘍
D.悪性腫瘍
E.悪性腫瘍の手術療法
F.悪性腫瘍の化学療法
G.放射線療法
8.卵管,腹膜
A.類腫瘍
B.卵管癌
C.(原発性)腹膜癌
9.絨毛性疾患
10.婦人科悪性腫瘍の緩和ケア
Ⅳ 女性のヘルス・ケア
1.小児・思春期婦人科学
A.概要
B.小児・思春期の婦人科疾患
C.性行動と10代妊娠
D.思春期の健康管理
2.中高年女性の好発疾患と健康管理
A.概要
B.好発疾患と管理
C.閉経期女性の健康管理
3.婦人科感染症
A.婦人科感染症の現状
B.検査
C.婦人科感染症の症候群
D.原因微生物
Ⅴ 婦人科疾患の手術療法
1.手術療法
2.腟式手術
3.腹式開腹手術手技
4.内視鏡手術
5.子宮の手術
6.付属器の手術
7.外陰,腟の手術
8.その他の手術
進行期分類
外陰癌の進行期分類
腟癌の進行期分類
子宮頸癌の進行期分類
子宮体癌の進行期分類
子宮肉腫の進行期分類
卵巣癌の進行期分類
卵管癌の進行期分類
絨毛性疾患の分類
妊娠性絨毛性腫瘍の臨床進行期分類
コルポスコピー所見分類
基礎知識
癌遺伝子・癌抑制遺伝子
HPVワクチン
分子標的治療薬
インプリンティングと胚発生・発癌
GnRH1,GnRH2,GnIHと受容体
ES細胞,iPS細胞
遺伝子改変マウス
エピジェネティクス
網羅的遺伝子解析
卵巣局所調節因子
ステロイドホルモン受容体
免疫細胞(樹状細胞,Th17細胞,制御性T細胞)
費用対効果分析
サイトカイン,ケモカイン,アディポカイン
粘膜免疫
脂質と抗炎症
抗菌薬・抗癌剤の耐性
酸化ストレス
腫瘍と細胞極性
DDS
付録:略語一覧
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産婦人科書の決定版,待望の第3版が満を持して登場
本書は,産婦人科の基礎から診断治療といった臨床,さらには研究的課題に至るまでを網羅した,産婦人科書の決定版である。学生や研修医のための“教科書”の役割のみならず,産婦人科医療に従事するすべての医師・医療従事者に役立つ内容が盛り込まれている。1991年に初版を刊行し,改訂を重ね,東大産婦人科の診療のすべての伝統が示されている。1巻では主に婦人科領域を取り上げている。