動画で見る 胎児心エコー診断 1
位置異常,心拡大,センターラインからのスクリーニング
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5判 164ページ オールカラー+DVD-ROM
- 2008年3月27日刊行
- ISBN978-4-7583-1050-5
電子版
序文
2004年春に『胎児心エコー診断へのアプローチ』を刊行させていただきました。幸いにも多くの皆様に支持され版を重ねることができました。あれから4年が経過しました。この間胎児心スクリーニングは着実に普及し,いまや重症心疾患の診療には必要不可欠の診療分野として広く認知され深く定着しました。また,胎児心エコー検査ガイドラインが作成され昨年秋に発表されました。重症心疾患の予後を改善するうえで胎児診断に対する期待はますます高まっています。
しかしながら,レベルIの胎児心スクリーニングを行う産科の先生方からは,妊婦検診の間のわずかの時間に確実にスクリーニングすることの大変さ難しさをよく伺います。分娩場所,産科医不足が叫ばれる昨今,胎児心スクリーニングは産科医にとっては大きな負担になりつつあると思います。また,レベルIのスクリーニングからレベルIIの精査へ回る症例が多くなると,レベルIIの胎児心エコーを担当する小児循環器科医の側の受け入れ態勢が問題になります。小児循環器科医の絶対数の不足と同時に地域格差により,精査が十分に受けられない地域もあると聞きます。
レベルIのスクリーニングもレベルIIの精査も,もっと簡単に確実にどこでも受けられるようにするためには,胎児心スクリーニングおよび診断技術の一層の普及向上が必要不可欠と考えられます。『胎児心エコー診断へのアプローチ』刊行の目的もそこにありました。拙著を読んでくださった方々から動画を使ったテキストが欲しいとの要望が寄せられていました。最近の超音波機器とデジタル技術の進歩により,簡単に動画を取り込み編集することが可能になりました。今回,これまで経験した約800例あまりの胎児心臓病症例のビデオをデジタル化し,自己学習の題材として使えるように編集し,『動画で見る・胎児心エコー診断』として刊行することにしました。当初,1冊にまとめる予定でしたが編集する過程で分量が増えてしまい,1枚のDVDの容量をはるかに超えてしまったため,結局3冊に分けて刊行する予定となりました。
本書の対象読者は,胎児心エコーに詳しくない一般の産科医や超音波技師です。そのため,各疾患の典型例をまず取り上げできるだけ詳しく解説しました。そのような症例は本文の症例タイトル横に★で表示しました。
また,できるだけ多くの症例を経験していただくため,複数の所見や疾患が複合したやや複雑な症例も収録し,★★で表示しました。さらに胎児心エコーのエキスパートにとって興味深いと考えられる珍しい症例も収録しました。それらは★★★で表示しました。
ひとつの症例には通常複数の所見がみつかります。そのうちのどれかひとつの所見でも発見することによりスクリーニングすることができます。今回,各症例ごとにスクリーニングに用いられるすべての断面を提示し,発見される所見を記載しました。また,症例の理解を助けるために,胎児MRIや出生後の胸部X線写真,心血管造影の画像,造影CT(立体構築),心臓の略図などを同時に掲載しました。
これまでにない斬新なアイデアを随所に盛り込みました。著者自身がほとんど手作りで作成しました。しかし,コンピュータが大の苦手な著者が,忙しい新生児医療の片手間で作るにはあまりにも時間がかかりすぎ,結果的に未完成な部分を残しながらの刊行となりました。今後,読者の皆様と相談しながら完成度を高めていきたいと思います。
『動画で見る・胎児心エコー診断』が胎児スクリーニングや診断に少しでも役立つことを願ってやみません。
2008年春
川滝元良
しかしながら,レベルIの胎児心スクリーニングを行う産科の先生方からは,妊婦検診の間のわずかの時間に確実にスクリーニングすることの大変さ難しさをよく伺います。分娩場所,産科医不足が叫ばれる昨今,胎児心スクリーニングは産科医にとっては大きな負担になりつつあると思います。また,レベルIのスクリーニングからレベルIIの精査へ回る症例が多くなると,レベルIIの胎児心エコーを担当する小児循環器科医の側の受け入れ態勢が問題になります。小児循環器科医の絶対数の不足と同時に地域格差により,精査が十分に受けられない地域もあると聞きます。
レベルIのスクリーニングもレベルIIの精査も,もっと簡単に確実にどこでも受けられるようにするためには,胎児心スクリーニングおよび診断技術の一層の普及向上が必要不可欠と考えられます。『胎児心エコー診断へのアプローチ』刊行の目的もそこにありました。拙著を読んでくださった方々から動画を使ったテキストが欲しいとの要望が寄せられていました。最近の超音波機器とデジタル技術の進歩により,簡単に動画を取り込み編集することが可能になりました。今回,これまで経験した約800例あまりの胎児心臓病症例のビデオをデジタル化し,自己学習の題材として使えるように編集し,『動画で見る・胎児心エコー診断』として刊行することにしました。当初,1冊にまとめる予定でしたが編集する過程で分量が増えてしまい,1枚のDVDの容量をはるかに超えてしまったため,結局3冊に分けて刊行する予定となりました。
本書の対象読者は,胎児心エコーに詳しくない一般の産科医や超音波技師です。そのため,各疾患の典型例をまず取り上げできるだけ詳しく解説しました。そのような症例は本文の症例タイトル横に★で表示しました。
また,できるだけ多くの症例を経験していただくため,複数の所見や疾患が複合したやや複雑な症例も収録し,★★で表示しました。さらに胎児心エコーのエキスパートにとって興味深いと考えられる珍しい症例も収録しました。それらは★★★で表示しました。
ひとつの症例には通常複数の所見がみつかります。そのうちのどれかひとつの所見でも発見することによりスクリーニングすることができます。今回,各症例ごとにスクリーニングに用いられるすべての断面を提示し,発見される所見を記載しました。また,症例の理解を助けるために,胎児MRIや出生後の胸部X線写真,心血管造影の画像,造影CT(立体構築),心臓の略図などを同時に掲載しました。
これまでにない斬新なアイデアを随所に盛り込みました。著者自身がほとんど手作りで作成しました。しかし,コンピュータが大の苦手な著者が,忙しい新生児医療の片手間で作るにはあまりにも時間がかかりすぎ,結果的に未完成な部分を残しながらの刊行となりました。今後,読者の皆様と相談しながら完成度を高めていきたいと思います。
『動画で見る・胎児心エコー診断』が胎児スクリーニングや診断に少しでも役立つことを願ってやみません。
2008年春
川滝元良
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目次
Lesson 1 位置異常からのスクリーニング
part1 : P点の偏位からのスクリーニング
1−先天性横隔膜ヘルニア
2−先天性嚢胞性腺腫様肺奇形
3−その他
肺分画症
気管閉鎖
右肺欠損
part2 : 胃の位置,cardiac axisからのスクリーニング
スクリーニングポイント
胃の位置は心スクリーニングに役立つ
腹部血管の位置関係が心スクリーニングに役立つ
1−無脾症候群
2−多脾症候群
3−全内臓逆位
4−修正大血管転位症
Lesson 2 心拡大からのスクリーニング
この写真から何を想像しますか?
心拡大から想像できること
TCD,CTARの測定方法
CTARからCTRを推測する
■心疾患
1−エプスタイン病
2−三尖弁異形成
3−重症大動脈弁狭窄
4−重症肺動脈弁狭窄
5−冠動静脈瘻
6−心筋症(重症貧血,一過性骨髄異形成)
7−左室瘤
8−完全房室ブロック
9−心嚢周囲血管腫
part1 : P点の偏位からのスクリーニング
1−先天性横隔膜ヘルニア
2−先天性嚢胞性腺腫様肺奇形
3−その他
肺分画症
気管閉鎖
右肺欠損
part2 : 胃の位置,cardiac axisからのスクリーニング
スクリーニングポイント
胃の位置は心スクリーニングに役立つ
腹部血管の位置関係が心スクリーニングに役立つ
1−無脾症候群
2−多脾症候群
3−全内臓逆位
4−修正大血管転位症
Lesson 2 心拡大からのスクリーニング
この写真から何を想像しますか?
心拡大から想像できること
TCD,CTARの測定方法
CTARからCTRを推測する
■心疾患
1−エプスタイン病
2−三尖弁異形成
3−重症大動脈弁狭窄
4−重症肺動脈弁狭窄
5−冠動静脈瘻
6−心筋症(重症貧血,一過性骨髄異形成)
7−左室瘤
8−完全房室ブロック
9−心嚢周囲血管腫
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実際の動画を通して「動きの中から読み取る」胎児心エコー診断のポイントを簡潔に解説
本書は2004年1月に刊行された『胎児心エコー診断へのアプローチ』の実践版である。
前著は,診断の目的別に的確な診断手技をQ&A方式でわかりやすく解説していくスタイルで,読者の方々に広くご支持いただいたが,「心エコー」は動いている心臓から画像を得るため,十分には表現できない部分があったことも否めない。
本書では,前著「II 実践編」の構成立てに沿って実際の心エコー動画(約200本)をDVD-ROMで提示した(Lesson 1〜3)。前著では表現できなかった「動きの中から読み取る」診断のポイントを簡潔に解説した。