結果の出せる整形外科理学療法

運動連鎖から全身をみる

結果の出せる整形外科理学療法

■著者 山口 光國
福井 勉
入谷 誠

定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
  • B5変型判  304ページ  オールカラー,イラスト521点,写真341点
  • 2009年2月2日刊行
  • ISBN978-4-7583-0666-9

運動連鎖をとらえ,分析し,結果の出せる整形外科理学療法の進め方

理学療法のなかで「ヒトの動き,運動連鎖をどうとらえ,また分析するか,それに基づきどのように理学療法を進めていくか」について,著者らが日頃より実践している,独自の障害・痛みに対するアプローチ法,理学療法のノウ・ハウを解説する一冊。
・人間の全身の動きと役割を理解し(とらえ方)
・患者の動きを分析し(考え方)       
・理学療法で効果を上げているか(結果の出し方) 
を主眼として写真や図を多用しながら,どのようにすれば良い結果(構造structureと機能function,特に機能の維持・回復)が出せるのか(結果の出し方),著者らの今までの豊富な臨床経験に基づき,理学療法の進め方について解説する。


序文

 12年前にそれぞれの道を進むことになるその以前からの経緯でも,我々3名で初めて一緒に仕事をすることになったのが本著である。同時に職場にいたのはわずか5年間であるが,全く別の視点で「理学療法」を粒粒辛苦の基礎造りを一緒にしたのだと今は多少感慨深い思いがある。
 入谷 誠,山口光國両氏は今まで自分が会った理学療法士のなかで群を抜いて独創的な2名である。本当に圧倒的な臨床力を有している。模倣を嫌い意地を張って仕事をしてきた二人である。私自身はこの両名に出会うことがなかったら仕事を低い次元で考えていたと確信をもって言える。一緒に働いていたとき「絶対にこのふたりには負けたくない」という強い意識で仕事をしていたように思う。しかし,負けたくないという意識は,一緒に働いていたときには私自身口にしなかった。講演に行って懇親を深める場で,時折3名の関係を聞かれるときがあり,正直にその話をすると,「その話,先月講演に来られた入谷先生あるいは山口先生も同じこと仰ってましたよ」と聞かされたことが一度や二度ではない。その度に「なんだ。そんなこと思ってたのか!」と嬉しく,不思議な信頼感を感じてきた。知識豊富な人は大勢いるように思うが,技術を自分の想像力で発展させてきたことに関して私の出会った理学療法士で最高のふたりである。
 我々が一緒に仕事をした,昭和大学藤が丘病院,昭和大学藤が丘リハビリテーション病院では,当時非常に力の強かった黒木良克整形外科教授と我々共通の恩師,山嵜 勉先生がとても近い関係であった。たくさんの整形外科医との論議と山嵜先生の影響で,発展途上の技術開発の場では,「模倣だけでは駄目」であることを教え続けられたのだと思う。山嵜先生から毎日毎日「理学療法ってのは……」と言われ続ける話を聞かなくて済むために各々の世界に入っていったような気もする。
 我が国の理学療法の歴史は,欧米輸入の現在完了進行形であり,さらに現在はコンプライアンス,リスクマネージメント,エビデンスなどの重要性が謳われている時代である。テクノロジーを基盤とする職業である以上,それらの流れを否定する気はないが,理学療法のような未だ技術基盤の薄い分野ではもうしばらく混沌とした時代を続ける必要があるように思う。何故なら,理学療法は薬の処方のようには同条件にならない,半無体系的な理論を基盤に証拠といわれてもピンとこないのである。結果主義の功罪を論じる前に,患者の変化がみられないことに対する自己嫌悪から避けるために空理空論をしているだけは展開する力に欠けるように思う。もっともっと作り出す力が必要なのではないだろうか。自分で展開する力が無いと,大きい体系に入り込んで安心する傾向は今も強い。時代の流れで教員をしている人のうち,一体どれくらいの割合の人が,臨床の専門家の前で唸らせる内容を有しているのか。学生の前だけでしか話をすることのできない専門家など普通はいないはずである。それくらい理学療法は個人の力にばらつきの大きい仕事であると思う。基盤が希薄だからである。
 理学療法はapplied scienceであると私は思う。実学としての還元対象つまりは患者に対して強く意識をしないと技術を高める努力の対象が曖昧になってしまう。したがって本著の模倣はあまり価値が無いと思う。若い理学療法士の踏み石となってもう少し創り出す時代が続けば,体系の糸口がみつかり踏み石冥利に尽きると我々(相談はしていないが)は考えている。

文京学院大学 保健医療技術学部
福井 勉
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目次

I 上肢からみた動きと理学療法の展開
上肢帯の機能解剖
  上肢と他の身体との関係
    上肢機能と心理的因子との関係
  上肢帯の機能解剖
    肩甲上腕関節・第2肩関節
  前額面
    関節包・靱帯による関節安定化メカニズム
    回旋筋腱板による安定化メカニズム
    外力に対する安定化メカニズムと随意的運動における安定化メカニズム
    関節運動の変化に伴う安定化メカニズムの対応
    腱板機能の代償作用
    肩鎖関節
    肩鎖関節の機能
    肩甲胸郭関節
    胸鎖関節

身体活動における上肢帯
  身体活動における上肢帯機能
  身体活動における上肢帯の安定化機構
    第1の安定化機構(肩甲上腕関節の解剖学的特徴)
    第2の安定化機構(関節包・腱板の機能)
    第3の安定化機構(肩甲胸郭関節の機能)
  身体活動における上肢帯の筋活動コントロール
    意識されない反応としての筋活動

上肢帯の理学療法評価と対応(1)
  上肢帯における愁訴の捉え方
    愁訴を捉えるための注意点
    愁訴の変化
    愁訴と解釈
  上肢帯の機能評価−可動域
    肩甲胸郭関節の評価
    肩甲上腕関節
    可動域と関節包
    関節包以外の関節可動域にかかわる構造的因子
    他の因子による影響
    可動域評価における臨床的な注意
  筋力・筋活動
    肩関節における筋力
    関節複合体としての筋力
    他の因子による影響
    筋活動バランス
  疼痛の評価

上肢帯の理学療法評価と対応(2)
  上肢帯機能評価の実際
  可動域評価
    終末抵抗感(end feel)がなく,突然な疼痛出現による可動域制限
    終末抵抗感(end feel)に呼応した疼痛の出現による可動域制限
    終末抵抗感(end feel)が急性でロッキング(spring block)様の制限
    筋緊張により運動が制限
    他の因子による影響からの制限
  疼痛誘発(愁訴誘発)テスト
    外転(挙上)抵抗テスト
    外旋抵抗テスト
    内旋抵抗テスト
  特殊テストによる疼痛誘発テスト
    肩鎖関節に対する疼痛誘発テスト
    胸郭出口症候群に対するテスト
  筋活動の評価
    肩関節における筋力評価
    筋力評価の際における注意点
    腱板機能を考慮した評価
    腱板機能の影響
    他の因子による影響
    筋活動バランス(腱板機能)
    setting phaseにみられる特性

上肢帯障害の結果の出し方
  上肢帯障害の結果の出し方
    体表からの観察
  肢位・姿勢の評価
    姿勢評価
    肢位の観察
  形状,その他の変化
    頸部形状の左右差
    肩周囲形状の左右差
    上腕・前腕部
  他の因子による影響
  おわりに


II 体幹からみた動きと理学療法の展開
体幹,上下肢の運動連鎖
  体幹と上肢および上肢間の運動連鎖
    代償運動とスティッフネス
    皮膚・浅層筋膜の動きとスティッフネス
    手関節・手の動きの観察
    上肢と体幹インナーマッスル筋群との関連
  体幹と下肢および下肢間の運動連鎖
    股関節とスティッフネス
    股関節運動と皮膚・筋膜の動きの関係
    下肢回旋運動連鎖
  体幹内での運動連鎖
  その他の運動連鎖
    胸腰筋膜
    体幹上部と頸部の運動連鎖
    上下肢の遠隔部位の運動連鎖

体幹から全身へ
  身体重心〜上半身質量中心と下半身質量中心の中点
  上半身質量中心と下半身質量中心の相対位置
  足圧中心
  身体重心制御と足圧中心制御
  瞬間中心法〜Instant center techniqueの視覚的評価への応用
  スティッフネス
  関節モーメント
  二関節筋と単関節筋

姿勢・動作の捉え方
  姿勢・動作分析に有効な基本動作の導入と骨盤運動
  矢状面
  前額面
  水平面
  立位における姿勢・動作の捉え方
    前屈運動
    後屈運動
    側屈運動
    回旋運動
    スクワット運動
  座位における姿勢・動作の捉え方
    座位における上半身質量中心と座圧中心
    上半身質量中心の移動運動
    上半身質量中心の評価
  臥位における姿勢・動作の捉え方

姿勢・動作改善を目的とした結果の出し方
  治療目標としての姿勢・動作改善
  股関節からの結果の出し方
    股関節屈曲可動性増大のためのエクササイズ
    股関節伸展可動性増大のためのエクササイズ
    股関節内外転可動性増大のためのエクササイズ
    股関節内外旋可動性増大のためのエクササイズ
  骨盤からの結果の出し方
    うなずき運動が大きい場合
    起き上がり運動が大きい場合
  体幹からの結果の出し方
    腹腔内圧
    体幹下部屈曲−伸展
    体幹下部側屈
    体幹下部回旋
    体幹上部
    体幹全体
    その他の方法


III 下肢からみた動きと理学療法の展開
足の機能解剖
  距腿(足)関節
  距骨下関節(ST関節)
  横足根関節(MT関節)
  足根中足関節および列
  中足趾節関節(MP関節)
  趾節間関節(IP関節)
  足部アーチ
    内側縦アーチの機能
    外側縦アーチの機能
    横アーチ
  爪

足(下肢)から全身へ
  第1列の動きと運動連鎖
  距骨下関節(ST関節)の動きと運動連鎖
  足関節の動きと運動連鎖
  中足趾節関節(MP関節)の動きと運動連鎖
  足趾の動きと運動連鎖
  中足骨レベル前方部分の横アーチと運動連鎖
  中足骨レベルの横アーチ後方部分と運動連鎖
  楔状骨レベルの横アーチと運動連鎖
  後足部レベルの横アーチ
  外側縦アーチ
  第1リスフラン関節と楔舟関節

立位における足の補償機能
  足部による正常な補償
  身体面における体幹肢位の偏位による補償と運動連鎖
  後足部肢位の変化と横足根関節(MT関節)の補償
  地形変化とMT関節の補償

歩行時の正常な足部と下枝の動き
  歩行周期
    接地期(Contact)
    立脚中期(Midstance)
    推進期(Propulsive)
  立脚相での関節運動
    股関節
    膝関節
    距腿関節
    距骨下関節(ST関節)
    第1列
    第5列
    足趾
  遊脚相
  歩行における足部の重要性

歩行時の足部の筋機能
  接地期
    1 踵接地での足関節底屈の減速
    2 外側から内側へ荷重負荷される前足部
    3 距骨下関節(ST関節)回内と下腿内旋の減速
    4 下腿の前方モーメントの減速
  立脚中期
    1 ST関節回外と下腿外旋の加速
    2 脛骨の前方モーメントと膝伸展の減速
    3 足根骨の固定
    4 中足骨の固定
  推進期
    1 推進期が始まる踵離地
    2 足関節背屈
    3 中足骨の水平固定
    4 荷重の内側移動
    5 足趾の推進機能
    6 母趾の推進機能

歩行分析のポイントと捉え方,考え方
  歩行動作の捉え方
  歩行分析のポイント(全体像)の捉え方
  歩行分析のポイント(局所像)の捉え方

下肢の障害に対する理学療法の結果の出し方1  入谷式足底板
  入谷式足底板の概要
  足底板作製のための評価の大要
  足底板作製の手順
  足底板作製のための直接的評価の前評価
    一般的足部変形
    生体力学的な足関節・足部の評価
    機能的テスト
  足底板作製のための直接的評価
  作製の準備
    中敷きベースの作製
    足部,アーチパッドおよび中敷きへのマーキング
  直接的評価と足底板処方の仕方

下肢の障害に対する理学療法の結果の出し方2  テーピング
  膝関節
    前十字靱帯損傷(ACL損傷)
    後十字靱帯損傷(PCL損傷)
    内側側副靱帯損傷(MCL損傷)
    外側支持機構損傷
    膝伸展機構の障害
    腸脛靱帯炎
    鵞足炎
    膝窩筋腱炎
    変形性膝関節症
  下腿・足関節障害
    足関節捻挫
    アキレス腱障害
    シンスプリント(過労性骨膜炎)
  足部障害
    足底筋膜炎
    有痛性外脛骨障害
    後脛骨筋腱炎
    腓骨筋腱炎
    母趾種子骨障害
    外反母趾
    陥入爪
  その他
    変形性股関節症

下肢の障害に対する理学療法の結果の出し方3  運動療法
  筋強化法
    股関節を安定させる筋の強化
    膝関節を安定させる筋の強化
    足関節および足部を安定させる筋の強化
  ストレッチング
  固有感覚訓練
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